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  • 間違いだらけの文化祭 Scene6

涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)

間違いだらけの文化祭 Scene6

最終更新:2020年03月13日 23:05

haruhi_vip2

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だれでも歓迎! 編集

 佐々木の吐息が俺の思考を酷くかき乱す。
 ほんの少し近づくだけで唇が触れ合うだろう。
 それを望む自分と、止めようとする自分が繰り返して争いを続ける。
 本当は争うまでもないんだ。一時の感情で佐々木との関係を壊したくない。
 だが彼女を欲しいと思った気持ちが止まらない。
 葛藤で熱暴走を起こした頭に佐々木の姿が浮かんでは消えた。
『キョン』
 目を閉じていたって鮮明に思い出せる。声だって、リアルに響く。
 この半年に限って言えば一番時間を共有した相手だ。
『なあ、キョン。知ってるかい』
 得意げに笑うあいつが、
『キミが遅刻した分だけ僕の時間は無為に過ぎてしまったのだが』
 不機嫌に説教を始めるあいつが、
『呆れるほど鈍感だなキミは』
 どこか困ったように俺を見上げるあいつが、次々に俺の脳内を侵食する。
 この顔が強張ってしまったら俺は――
 
 ダンッと鳴った音が俺の思考を中断させた。
 自分の足元が発生源だとわかるまで数秒を要した。
 俺は一歩後ろに下がったらしい。目を閉じる前よりも佐々木と距離が開いていた。
 ……ああ、そうか。俺は、なんとか持ちこたえたのか。
 
 佐々木の顔を見られない。気まずいなんてもんじゃねえ。
 許可無く俺からキスしようとした女の子だぞ。
 これで何事もなく見つめることを可能にする丈夫な心臓は付いてないのさ。
 マイチキンハートは、佐々木と目があった瞬間に天に召されてしまうかもしれん。
 
「誓約は交わされた。これより、神の御名に誓って二人を夫婦と認める」
 神父役の須藤が厳かに告げた。
 この演劇最難関である誓いのキスは無事に乗り切れた。結果だけ見ればな。
 鋭い佐々木にバレていたら俺は色々ピンチなのだが、実際にしてないのだから許してくれるだろう……きっと。
 いざとなったら土下座も辞さない覚悟だ。
 情けない決意を固めていると、佐々木が俺の手を握った。
 まずい、最後に手を取って見つめ合わなきゃいけないんだった。がんばれ俺。負けるな俺。ポーカーフェイスだ。
 ぎこちなく首を回す。自分の体なのに錆び付いたブリキ人形を動かしているようだ。
 花嫁姿の佐々木は微笑んでいた。その唇に目がいって、顔の体感温度が一気に上昇した。熱い。
 さっきのアレで意識してしまう。
 はぁ、どうしようもない男だな俺は……。すまない佐々木。
 
 
 
 俺のクラスの演劇は終了した。結婚式で終わりなんだ。
 ロミオとジュリエットの後半は2年生クラスが担当している。ごく普通の演劇。配役が異性なんてこともない。
 しかし完全に予想外のことがあった。俺だけじゃなく、誰もが考えていなかっただろう。
 主役の一人ジュリエット。舞台の中心でロミオと愛の言葉を交わす女子は俺もよく知っているやつだった。
 2年生とほぼ交流がない俺が何故知っているかというと、簡単なことだ。彼女は2年生ではない。3年だ。
 ……ハッキリ言おう。
 ジュリエットは佐々木だった。
 
 ジュリエットを演じるはずだった2年女子は数日前から入院している。
 足を骨折したのでは如何ともしがたい。
 休むと伝えた際、彼女は泣きながら謝っていたらしい。
 クラスメートたちは代役を立てようと頑張ったが、セリフの多いジュリエット役を数日で用意するのは無理だった。衣装の問題もある。
  あとはもうお分かりだろう。そのクラスの女子から頼まれた佐々木がジュリエット役を引き受けたのである。
 実を言えば、昨日の段階で佐々木に話がいっていたらしい。
 佐々木は苦笑して、俺にこう言った。
「ジュリエット役の子も知り合いなんだ。今時珍しい、素直ないい子だよ。
僕は面倒事は好きではないけど、彼女の窮地を見過ごしては良心が咎めるというものだ。
個人的事情で共同作業を台無しにしたら責める人は必ず出てくる。
何よりも、台無しになって自分自身を責めないはずがない」
 ……そんな具合で佐々木は後輩のために嫌いな役を演じることにした。
 期待に応えて、あいつは見事にジュリエットをこなしていた。
 俺は空いていた最前列で劇を見ている。首が疲れるぜ。
 服は演劇終了後に着替えたから制服だぞ。あんなキラキラしたロミオ姿で過ごしたくなどない。
「キョンのやつ、なに一人であんなとこ座ってんだ」
「ステージ見てごらんよ」
「……なんで佐々木が2年の劇に出てんだ? キョンの理由はわかったけどよ」
「そうそう。ほっとこう」
 余計な雑音が聞こえてくる。やかましいぞ、そこ。
 準備してない劇の主役をやってる友達の心配をして何が悪い。
 
