総評 69点
【★★★★☆】
|
時間 |
シナリオ |
調整 |
操作 |
独自 |
価値 |
キャラ |
やり込み |
グラフィック |
その他 |
評価 |
4 |
2 |
4 |
4 |
4 |
4 |
3 |
1 |
4 |
5 |
DSの特徴である2画面とタッチペンを生かした戦闘と、ストーリーパートの独特な画面の使い方が秀逸なハイセンス系アクションRPG作品。
常に両手での操作を要求される戦闘は少し忙しいものの、上手く闘うことができたときの爽快感が素晴らしくプレイしていて非常に楽しめた。上昇した自分のレベルを制限することで報酬をUPしてゆけるシステムによって、闘いながら自分にあった難易度を探ってゆけるのも新鮮で面白い。
しかしながらストーリー面の出来は良いとは言えず、長々と勿体ぶった割に大したことない構成や謎を明かさない明かす気がない流れの数々は、まるでプレイヤーに鬱憤を溜めさせようとしているかのように感じられるほど。物語の根幹にあたる部分の謎を殆ど残したままエンディングが始まったときには、開いた口が塞がらなかった。
絵柄も主人公のデザインも完全にキングダムハーツなのには何か意図があったのだろうか。
1:プレイ時間 【★★★★☆】
ゲームクリアまで15時間弱。クリア後のやり込み要素をすべてこなして25時間強。
なんともDSらしいボリュームであり、ラップ多めのノリのよい曲が多く戦闘が楽しいのも手伝って体感時間は更にコンパクトに感じられる。○。
☆-1の理由は、完全に「やらされる」構成になっているクリア後である。詳しい理由後述するが、やらなければ物語が楽しめないのにそれが完全に作業なのはプレイしていて辛い。その先に何かが用意されているのは確かにモチベーションにはなるのだが……本作は嫌らしすぎて逆効果。しかもその先で得られる情報が予想通り程度のもので落胆。
2:ストーリー(シナリオ) 【★★☆☆☆】
あらすじ:
周囲を包む雑踏。無機質な目。似たような服装。「五月蠅い……」主人公:桜庭音操(サクラバ ネク)は人混みのなかで辟易とする。音繰は街の雑音が大嫌いだった。個々が他者を顧みずに自分勝手に自己主張だけを続けている。そんな音から離れたくて、彼はヘッドフォンを身につける。人と人なんかが、わかり合える筈がない。だったら、それに目を向けることも、耳を傾けることも、必要ない。人は、いつも一人。閉鎖的な彼の心。彼の瞳。そんな彼の携帯が鳴った。届いたメールが、彼の物語の始まりを告げる。ここは東京・渋谷街。参加者の命を賭けた戦い、死神のゲームの舞台――――
中2病だらけと言いたくなりそうな、いわゆる現代性精神病持ちだらけの登場人物の面々に、ゲーム開始時は非常にダウナーな印象を受ける。シナリオとしては、キャラクターたちのそこからの脱却がテーマであり、人と人との関わり合いをもって自分の世界、己の未来に向き合ってゆく少年少女の姿を描きたかったのだろう。「誰とも理解しあうなんてできない」「本当は自分自身が一番嫌い」「生きていても楽しいことなんか無い」などなど。描き方は雑でこういったテーマをより深く描いている作品は存在するが、こういったテーマに初めて触れる人ならば楽しめるだろう。入りとしては悪くないのだが、本気で描こうという意欲が感じられなかったのが残念だ。上辺だけなぞった感じ。特にきっかけもなく乗り越えていってしまうのはなんとも肩透かし。
ストーリーの方は、主人公が突然「与えられた課題を達成しなければ命を失う」というルールの死神のゲームに巻き込まれ、何人かのパートナーと共に渋谷での戦いを乗り越えながら出会いと別れを繰り返し、このゲームの真相へと近づいてゆくのがメインの流れとなる。しかし、その中で描かれるべき進境の変化や心の成長があまりに急で雑だという印象が強い。更に既述の通り、本編自体が何の謎の解明もなく中途半端な幕切れを見せるが為に生まれる消化不良感がすさまじい。
本編を終えた後でその補足事項や残された謎の解明があるのは管理人としても大好物な流れだが、そもそも本編に明確な「答え」「ゴール」を用意しないというのは悪い意味で反則。
到底認められない。
3:難易度設定・調整 【★★★★☆】
本作の独自システムの一つであるレベル操作によって、ゲームの難易度調整をプレイヤー側に任せる仕様はなかなか面白い。制限を一切せずにプレイすれば何の問題もなくクリアできる総合調整も、プレイヤーに制限を積極的にやらせるよう仕向ける要因になっており良調整と言える。
惜しかったのは、装備品の販売額と能力の段階的向上ができていなかったこと。どちらも落差が非常に大きく、ある時を境にどれを購入しても殆どステータス向上が見込めなくなってしまっている。装備品の「種類」自体が大きな意味を持つシステムであることはわかるが、これは流石にやりすぎ。
4:操作感(プレイ感覚) 【★★★★☆】
十時キーとABXYのボタンが同じ働きをするという独特な仕様に初めは戸惑うものの、タッチペンとボタンを左右の手で両方扱うというスタイルのゲームであると理解すれば割合すんなりと受け入れることができた。
レスポンスやロード時間の類にも特別悪い点は見あたらない。戦闘中熱中できるシステムによる熱中感も良い感じ。
難点は会話関係のスキップが微妙な速度で扱いにくい点と、非常に入り組んだMAPだというのに用意された地図が見難く使い物にならない点。後者は致命的だが、「しようとしなければ雑魚戦闘に入らない」システムのおかげで適当に歩き回っているだけでもそのうち進む道が見つかるのが救い。
5:独自システム 【★★★★☆】
