間桐雁夜が目を覚ました時、そこは、いやが応にもこの一年で見慣れてしまった、間桐家の蟲蔵だった。
壁にもたれかかったまま意識を失っていたらしい彼の前には、紫色のワンピースを纏った幼い女の子が、心配そうな視線を向けて佇んでいた。
「やぁ、桜、ちゃん……」
「おじさん……?」
「助けに来たよ……。もう大丈夫……。聖杯戦争は終わりだ……、ヒグマも、ここまでは追って来ない……」
ヒグマの島から脱出し、気力だけで実家に辿り着いていた間桐雁夜は、遠坂桜の手を引いて、冬木の公園まで歩んでいった。
そこには、あらかじめ電話で呼んでいた、桜の姉である凛と、その母の遠坂葵が彼らを待っている。
「あっ……! 桜ぁ!!」
暖かな日差しの降り注ぐ公園の中で、妹に気付いた遠坂凛は、涙を流して彼女の元に駆け寄っていった。
「桜……! 桜ぁっ……」
愛しい妹を抱きしめて、凛はすすり泣く。
分かたれていた姉妹の再会に、雁夜は微かに口元をほころばせていた。
「雁夜くん……」
「葵さん……」
そして彼の背後からは、かつて間桐雁夜が恋し、今でも思い続けている、遠坂葵が語り掛けてくる。
「おじさん……」
「雁夜おじさん……ッ!」
桜と凛が、葵と見つめ合っていた雁夜に呼びかける。
少女の元に向き直って、彼は微笑んだまま、少女たちの次の言葉を待った。
「……なんでもっと早くに、私を出してくれなかったの……?」
「え……?」
感謝の言葉が返ってくることを期待していた雁夜は、光の無い瞳で涙を流す桜の声に、愕然とした。
その彼女を抱きしめたまま震える凛は、壊れてしまった妹を精一杯抱きしめ、雁夜に向けて炎のような声を吐く。
「桜がこんなになるまで一年も……。間近で見ておきながら、おじさんは何もしなかったんでしょう!?
桜が虫に壊されていくのを、愉しんで見ていたんでしょう!?」
「ち、違う!! 何を言ってるんだ凛ちゃん!! 俺は、あの汚らわしい蟲蔵から桜ちゃんを救い出してあげようと必死で……ッ!!」
「……それならばなぜ、それが分かってすぐ時臣や私に、桜が受けている仕打ちのことを、伝えてくれなかったの?」
必死に反駁する雁夜の喉元に、背中から遠坂葵の冷たい言葉が押し当てられた。
耳元に近寄ってきた葵の声は、震える雁夜の身の毛をよだたせる。
「あの人だって、鬼畜生じゃないわ。魔術師としての桜の成長を願ったあの人が、娘をただの道具として扱われるような仕打ちを許すはずがない」
「だ、だって……、あいつが俺の言うことを信じるわけないだろ……? それに、未遠川でやりあった時、あいつはどちらにしろ娘を養子に出すことが確定してると言った……!」
「そんな話を聞いたら、私があの人を説得してでも、家族全員で確認のために間桐家に乗り込んでました。
それに養子縁組の話は、単に遠坂には間桐の盟約があったから優先しただけで、遠縁のエーデルフェルトとか、もっとましな預け先はいくらでもあります。
……このことを早くに話してくれれば、雁夜くんが実家を嫌って出奔した理由も、わかったのに……ッ」
一年間ずっと心に懸けてきた女性たちの涙に暮れた姿を見て、雁夜はただ立ち尽くすことしかできなかった。
――違う。違うんだ。俺が見たかったのはこんな光景じゃない!
――俺のしてきたことは、こんな結末を迎えるような所業だったのか……!?