 2年のクラスは結婚後を演じる。
 内密にジュリエットと結婚した直後、ロミオはジュリエットのいとこであるティバルトと出会う。
 ティバルトからは事前に決闘状が来ていた。
 しかし、今や親類となったロミオに争う気はない。
 腰抜けと罵るティバルトの侮辱を受け流したが、友人のマキューシオは我慢できずティバルトと決闘を始めた。
 目の前で友を殺されたロミオは決闘を受け、ティバルトを殺害する。
 殺人を犯したロミオへの罰はヴェロナからの追放。
 結婚した数時間後に若い夫婦は引き離されることになった。
 
 ジュリエットは愛するいとこを殺したロミオに腹を立てるが、憎しみよりも愛が勝った。
「大好きないとこの死より、あなたが生きていてくれることが嬉しかった」
 涙を流すジュリエットという設定なのだろう、ロミオが佐々木の頬に触れる。いや、触れようとして手首を掴まれた。
 佐々木は悲しげにロミオの手首を握り締めている。
 これは佐々木のやつ絶対嫌がってるな。俺とのキスシーン時も、遠慮なく距離をとってくれたら悩まずに済んだんだが。
 しかしこうまで感情と切り離して表情を作れるのってすげえな。さすが佐々木だ。俺には真似できん。
 その調子で演技してると撃墜スコアがまた増えるぞ。
 ロミオ役の男子、可哀想に赤くなってるじゃねえか。
「ヒバリが鳴いた。もう行かなくては」
「いいえ、あれはナイチンゲール。ヒバリじゃないわ」
 夜が明ければ、追放処分を受けたロミオは去らなければならない。
 別れたくないジュリエットは、朝を告げるヒバリの鳴き声を夜の鳥ナイチンゲールだと主張する。
 もちろん嘘だとロミオにはわかっていた。だが気持ちは彼女と一緒だった。
「あなたがそう言うのならヒバリじゃない。行くのをやめて殺されてもいい、ここに留まっていたい」
 やけに情感こもってるな。
 ロミオの顔色はいよいよやばくなっていた。トマトと張り合えるね。
「駄目よ、ロミオ。もう朝なのだわ。さあ、こちらへいらして」
 佐々木が手振りでロミオを舞台端へ誘導する。
 見せてもらった台本では別れのキス(頬でも、するフリでも可)があるのだが……
 ぎくしゃくしているロミオへ佐々木は優しく微笑み、
「さようなら、ロミオ」
 と言って舞台袖に押し込んだ。
「ちょっ、佐々木先輩!?」
「進行上の不都合はないと判断した。省略させてもらったよ」
 2人の声が響いて台無しだ。
 変なのは内容だけじゃない。さっきまでの柔らかい声と男言葉の凛々しい声質にギャップがある。
 なんていうか、佐々木が普通に男言葉でロミオやったほうが似合うんじゃねえの。
 
 
 
