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  • 涼宮ハルヒの経営I 【仮説4】その3

涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)

涼宮ハルヒの経営I 【仮説4】その3

最終更新:2020年03月18日 21:49

haruhi_vip2

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だれでも歓迎! 編集

【仮説4】その3



人名など:
 
磐之媛(いわのひめ)
大鷦鷯(おおさざき)
去来穂別(いざほわけ)
雄朝津間(おあさづま)
 
八田(やた)
気長足姫(おきながたらしひめ)
稚足彦(わかたらしひこ)
足仲彦(たらしなかつひこ)
 
大隅宮(おおすみのみや)
高津宮(たかつのみや)
筒城宮(つつきのみや)
住吉宮(すみのえのみや)
狭城盾列(さきのたたなみ)
 


 
 
  そろそろハルヒが帰ってくるんじゃないかという頃、祝いの客人も減ったので俺は高台に登って昼寝をしていた。長門が冷たい麦茶を持って登ってきた。器を見ると大きな氷が浮いている。
「氷なんかよく出来たな。長門の魔法?」
「……奈良の国原の氷室から献じられた」
「氷を地下で保存しておくあれか」
湧き水を冬の間に凍らせて、おがくずに包んで保管しておくものらしい。冷凍庫で簡単に氷を作っている俺の時代じゃ、このありがたみは分からんだろうな。
 長門に膝枕をしてもらってうたたねをしていると、古泉が馬でかけつけた。
「おう、古泉か。なにごとだ」
「陛下、お妃様、皇后様がお戻りです。住吉宮の沖に船が見えました」
「そうか、じゃあみんなで迎えに行くか」
 
 俺は屋敷の住人で暇なやつを全員連れて、海岸まで行列を繰り出した。ハルヒのいない間に長門との婚礼を済ませてしまって、ちょっと後ろめたい気もしていたのだ。
「……ここで、一句詠んで」
「え、俺が?」
「……そう。既定事項」
「困ったな。ちょっと手伝ってくれ」
「……分かった」
作文の宿題を出された生徒のように俺は竹の板をかかえて唸った。
「今ここで作るってことはハルヒについてだよな」
「……テーマはあなたの自由」
いいのかそんなんで。とりあえず、ここに来ているみんなの歌を詠もう。
「ええと、あの船なんて船だっけ」
「……鈴船」
「鈴船……涼宮ハルヒが乗ってる船か」
ダジャレのつもりではないんだが、船のへりにいくつも鈴を下げているらしい。じゃあええと、難波のみんな、船が来たようなんで、すまんが水に入ってロープをひっぱってここまで船を引いて来てくれ、みたいな歌を書いた。
 
 難波びと 鈴船とらせ 腰なづみその船とらせ 大御船とれ
 
なんだか音頭のような歌になっちまったが、これでよかったのか。長門がうなずいてるからまあいいんだろう。
 
 船は南から北上し、俺たちが立っている浜に来るのかと思っていたが、途中で船の上が大騒ぎになっていた。ハルヒがわめき散らして海に飛び込もうとしている。腕を振り回してなにごとか叫んでいた。
「な、なにやってんだあいつ」
「……」
飛び込むのが無理とみたハルヒは、なんだか船の荷物をほどいて海に投げ捨てているようだ。どうやら俺に向かってなにか怒鳴っているらしい。
「古泉、あいつなにやってんだろ」
「思うに、長門さんを妃にしたことが耳に入ったのでしょう。噂というのはすぐに伝わりますから」
「なんてこった」
帰ってきてから落ち着いて説明しようと思っていたのに、人の耳に栓はできないもんだ。ハルヒを他所にやって長門を召したことを怒っているのだろう。
 
 ハルヒは従者が止めるのも構わず、木の葉を山のように海に投げ捨てていた。あれがミツナカシワか。困ったぞ、あんなに激怒するハルヒは見たことがない。船はそのまま北上して行ってしまった。
「ありゃ、いっちまったぞ。どこに行く気だ」
「あの分ですと岬をぐるっと回って鶴屋さんのお屋敷にでも向かうおつもりなのでしょうか」
望遠鏡があれば船の行き先をたどれたのだろうが、この浜からでは見えなかった。
「古泉、お前の馬を貸してくれ。俺は一足先に戻るからみんなを連れて帰ってきてくれ」
「かしこまりました」
 俺は馬を飛ばして屋敷の高台に登り、ハルヒの船がどっちに向かっているのかを目で追った。ちょうど湾になったところに入ってくれば鶴屋さんちに行くという宛てもあるのだろうが、船はまっすぐ川を登っていった。その先には長門のいた京都の宇治宮があり、他にも何軒か親戚の住む宮がある。あいつ、いったいどこに行くつもりなんだ。
 
 なんだか手持ち無沙汰で戻ってきた家臣たちに、わざわざ駆り立ててすまんすまんと詫びた。あの分だとミツナカシワとやらは全部海の藻屑と消えてしまったことだろう。俺は別の使いを出して、ミツナカシワを採りにやらせた。やれやれ、二度手間だぜ。ハルヒが木の葉を海に放り込んだあたりは、それからカシワノワタシと呼ばれるようになったんだとか。
 
 その日の深夜のことである。屋敷の戸をドンドンと叩く者があった。
「陛下、一大事にございます」
「なんだ、まだ目覚ましは鳴ってないぞ」
「あいかわらず目覚ましが好きですね」
「古泉か、なにごとだ」
俺は寝ぼけまなこをこすりこすり床を出た。
「神人が現れました」
「まじか。どこだ」
「どうやら川岸のようです。水の中に大きな岩を投げ込んで暴れているとのことです」
「まったく、子供の八つ当たりだな。ハルヒらしいぜ。っていうか、アレが生まれるのは閉鎖空間じゃないのか」
「それも不思議なのですが、もしかしたらここは異空間なのでは。見てください」
古泉は右手を開いて、赤く光るもやもやした丸い玉を発生させた。通常空間に生まれるはずのない神人が現れるというのは、前にも似たようなことがあった。こいつの能力が使えるのは閉鎖空間か異空間だけだったな。
 
「長門を呼んだほうがいいか」
「僕ひとりで十分かと存じます。退治してまいります」
「もう庶民の目に入ってるだろう、朝比奈さんを連れてゆけ」
「朝比奈さんをですか?」
「あれだけの巨人だ、朝廷としちゃそれなりのコメントを出さないといかんだろう。巫女さんを連れてお祓いをするフリでもしたほうがいい」
「なるほど、政治の力で庶民の噂をうまく丸め込むわけですか」
噂が広まって尾ひれがついてしまうと始末に終えないからな。日本史の教科書に青い巨人が出てきたりしたら困る。俺は大至急朝比奈さんを呼びにやった。夜中ではあるが、この緊急時だ。許してくれるだろう。
 
 朝比奈さんが寝巻きのままやってきた。
「キョンくん、古泉くん、なにがあったの?」
「ハルヒが神人を出してしまったらしいんです」
「まあ、この空間で?」
「ええ。よく分かりませんが、ここは異空間に似ているらしいんです。古泉といっしょに退治に行ってもらえませんか」
「わたしが神人を退治するの?」
「庶民の目の前でお祓いをしたほうがいいと思うんです。都市伝説が後世に伝わるようなことがないように」
「なるほど、さすがはキョンくんね」
「行ってもらえますか」
「分かったわ。急いで衣装に着替えてくるわ」
朝比奈さんは巫女衣装を取りにやり、客室にひっこんだ。このときほどコスプレが似合う人のありがたみを感じたことはなかった。俺はその間に侍女を叩き起こして祭壇の準備をさせた。さらに従者を二三人つけたほうがいいだろう。
 
 朝比奈さんが鮮やかな赤い巫女衣装をまとって現れた。新調したらしい。
「後始末をさせるようですいませんが、よろしくお願いします」
「では、行ってまいります」
古泉と朝比奈さんは馬を出した。巫女姿で馬に乗った朝比奈さんはかっこよかった。
 こんな夜中だ、街灯なんかまったくない夜道を全速力で駆けつけるわけにはいかないが。
 
 神人は古泉の想像をはるかに超えて暴れていたらしい。ハルヒの船が登っていった川の下流に出現していた。まわりに壊せる建物がないからか、生えてる木を引っこ抜いたり石を持ち上げて川の中に投げ込んだりしていたそうだ。そんなに力余ってんなら土木工事でも手伝わせてやる。
 すでに住民の間に広まっているらしく、大勢の野次馬が土手の上から見物していた。見物人の前で従者が祭壇を作り、朝比奈さんが神人をなだめる祈祷っぽい呪文を大仰に唱えはじめた。そこで草陰から古泉の赤い球体が飛び出し、神人のまわりを幾度か回った後に足を切り落とした。神人はぐらりと傾いて自重で崩れ始め、砂がこぼれるように川の中へ消えていった。呆然と見ていた野次馬が朝比奈さんに向かって拍手喝采をした。
 
