私がバトロワに巻き込まれたのはどう考えても理不尽でしかない


「ガチの殺し合いに巻き込まれるとか……嘘だろ、意味分かんねぇよ。フィクションの世界だけだろそんなの。
 ましてやなんでこのアタシなんだよ、リア充どもにやらせろよ、どうしてアタシなんだよ……! アタシが何をしたんだよ。
 つーか、バトルロワイヤルってクラスの中で行うもんだろおおぉぉ!! なんでこんな化物ワールドに放り込まれてんだああぁぁぁ!!?」

涙と鼻水を情けなくたれながしながら、不満を絶叫する少女の名は黒木智子
華の女子高生ライフが、まさかのぼっちロード絶賛通過中ということに日々頭を悩ませている、非リア充だ。
そんな一般人な彼女が突然瞬間移動かめはめ波を使える人物とか、それをワンキルするヒグマがわさわさいる場所にいるとか理解不能である。
普通のクラスメートなら、か弱い姿を活かして油断した隙に草刈鎌とかで倒せるっしょ、とか考えてた。
でもこの状況じゃ流石に無理でしょ。もうね、ジャンルが違うよ、ジャンルが。

「チクショウ、死ねってことだろ。考えうる限りの理不尽を総動員してでもアタシに死んでほしいんだろ、クソッ。
 いーよいーよ死んでやるよ。もうこの世界に未練なんてないわ、皆様の望み通りクマに食われてさっさと死にますよ、外道どもが……」

怒りと悲しみを抱きながら智子は歩く、自分を殺すクマを探して。

彼女は本気だった。本気で死ぬつもりだった。
どうせ普通に生きていてもいいことないし、残酷な現実が……むしろ、非現実が自分を殺しにかかってるんだから。
それに抗おうなんて考えるほど図太くない。
おとなしく運命に従って、悲劇の少女として死んでしまおうと思った。

だが……




   ∩___∩
   | ノ      ヽ
  /  ●   ● | 
  |    ( _●_)  ミ テッテレー
 彡、   |∪|  、`\
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(___)   / (_/
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 ∪    (  \
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――こ、コイツにだけは殺されたくない……!!

こんな面白い姿のヒグマに食われるなんてゴメンだ。
コイツに殺られるのは、悲劇ではなくコメディと化すは間違いない。

「ひいいぃぃぃ助けてえええぇぇぇ――!!」

普通の人とは若干ズレた理由で逃げ出す。
当然、身の丈2.5メートルはあるであろう巨大ヒグマは追っかけてくる。
まずクマは逃げるものを追いかける習性があるのだ。
そして何より、人間なんかより遥かに足が速い。
100mを7秒で走るとどこかに書いてある。常人では逃げるのは無理だ。

加えて智子自身の運動神経は人並み以下である。
足場の悪い道をダッシュした彼女は、転んだ。美しいフォームでズサーっと転んだ。

――あ、死んだわこれ。

確信した。
無念を抱いて土を握り締め、死の瞬間を待つ。

――嫌だぁ……。

死を間際にしたスローモーションのような時間に、恐怖が全身を支配した。
あの鋭く尖った爪が体に刺さった時、どれだけの痛みを感じるだろうか。
本当に一瞬で楽になるのだろうか。というより、死んだ先にはどんな世界が広がっているのか。
怖い、死ぬのが怖い。死にたくない。

ザクリ、と肉が引きちぎれる音。

「ひぃぃッ……!」

情けない悲鳴をあげて、そして気づく。

あれ、思ったより痛くないわ、すげぇ。何も感じない。
確かキャンプ中にクマに襲われて電話で助けを求めたけど、結局亡くなってしまった女性の話があったな。
なんか途中から痛みを感じなくなったらしいけど、今私の体にもそういう現象が起きてるのか?




「大丈夫か!?」

全然違った。読者の諸君は登場人物名を見ただけでわかっただろうが、ここで助けがきたのだ。
黒いセーラー服をまとった、自分と同い年くらいの女が、よくわからん武器を持ってクマに斬りかかっていた。

「クマアアァァ!!!」
「なんだコイツ硬ぇ……! 片太刀バサミが通じないなんて……! ていうかどういう鳴き声なんだ!?」
(無駄だ流子、早く私に血を吸わせるんだ!)
「よしわかった!!」

腕輪からナイフを引き抜き、血を"鮮血"へと送る!
説明しよう。纏流子が来ている黒いセーラー服の名は"鮮血"と言い、血を得ることでパワーアップするのだ。
セーラー服は赤に染まり、その形状を戦闘へと特化したものに変えていく!

――神衣・鮮血!!

