進撃の羆
俺、ジャン・キルシュタインは第104期訓練兵団を第六位の成績で卒業し、念願の内地に行こうって俺を待っていたのは!
「殺し合いだぁ!?」
ヒグマとかいう馬鹿でかい猫が蔓延する孤島に連れて来られ、
ヒグマとかいう馬鹿でかい猫に殺される前に全員を殺さなきゃいけないことになった!
俺はとことんツイてないらしい。
明日になりゃ巨人の恐怖からも遠ざかるって日に今度はヒグマとかいうのの恐怖に直面することになったわけだ!
あまりの出来事に呆然としたまま、気づけば森のなかにいた。
そこで俺より少し幼い、ここら辺じゃ見慣れない服装をした男と遭遇。
「にゃ!」
この猫野郎を殺せば帰れるのか?
他の奴も殺さなきゃ帰れないのか?
俺はデイパックの中に入っていて、今は懐に仕舞いこんだブラスターガンとかいうスーパーな光線銃を握りしめながらの自問自答を繰り返していた。
コロしちまおうかと懐のブラスターガンを握りしめた瞬間だった。
毛むくじゃらの巨大ネコが現れやがった。
考えるよりも早くブラスターガンを引き抜いて発射!
ネコ野郎ではなく巨大ネコの額を撃ちぬいたってわけだ。
「グルロオオオオオオ!!!」
しかし、巨大ネコは死ななかった。
そう、目の前のヒグマは!
四メートル級の!
ヒグマ型巨人だったんだよ!
畜生め!
普通に考えればわかるだろ?
こんなでっけえ奴らに、かないっこねえってことぐらい。
ジャン・キルシュタインは溢れ出るSFアトモスフィアにまみれたブラスターガンを握りしめることしか出来なかった。
巨人の恐怖を、この瞬間に初めて味わっていた。
巨人は首筋に存在する急所を的確に貫かなければ死なない。
ヒグマのスピードは人類のそれを凌駕し、ジャンは人が編み出した立体駆動装置を持たない。
ジャンの目の前には死だけがあった。
巨人には勝てない。
その意味を初めて知った。
勝てないということはわかっていたつもりだった。
数字を見れば誰だってわかることだと思っていた。
でも、事実は数字よりもはっきりとしていた。
人間は巨人には、ヒグマには勝てない。
立体機動装置も、刀も、技術も持たない巨人に。
人間は勝てないのだ。
「にゃ……」
ジャンのそばに寄り添うように、
星空凛は身体を震わせる。
凛の目の前にヒグマは動物園の檻の中で不精に動く熊とはわけが違う。
人間をただ喰らう、野生の獣そのものなのだ。
いつものおちゃらけた言葉が出てこない。
天真爛漫を絵に描いたような笑顔も、歪な形で張り付いていた。
「……まさか」
ジャンはある可能性に気づいた。
ジャンが攻撃を行ったにもかかわらず、いつまでたっても動こうとしないヒグマ型巨人。
そんな巨人は得てしてこう呼ばれる。
――――こいつ、奇行種だ!
奇行種とはその名の通り、従来の巨人の動きから逸脱した行動を取る巨人のことだ。
奇行種と一口に言ってもその種類は豊富だ。
ただ、平均から外れている巨人をそう呼ぶに過ぎないのだから。
「にゃ、にゃあっ……!」
「!」
だからこそ、ジャンは凛が悲鳴を上げそうになった瞬間に心臓が飛び出そうなほどに焦った。
ここで硬直以外の行動を取ることで奇行種が襲い掛かってくる可能性を考慮したからだ。
ジャンの取った行動は素早かった。
「にゃっ!?」
凛の小さな身体を抱え込み、胸の中に抑えこむ。
汗の染み込んだ訓練兵団の制服の雄臭が凛の肺に飛び込んでいく。
最初に覚えたものは悪寒。
これは当然だ、ジャンの汗の匂いはお世辞にも香りよいとはいえない。
しかし、鍛えられたジャンの腕力で固定された凛の身体はピクリとも動かない。
時間にして数分、ジャンと羆のにらみ合いが続く。
今にも泣きだしてしまいそうな恐怖に直面していたジャンと対照的に、凛にある変化が訪れていた。
一言で言ってしまえば、男性フェロモンの影響を大きく受けていた。
ジャンが放つ隠しきれない雄臭に、凛の幼い牝が反応しているのだ。
やがて抵抗しようとする意思も抜け、手足から力が抜けていく。
先ほどまで尿を漏らしそうな股間であったが、今では別の反応が現れかねない状況だった。
性に未熟だからこそ見せる敏感な反応が、リンの身体に現れていた。
「……ぐるる……」
そんな中で、ヒグマ型巨人は立ち去っていた。
やはり、このヒグマ型巨人は奇行種。
穴持たずにしろ、巨人にしろ。
人を襲うはずの存在が人を見逃したのだから。
「…………はぁ」
ヒグマ型巨人の背中が見えなくなったジャンは、大きく息を吐いた。
生きた心地がしなかった。
凛を離すことも忘れるほどに、ジャンは安堵していた。
「……っと、わりぃ。少し安心して……!?」
「にゃぁ……」
ジャンが凛を開放すると、そこにあった顔はジャンの本能をくすぐるものだった。
さながらまたたびを吸い込んだ猫のような、気の抜けた表情が凛に張り付いていたのだ。
その凛の姿に、思春期の少年にとっては胸のときめきという形で、ジャンの雄の本能が疼いた。
初恋の感情によく似た疼きであることに気づいたジャンは、顔を青ざめた。
――――お、俺は、俺はホモじゃねえ……!
頭に二人の級友の顔が浮かぶ。
ライナー・ブラウンとベルトルト・フーバーだ。
いつも一緒にいる雄臭い二人を連想すると、すっと高揚が吹き飛んだ。
ホモでない、ジャン・キルシュタインはホモではない。
ただ、星空凛という牝を雄だと勘違いしていただけなのだ。
【ジャン・キルシュタイン@進撃の巨人】
状態:健康
装備:ブラスターガン
道具:基本
支給品、ランダム支給品1~2
基本思考:生きる
※殺し合いに乗ることも考えてます。
※凛のことを男だと勘違いしています。
【星空凛@ラブライブ!】
状態:健康
装備:発情?
道具:基本支給品、ランダム支給品1~3
基本思考:不明
※詳細は後続の書き手の方々にお任せします。
【ヒグマ型巨人】
状態:健康
装備:無し
道具:無し
※巨人のため再生します
最終更新:2014年10月04日 20:24