「まぁ結局ですね、カリヤの奮戦は出発地点が間違っていたのですよ」
「――その声は!?」
震える雁夜に呼びかけたのは、黒いスーツを身に纏った長髪の美男子であった。
遠坂葵は二人の娘を連れて、その男の傍らに立つ。
「……大体の事情は、ランスロットさんから聞かせてもらったの。それでも雁夜くん。
やっぱりあなたは、根本的なところがいけないと思うわ」
「ラ、ランスロット――!? ってことはお前やっぱり
バーサーカーか!? お前龍田さんにやられたはずだろ!?」
「その通りですが、どうもうちのダメマスターが心停止で死にかけてる上に頭の悪い幻覚を見ているようなので、聖杯にくべられる前に寄ってみました」
「幻覚!? え、これ夢!? それに聖杯って……!? え、あのヒグマ島で聖杯機能してたの!?」
「夢に決まっているでしょう。ただの知人の子が『ありがとう雁夜お父さん』とか口走りかける光景なんて。流石にその妄想は私でもヒキます」
「雁夜おじさん!! 私と桜のお父さんはどう転んでも時臣ただ一人だからね!?」
「雁夜おじさんそんなこと考えてたんだ……。虫よりキモチワルイ……」
「うわー!? うわーッ!? やめて、やめて! 確かにそんなことを期待していなくもなかったことは認めるが!!」
狂化していたころの面影が全くないランスロットが責め手に加わったことで明かされてしまった自身の心情の反射に、雁夜は頭を抱えて悶絶する。
「あと聖杯ですが……、確かにこのヒグマ島には聖杯があるようです。既に私を抜いて4体のサーヴァントがそこに吸収されています。恐らく残っているのはキャスターと、アサシン……」
「キャスター!? アサシン!? そいつら二人とも第四次聖杯戦争で俺たちが誘拐される前に脱落したじゃないか!!」
「ですから、この島に形成された聖杯より、新たなサーヴァントが召喚されているようです……しかもそのマスターは、魔術師ではない」
「魔術師じゃ、ない……?」
呟く雁夜に向けて、ランスロットは大きく頷いた。
「そうです。ですので、私が脱落した後もカリヤさえ生き残っていれば、あなたは聖杯の本来の使い方を知らないだろう他のマスターたちを躱して聖杯を持ち帰り、夫を亡くされたこの奥方やご息女方に、正しく弁明できるチャンスがあります」
「おぉ……、って、ちょっと待って!? 葵さん、時臣死んだの!?」
「ええ……。あなたたちがいなくなった後、冬木の自宅で、何者かに心臓を一突きにされて死んでいたのが見つかったわ」
「背中から、父さんの大事にしてたアゾット剣で不意打ちしたみたいなの……。絶対に、許さない……!!」
突然突き付けられた時臣の死という事実に、雁夜と桜は驚愕する。
しかし、遠坂葵と凛が怒りと悲しみに震える様は、夢の中だけのものとは到底思えない。
「ある意味、カリヤは誘拐されて幸運だったかも知れません。犯人は死体に防腐処理をかけていたらしく、カリヤを犯人に仕立て上げようとした偽造文書も残っていました」
「本当なのか……。それじゃあ――……」
――俺が、時臣の『位置』に、成り代われる……?
雁夜は、自分の脳内に真っ先にその思考を浮かべてしまった時、周りから突き付けられる4対の白い視線に気づいていた。
彼の思考は、その表情からダダ漏れである。
ランスロットはその長髪の隙から、自らの情けないマスターをじっとりとねめつけていた。
「浅ましいですよカリヤ……。
家督放棄。ストーカー。貯金/Zero。思い込み。殺害未遂。ロリコン……。
法治国家にてやってはいけないことをほぼ完遂した御仁がまだそんな馬鹿げた妄執を抱くのですか。
御三方の反応は先程痛感したばかりでしょう」
「う、うるさいうるさいうるさい――!! お前だってセイバーに、女一人にかまけてあそこまでトチ狂ったんだろぉ!?