 明け方、二人とその連れが戻ってきた。お祓いの実物を見たのはどうやらはじめてだったらしく、従者がいたく感動していた。まあ史上初の神人退治だろう。
「古泉、ご苦労だったな」
「もったいないお言葉。神人相手ならお安い御用です」
「朝比奈さんもおつかれさまでした」
「お礼なら古泉くんに言って。わたしは榊の葉を振ってただけだから」
朝比奈さんは苦笑した。
「古泉、ひと休みしてでいいんだが、ちょっと使いに行ってくれないか」
「なんなりと」
「ハルヒの様子を見てきてもらいたい。たぶん京方面に行ったんだと思う。あの辺には親類の宮がいくつかあるらしいから」
「そういえば淡路宮もあちらですね」
「戻ってきてくれと伝えてもらえないか」
「分かりました。今すぐ出かけてまいります」
ひと休みしろと俺が止めるのも聞かず、古泉は夜うち朝駆けで馬を飛ばした。こいつのバイタリティには感心する。そのうち大臣にでも取り立ててやらないとな。
 俺は即日、お触れを出した。昨晩のイベントは、川の神が虫の居所が悪くて暴れていたので巫女を遣わして鎮めたのである、と。なんだか政府がなにもせずおいしいところだけ持っていってる気がする。面目ない。
 
 古泉はそれから一週間くらいして戻ってきた。── 聞いた話になる。
 古泉は海路を行かず、遠回りして陸路からハルヒを探した。川沿いを登り、出会う村で会う人ごとに尋ねてたどってみると、川の本流と支流が交わるあたりで岸に着けている船を見つけた。まだ京都までは遡っていなかったらしい。
 
 古泉は船に渡ってハルヒと面会した。
「陛下が皇后様に戻ってくるよう願っておられます」
「古泉くん、そのかしこまった話し方やめて」
「失礼しました。彼が戻ってきて欲しいと言ってます」
「キョンにはまったくがっかりさせられるわ。いつだったか有希と付き合い始めた頃、あたしが怒ったの覚えてるでしょ」
「ええ。涼宮さんに知られないようにこっそり会っていましたね」
「それが腹立つのよ!隠れてこそこそやって、それがばれたとき相手がどう思うか考えたことあんの?」
「まあ彼はそのへんが疎いと申しますか、つい安易な方向に走りがちと申しますか」
「でしょ。もう今回のだまし討ちにはアッタマに来たんだから」
「気持ちは分かります。ですが皇后様が不在となると国政もうまく運びません。ここはひとつ、彼を怒鳴りつけてでもまつりごとに戻っていただけないでしょうか」
「そんなに皇后の位が必要なら、有希にくれてやるわ」
「そうもゆかないでしょう……」
さすがの古泉も、今回ばかりは手を焼いたようだ。まあな、いつものごとく俺が悪いんだよな。
 
「ミツナカシワとかいう葉っぱも捨ててしまったし。オキナガのばあちゃんに会うのも敷居が高いわ」
「それは謝れば許してもらえるでしょう」
「なんであたしが謝るのよ、キョンが悪いのよ!」
「おっしゃるとおりです」
「もう……これは気持ちだけの問題じゃないんだから」
「と、いいますと」
「キョンが最初に有希を妃にするって話をしたとき、あたしが反対したのは知ってるでしょ」
「ええ。長門さんのお兄さんが遺言で頼んだそうで」
「それはいいのよ。キョンがそのときどうしても妃にすると言い張ったんだったら、あたしも諦めたわ。キョンがそれ以上なにも言わなかったから、納得してくれたんだとばかり思ってた」
「あのときは皇后になってもらいたい一心で、それ以上なにも言えなかったようですが」
「ところがどうよ、ほとぼりが冷めた頃になったらあたしを厄介払いして有希を引っ張り込むなんて」
「ええ。まったくひどい仕打ちです」
「遠路はるばるお使いにやられて、帰ってきてみれば結婚式?あたしの面目は丸つぶれよ」
正論を言われて古泉は何も言えなかった。俺がその場にいたとしてもたぶん何も言えんだろう。
「有希と一緒になりたいのなら、最初からそうしなさい、と伝えて」
「かしこまりました」
「それから、バカキョン、弦が切れた弓は使い物にならないんだからね、と言っといて」
「承りました」
そこではじめて古泉は笑った。俺が贈った歌をネタに怒ってみせるなんて、ハルヒにも少し余裕が出てきたのかもしれない。
「古泉くん、わざわざ来てくれてありがとう。でもあたしは戻るつもりはないから」
 古泉はそこでハルヒと別れた。ハルヒの船は支流に入って奈良のほうに進み、そのまま遡っていったということだった。
 
 古泉が戻ってきたとき、朝比奈さんが心配して俺の屋敷に来てくれた。
「おかえりなさい、古泉くん」
「ご苦労だったな」
「お引きとめできず、申し訳ありません」
「いやいや、いいんだ。俺が悪いんだから」
同じ過ちを二度も繰り返すとは、俺は自分の軽率さに心底後悔していた。
「キョンくん、わたしが行って様子を見てきます」
「お願いできますか。ひとりにしておくとなにをしでかすか分かりませんから」
「ええ。それに、子供たちの世話もありますし」
血は繋がっていないが、俺の子供たちは朝比奈さんの孫になるわけだ。おばあちゃんと呼ばせないところは朝比奈さんらしいが。
「こういうとき、ひとりでいるのはつらいものですから」
ハルヒに同情する朝比奈さんを見ているとよけいに自己嫌悪に陥ってしまう。俺ってダメな男だな。
 
 朝比奈さんが出発して十日くらいして、書簡が届いた。ハルヒは支流の岸に舟をつけて、そこで家を建てて暮らしているとのことだった。質素な造りで、ハルヒと子供たち、それから数人の従者が暮らすだけの小さな屋敷だそうだ。その屋敷を筒城宮と名づけたらしい。
 居場所が分かったので俺はまた古泉を行かせることにした。
「古泉、たびたびすまんが使いに行ってくれ」
「いつでも参ります陛下」
「ハルヒが新しく宮を構えたらしいんで、当面の生活に必要なものを持っていってやってくれないか」
「かしこまりました。従者も少し連れて行きましょう」
「そうしてくれ。それから、できればだが帰ってくるよう説得してくれないか」
「お任せください。皇后様もそろそろ気分的に落ち着いた頃でしょう」
 
 さて、またもや俺は古泉が帰ってくるのをじっと待っていた。自分で迎えにゆけと言われりゃ、確かにそうなんだが。あれこれ仕事にかまけてなかなか自分の足で動くことが面倒になっちまって、ついつい人を動かすくせがついてしまった。
 
 古泉は筒城宮の質素な門の前に降り立った。宮とはいうものの、質素と表現するのが過剰に聞こえるくらいなにもない屋敷だった。小屋のような小さな家が数件ぽつぽつと建っているだけで、母屋はまだ建築中だった。ここに来てまだ二十日くらいしか経っていない。
「磐之媛皇后様にお目通り願いたい」
門番から中に伝えられて通され、謁見の庭に膝をついて待っていた。朝比奈さんが出てきた。
「古泉くん、涼宮さんは会いたくないって」
「皇太后様、会っていただけるまで帰りません、とお伝えいただけますか」
「分かりました……」
朝比奈さんは引っ込んだ。古泉は庭の土の上に正座し、両手をついたままハルヒが出てくるのを待った。
 
 いくら待ってもいっこうに現れず、そろそろ陽も暮れかかってきた。やがて冷たい風が吹き始め、雨がぽつりぽつりと降り始めた。謁見の庭といっても屋根などない、家の前の草を刈っただけの広場だ。古泉は雨に濡れるにまかせてじっと動かなかった。
 朝比奈さんは、せめて屋根の下に入ってと言いに来たのだが、陛下の伝言を伝えるまではここから動かないと言った。空はだんだん暗くなり、雨も冷たくなっていった。古泉は濡れねずみになったまま、顔を上げようともしなかった。
 
 朝比奈さんがハルヒに泣いてすがり、せめて話を聞いてあげてと頼んだのだがいっこうに聞き入れようとしない。今回のことはハルヒが一歩でも譲ればそれで解決するのだろうが、それでは筋が通らない。また俺が謝りにでも行けば話は別なのだろうが、なかなかそうもいかず、もしかしたらこじれるだけかもしれないが。降りしきる夜の雨の中、姿が見えなくなってぽつんとうずくまった黒い影になっても動かない古泉に心打たれ、朝比奈さんの詠んだ歌がひとつある。
 
 山背の筒城宮に 物申すわが兄を見れば 涙ぐましも
 
山背川の岸にある筒城宮で、陛下の言葉を伝えようとする古泉の一途さが見るに耐えない、とかそういう意味らしい。ハルヒがとうとう家の中から現れて、雑巾のようにずぶ濡れになっている古泉にかけよった。
「古泉くん、なんで……なんであんたは、そう一途なのよっ」
「僕は……家臣ですから」
古泉は雨に打たれながらハルヒを見上げた。降りしきる雨の中でハルヒは濡れそぼった古泉の髪を掻き分けた。濡れたハルヒの頬には熱いものが混じって流れていた。その手が古泉を抱きしめて唇を寄せようとした。だが古泉はそれを制した。
「涼宮さん、それは……だめです。あなたは、彼の妻です」
 