 演劇は滞りなく進んでいった。
 ジュリエットが実は生きていると知らないロミオはそばで埋葬されようと考える。
 体を横たえ目を閉じている佐々木の横にロミオは膝をついた。
 ロミオはなんだか落ち着かない様子だ。何か迷っている。
 俺は最前列に座ってるからよく見える。
「最後のキスだ……。おやすみ、ジュリエット」
 ロミオは倒れている佐々木へ顔を近づけていった。
 ロミオの顔はどこか気まずそうで、だが意を決したように硬い。
 やつが見ているのは佐々木の一部分。俺も佐々木の相手役だった時、最悪に意識した箇所だから気づいた。
 ふざけんな、あのくそったれ野郎!!
 わかった瞬間、俺の体は勝手に動いていた。
 不幸なことに手に何も持っていない俺は立ち上がり、座っていた椅子を掴んで舞台の中心へと投げつけた。
 クリティカルヒット!
 直線的に飛んだ椅子はロミオの体に見事当たった。
 椅子が床を転がる音は静かな舞台で酷く耳についた。
 予想外の攻撃だったんだろう、ロミオは椅子の勢いのまま横に倒れている。
 よし、阻止したな。よくやった俺。今日最大の快挙だ。
「…ってぇ~」
 ロミオが苦痛の声を上げて起き上がった。
 文句言いたそうな顔でステージ下へ視線をさまよわせ、すぐに最前列の俺と目が合った。不満が敵意に変わる。
 やれやれ、わかりやすいこった。
 俺は手で先をどうぞと示した。
 寝てるやつを除いた全校生徒+教師の視線を浴びてるが、この際どうでもいい。
「すまん、世にも珍しい猛毒性のハチがいたもんでな。椅子を投げちまった。続けてくれ、毒を飲むシーンだったよな」
 ロミオ役の男子は黙って俺を睨むばかり。
 さっさと普通に劇やれよ、この阿呆。
 舞台に上がって殴ってもいいぐらいだが佐々木の努力まで踏みにじることになるからな。
 男子はまだ動かない。俺とやつの間に、劇の決闘よりも緊迫した空気が流れている。
 そこに甲高い声が割って入ってきた。
「今のなに~?」
「劇やってるところに椅子投げてバカじゃないのぉ?」
「あ~。あの人、佐々木先輩のカレシじゃん」
「え、なになに? 修羅場?」
 ええい、うるさい。
 俺は友人の危機を救っただけだ。
 周囲のざわめきを黙殺し、舞台のロミオにあごをしゃくってみせた。さっさと劇をやれと。
 俺を睨みながらロミオは毒を飲んで倒れた。
 目覚めたジュリエットは嘆き、短剣で自分を身を刺して死んだ。
 本当は死別のキスがあったのだが、佐々木は躊躇いなんぞ欠片もせずにキスを省略した。当たり前だ。
 