元はといえば俺がこんな瀕死の夢見てるのだって、お前が周りの迷惑を考えずに暴走したからだろうが!!
このまま、どうせ俺は死んじまうんだろ――、……ッ!?」
自らの狂ったサーヴァントに叫びながら、最後に雁夜は気づいた。
――その発言は、そっくりそのまま自分へと返ってくるということに。
ランスロットは、悲哀を浮かべて佇む遠坂家の女性たちを指し、雁夜に問う。
「……カリヤは、葵様や桜様に、『瀕死の夢』を見ていただきたいのですか?」
「いや……。そうじゃない……!」
「ならば、他者の心境をよく考え、私の凶行を反面教師として下さい。これまでロクに会話もできなかった不肖のサーヴァントが、最後まで魔力供給のヘボかったダメマスターに捧げる言葉です」
「くそお前……、何も言い返せねぇ……」
震えながら唇を噛む雁夜の手を、遠坂葵がそっと握る。
夢の中とは思えないそのリアルで温かな感触に、雁夜は思わず自分の鼓動を意識した。
「雁夜くん……。あなたでは、時臣の替わりは務まらないわ。というより、あなたも時臣も、どちらも掛け替えのない人なの」
「葵さん……」
「私には、これくらいしかしてあげられないけど……」
葵は、その黒髪をさらさらと陽光に靡かせて、柔らかな唇を雁夜に寄せた。
引き攣れ乾いた彼の口元に、そっと彼女の唇が触れる。
舌が絡み、雁夜の口腔を芳醇な香りの液体が満たす。
驚きはすぐに消えた。
身を燃やすような興奮に会陰から頭頂までを貫かれた雁夜は、貪るように葵の口を吸っていた。
彼を労わるように溢れる温かな液体を、彼は喉を鳴らして飲み込む。
――甘ぇえ……! 葵さんの唾液、ジュースみたいに甘ぇえ……ッ!!
葵の体に赤く痕がついてしまうくらいに強く彼女を抱きしめていた雁夜は、たっぷりと一分近くそうした後、ようやく葵の唇を離した。
荒く火照った息を吐く雁夜に、葵は微笑む。
「……ほら、聞こえるでしょう。あなたを助けようとしてる思いが」
「え……っ?」
鼓動。
雁夜の体の中に、心臓の波が巡る。
かじかみ震えていたその波は、次第に深く、強く。
静かに彼の体を回り始める。
「雁夜くんの帰りを、私たちは待ってるわ。『あなたが好きになった他人のこと』――、その時私に教えてね」
「あ、葵さん、桜ちゃん――! これは――!? 俺は、助かる、のか――!?」
次第に指先にまではっきりと熱を帯びてくる自分の体に、カリヤは慄いた。
彼の前でランスロットが、グッと右手で握りこぶしを作って見せる。
「助かりますよカリヤは……。これほどまで単細胞で分かりやすい執念を抱えたコケのようなお方が、そうそう死ぬわけないでしょう」
「褒めてねえよなそれ!?」
「大丈夫、私のマスターは最弱ですから!!」
「なんだそれ!?」
雁夜に混乱を与えるランスロットは、嬉しそうに両手を広げ、彼に向って語る。
「人の生まるるや柔弱なり、その死するや堅強なり。
万物草木の生まるるや柔脆(じゅうぜい)、その死するや枯槁(ここう)す。
ゆえに堅強なる者は死の徒にして、柔弱なる者は生の徒なり。
ここを以って兵強ければ則ち勝たず、木強ければ則ち折らる。
強大なるは下に処り、柔弱なるは上に処る――。
如何に硬い剣や木刀を用いても、柔軟性がなければ敗北します。
カリヤは弱い。ですがだからこそ、小兵ならではのしぶとい戦い方で、あなたは生き残れます!!」
褒められているのかけなされているのか分からない言葉の中にも、雁夜は確かに自分のサーヴァントからの、心底嬉しそうな気遣いを感じ取って息を飲んだ。
その彼の手を遠坂凛が握り、強く眼差しを上げる。