 ここまで話を聞いたとき、俺はうるうると涙を流した。
「古泉ぃぃ、お前はなんて一途なやつだ。男の中の男だ」
「今の僕の脚色、気に入っていただけましたか」
え、今のお前の脚色?なんて野郎だお前は、男の純情をもてあそびおって。
「それはまあともかく、涼宮さんは帰ってきません。生活に必要なものだけではなく、家の建材や大工も手配しておきました」
「おう、すまんな」
「あの感じでは、あの家で冬を越すのは無理でしょう。こことは気温がぐっと違いますからね。そのうち帰ってくると思います」
「そうか、ならいいんだが」
それにしてもひさびさにいい話を聞いたぜ。未来に帰ったらハーレクインを読もう。
 
「長門、宇治ってところは冬は寒いのかな」
「……平均気温はここより低い。雪が積もる」
「じゃあ筒城も寒いだろうな」
「……そう。筒城で冬を越すのはつらいかもしれない」
長門も心配しているようだ。
「……それに、人がいない」
「ハルヒは賑やかなのが好きだからな。きっと寂しいだろう」
「……そう」
どうやら俺が直接会いに行くしかなさそうだ。
 船に荷物を積む準備をしていると古泉が言った。
「陛下がゆかれなくても、僕が行ってまいりますよ」
「いや、いいんだ。人を使うことを簡単に考えるようになるとロクな人間にならないからな」
「さようですか……」
古泉は妙に感じ入ったようだった。
 
 季節はそろそろ十一月に入っていた。俺は従者を連れてハルヒに会いにいった。船で川を遡って京都方面に向かう途中、ハルヒが停泊したあたりに俺の船も停まったが、ここまで来るともう空気がひんやりと冷たかった。このへんで冬に採れるという大根畑があちこちで目に入った。支流に入りさらに遡って筒城宮の付近で岸につけた。
 
 筒城宮は質素というかあばら家というか、まあ本殿は完成していたけどちょっと大きな農家の家っぽい感じで、ありゃ見るからに寒そうだ。塀は竹を切って刺して並べただけだった。
 従者をひとり遣わして、俺が来たことを伝えると朝比奈さんが出てきた。
「キョンくん、おひさしぶり」
「朝比奈さん、お元気そうで。ここすごく寒いですね」
「ええ。冬は雪が積もるそうよ」
「ハルヒに会いたいんです」
「あの、ごめんね。涼宮さん会いたくないって言ってるの」
予想はしていたが、朝比奈さんは明らかにハルヒに同情していた。これは堪える。
「すいませんお手数なんですが、この竹簡を渡してもらえますか」
「ええ。渡してきます」
 
 つぎねふ山背女の 木鍬持ち打ちし大根さわさわに 汝が言へせこそ打ち渡す やがはえなす 来入り参来れ
 
山背の農家の女が鍬を担いで大根を掘っていた。その葉が並んでいるかのようにざわざわと従者を連れてここまで来たんだから、せめてお前の言い分を聞かせてくれないか。みたいな歌を竹簡に書いて渡した。
 出てきた朝比奈さんはボロボロになった竹簡を持っていた。
「ごめんね、やっぱり会いたくないって」
「いいんですよ、俺が悪いんです。今回のことはすべてね」
最近覚えたてで歌も作れるようになったつもりだったんだが、趣がまずかったかな。大根にこだわったのはこのところ京野菜の大根ばかり食わせられて、どうも腹が減ると気持ちがそっちに行ってしまうからなのだが。
「ハルヒにごめんなと伝えてもらえますか。今日のところは無理せず帰ります」
「ええ、伝えます。ごめんね」
朝比奈さんに謝られるともうどうしようもなく自分を責めてしまいますよ俺は。
 
 このまま帰ってしまうのもなんなので、俺は高津宮には帰らず鶴屋さんちまで足を伸ばした。
「すまんのう大鷦鷯。余が間違っておった」
「いえいえ、俺が悪いんです。前にも同じようなことがあったんですよ」
「しかしのう……」
鶴屋さんにしては歯切れが悪かった。ハルヒの留守中に長門を妃にするという案を出したのは鶴屋さんなのだが。俺は帰ってくる旅の途中、ずっとハルヒの機嫌を直す方法を考えていた。
「ひとつ案があるんですが」
「ほう、聞こうではないか」
「磐之媛の息子を太子にしてはどうでしょうか」
「ほうほう、なるほどのう。去来穂別を太子にのう」
「そろそろ十歳になるらしいんで時期的にまずくもないですし」
「お主、それは実に名案である。息子が太子になれば母たる者、喜ばずにはおれまい」
「正月が過ぎた頃でいかがでしょうか」
「そうさの、早いほうがいい。段取りはそちに任せた」
去来穂別というのは、ハルヒの元旦那の長男だ。つまり俺の父親の子供だから弟でもある。ややこしい。ほんとの名前は大江去来穂別皇子《おおえのいざほわけのみこ》という。
 
 年が明け、去来穂別は七五三のような格好をさせられて立太子の礼を受けた。百済の太子から友好の証として贈られたという、サボテンのような形をした七枝刀を渡した。この妙な形の刀がそのまま現代に伝わっていることを俺が知るのはずいぶん後の話だ。
 
 式典にはハルヒの姿はなかった。ある意味予想通りというか、期待はずれというか。父兄代表には朝比奈さんがついていた。
「イワにゃんにも困ったもんだのう」
さすがの鶴屋さんも困り果てていた。PTAの授業参観で自分の親だけが来ないという寂しさが分かるなら、子供の晴れ姿くらい見に来てやってほしいものだが。まあなんといっても発端は俺と鶴屋さんにあるんで、式典に来たくても来れない状況を作り出したのは俺たちだし。ハルヒもつらいに違いない。どこか木の陰から見てるんじゃないかとキョロキョロと見回してみたが、それらしい人影はいなかった。
 
 それから幾度か古泉が慌しく駆け込んでくることが続いた。同時に妙な噂も伝わってきた。奈良の山で青い巨人が暴れて住民が怖がっているらしい。
 新川さんがいないので車で駆けつけるわけにもいかず、古泉は途中まで馬に乗り、そこから先は空中浮遊で飛んでいったそうだ。こんなことを続けていては、そのうちハルヒにバレてしまうだろう。古泉にしばらくハルヒのそばにいてやってくれと伝えた。
 
「陛下、おめでたい話にございます」
古泉が戻ってきた。
「なんだ?ハルヒが戻ってくるのか」
「あるいはそうなるかもしれませんが、皇后様にお子ができました」
な、なんですと。俺は古泉の耳元で囁いた。
「あの、古泉」
「はい」
「誰の子供?」
「もちろん養子ですよ」
そうか、一瞬ひやりとしたぞ。ハルヒもよくがんばるよな、四人目だな。って戸籍上は俺の子か。
「じゃあ父親らしく名前を考えてやろう」
「それがよろしいかと」
しばらく考えたんだが、ここで史実と違う名前を付けてしまっては歴史が書き換わってしまうだろう。
「古泉、この子の名前は俺たちの知る歴史ではなんと言うんだ?」
「ええと、なんでしたか……覚えがありません」
「ここで違う名前を付けたりしたら困るよな」
「そうですね。でも未来から持ち込んだ情報で名づけたらループしませんか」
「うーん……。しかし違う名前を付けるわけにもいかんしな」
ああそうだった、長門なら知ってるだろう。
「長門、教えてくれ。磐之媛の四番目の子供の名前は何になってる?」
「……オオサザキノスメラミコトの子息、オアサヅマワクゴノスクネノミコ」
そんな棒読みでも覚えられないような長い名前、子供が不幸になりゃしないか。変わった名前の子はよくクラスメイトにからかわれてたもんだが。
「これ、このまま付けていいんだよな」
「……いい」
「ループしてもいいのか?最初にこの名前を考えたのは誰ってことにならないか」
「……」
長門はなにごとか考え込んでいたようだが、なんでもないというふうに肯定した。そうか、じゃあこれでいこう。俺は大陸から輸入した紙に、「命名、雄朝津間稚子宿禰」と教えられたとおりに書いてハンコを押した。この頃は紙が貴重品だからな。
 
 俺は時間を見つけてハルヒに会いにいくことにした。会ってくれるかどうか分からなかったが、食料やら衣類やらを持っていってやるくらいのことはしてやろう。
「ありがとよ。じゃあ命名を直接届けてくるわ」
「……わたしも行く」
「そうか?」
「……涼宮ハルヒの心境の変化が気になる」
「あいつ最近、情緒不安定らしいからな」
 
 筒城宮に着くと、俺が贈った建材が役に立ったようで屋敷の様子は多少はまともになっていた。建物の数も増え、塀の外に防風林が植えてあった。ハルヒは出てこず、長門だけ呼んで俺にはカエレと伝わってきた。俺は古泉がやったように、謁見の庭にひざまずいた。朝比奈さんがまあ!と小さく叫んで口に手を当てた。ふつう俺の立場では絶対にしないようなまねをしたので、まわりが慌てて止めようとした。皇后にひざまずく天皇なんてのは前代未聞らしい。長門は後ろでじっと見ていた。
 十五分くらいしてハルヒが出てきた。
「バカキョン!古泉くんのまねをしてもだめよ!とっとと帰りなさい」
「子供が生まれたのに祝いのひとつでも言わせてくれよ」
「じゃあひと言だけ言って帰りなさい」
「頼むよハルヒ、今回のことは全部俺が悪かった」
俺は両手を合わせて拝んだ。
「とんでもないバカね。あんた自分がやったこと分かってんでしょうね」
「分かってますとも。俺は一度やった失敗を二度もするやつなんだ」
キリキリと上がっていたハルヒの眉毛がやっと下がった。
「しょうがないバカよね、まったく……。ともかく家に入りなさいよ、あんたが風邪で寝込んだら国政はどうなるのよ」
おっしゃるとおりで。俺はようやく腰を上げて館の中に入った。
 