 主役2人の出番は終わった。
 一応、劇はまだロレンス神父の事情説明が続いている。まあ、興味はない。
 俺は舞台と繋がっている控え室へ足を運んだ。
 ロミオ役の男子が衣装を着たまま脇腹をさすっていた。俺が椅子をぶつけた箇所だ。
 まわりは苦笑やら呆れ顔をしている。俺の姿を認めると、そそくさと距離を取った。控え室を出て行かないのはこれからの展開に興味があるせいかね。
 女子たちが身を寄せて小声で話し合うのが見えた。
「よお、ロミオ」
 男子は嫌そうに俺を見た。
「……ども」
 先輩に対して礼儀がなってないやつだな。
 まあ、ちゃんと目を合わせるのは評価してやってもいい。喧嘩売ってるとしか思えん目つきだがな。
「劇の邪魔しといて堂々のご登場っすね」
「こそこそする理由がねえな、俺には」
 お前のほうだろ、あるのは。
 謝る相手は俺じゃないとはいえ、反省が1ミクロンも感じられないその態度は直せ。
「先輩が椅子投げたのって何がいたからっすか」
「ハチだ。毒持ってるんでな」
「そんなハチ、オレ見なかったんすけど。マジでいたんすか?」
「特殊なんだよ。鏡でわかるかもしれないぞ。まあ、刺すのは諦めたんじゃねえか?」
「……どうっすかね」
 この野郎。OK、表へ出ろ。
 俺は男子の胸倉を掴み上げた。殴らなかっただけ自制心がきいていると思うぜ、本当に。
 男子はさらに反抗的な目つきで俺を睨んで来た。
「付き合ってるんですか」
「いいや」
「先輩もそう答えるんすね」
 大事な単語を抜かした会話。だがこの場の誰もがわかっているだろう。
「それより、あんな卑怯な手段は俺が認めん」
「先輩に認めてもらう必要はありませんよ」
「必要なくても全力で止めるぜ」
 男子の険悪な目は親の仇でも見るようだった。いや、別種の仇に認定されてるんだろう。
「さっきのことはオレも悪いと思ってます。でも先輩にはカンケーないじゃないっすか。何でもないんでしょう?」
「関係大有りだ」
 俺は友人の危険を黙って見過ごすほど薄情じゃないんでね。
「具体的にどんな関係だって…」
 男子は途中で言葉を切った。視線が俺の後ろにいっている。
「……あ、佐々木先輩……」
 男子が当事者の名前を呟いたため、誰が来たのかわかった。
 これ以上続けるわけにはいくまい。男子から手を離して振り返る。
 俺が思い描いた姿と寸分違わぬ美少女が立っていた。クールビューティーという表現が恐ろしく似合う。
 つまり、佐々木がいた。どんな早業で着替えたのか制服だ。
「失敬。話の邪魔をしてしまったかな」
 涼しい顔にムカムカしてきた。
「お前なあ……」
「どうしたんだ、キョン」
「気づいてるんだろ?」
 具体的に言わなくても察してくれるはずだ。俺は言葉を重ねず、ただそう聞いた。
 佐々木の返事は短かった。ああ、と一声肯定しただけだ。
「それでなんで普通にしてやがる。俺が止めなかったらどうなってたと思ってんだ。
前から思ってたが、お前は、たまに、変に無防備だ」
 俺と一緒にいる時もそうだ。
 ああ、いや、俺は無理に変なことをする気は目に見えないバクテリアほどもないが、おかしな野郎はたくさんいるんだぞ。
 言いながら結婚式のシーンを思い出して後ろめたくなったのは内緒だ。
 ギリギリ我慢したのだから見逃してもらいたい。俺だって健康な男子中学生なのだ。佐々木には口が裂けても言えないが。
 墓まで持っていこう。
「キミの発言を要約すると、キミ以外の男の前で無防備でいるなということか」
 なんか微妙に違う気がするが大体そんなもんか?
「ああ。特にウェディングドレスは止めとけよ」
「キョンの前ならいいのかな?」
 俺もクラッときちまったから安全を保障できないのが悲しいところだ。あれはやばかった。
 だが俺に刺すような視線を送ってるバカよりは自制心があるぜ。
「お前が決めることだが俺はそっちのほうがいい」
 佐々木は実に楽しそうに喉を鳴らした。
「じゃあ、次もキミの前で着ようか。でもずっと先になりそうだよ」
「そうだな」
 俺は頷いた。
 またロミオとジュリエットをやることなんてなさそうだが。
 でも人生何があるかわからないからな。予想できないことが起きて、また佐々木と主役を演じる機会があるかもしれない。
「おい佐々木。なに笑ってんだ」
 説教してたはずの相手はゆるやかに微笑んでいる。ちょっと話が脱線したせいか?
「キミがあの事で怒ってくれるなんて想定外だった。ありがとう」
「なんで、ありがとうなんだよ」
「どうでもいい相手には怒らないものだ。僕のために言ってくれたことを嬉しく思う」
 正面から言われると反応に困る。
「友達だからな」
 ぶっきらぼうに答えるのが精一杯だった。
 佐々木はくつくつと喉奥で音を立てる。
「キミが椅子を投げた時、僕はあることで考えを巡らせていた。
劇をなるべく壊さない範囲で状況を改善するにはどうしたらいいかってね。
動いたら皆の努力が水の泡だし、声を出したらマイクのせいで体育館中に聞こえてしまう。
いっそ学芸会で完璧な演技は無理だと諦めて、殴るのが良いかなと思ったところで椅子が飛んで来た」
 ……ああ、最初から気づいてたのか、お前は。
 俺の行動は無駄だってわけですかい。
「感謝してるよ、キョン。おかげで僕の役割は果たせたのだからね」
「そりゃようござんした」
 俺がかわりに2年に睨まれる結果になったわけだ。周りの2年生は興味津々で俺たちを見てるだけだが。
 ロミオ役の男子だけが居心地悪そうにしている。
「……あの、佐々木先輩」
「なんだい?」
「すみませんでした!」
 びしっと音が聞こえてきそうなほど、勢いよく頭を下げる男子。
 なんだよ、佐々木にはそういう態度なのかよ。
 でも俺の見立てでは好感度マイナスだからな。変な期待はするなよ。
「キョンのおかげで未遂だった。今回は不問に処すよ」
「……はい。ほんとにすいません」
「ああ」
 佐々木は男子を少しも見なかった。ずっと俺に顔を向けたままだ。
 男子に同情はしないが、きついだろうなあ。
「さて、行こうかキョン。僕がここに来たのもキミを探してのことだ」
「そうか。わりぃな」
 さっさと行動に移った佐々木を追って俺も控え室を出る。
  ドアをまたいでから一度振り返ると、酷く落ち込んだ顔の男子と、きゃあきゃあ黄色い悲鳴を上げて「あれって婚約?」「入籍いつかな」と盛り上げっている女子の群れが視界に入った。
 あいつら何を話してるんだ。
「キョン?」
「ああ、なんでもねえよ」
 答えて足を速める。今度の視界の中心にいるのは当然佐々木だった。
 