「雁夜おじさん……。私たち、待ってるよ。おじさんのお土産を――!」
「お土産――、ああ。『聖杯』と、『桜ちゃん』……。絶対に持って帰る。
『凛ちゃん、桜ちゃん、葵さんがみんなで、また幸せに暮らせるように』って、お願いするから――!」
凛の言葉に思い出すのは、自身が出奔してから、身を粉にしてルポライターとして働いていたころの意地だった。
自身が抱いた願いは、断じて『時臣に成り代わり彼女たちの夫や父になること』ではない。
遠坂葵や凛、桜の『笑顔を見る』ことであった。
雁夜自身が時臣の替わりになることが全く彼女たちの幸福につながらないことが明らかになった以上、もうその優先順位は明らかだ。
桜ちゃんを救い出す――。
それこそが、雁夜の本当の目的だったはずなのだ。
「……いつも空回りだけど、『雁夜おじさんにも、いいコトがありますように』――」
「桜ちゃん……」
もう一方の手を、遠坂桜が握っていた。
目の前の少女の笑顔が、雁夜の心臓というエンジンを回す。
眼を閉じた胸で湧き立つ興奮が、日差しのように彼を温めていた。
「――ありがとう、本当にありがとう、みんな……!」
「感謝は、
目覚めた先の皆様に言うのですねカリヤ。私は、お先に失礼します――」
ランスロットの声に前後して眼を開けた雁夜は、ただ一人、何もない空間に佇んでいた。
仄暖かいその場所から、日差しの差す方へ、彼は宙を泳いだ。
強い鼓動と、葵の唇と、凛と桜の柔肌を感じて、彼は全身を振るった。
――俺は帰る。
――きっと帰る。
∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴
「――う、本当にありがとう、みんな……」
「ま、間桐さん! やった、眼を覚ましましたよ!」
「……殊勝な第一声だわ。シーナーの治療は覿面なのね」
「……本当に心室細動から生き返るんだ。驚き」
雁夜の体は、担架の上にあった。
それの両端を布束とひまわりが持ち上げ、脇から恵が支えている。
彼はそのまま、コケの光だけが照らす薄暗い通路の中を運ばれていたものらしい。
「い、一体、俺はどうなって……」
「龍田がバーサーカーを仕留めた時に前後して、あなたは心停止していたわ。
私とシーナーの見立てでは、刻印虫の死滅が腫瘍崩壊症候群を起こし、高カリウム血症から心室細動に至った」
腫瘍崩壊症候群とは、抗がん剤によってがん細胞が大量に破壊された際などに、主にその細胞内に含まれていた成分が一気に血液に流れ出てしまうことによって引き起こされる諸症状の事を言う。
中でも特に緊急を要するのが高カリウム血症であり、細胞膜電位を変化させて心臓のペースメーカー機能を奪ってしまうその状態は、内臓機能の落ちている雁夜にとっては致命的なものだった。
もし治療に当たっていたのが魔術師だったなら、『魔力回路を代替していた刻印虫が死滅したことによる魔力切れ』だと診断をつけることになり、治療は終了していたところだろう。
しかし、雁夜は僅かながらでも生来の魔力回路をその身に保持しており、また、今回バーサーカーは、魔力切れではなく肉体損傷を消滅の主因としている。
なおかつ、現代医学に『魔力切れ』などという死因は存在しない。
ここから、布束砥信とシーナーという二名の医師が下した診断は、一つだった。
「ヤイコの除細動と共に、シーナーが幻覚でGI(グルコース・インスリン)療法を実施したわ。
彼の持ってた『これ』、オピオイドも含まれてるようだから、だいぶ今楽でしょう?」
布束がポケットから取り出して振ったのは、『バリキ』とラベルに張られた小瓶だった。