ビシィッ! と勇ましくポーズを決める。

「(なんてハレンチな格好……ビッチだ、モノホンのビッチが目の前にいる……!)」

戦闘に特化したもの、と表現したが、それは下腹部のスレスレから胸部の7割を露出させた大胆すぎるコスチューム。
唐突に目の前でそんな格好を魅せられた智子はビビった。
内心では、勃起もんですわ、とか思っているかもしれないが、反応は一般人そのものである。

そんな智子などおいてけぼりで、流子はクマに啖呵を切る。

「さっき見た通り、テメェらはとんでもない強さらしいな……。
 でもな、人間だってやるときゃやるんだよぉ! 見せてやる!!」

片太刀バサミを思い切り振り上げ……

「食らえええぇぇぇぇ―――!!!!」

クマに目掛けて斬りかかるッ!!
片太刀バサミの切れ味、叩きつけられる威力、その全てが最大級のものだ!
そしてその一撃……!

パシィンと、クマの手にキャッチされた。

「う、嘘だろ、これでも一切通じねぇのか!?」
(流子、今のお前では歯が立たん、一旦引くんだ!)
「わかってるよそんなこと!!」

戦闘体勢になってから約10秒で撤退を決めた。
ボケっと眺めてる智子を拾い上げ小脇に抱えると、全力で走って逃げる。
しかし前述の通り、クマは逃げるものを100mを7秒の速度で追っかける。
流石にこれでは逃げられない!

「ちょちょちょちょ、追いつかれるぅぅ!! もっと速く走ってぇぇぇぇ」
「チッ、仕方ねぇ、こんな時のランダム支給品だ!!」

流子に与えられた支給品……たまたま与えられた自分の神衣の他に、もう一つ強力なものがあった。
その名も、ピ○ポ君! 警察官だ!!

「市民の平和はボクが守る、君たちは逃げたまえ!」
「おう、どうも!!」

ピ○ポ君がクマを引き止めてる間に、スタコラサッサと疾走する。
女生徒一人を抱えてるとは思えないほどの速さ、纏流子だからこそ成せる技である。



ハァハァと息を切らせ、地面に座り込む。
先ほどの卑猥な格好を解く。鮮血は元の黒いセーラー服へと戻った。
龍虎は深呼吸して体を少し冷まし、クマに襲われてた少女に話しかける

「ここまで来りゃアイツは追ってこないだろ……怪我は無いか?」
「ぇ……ト……」
「目の下真っ黒だな……まさか、目を殴られたんじゃ」
「ぁっ……ぃぇ、ダイジョブでs……も、元々です……」

面識の薄い人と面と向かって話すのに慣れておらず、智子はあがってしまい、声がよく出なかった。
しかし、脳内では流暢に呟く。

「(くそぅ、まさかビッチに、ていうか痴女に助けられるとは……。ビッチにもいいやつがいるもんだな……。
 それにしてもどうしよう、さっさと死のうと思っていたのに、気持ちが揺るいでしまった。
 とりあえずはこの人に着いていけばいいのかな……)」

恩人にビッチビッチ失礼極まりないが、格好で判断するタチなので仕方ない。
口に出さなければ何を言っても問題ないのだ。

「おっと、自己紹介がまだだったな、アタシは纏流子だ」
「エト……黒キ……トモコでス……。そのぉ……纏サンに、着いて行ッテモ……?」
「よし、黒木智子か。名前は覚えとくぜ、そんじゃあアタシは行くよ」
「マ、待っテ……待ってぇぇぇ」
「冗談だ、一緒に行こうぜ。そんな緊張することねぇだろ、普通に話せよ、な」

ニコリ、と優しく微笑みかけ、右手を差し伸べる。
智子の情けない表情が緩み、目がジワリと滲んだ。
そうして流子の右手を取り、ゆっくりと立ち上がる。

「(これホント、惚れてまうわァ……)」

ここに、珍しすぎるコンビが誕生したのであった。





なお、その頃のピ○ポ君の勇姿をオチとしてご覧頂きたい。


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   ヽ.      V-─- 、  , ',_ヽ..  |   |
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         l     ヘ‐--‐ケ   }  /   ’,∴ ・ ¨ |    ( _●_)  ミ
         ヽ.     ゙<‐y′   //   、・∵ ’   彡、   |∪|   ミ
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  |    ( _●_)  ミ/   ,,・_   ヽj  ,;:;:;ノ' ⊆) '⌒` !
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【ピ○ポ君@支給品 死亡】




【B-8 森/深夜】

【黒木智子@私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!】
状態:安心、膝に擦り傷
装備:なし
道具:基本支給品、ランダム支給品1~3
基本思考:纏流子に着いていく


【纏流子@キルラキル】
状態:健康
装備:片太刀バサミ@キルラキル、鮮血@キルラキル
道具:基本支給品
基本思考:殺し合いに対する抵抗


クマー@穴持たず】
状態:健康
装備:無し
道具:無し
※鳴き声は「クマー」です
※見た目が面白いです(AA参照)

No.025:ひぐましのなく頃に 投下順 No.027:目覚め
No.025:ひぐましのなく頃に 時系列順 No.027:目覚め
黒木智子 No.050:流星
纏流子
クマー
ピ○ポ君 死亡

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最終更新:2014年10月06日 18:03