「……すまなかったと思っている」
長門がハルヒにぼそぼそと謝っている声が聞こえた。
「有希が悪いんじゃないのよ。全部キョンのせいなんだから」
「……わたしにも、責任の一旦はある」
「もう……あんたも人がいいんだから。キョンがバカをやったらちゃんと怒らないとだめよ」
ハルヒは長門を抱きしめて背中をさすった。長門が本気で怒ったら俺なんか分子レベルにまで分解されちまうぞ。
 
 油の燭台を灯すしかない部屋の中はとても明るいとは言えなかったが、子供たちが賑わっていた。
「よう、みんな元気にやっているか」
「兄上!」
全員が足元に寄ってきて裾をひっぱった。父上とは呼ばせないのはハルヒのこだわりなのか。まあいい、俺は新しく養子に取られた赤子を抱いた。正直、抱き方を知らず、どこを持っていいのか迷っていると朝比奈さんが教えてくれた。
「まだ首が座ってないから、頭の後ろを持って」
なるほど、そういうもんなんですね。ちっこい雄朝津間は俺の顔を見て火がついたように泣き出した。そんな感動の対面をしなくても。ヨシヨシとかいないいないバーをしてやって、なにやってんだろ俺、みたいに我に返るような俺だったが。抱えて揺すっても二十一世紀の歌謡曲を歌ってやってもいっこうに泣き止まないんで、乳母を頼んでいる侍女に渡した。乳母の顔を見ると泣き止んだ。
「この子は人見知りするみたいね」
朝比奈さんがクスクスと笑っていた。
 
「ハルヒ、高津宮に帰ってきてもらえないか」
「いやよ。何度も言ってるでしょ」
「朝比奈さんと一緒に大隈宮にいてもいいんだ」
「あたしはもう皇后の位を捨てたんだから、国政にはかかわらないわ」
捨てたとは言ってもなあ。
「お前がいてくれないと寂しいんだよ。俺も長門も、古泉も。今まで五人はずっと一緒だったじゃないか」
「あんたはいいわよね、有希と仲むずまじく暮らしてるんだから」
「まさかとは思うが妬いてるのか」
「バカ!あたしが嫉妬なんかするわけないでしょ!」
「じゃあ何が不満なんだ」
ハルヒは少しうつむき、膝の上の子供をなでてから呟いた。
「あたしの、自分の時代に帰りたいの……」
そうか、そうだよな。思ったことをなんでも自由にこなすハルヒには、ルールだらけの政府の仕事は向いてないかもしれない。このまま子育てだけでこの時代に埋もれてしまうのはハルヒのためにならないだろう。それに俺を含めた三人も、この時代で一生を終えるわけにはいかない。
 
 ハルヒが教えたらしいプロレスごっこを展開する子供たちを見ながら、その日は暮れた。俺は酒も飲まず、質素な飯をぼそぼそと食って客室の寝床に入った。
 
 曲がりなりにもハルヒのご機嫌を取れたので、俺は長門を連れて高津宮に帰ることにした。仕事が溜まっている。
「ハルヒ、鶴、じゃなくて気長様に手紙を書いてくれ。心配してるから」
「分かったわよ。そのうちちゃんと謝りに行くつもりでいるから」
「いつでも帰ってきていいからな。お前の家は向こうだから」
「言ったでしょ。あたしはもう政治には関わらないの」
分かってるさ、だがかすかな希望を残すくらいいいだろ。俺と長門と古泉の三人は、船の上から朝比奈さんとハルヒに手を振った。川を下っていくとゆるやかなカーブの岸がいくつも連なり、桟橋の二人は見えなくなった。たまには会いに来てやるさ、遠いけどな。
 
 三人は高津宮の浜で船を降り、そのまま鶴屋さんちまで足を伸ばした。
「さようか。イワにゃんの機嫌も直ったとのこと、よきかな、よきかな」
「磐之媛はしばらく放っておこうと思います。あれはどうもまつりごとには向かないようなんです」
「そうであろう、そうであろう。あれはもっと自由に生きねばならん。気持ちは分かる」
「それから、曾孫が生まれましたよ。命名はオアサズマ……ええと、」
思い出そうと必死で考え込んでいると長門が助け舟を出した。
「……おあさずまわくごのすくねのみこ」
「そうそう。それだ」
「それはめでたい。朝妻か。よき名である」
「そのうち謝りに来ると言ってました」
「よいよい。謝るのは余のほうであるから。あれのことはずっと気にしておったでな」
「磐之媛とはどういう繋がりなんですか。あいつは皇家の出ではないようですが」
「さよう。余が若かりし頃のこと、大陸に渡ったことがあってな、」
鶴屋さんが十八歳くらいのころ、百済政府の要請で大陸に派兵する出来事があった。その兵にまじって鶴屋さんも戦場に赴き、一緒に戦ったらしい。妃であることを隠し、鎧に身を包み剣を掲げた。ジャンヌダルク顔負けのその勇ましさを想像して俺は萌えた。今でもときどき百済に援軍を送ることがある。
「そのとき余と一緒にいた大和の武将がイワにゃんの父親でな。さよう、酒の君の父君でもある」
「そうだったんですか。邦で男勝りの女武将がいたと聞きましたが、気長様のことだったんですね」古泉が言った。
「わははっ。女武将とは言い過ぎであるが。あれを見ていると己の若き頃を思い出す。なんでも自分の目で見、聞き、自分の手でこなさねば気が治まらぬでな」
俺の時代の鶴屋さんがハルヒと仲がいいのも、どうやらこのあたりに理由がありそうだ。
 
 歳の初めから二月にかけて、けっこうな量の雪が降った。今年の冬はやたら冷え込む。この時代に来て二度目の冬なわけだが、俺の時代よりずいぶん気温が低い気がする。もう少しだけでいいから地球温暖化してもらいたいよな、などと勝手なことを考えている俺だ。
 その日の朝も寒くて目が覚め、台所のかまどのそばで火に当たっていた。侍女が男子厨房に入らずなどと怒っていたが、俺は寒くて風邪を引きそうだと震えてみせた。ストーブもこたつもない時代だ、みんなはじっと春が来るのを待っているのだろう。
 
 軽く朝飯のお粥をすすって、日が照ってきたので俺は高台に登ってみた。遠くを見渡せるようにと立てた塔だが、ここは吹きさらしなので冬に入ってからは滅多に来なくなった。遠くを見渡すと薄く朝もやがかかっていた。
 長門が登ってきた。
「おう長門、今朝も寒いな」
「……風邪、ひくから」
長門は自分で織ったという木綿のマフラーを俺の首に巻いてくれた。呉服にマフラーってのもまた合うな。
 長門の肩を抱き寄せて互いを暖めあっていると、ふと妙なことに気がついた。民家のあるあたりで、去年まで立ち上っていた煙がまったく立っていない。もしかして過疎化しちまったのか。
「もしかしてあいつら飯食ってないのか」
「……ここ数年続いた百済派兵と厳しい納税のため、庶民の生活は貧困の一途をたどっている」
「そいつはいかんな。国民の生活があってこその国だ」
ここはひとつ、減税措置で、などと考えたところでデジャヴを感じた。これは知っている。デジャヴなんかじゃない。日本史の時間に習ったじゃないか。
「長門、大臣とか武官とか、それから地方役人やらを集めてくれないか。ちょっと話したいことがある」
「……あい、わかった」
長門は心得ているというふうにニコリと笑った。俺もだんだん歴史上の人物らしくなってきたじゃないか。
 
 昼過ぎに、謁見の庭に人が集まってきた。歩いて来れる範囲で、各地の国長やら司に伝令を出して呼び寄せたが、百人は来ているだろうか。しかし大和の国もいよいよ大所帯だな。
「あー、みんなちょっと聞いてくれないか」
この寒いのに人を集めてなんだろうかと、それまで続いていたザワザワが止んで静まり返った。
「今朝、そこの高台に登ってみたんだが、飯を炊く煙がぜんぜん立っていないのに気がついた。たぶん税率が高すぎて飯が食えないんだろう。そこでだ、まことに勝手ながら今から三年間の税金を免除することにした」
家臣一同がええっと叫んだ。大臣がなにか言いたそうにしている。
「言いたいことは分かってるよ、大臣。まつりごとってのはやたら金がかかるもんだしな。だが国民が飯を食えないでまつりごとだけ賑わってるってのも意味がないと思う。民あっての臣、民あっての君だ。はっきり言わせてもらえば、国民が貧しいのは君主の支配がまずいからだ」
大臣はうなだれた。君主の支配が悪いということは家臣の行政もまずいということだ。
「偉そうですまんが、これは命令だ。宮も司も一切の無駄を省いて節約してくれ。役人は上から下まで贅沢はゆるさん、聖域なき倹約……え」
あれ、知ってる政治家が言ってなかったかこれ。
 
