決意のベア・クロー
孤島の中央に位置する火山。
その頂上に神妙な面持ちで佇む一人の人物がいた。
全身を黒づくめの配色に包み、表情が見えにくい鉄の仮面で顔を隠した男。
ファイティングコンピューターの異名を持つ正義超人、
ウォーズマン。
それが彼である。
「まさかこんな馬鹿げたバトルロワイアルに参加させられるとは、思ってもみなかったぜ。
……だが、残念だったな有富とやら。オレのやるべき事はもう決まっている!!」
目を覚ました際に同じ広間にいた少女がそう呼んでいたこの殺し合いの首謀者。
超人である自分を易々と拉致した手腕には驚愕せざるを得なかったが、それ以上にウォーズマンを
戦慄させたのはあのオレンジ色の胴着の男と彼の呼び出した巨大なヒグマとの一戦だった。
一見しただけでかなりの実力者だと判断できた男を、あのヒグマは易々と惨殺したのである。
しかも彼を殺害した際の最後のあのムーブは――――
「(あの技……まるでオレのスクリュードライバーやマンモスマンのビッグタスクドリル、いやそれ以上に
匹敵する威力だった。そしてあのポテンシャル、あれはもはや野生動物などという生易しい物じゃない。
完全に超人の物だ!!)」
さらにこの場に移される前に最後に有富が言っていた発言。
『彼ら』に喰われる前にゲームを成立させて生き延びろ。
それはすなわちあのヒグマと同等かそれ以上の実力のヒグマが複数いる事を意味する。
普通の人間ならこの理不尽な殺し合いに抗う事を諦めてしまうだろう。
―――――だが彼は違った。
「確かにお前の用意したヒグマは恐るべき力を秘めている。まともにぶつかればオレとて勝てる保証もないだろう。
だがこの世にはそんな暴力をも超える力があるという事を忘れている! 『友情パワー』という力をーっ!!」
かつて何人もの相手を血祭りに上げる残虐超人だった彼を変えるきっかけとなったもの。
キン肉マンとの36分40秒に渡る試合を経て手に入れた『友情』という力。
正義超人へと転身した後も、その力は悪魔超人や完璧超人といった強敵との戦いにおいてウォーズマンを
常に支えてきた。
『この世に完璧な物があるとしたらたった一つ、それは正義超人の友情だ』
キン肉マンとの友情に
目覚めた完璧超人ネプチューンマンが残した偉大な言葉である。
確かに自分一人の力ではこの殺し合いを打破する事は不可能だろう。
だが自分が意思に反して拉致されてきたように、望まぬ戦いに放り込まれた者も少なくないはず。
彼らと協力すれば、この島からの脱出も可能かもしれない。
「こんな状況だからこそ、オレがみんなから教わった友情が試される時なんだ! キン肉マン、テリーマン、
ラーメンマン、ブロッケンjr、ウルフマン、バッファローマン、ジェロニモ、アシュラマン、ネプチューン
マン、そしてわが師ロビンマスク! 今だけオレにこの戦いを止める力を貸してくれーっ!!」
自身を奮い立たせるために、決意を込めた叫びをウォーズマンは頂上から発した。
その声がこの島にいる者達に聞こえたかどうかは、定かではない。
一呼吸置いたのち。
ウォーズマンは一度座り込み、戦闘準備を整えるべく自身の所持品を確認する事にした。
最初に確認してみたが、どうやら自身の愛用する両手のベア・クローはそのままだった。
まさか自分が『熊の爪』を持っているが故にこの殺し合いに参加させられたのだろうか?
などと冗談のような推測を一瞬するが、すぐに頭の片隅に追いやった。
続いて食料や地図などの基本的な
支給品を確認し、自分が島の中央にいる事を改めて確認する。
そして次にディバックの口に手を入れ引っ張り出した物体を確認して、ウォーズマンは驚愕した。
「ゲェェーッ! これはロビンの鎧!!」
それは自身の師、ロビンマスクの鎧であった。
強大なロビンの持つ力をセーブする枷であり、硬度9のサファイアで構成され、さらにロビン王朝の歴代の
先人達の鎧の破片を紡ぎ作られたその鎧は、いかなる深手を負ってもその痛みを和らげる効果を持つとも
言われている。
だがウォーズマンは驚きはしたものの、ためらう事なくその鎧を再びディバックへと戻した。
「まさかこんなものがオレに支給されているとは思わなかった。だがロビン、今はまだあんたの偉大な鎧を
借りるべき時じゃない。いずれその時が来たらその力を貸してもらうぜ」
そう師に告げるようにつぶやき、残る支給品を確認すべくウォーズマンは手を入れる。
そして引き出された物を見て、彼は今一度驚く事となった。
コーホーという呼吸音を響かせるロボ超人がいたはずの火山の頂上。
だがそこには既にそんな人物は影も形も見えなかった。
その代わり、新たな影が姿を現したのだが。
「クゥーン、クゥーン」
巨大な縫いぐるみのクマ。
そう形容するしかない存在がゆっくりと歩みを進める。
事情を知らぬ者が見たら何事かと思うだろう。
縫いぐるみの名は『ヘルズベアーズ2号・ベルモンド』。
かつて時間超人と呼ばれる悪の存在により改変された歴史において、師の息子ケビンマスクを消滅の危機から
救うべく過去へと渡った未来のウォーズマンが使用したオーバーボディ。
この姿に扮して1号・マイケルことマンモスマンと共にタッグトーナメントへと参加し、数多の超人達と
死闘を繰り広げた光景を覚えている者も少なくない。
無論このベルモンドの中の人もウォーズマン本人である。
この支給品を発見したウォーズマンのコンピューターの出した結論は一つ。
あの凶悪なヒグマ達のひしめくこの島において、連中に襲撃される事無く他の参加者達と接触するのは難しい。
ならば自身もクマの姿となれば、ヒグマ達をある程度欺く事も可能なのではないか。
あくまでも希望の域を出ないが、この状況においては打てる手はすべて打つべきと判断したウォーズマンは
迷うことなく再びベルモンドへと姿を変えたのだった。
ちなみに支給品にはマイケルの分のオーバーボディも入っていたのだが、今は必要ないという事でディバック
に一端しまわれている。
「(見ていろ有富よ! この正義超人ウォーズマンが必ず貴様の下らぬ実験とやらを打ち砕いて見せるぜーっ!!)」
偽りの熊の姿に扮した熊の爪を持つ超人は、月明かりに照らされながら一歩一歩火山を降りて行った。
全ては人類を守る超人として、殺し合いを破壊するために―――――
【E-5火山/深夜】
【ウォーズマン@キン肉マン】
状態: 健康、強い決意
装備:ベア・クロー@キン肉マン、ベルモンドのオーバーボディ@キン肉マンⅡ世
道具:基本支給品、ロビンマスクの鎧@キン肉マン、マイケルのオーバーボディ@キン肉マンⅡ世
基本思考:殺し合いを粉砕し、脱出する
1:まずは仲間を集める
2:ヒグマや殺し合いに乗った者は迎撃する(参加者はなるべく説得したい)
最終更新:2014年09月16日 01:01