ただの栄養ドリンクではなく、麻薬成分を含有したその飲料は、むしろ『糖分』と『鎮痛』が治療に必要だった雁夜にとっては願っても無いものだった。
グルコース・インスリン療法とは、血中に溢れたカリウムを、糖分と共に細胞内に吸収させてその濃度を正常化させるものである。
遠坂葵の幻覚と共にバリキドリンクを流し込まれ、同時に交感神経を賦活されて急激に血糖値を上げた雁夜の膵臓は、反動で大量のインスリンを分泌し、その血中カリウムを細胞に取り込んだ。
内臓を食い荒らしていた刻印虫の死滅は、追々更なる影響を雁夜の体にもたらしてくるだろうが、超急性期の山場は、ひとまず乗り越えたことになる。
「そう……、か。ありがとう、恵ちゃんと、ひまわりちゃんも……」
「……まぁまぁ」
「困ってる人は、助けるのが当たり前ですよ!」
「それが例え妄想癖甚だしいダメ人間でもね。今は貴重な人的資源だから、生きていてもらうわ」
「……ん? え?」
布束から付け加えられた批評に、雁夜は嫌な予感を覚える。
3人の少女の視線は、可哀想なものを見る目になっていた。
雁夜の頬に冷や汗が伝う。
「もしかして……。さっきの俺の夢を、見てた、とか?」
「だ、大丈夫ですよ間桐さん……。私は、男の人って多かれ少なかれそんなものなのかと思っただけですから……」
「う、うわあぁぁぁ――!? マジかよぉおお……」
シーナーが彼に『治癒の書』を行使していた際の風景は、4人と4頭にがっつりと共有されていた。
早い話が公開処刑である。
恵の苦笑に担架の上で最大限身もだえする彼を置いて、四宮ひまわりが口を開く。
「……それより、布束さん。そろそろ、何を企んでるのか話してくれてもいいんじゃないの。
訳があるんでしょう? このルートに人間全員を連れてきたことに」
「ええ、そうね。診療所に向かいながら話すわ――」
バーサーカーの襲撃を退けたあと、管理室前にいたメンバーは3組に分かれた。
一組目はこの組。意識不明の雁夜を診療所に搬送すべく担架を作って走る四宮と田所、そして医療人かつ護衛としての布束の計4名だ。
二組目は、北方にて再び攻撃を始めたらしい
モノクマに対抗するため、魔術・超能力に頼らずともある程度行動のできる龍田と、建築集団を従えた集団戦が可能なツルシインの2名。
龍田は左腕の切断という重傷を負っている状態であるが、彼女以上に白兵戦での戦闘力に期待できる面子は、他に
灰色熊しかいない。
その灰色熊は三組目で、ヤイコとシーナーを連れて計3名で地下階層を更に奥へと辿っている。
その先は、灰色熊が午前中に突き止めていたモノクマの本拠地である。
その場には、『スポンサー』でもあるモノクマが盗んでいた培養槽に、何らかの新たなヒグマが作られていたらしいが、もはやそれごと本拠地を潰すべきであろうという方針はその場の全員が一致していた。
こちらでモノクマの本体を叩くことができれば、北で襲われているキングヒグマ、シバ、シロクマの危機や、帝国全体に起こっているヒグマの反乱も鎮圧できるかも知れないのだ。
ヒグマ帝国側としての本命は、この三組目である。
「あのシーナーってヒグマは、こっちに『
侵入者がいるから気を付けろ』と言った。
それをヤイコってヒグマが、『布束は侵入者を的確に始末したから大丈夫』とフォローして納得させていたわよね?」
ひまわりが繰り返したシーナーの言及は、ルークヒグマから伝達された、D-6における9名もの人数の侵入者のことである。
暁美ほむら、
ジャン・キルシュタイン、球磨、星空凛、巴マミ、
球磨川禊、碇シンジ、