 一部で拍手が沸いた。近くの農村から来ていた村長だろう。大臣たちもあわてて拍手をした。一方的にそう言ってはみたが、今後は朝廷も苦労するだろう。ここじゃ日本銀行に金を借りるってことができないからな。こんな勝手に決めちまってよかったのかと長門を見ると、こっそり親指を立てていた。
 
 俺は竹簡に同じ内容を書いて全国にみことのりを送った。税ってのは元々は自発的な貢物からはじまった制度だし、それに味を占めて強制的に徴収するようになったのは上に立つ者の怠慢ってやつだろう。まあそれで公共サービスが動いてるんだからしょうがないんだが。税を搾り取ることを当たり前だと考えている役人に、少し考え直してもらいたいものだ。
 
 それからの数年は水害も干ばつもなく、まつりごとも安泰した日々を過ごした。古泉に頼んで収穫が早い野菜の種を輸入し、それを植える奨励を出した。サツマイモなんかがありゃよかったんだが、あれが普及するのはずっと先の話だからな。
 
 庶民の生活も朝廷の財政のほうもしばらくはいまいちだったが、ひとつだけいいことがあった。あまり付き合いのない大陸の晋と高句麗が貢をよこしたのだ。最初は戦争を仕掛けるために国の様子をうかがいに来たのかと警戒していた。
「大陸から客人が来たらしいんだが」
古泉と碁盤に石をぱちりぱちりと打ちながら、酒を煽っていた。
「ええ。伺っています。呉と高句麗の親善使節でしたか」
「もしかしてお前の仕込みか?」
「いえいえとんでもございません。陛下の徳のなされるところが幸運を招いたのでしょう」
古泉に誉められるとケツの穴がむずむずするんだが、まあ与えられた幸運はあまんじて受けよう。
「この不景気だからな。どんな貢物もありがたい」
「そうですね。百済と大和が仲がいいので我も我もという感じでしょう。これも政治ですよ」
「大和はそんなに人気があるのか」
「ええ。何度か百済に援軍を出したじゃないですか。戦場でいい戦いっぷりだったので有名になっています」
なるほどね。それでうちと仲よくしたがってるわけだな。これは降って沸いたラッキーかもしれん。
「古泉、頼みがあるんだが、使節団のやつらをできるだけ長く引き止めてくれ。地方を観光案内でもして金を落とさせろ」
「陛下も悪知恵が働くようになりましたね」
古泉は、お代官様も悪よのう、と言いたげにクククと笑った。国益のためならなんでもするぜ。
 
「ときに、この対局は僕の勝ちですね」
「な、なに。お前は囲碁は強いのか」
「この時代に来て鍛えられましたからね。ほかに遊びもありませんし」
確かに、この時代の娯楽は将棋か囲碁くらいなもんか。
「これは偶然ですかね。数字の4に見えませんか」
俺は碁盤を見た。古泉が白、俺が黒の石で、白が黒を取り囲むように並んでいる。確かに4っぽいが。何だろう、前にも似たような会話があったような。気のせいか。
 
 それからしばらく、大陸からの客をもてなすのに忙しかった。思いもよらない貢のおかげで多少は財政が潤ったようだ。地方にも少なからず恩恵があったことだろう。聞くところによると使節団は各地で大歓迎され、調子に乗って遊んでまわった挙句、ほとんど一文なしになって帰っていったとのことだった。まあ国内の財政が豊かになったらそのうちお返ししますよ、たぶんね。
 
 免税の詔を出して早くも三年が過ぎ、家計簿がずっと火の車だった高津宮の館はリフォームもされずボロボロになっていた。屋根の杉皮や藁は補修されることもなく、土壁にヒビが入っても放置状態だった。俺は酒を飲むのもやめ、粥をすする貧乏暮らしに慣れてしまって税制を復活させるのをすっかり忘れていた。少し痩せたかもしれん。まあこの時代に太ってるやつがいたらそいつは悪代官くらいなもんだろう。
 
 季節は春、四月ごろだったが、俺はまた長門と連れ立って高台に登った。見渡すと、ほうぼうから煙が立ち昇っている。こいつはいいことだ、そのへんの住民がちゃんと飯を作ってるわけだな。どうやら免税の効果があったようだ。
「国民が腹いっぱい飯を食っているというのは、実に気分がいいもんだな」
「……あなたの人徳」
長門がそう言ってくれると少し誇らしい気分になる。まあ人生で一度くらいは胸を張って言えることがあってもいいだろう。天国に召されたとき、俺は人々のためにコレをやりました、とな。そうすりゃ多少ダメで倦怠な人生でも大目に見てくれそうな気がする。
「そうだな。なんせ仁義と徳の人だからな。上に立つ者、庶民を顧みなくてはなんとか、だ」
「……そう。ここで一句」
俺は長門の和歌が聞けるのかとじっと待っていたが、いっこうに始まらない。
「長門、まだか?」
「……あなたが詠う」
「って俺かい」
「……これは、既定事項」
「しょうがないな。筆と竹の板をくれ」
これも確か知ってるぞ。教科書で読んだ気はするが、ええと、高き屋に、だったかな。
 
 高き屋に のぼりて見れば煙たつ 民のかまどはにぎはいひにけり
 
うろ覚えだがそのまんまだ。意味は覚えてないんで日本史でも読んでくれ。
「……よくできた」
「ありがとよ。でもこれを俺が詠んで後世に伝わったということはだ、最初に詠んだのはいったい誰だ?」
「……」
長門は難しい顔をして考え込んでいた。
 
 俺のひと言ではじめた免税のせいで、各地の宮は財政難が続いた。俺はそれぞれの経理担当者に毎月の収支報告をさせ、足りないところは倉から現物支給してやった。諸国の宮と司には、やれるなら自前で土地の開拓でも商売でもはじめろと伝えた。
 
 ハルヒの住んでいる筒城宮も同様、貧乏生活を強いられているようだった。俺は衣食住を賄えるだけの物資を送ってやり、お忍びでたまに様子を見に行った。夜になるとあいかわらず神人が発生するらしく、ご苦労なことに古泉がいそいそと退治に出かけていた。
 夏のある日、俺は休暇を取って長門と筒城宮まで船を出した。まだ仏教が伝来していないんで盆休みってのはないんだが。こんな暑さの盛りは山奥でのんびり過ごしたいもんだ。魚やら野菜やら、穀物を携えて子供たちを訪ねた。
「キョンくん、長門さんおひさしぶり」
朝比奈さんが出迎えてくれた。俺の強行した免税のせいで、衣装もツギを充てつつ着ているようだ。
「朝比奈さん、すいません。俺のせいで生活が苦しいと聞いてます」
「いえいえ、わたしは平気です。今までが贅沢すぎたんです」
裕福そうな未来人の朝比奈さんにそう言ってもらえるなら、少しは気が晴れるってもんですが。
 
「兄上!八田お姉様!」
子供たちがいつもと同じように駆け寄ってきた。だが三年も経てば子供ってのはがらりと様子が変わる。長男の去来穂別は十四歳に、ちっさな赤ん坊だと思っていた雄朝津間がもう四歳だ。この時代に来てあくせく働かずまったりと流れる時間を楽しんでいた俺だったが、子供の成長というのはいつの時代も早い気がする。
 俺とハルヒは、長門と遊ぶ子供たちを眺めていた。雄朝津間は長門が気に入ったようで、いつも膝の上にいる。長門が小さな子供を抱いているのは、それはそれで絵になるもんだな。
「子供の成長はあっという間だよな」
「そうね……」
「どうした、いつになく元気がないな」
「元気よ」
「なんだ、なにか言いたそうだな」
「なんでもないわよ」
「言いたいことがあるなら言わないと体に悪いと、誰かが言ってなかったっけ」
俺はニヤニヤとハルヒを見た。
「もう。あと二年もしたら三十路になるのかと思うとね」
それは俺もだな。でも歳取って元気がなくなるどころか、俺は毎日が楽しいぜ。
「そりゃあね、あんたには有希がいるからいいわよ」
またそれか。いい男でも見つけて、デートでもすりゃいいだろ、と言いかけて俺は口をつぐんだ。ハルヒが男を作っちまうのが嫌で、俺はこいつを妃にしたんだった。ハルヒがこの時代で本当に結婚なんかしちまったら、歴史が変わってしまう。
「忘れてた。俺たちはこの時代の人間じゃないんだよな」
「そうよ。あたしたちの人生は二十一世紀にあるのよ」
「しかしなあ。帰る宛てがないんじゃ、とりあえず食っていくしか」
果たして本当にそう?という感じでハルヒは俺を見た。俺もその妥協は正しいのかどうか疑問だった。
 
 俺も子供たちに混じって蹴鞠をし、屋根の上に鞠を上げて何度も侍女のおばさんに怒られた。子供たちはこの時代で生まれ、たぶんこの時代で一生を終えるだろう。だが俺たちは違う。
『わたしたちの生きている時間は、もっと大きな流れの中の一部に過ぎない』
いつだったか長門が教えてくれたこの言葉に、俺はどの時代、どの時間ででも生きていける自信がついた気がする。俺にとって大事なのはどこで過ごすかではなくて誰と過ごすかなのだ。長門がそばにいてくれれば、ハルヒを取り巻くSOS団のメンツがいれば、どの時代どの世界でだって生きていける。そう思う。だがハルヒはそうは思わないのらしい。俺とハルヒの人生観の違いかもしれんが、こいつにはもっと別の、なかなか手が届かない探しものがあるように感じる。
 