相互の関連性もあり良くできている。
→ストライドクロスバトル・システム
本作の戦闘は、タッチペンで下画面の主人公を、十字キー操作で上画面のパートナーを同時に操作して敵に立ち向かうことになる。敵もそれぞれの画面で独立して攻撃してくる。
設定的には上画面と下画面は異相空間であり、敵は両方の画面に存在していてどちらで攻撃しても同じ敵にダメージを与えることができる。また、味方のHPも二人で共有しており、片方を放置して闘っていると気づいたらゲームオーバー、ということもよくある話。
これが実際にプレイすると予想以上に忙しいのだが、その分ある程度闘えるようになるとかなり楽しい。
昨今はわざわざタッチペンを使わせるRPGの類も大分減ってきたが、本作は十分に生かせていたと思う。
→レベル操作、ドロップレート
戦闘後に得られた経験値によってレベルが上がってゆくのは通常のRPGと同じだが、これを自ら下げることでアイテムのドロップ率(ドロップレート)を上昇させられるのが本システムである。装備等で補うことでゲーム中盤までは初期レベルでも闘ってゆける調整がうまいこと効いていて、徐々に上がってゆくアイテム入手率と、低いレベルで敵を倒せる快感・優越感が心地よい。勿論、下げたレベルはいつでも元に戻して闘う事が可能である。
また、メニュー画面では戦闘難易度も4段階で変更でき、これによってもドロップアイテムが異なる。色々な強さの敵と、そこに合わせたレベルで戦闘を行うという感覚は新鮮だ。
→サラウンドエンカウント
フィールド時に画面に表示されたバッジをタッチすることで、敵シンボルが画面に表示されるようになる。
好きなシンボルを選んでこれをタッチすることで戦闘に突入するのだが、戦闘開始前に複数のシンボルにタッチすることで連戦を行うことができ、ドロップレートを更に掛け算で上昇させることができる。このシステムのおかげで入手しにくいアイテムもサクサクと集めることができる。○。
→トレンドシステム
本作の装備品は帽子や衣服、靴など現実で身につけるものに近いのだが、この世界には13種類のブランドが存在しており、その時々によってトレンドが存在する。このトレンドはランキング形式で確認することが出来、上位のトレンドの衣類を身につけている場合ステータスにボーナスが付加される。逆も然り、下位のものにはペナルティも存在する。よって、必ずしも能力上昇だけが装備品を決めないことになる。
尚、武器は様々な能力をもったバッジになるのだが、このバッジにも同様のブランドがあり効果が上下する。
個人的には装備変更が途中から面倒になってしまったのでそれほど良いとも思えなかったが、他のゲームではお目ににかかったことがない観点のシステムだったので非常に新鮮に感じられたのは良い。
6:価値 【★★★★☆】
管理人の購入価格:2580円
非常に独特なゲームメイクの作品で、ストーリーの雑さはあるがプレイ中の楽しさと新鮮さは保証できる。
DSを持っていて遊ぶゲームがない、という状況であればとりあえず手に取ってみて損はないだろう。他のソフトを我慢してまで遊ぶべき!というほどではないが。
タッチペンを用いたRPGの中では屈指の面白さではないだろうか。
7:キャラクター 【★★★☆☆】
ダウナーなキャラクター付けは管理人好みで良かった。ただ、そこからの扱いがどのキャラも今一つ描き方が足らず、結果キャラの掘り下げや感情移入度も不足してしまったか。
敵も味方も魅力のあるキャラクターが揃っており、それがクリア後のおまけシナリオの楽しさを後押ししていたのは○。
8:やりこみ要素 【★☆☆☆☆】
クリア後はそれまでの全てのステージ(シナリオ)を、クリア時のステータスのまま自由に選択・プレイすることが可能になる。
そこで呈示される様々な条件を満たしてゆき、シナリオの用意されたものを全て満たすことができると「シークレットレポート」が入手できる。このレポートは本編で語られなかった物語の真相を順を追って確認できる内容になっているのだが……散々書いたとおり、その辺りが本編で公開されなさすぎているのが印象が悪すぎた。
この「真相を知りたかったらやりこみまでやりなさい」と言っているかのような仕様は×。クリア後のやりこみなんてものはあくまでやりたい人がやればよいものであって、そこまでやらなければゲームとして完結しない、なんていうのは邪道、というのが管理人の考え。そのやりこみが普通に進めてゆく程度のものであればまだ良かったのだが、本作は本当に作業的な、やるべきことを確認してそれをこなすばかりの内容であり弁明の余地はない。
9:グラフィック・アニメ 【★★★★☆】
画面の使い方や間の取り方が独特で、内容以上に演出においても楽しむことができる。○。
それほど動くわけではないが挿入されるコミック系アニメーション調の表現も非常に良い。作品の雰囲気に非常にマッチしている。
戦闘時・フィールド時共通のドット絵も細かく描画されており、生き生きと動いているのが見ていて楽しい。
10:その他 【★★★★★】
制作陣も「曲に特化させた」と言っている通り、音楽がロック調のテンションの上がる曲が多く、歌詞入りの曲も多いことも合わせてゲームに強くのめり込ませてくれる。音楽感覚に疎い管理人でも作中の音楽がプレイ感覚に影響していると感じ取れるほど。
ただ、総合的に見たら世間で良く言われているほどは良くなかったか。期待が大きかった分残念でもある。★5に届かない項目評価ばかりなのは、やはり一歩足りない惜しい部分が目立ってしまうからなのだろう。
最終更新:2010年01月27日 00:29