纏流子という8名の参加者に加え、第一期穴持たずのデビルヒグマという構成だ。
そしてヤイコが言う『始末』というのは、彼女と布束が対応した
呉キリカと
夢原のぞみのことである。
放送でも呼ばれたその両参加者は、ヤイコの謂いでは『布束が冷徹に処理した』ということになっている。
「その二名は、恐らく地上でバーサーカーと戦っていた少女たちよ」
「……やっぱり、布束さんは殺したわけじゃ無かったんだ。参加者追跡用の首輪を外した、と」
「電源が落ちてヒグマの培養槽が停止しただろう今、私の目的は半分達成されたようなものだけど。
その参加者がデビルと一緒に居る以上、彼らとは話が通じる可能性が高い。ヒグマと人間の平穏のため、彼らにも協力してもらおうと思うの」
「……デビルの成長日記は、有冨さんのゆるふわな嘘計画を私に信じさせるのに十分な可愛さだったね」
四宮ひまわりが苦々しく口角を上げた時、羞恥心に悶えていた雁夜の動きが止まった。
急ごしらえの担架に使われている布地を掴み、彼は鼻から一筋の血を流していた。
「ま、間桐さん! 鼻血出てますよ!? 大丈夫ですか!?」
「ぬ、布束さん……。こ、この布ってもしかして……」
「……ああ。いい匂いするし、気付くわよね。後で彼女にもお礼を言っておきなさい」
「た、た、龍田さんのワンピースじゃないかよ――ッ!?」
「担架作るのに服が足りなかったから。快く貸してくれたわよ」
間桐雁夜が寝そべっているのは、つい先ほどまで龍田が着ていたワンピースであった。
救急現場での担架の作り方には、物干し竿などの長い棒2本を用意し、そこへトレーナーやシャツなどの衣類を何枚も脱ぎながら掛けてゆくというものがある。
布束の制服、恵の割烹着、ひまわりの半纏などを掛けるも長さが足りなかったため、龍田も自身のワンピースを脱いでそこに掛けていた。
ちょうど雁夜の顔の辺りに、その胸から腰元に掛けてが当たっており、手元にはそのスカート部分が掴まれている。
布束は比較的平然としており、恵は雁夜の体調の方を気にかけて彼の心境を思うまで至っていないが、四宮ひまわりが彼を見下ろす視線は、生ゴミか何かを見るような冷たいものになっていた。
「童貞こじらせるとこうなるんだ……。男の人って、キタナイ……」
「な、何か言ったかひまわりちゃん!?」
「……なんでも」
「ひ、ひまわりちゃん……。夢の中の桜ちゃんみたいな眼で見ないでくれよ……」
「まぁ、性欲ごときで生きる気力を貰えるんだから、お得よねあなた」
「布束さんちょっと歯に衣着せる気ないの!?」
「着せられる衣は全部あなたの担架よ」
「あ、布束さんの制服まで……ッ!?」
「間桐さん、騒ぐと鼻血が……」
足元に気を付けながら男1人の搬送を続けてゆく女子3人の会話は、比較的騒々しく続いて行った。
その担架の片方を支える四宮ひまわりの手に、誰にも気づかれずに、ひっそりと根を張るものがある。
――担架の棒、だ。
4人の少女の服が通されたその棒は、童子斬りの根を手ごろな長さに折り取ったものだった。
多くの根が朽ちた中で唯一残ったそれは、間桐雁夜に握り続けられ、四宮ひまわりに行使されたことで、武器としての性質を失わずに済んでいた。
童子斬りは、匍匐枝(ランナー)と呼ばれるものを出し、その木刀の身を次々と増やしてゆく性質がある。
変質した童子斬りの攻撃時の性質を見切った四宮ひまわりも、そこまでを見切ることは出来なかった。
――童子斬りからの直系の分枝・二代目鬼斬り。
それは彼女を次の宿主と認め、静かにその手に握りしめられていた。
【C-5の地下 ヒグマ帝国・研究所跡/日中】