 飯に呼ばれて俺たちは館に入った。子供たちの食欲は旺盛でガツガツと食っていた。俺はその様子を見ながらひさびさに酒を煽った。人が飯を食っているのを見て幸せになれるなんて、俺もだいぶ変わっちまったな。
 
 いい感じにほろ酔いになったところで俺は客室の寝床に転がり込んだ。貧乏でもそれなりに幸せになれる、なぜかそんな格言めいたセリフを思いついた。俺のいた未来じゃ、飯が食えるのが当たり前だったもんな。
 だがその未来とやらに、俺はいつか帰らないといけない。
 
 俺たちが未来に帰るとしたら、朝比奈さんのTPDDが治るか、未来の誰かが迎えに来るしかないだろうな。長門は情報統合思念体の力は借りれないと言っていた。未来と連絡がつかないとしたら、どうやら自力で帰るしかないか。
 そういえば一度だけ変わった方法で時間移動したことがある。何年か前の七夕のとき、いやここからだと未来になるのか。朝比奈さんがTPDDを失い、俺と二人で長門のマンションに駆け込んで時間凍結で三年間のタイムトラベルをしたんだった。だがあれは長門が三年間ずっと待っていてくれたからできた芸当だ。今が古墳時代だとして千六百年間も時間凍結を維持できるような……。
「あ、今俺なんつった?」
独り言がぽろりと出た。俺はガバと飛び起きた。今、古墳時代とか言ったな。
「長門、ちょっといいか」
俺は長門の部屋の帳から呼びかけた。酔っ払った男がこんな夜更けに女性の部屋を訪ねるなんて、あらぬ誤解をされそうだが。
「……なに」
「前にお前のマンションで時間凍結してもらったろ。あれと同じ方法で帰ることはできないか」
「……当該ポイントまで時間凍結を維持するには、物理的に安定した環境が必要」
「要するに千六百年間、建物なりが存在していればいいんだよな」
「……そう」
「俺が知ってる限りじゃ、大仙公園は俺たちの時代まで存在してるよな。あれは使えないだろうか」
長門の顔が珍しくぱっと輝いた。
「それは、妙案」
大仙公園ってのは仁徳天皇が眠っているとされている古墳のことだ。俺が授業で習った頃は仁徳天皇陵って名前だったんだが、最近じゃ新たな発見とやらで本人の墓かどうか曖昧になってしまい、伝仁徳陵古墳とか呼ばれているらしい。
 
「……玄室の構造は、時間凍結に適している」
「だが俺たちが棺桶に埋められるのはいいとして、誰がそれを起こす?」
「……わたしがやる」
「いくらなんでも、千六百年もお前を独りにするわけにはいかん。喜緑さんあたりにでも起こしてもらえないか」
冷たいマンションの一室でぽつねんと俺を待っていた長門を思い出した。千六百年も孤独に時を過ごすなんてちょっと考えられない。三年間でさえ相当つらかったみたいだしな。
「……今の環境では、喜緑江美里には依頼できない」
「やっぱだめか」
「……時間凍結ではなく、抗エントロピー遅速性時間フィールドを展開すればいい」
「それって何だ?」
「……時間の進みを、超低速にする」
「どういうふうに?」
「……石室の内部と外部の時間の進み方に差を与える」
「ってことは俺たちは棺おけの中で時間移動中しながら、ふつうに会話したりできるってこと?」
「……そう。波動を百七十六万分の一の超低周波に変換すると、およそ八時間の主観時間で到達可能」
「よく分からんが、俺たちの時間を百七十六万分の一のスピードにすれば八時間で現代に帰れるってことか」
「……概算では、そう」
なるほど。やってみる価値はあるか。だが俺の一存でははじめられないな。
 
 俺は住吉宮にいる古泉に宛てて、未来に帰る目処がつきそうなんで会いに来てくれと書簡を出した。古泉がやってきた三日後の晩、俺は四人を呼んで相談した。
「古墳を使った時間凍結で未来に戻ろうと思うんだが、どうだろう」
「そんなことできるんですか」
古泉の目が丸くなった。
「ああ、前にも一度やったことがあってな。朝比奈さんと俺は三年間、長門のマンションで時間凍結されてたんだ」
「そんなことがあったとは。ですが、今からですと千六百年間も眠ることになりますが大丈夫でしょうか」
「……眠らなくてもいい。時間の進み方が変わるだけ」
「どうやってやるんです?向学のために教えていただけないでしょうか」
「……うまく言語化できるかわからない」
なんでも知りたがりの古泉に、長門は知ってどうするんだという感じだったが、俺にはとんと分からん物理学用語を使って説明していた。
「それはすばらしい。是非やりましょう」
「すごいわ長門さん。八時間ならなんとか我慢できるわ」
「……そう」
「ただし、問題が二つあるんだ。まず、ハルヒに時間移動をどう説明するか。二つ目に、先に古墳を作らないといけない。あんなでかいもん、どうやって設計するのかすら分からん」
「最初の問題はあなたに任せるとしましょう。なんなら涼宮さんを酔わせて意識を失ったところで棺桶に閉じ込めて、」
お前、嬉しさのあまりむちゃくちゃ言ってるだろ。古墳の上に神人が湧いて出たらどうする。
「二つ目は僕にお任せください。大陸で城を建設している知り合いを呼び寄せましょう」
なるほど、そいつはいい助っ人だ。
 
「キョンくん、もうひとつ問題があるわ」
朝比奈さんが口を開いた。
「涼宮さんの子供たちはどうするの?まさか連れて行くの?」
それはどう考えても無理だ。四人の皇子がいなくなったらこの日本史が根底から覆ってしまう。
「置いていくしかないでしょうね」
「母親がいなくなって小さな子供たちだけで生きていくのは、残酷すぎると思うわ」
皆は黙り込んだ。確かにそうだ。人ってのは横の繋がりを持って時間の中を生きている生物だ。タイムリミットが来たからハイサヨナラってわけにはいかないだろう。時間移動を繰り返している朝比奈さんだからこそ、身に染みて別れのつらさを知っているのに違いない。
「じゃあ、せめて子供たちが成人するまで待つとか」
「それもどうかしら……」
この時代は十八歳で成人だから、雄朝津間が成人するまで少なくとも十四年はここで過ごすことになる。ハルヒがそれまで我慢できるかどうか。
 
「あの、僕は思うんですが」
「なんだ、言ってみろ」
「別に後生の別れになるわけではないでしょう。タイムマシンが完成すればいつでも会いに来れますし」
「それもそうだな。あるいは朝比奈さんのTPDDが治ったら連れてきてもらうとか」
「そうね。成人するまでこの時代にいて、あとはときどき様子を見に来ることにしたらどうかしら」
しかし朝比奈さん、そう簡単に時間移動の許可が降りるんでしょうか。という俺の心配も未来ではなんということはないようで、朝比奈さんはにっこり笑って答えた。
「涼宮さんが願うことはなんでも通るわ」
ハルヒならOKなんですか。時間移動申請の許可と却下の判断って誰がどういう基準で決めてるんだろうか。きっと机の上に足をデンと乗せた偉そうなお役人の気まぐれに違いない。
 
 まあそういうことなら、とりあえずハルヒと話をしてみよう。俺はハルヒを呼んだ。
「なによもう、やっと子供が寝付いたところなのに」
「すまんな。っていうかすっかりおふくろが板についてきたぞ」
おふくろという言葉を聞いてハルヒはポッと赤くなった。
「で、なんなの」
「未来に帰りたいか」
「帰りたいわよ!今すぐにね」
「まあ落ち着け。ええとだな、長門がいうにゃ、材料さえ揃えばタイムマシンを作れるかもしれない、らしいんだ」
「なによそれ!?詳しく、聞かせなさいぃぃ」
分かった、分かったから帯で首を絞めるのやめろ。
 
 俺はトンデモ科学っぽい説明で、古墳の内部にタイムマシンを仕込んで未来に戻る話をでっちあげた。あまり深くは追求しないでくれ。
「ふーん。有希、ほんとにそんなんで作れるの?」
「……作る」
「だが古墳を作るのに、今の土木技術だと最低でも二年はかかる」
「二年ねえ。あたしは今すぐにでも帰りたいところだけど」
「だが子供たちはどうする。いきなり母親を失ったら心に傷を負うぞ」
朝比奈さんに言われたことをそのまま繰り返しただけだが、ハルヒははっとした。帰りたい一心で子供のことを忘れていたようだ。
「そうね。置いてはいけないわ」
「かといって連れても帰れない。あの四人がいなくなったら日本の歴史が変わってしまうからな」
「じゃあどうするのよ」
「それでだな。子供が成人するまではこの時代にいて、それからタイムトラベルをしようと思うんだがどうだ」
「ということはあと十四年はここにいるの?」
「そういうことだ。一旦未来に戻って、タイムマシンが完成したらまた会いに来ればいい」
「分かったわ」
「じゃあ俺はとりあえず古墳を作り始めることにする」
「待って、十四年ってことはあたしは四十一歳?ひどいわ……」
ハルヒはがっくりと肩を落とした。四十一歳といや適齢期過ぎてるな。かといってこの時代で旦那を探すってのも無理だが。
 