 
 
 さてさて。
 俺の中学最後の文化祭はやっと終わった。
 無駄に疲れることが多かった。できれば演劇はもうやりたくないもんだ。
 高校では一切関わらずに3年間を終えたいね。
「ありえないと言い切れないよ。次ではセリフを忘れずにやりたまえ」
「すまなかったな」
 放課後練習の後にもそうしたように、2人で廊下を歩く。
 片付けや佐々木の説教で遅くなってしまった。まだ残っている生徒はいるが、大半が下校しただろう。
「なあ、あのドレスどうしたんだ? やけに本格的だったが」
「もう返したよ。借りさせられたんだ」
 佐々木は苦笑して、衣装係の女子の名をあげた。
「彼女の自作さ」
「あれが自作か?」
 いったいどんな技術だ。プロ級だぜ。
「昔から変わった服を自分で作っているそうだ。あのドレスも、あるイベント用に作ったものを直したらしい」
「それって…………いや何でもない……」
 夏と冬に開催される特殊な祭り用の衣装、俗称コスプレというやつではないかと思ったが、佐々木にそれを説明するのは躊躇われた。
「アクセサリも借りたのか?」
「小物は自分で買ったよ」
 高いんじゃないか。
「イヤリング、ネックレス、クラウン、ブーケ合わせて5000円以下だ」
「俺には高額なんだが、安いのか」
「普通に用意すれば桁が1つか2つ違う。今日のはフェイクだからね」
 ははあ。うまく準備したもんだ。
 本当の結婚式もそれでいいならだいぶ費用が浮くな。
 結婚の予定はないが、脳の片隅に引っ掛けておこう。10年後に役立つかもしれない。
 
 佐々木は自販機のある休憩スペースで速度を落とした。
「寄っていいかな。喉が渇いたよ」
「ああ。俺も何か飲みたいけど金がねえや」
 残金は100円を切っている。
 お礼代わりに佐々木に奢ったり、最近遊んでくれないと膨れ面をする妹にサービスしたりで、俺の娯楽に使う金は無い。ひでえ話だ。
「奢っては……くれないよな」
「キョンのミスをフォローした僕こそ奢られるべき立場だと思うのだが」
 おっしゃる通りです、すみません。
 佐々木はちょっとしかめ面で俺を見上げた。
 それを可愛いなと思った。少しだけ。
 なぜだろう?
 いつも見ている何気ない仕草と表情だ。特にどこか違うわけでもない。
 とりあえず、彼女の顔を評価しての感想ではない。
 佐々木の容姿が優れていることは疑うまでもない事実だが、俺はおそらく外見とは別の要素で好ましく感じたのだと思う。
 言語化するのは難しい。
 自分のことだってのに俺に理由はわからないのだ。
 とにかく、何故だか唐突に可愛いという感想が湧いて来たとしか認識できない。
 まあ、いいか。別に悪いことじゃない。
「報酬を求めるなら見合った成果を出すべきさ。
僕を助けてくれたことはありがたいけれど、その前のミスで帳消しだ。
従って、僕がキミに飲料を無償で提供する理由はないのだよ、ジュリエット」
 やっと終わったのにそれで呼ぶな。開放感に浸る俺に冷水をかけるんじゃない。
「厳しいな、ロミオさん」
「ロミオは2年生にもいたよ」
 そういやそうだが。やつのツラを思い出して気分が悪くなってしまった。
 佐々木はアマガエルのような声で短く笑った。
 演劇中のお嬢様然として微笑む佐々木より、こっちの佐々木のほうがしっくりくる。
 発言内容も色気ゼロだが、また俺はその様子を可愛いと思っていた。
 なんだろうな、これは。
「やっぱ奢ってくれないのか、俺のロミオ」
「僕のジュリエット、キミのために僕は労働と賃金について論じよう」
「いらねぇよ」
 佐々木はくくっと笑って自販機に千円札を押し込んだ。
 その細い指は、真っ直ぐにコーヒー牛乳のボタンを押した。
 
END
 
 

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