 ハルヒは腕組みをしたかと思うとテーブルに突っ伏し、溜息をついた。メランコリー指数が相当な数値まで上がってるぞ。このままだとまた神人が、と古泉を見ると、ハルヒによって力を与えられたこの超能力者は何ごとかを思いついたように口を開いた。
「涼宮さん、僕と一緒に大陸に渡りませんか」
「古泉、唐突をなにを言い出すんだ」
「大陸?中国に行ってなにするの」
「戦乱の時代ですよ。なにをしても許されます」
「なにを、しても、いいの?」
いかん、いかん、ハルヒの目が少女漫画のめんたまのようにキラキラと輝きだした。こいつがこの目をするときには決まってまずいことが起こる。
「涼宮さんは慣れない様式の生活に、ストレスで参ってるのだと思うんです。ここは羽を伸ばしてもっと自由に生きるべきかと」
「そりゃいいが、子供はどうするんだ」
上の三人はいいとしても、雄朝津間はまだ小さすぎる。古泉とハルヒは黙り込んだ。
「……この子は、わたしが育ててもいい。あなたが望むなら」
長門が意を決したように口を開いた。膝の上で雄朝津間が眠っている。
「大丈夫か長門」
「……たぶん」
長門がたぶん、と来たか。まあなにごとも経験か。
「そうだな。雄朝津間は長門が好きらしいし」
この時代、皇子は成長すると親元を出されて修行に行かされる習慣がある。長男の去来穂別もそろそろその時期で、勉学と武術を習わせないといけないようだ。十歳を超えたまんなかの二人もそろそろ考えないといけない。
「分かった。子供は俺と長門と、それからおばあちゃんの朝比奈さんで引き受けることにしよう」
「まあキョンくん、おばあちゃんだなんてひどいわ」
「朝比奈お姉さん、子供たちをお願いします」
「分かったわ。わたしの教育は厳しいですよ」
朝比奈さんはふふと笑ってみせた。
 
 俺たちで勝手に子供を引き取る話になっちまったが、ハルヒの気持ちはまだ迷っているようだった。
「ほんとに?ほんとにいいの?」
「お前の笑った顔のためならなんでもしてやるさ」
「まつりごとはどうするの?」
「そういや、皇后の辞任ってないよな。死に別れでもしないと位は譲れないはずだ」
「もういいわ、死んだことにしましょう」
いくらなんでもそりゃむちゃだぞ。
「あたしはもう貴族の生活から開放されたいのよ」
俺たち四人はうーんと唸った。ハルヒが死んだことになったら国中が大騒ぎにならないか。
「仕方ないな。死んだフリするか」
「ええ、いいわ、死んだフリなら得意よ」
 
 ほんとにこんなんでいいのだろうかと何度も頭をひねるような筋書きだが、とりあえず磐之媛皇后は死んだことにして、ハルヒ本体は旅に出るということになった。
「古泉くん、行きましょう大陸に。戦場で思い切り暴れてやるわ」
ひさびさに見る、口を半月の形にして笑うハルヒの上機嫌な顔だった。俺はこれが見たかったんだな。
 
 とはいってもだな、子供を残していくとあってやっぱり心配は尽きないらしい。翌朝ハルヒは子供たちを集めて話をしていた。
「みんな、ちょっと話したいことがあるの。大事な話よ」
雄朝津間はたぶん分からないだろうが、長門に抱かれて聞き入っている。
「母上、大事な話とはなんでしょうか」
「え……と、なんていうかつまり」
お母さんは今から中国に渡ります、なんて言えるわけはないわな。
 
「あのね、昨日、夢を見たの」
「どんな夢ですか母上」年長の去来穂別が興味津々に尋ねた。
「あたしは川の土手で裁縫をしてたの。そしたら向こう岸に牛を飼ってる人がいて、手を振っているの」
どっかで聞いたような話だな。
「その人は誰ですか」
「あたしが小さい頃に会った大事な人で、名前も顔も知らないんだけど、こっちにおいでって手招きしてるの」
「それはもしかして兄上でしょうか」
「キョンが?ぜんぜんちがうわよ、プッ」
そこで笑うこたあないだろ。
「母上、その夢はどんな意味を持つのでしょうか」
「これはあたしへのお告げなの。向こうの世界にあたしを待ってる人がいて、そろそろ帰ってきなさいっていうことよ」
「どこへ帰られるのですか」
ハルヒは答えに詰まった。
「あのね、黙ってたけど、ママはここで生まれた人間じゃないのよ」
いくらなんでもママはやめませんかママは。なら俺はパパかよ。って未来から来たとか言い出すんじゃないだろうな。
 
 ハルヒは腰に手をあてて天を指差した。
「ママは……ママはね、お月様から降りてきたのよ」
おおーぅ、と三人が感動して声を上げた。お前はかぐや姫か。
「そろそろ月に帰らないといけないの」
「は、母上、それではもう会えなくなってしまうのですか」
「たまには帰ってくるわ。そうねえ、年に三回くらい」
その三回ってのは盆と正月とゴールデンウイークか。月の世界のスケジュールも現実的過ぎて夢がないな。
「それでね、月に帰るために死んだフリするけど、ほんとは生きてるから。心配しないでね」
それを聞いてまんなかの二人はハルヒに抱きついたが、去来穂別はさすが長男だけあって動じなかった。これから大和を背負って立つ太子だからな。
「母上はほかの人とはどこか違っていると思っておりました。月世界の人だったのですね」
「そ、そうなのよ。あたしは月の世界の女王様なんだから」
「もしかして仲姫お姉さまもそうなのですか」
「そ、そうよ。みくるちゃんはウサギのかっこして踊ってるの」
朝比奈さんが苦笑していた。お前が女王様で朝比奈さんはバニーガールか。それは間違ってるとは言えないがちょっとひどくないか、無慈悲な女王様。
 
「ブルータスよ、お前もか。ううっ。こうかしらね」
「ちょっとリアリティに欠けますね」
「今月今夜のこの月をぉ、きっとおまへの涙で濡らしてみせる」
「雰囲気がちがいますね。かなり」
ハルヒと古泉が芝居の練習にしてはやけに気の抜けた遊びをしていた。
「なにやってんだお前ら」
「死んだフリの練習よ。人生最後の瞬間を演じるんだから、迫真の演技でやんないとね、うぐぐぐ、毒をもられた……バタ」
ハルヒが倒れたり起きたりしているのを見て、子供たちが笑いころげている。俺がお触れを出せばそれで済むんだから、なにもそこまでしなくても。
 その日一日中、ハルヒの死んだフリをするリハーサルが続いた。あんまり続けてると子供にトラウマを与えないかと心配したが、まあ楽しんでるようだし、いいか。
 
 数日して俺は高津宮に帰って仕事に戻った。長門は雄朝津間の世話で筒城宮に残った。ハルヒの出発の準備ができたと書簡が届いたのは、それから二週間後のことだった。俺は打ち合わせどおり、皇后崩御の知らせを出した。家臣も庶民も一様に驚いてはいたが、俺が黙って妃を召したので皇后が怒って別居していたことは皆知っているようだった。お若いのにまったく惜しいことですと口々に言った。
 
 俺は大臣に大喪の礼の準備をさせ、従者を一人だけ連れて筒城宮に行った。ハルヒの死んだフリがばれていなければいいが。などと心配したのは杞憂だったらしく、ハルヒは祭壇の上でじっとしたまま動かなかった。長門メディカルにより気絶しているらしい。
「ハルヒは気絶しているのか」
「……眠っている。遮音フィールドを展開済み」
なるほど、会話は聞こえてないようだ。ハルヒは白装束をまとって眠っていた。面と向かっては言えないが、こうやって見るハルヒは美人だった。黙ってりゃふつーに美人に見えるんだよな、こいつは。口調にやたらトゲがあるからなかなか男も手をこまねいてしまうんだ。なんて思ってるとハルヒの眉毛がピクと動いて焦った。
 親族の弔問客もあるし、まあ今日一日はこのままの姿でいてもらおう。息子たちは喪服を着せられ、複雑な表情をしていた。ママはちゃんと生きてるからなと説明しても、中の二人は泣きそうな顔をしていた。俺たちの少しばかり非常識な事情に付き合わせてしまってすまん。
 
 弔問客が帰った後、俺は侍女と従者を休ませてハルヒを起こした。
「ぷはあああ、息を止めるのにも限界あるわ」
まさかお前、一日無呼吸だったのかよ。メタボリックの末期じゃないのか。
「んなわけないでしょ」
「母上、生きてたんですね」
息を吹き返した母親を見て、子供たちは安心したようだった。
「子供にしちゃ心境は複雑だろうな」
「もう、あんたたち、泣かなくてもあたしは死なないってば」
ハルヒは子供たちを抱きしめた。
「ハルヒ、いっそのこと連れて行ったらどうだ」
「無理よ。この子達はこれからの日本を背負う立場なんだから」
「そりゃまあ、そうだけどな」
「ちゃんと帰ってくるから。泣かないで待ってなさいね」
今から月に帰るという母ちゃんを前にして泣かないでいられるとしたら、よっぽど自立心の強い子に育つだろう。まあ自立心が強すぎても困るんだが。その俺の予感が当たったのかどうか、この四人の支配する時代は戦が絶えなかったそうだ。母親がこれだからな。
 
「みくるちゃん、ちょっと手伝ってくれない?」
「なにかしら?」
ハルヒは懐から合口を取り出した。女用の飾りのついた小さな刀だ。鞘からスラリと抜き取り、朝比奈さんに渡した。
「す、涼宮さん、これでなにをするの?」
「髪をばっさりとやってちょうだい」
朝比奈さんは力士の断髪式に立ち会ったような、神妙な表情をしていた。
「ほんとにいいの?」
「戦場では邪魔になるだけだから。キョンくらい短くしてちょうだい」
せっかくのさらりとした髪なんだから、せめてボブカットくらいにしとけばいいのに。
「いきます!」
ドスを握り締めた朝比奈さんは、ドスの効いた声でひと声叫んでザクザクと長い髪を切り始めた。ぱらぱらと黒い髪が散っていく。せめて最後にポニーテールにしてほしかったな。
「何言ってんの。男ばかりの戦場で髪長くしてたら最初に襲われるでしょ」
バッサリと短くなったハルヒは高校の頃を思い出させた。あれは宇宙人対策のはずだったが、今度は自分が月に行くはめになるとはな。いや、行かないけど。
 
 ハルヒは自分の髪をひと房ずつ取り、紐で束ねて子供にひとりずつ渡した。
「これがあたしだと思って大事に取っておいてね」
子供たちは神妙な顔をしてうなずいた。それって遺髪か。
「それからこれはキョンと二人に」
「俺にくれてもしょうがないだろう」
「いいのよ、記念だから取っときなさい。もしあたしが身元不明にでもなったらそのDNAが証拠になるから」
「なに縁起でもないこと言ってんだ」
まあせっかくの古墳時代のハルヒの髪なんで三人は受け取った。
 つんつんと髪がはねたイガグリ頭みたいになったハルヒは、男物の衣装に着替え、革を鋲で綴じた鎧を着けた。古泉の剣をシャリンと音をさせて抜いた。
「どうよこの勇ましい姿」
「自分で言うか。まあ、似合ってるが」
「お似合いですよ」古泉と朝比奈さんがうなずいた。
「さあて、湿っぽくなったところでそろそろ出発しようかしらね」
「もう行くのか。せめて大喪の礼が終わるまでいてくれよ」
「自分の葬式なんかに付き合うほどセンチじゃないわよ。ちょっとシャバの空気を吸ってくるわ」
せめてみんなでお別れの宴でもやってからにしろと薦めたのだが、ハルヒはさっさと大和の国を出たいらしい。
「古泉くん」
「なんでございましょう」
「いざ、出陣よ」
 
 桟橋でハルヒは子供たちに向かって言った。
「ねえみんな、月にウサギの形が映ってるでしょ」
子供たちはうなずいた。
「あれを見たら、あたしのことを思い出してね」
ハルヒは月に照らされながら、はるか西国を目指して旅立っていった。着替えも家財道具もいっさい持たず、従者は古泉ひとりだった。去っていく船の上から、三人の息子と長門に抱かれた雄朝津間にいつまでも手を振っていた。小さくなっていく二人の影を見ながら、いっそのことあいつらくっついてしまえばいいのにと思ったことは内緒だ。
 
 ハルヒが中国古代史史上、どんな活躍をしたのかは俺の知るところではないが、たまに届く古泉の書簡を読んで俺はワナワナと震えざるをえなかった。ハルヒが将軍になっちまうというとんでもない歴史が展開されるのだが、それはまた別のときに話そう。
 
 それで歴史上、ハルヒは、もとい磐之媛皇后は西暦三九七年六月に死んだことになっている。
 
 この時代は墓ができてから葬式を行うのが慣わしだ。墓といってもでっかい山のような陵墓だから完成するまでに数年かかる。それまではモガリと言って、仮の葬儀みたいな儀式をやるらしい。
 磐之媛の遺体は藁で作った人形を布でぐるぐる巻きにしてそれらしいのを用意した。仮にも皇后だ、誰も中身を確かめたりせんだろう。
 
 俺は鶴屋さんを訪ねた。書簡を送ったので磐之媛の訃報はすでに知っているはずだ。
「さようか、かわいそうに。かわいそうに」
鶴屋さんはホロホロと泣いた。なんだかすごく悪いことをした気がする。
「あれは幸せとは程遠い人生であった。残る子供たちには母親の分も幸せに生きてほしいものよ」
いえ、本人は幸せの真っ最中だと思いますよ。今はね。
「大鷦鷯、折り入って頼みがあるのだが」
「なんでしょうか」
「余が死んだら墓をイワにゃんの隣に作ってたもれ」
俺は青くなった。
「そんな、気長様にはまだまだ長生きしていただかなければ」
「人はいつかは死ぬものじゃ。そのときが来て頼み忘れていたでは困るでな。二人の陵墓を並べて築いてたもれ」
「分かりました。そのときが来たら、そうしましょう」
「いやいや、もう築き始めていい頃じゃ」
鶴屋さんはまじまじと俺がやった腕時計を眺めた。なんとなく、自分の寿命が残り少なくなっていることを気にしているようでもある。
 
 生きているうちに建てる墓を寿陵というらしい。長生きを願っての墓みたいなものか、古代人の考えることはよく分からん。俺は古泉の知り合いという百済の建築家と、正しい日本史を知っている長門を連れて、墓をどこに建てるかあちこち視察にまわった。
「長門、おばあちゃんの墓ってどこになるんだ?」
「……それは」
と口を開きかけて、
「……気長足姫の希望を聞くといい」
と言った。なんだか意味ありげだ。俺はいちおういくつか候補を選び、墓の大きさやらを検討して図面を起こしてもらっていた。
「気長様、石津原という土地は海が近くて石を運ぶのに便利なんで、あそこに決めました」
「ああ、それはどうであろう。余の望むのはそこではなくてな……」
今になって変更は困る。もう土地を確保しちまったのに。
「じゃあどこなんです?」
「ええ、つまりな……」
鶴屋さんはなぜか頬を染めて、言いにくそうにしていた。
「大鷦鷯、ちょっと、こっちへ」
俺は鶴屋さんの口元に耳を寄せた。
「あのな、狭城盾列に頼む」
「サキノタタナミ?ですか」
「これ、声が大きい」
「なぜそこがいいんです?」
「ええと、つまりその、な……分かっておくれ」
「ごめんなさい。分かりました、そこにしましょう」
なんだか非常に言いづらそうにしているのを聞き出すのも悪いと思い、とりあえず承諾してしまった。狭城盾列って人に知られるのが恥ずかしい場所なのか。
 
 狭城盾列ってどこだろうと長門に聞いたところ、奈良の筒城宮の南に稚足彦が眠る陵墓があるところらしい。鶴屋さんの旦那にあたる足仲彦の墓は西へずっと離れた場所にあるのだが、そこではないようだ。
 聞けば、鶴屋さんは旦那よりも叔父の稚足彦のほうが好きだったのだという。結ばれなかった相手に、せめて墓だけはそばにいたいとの切ない想いがそう望んだのだろう。俺は女手ひとつで大和朝廷をきりもりしてきた鶴屋さんの、そういうけなげな一面が好きだ。
 
 ということは磐之媛と鶴屋さんと稚足彦の墓が三つ並ぶことになる。もう確保しちまって土台を作り始めてる石津原の土地はどうしたものか。石津原ってのは俺がしばらく住んでいた住吉宮の南で、古泉に鷹を飼わせていたところだ。百舌野原ともいうらしい。
「ああそうだ、俺が自分の墓を作ればいいんだ。それが大仙公園になるはずだ」
ひとりごとが聞こえたのか、長門がうなずいていた。三つ同時に建設をはじめるのは財政的にかなりきつい気がするが、とりあえず磐之媛陵と鶴屋さんの寿陵を先に作ろう。
 
 俺は百済の建築士を連れて狭城盾列に行った。東と西を山に挟まれた、広い盆地のまんなかくらいにある。ここって確か平城京があったところだよな。この時代から見ると未来のことだが。
 長門に正確な距離と方角を測ってもらい、長さ二百十九メートル、幅百二十四メートルの土地をハルヒの墓として確保した。そこから二キロばかし西のほうに長さ二百七十五メートル、幅百九十五メートルの土地を鶴屋さん用に区切って旗を立てた。こりゃでかい墓だわ。
 建築士に木の板に鍵穴みたいな図を描いて見せて、だいたいこんな形で頼むと言った。設計やら工事のことはその人に任せて、俺と長門は高津宮に戻った。磐之媛陵が完成するまでは葬儀もできないしな。
 


 
人名など:
 
磐之媛(いわのひめ)
大鷦鷯(おおさざき)
去来穂別(いざほわけ)
雄朝津間(おあさづま)
 
八田(やた)
気長足姫(おきながたらしひめ)
稚足彦(わかたらしひこ)
足仲彦(たらしなかつひこ)
 
大隅宮(おおすみのみや)
高津宮(たかつのみや)
筒城宮(つつきのみや)
住吉宮(すみのえのみや)
狭城盾列(さきのたたなみ)
 


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