【布束砥信@とある科学の超電磁砲】
状態:健康、制服がずぶ濡れ(上はブラウスと白衣のみ)
装備:HIGUMA特異的吸収性麻酔針(残り27本)、工具入りの肩掛け鞄、買い物用のお金
道具:HIGUMA特異的致死因子(残り1㍉㍑)、『寿命中断(クリティカル)のハッタリ』、白衣、Dr.ウルシェードのガブリボルバー、プレズオンの獣電池、バリキドリンクの空き瓶
[思考・状況]
基本思考:ヒグマの培養槽を発見・破壊し、ヒグマにも人間にも平穏をもたらす。
0:診療所途中での侵入者を探して、仲間とする。
1:キリカとのぞみは、やったのね。今後とも成功・無事を祈る。
2:『スポンサー』は、あのクマのロボットか……。
3:やってきた参加者達と接触を試みる。
4:帝国内での優位性を保つため、あくまで自分が超能力者であるとの演出を怠らぬようにする。
5:帝国の『実効支配者』たちに自分の目論見が露呈しないよう、細心の注意を払いたい。が、このツルシインというヒグマはどうだ……?
6:ネット環境が復旧したところで艦これのサーバーは満員だと聞くけれど。やはり最近のヒグマは馬鹿しかいないのかしら?
7:ミズクマが完全に海上を支配した以上、外部からの介入は今後期待できないわね……。
[備考]
※麻酔針と致死因子は、HIGUMAに経皮・経静脈的に吸収され、それぞれ昏睡状態・致死に陥れる。
※麻酔針のED50とLD50は一般的なヒグマ1体につきそれぞれ0.3本、および3本。
※致死因子は細胞表面の受容体に結合するサイトカインであり、連鎖的に細胞から致死因子を分泌させ、個体全体をアポトーシスさせる。
【田所恵@食戟のソーマ】
状態:疲労(小)
装備:ヒグマの爪牙包丁
道具:なし
[思考・状況]
基本思考:料理人としてヒグマも人間も癒す。
0:間桐さん大丈夫ですか? このまま診療所まで行きましょう!!
1:ヒグマの皆さんも、人間の皆さんも、格好良かったです……!
2:研究所勤務時代から、ヒグマたちへのご飯は私にお任せです!
3:布束さんに、落ち着いたらもう一度きちんと謝って、話をします。
4:立ち上げたばかりの屋台を、
グリズリーマザーさんと灰色熊さんと一緒に、盛り立てていこう。
【間桐雁夜】
[状態]:刻印虫死滅、それによる内臓機能低下・電解質異常、バリキとか色々な意味で興奮
[装備]:即席担架(龍田のワンピース、布束の制服、恵の割烹着、ひまわりの半纏、童子斬りの根)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を桜ちゃんの元に持ち帰る
0:た、龍田さんのワンピース……。葵さんの服もこんないい匂いがしたような……。
1:俺のバーサーカーは最強だったんだ……ッ!!(集中線)
2:俺はまだ、桜のために生きられる!!
3:桜ちゃんやバーサーカー、助けてくれた人のためにも、聖杯を勝ち取る。
[備考]
※参加者ではありません、主催陣営の一室に軟禁されていました。
※バーサーカーが消滅し、魔力の消費が止まっています。
※全身の刻印虫が死滅しました。
【四宮ひまわり@ビビッドレッド・オペレーション】
状態:疲労(小)、ずぶぬれ、寄生進行中
装備:なし
道具:オペレーションキー、帝国産二代目鬼斬りNo.1(1/3)、帝国産二代目鬼斬りNo.2(0/3)
[思考・状況]
基本思考:この研究所跡で起こっていることの把握
0:とりあえず診療所に向かいつつ、布束さんの話を聴かないと。
1:ネット上に常駐してるあのプログラムも、エンジンを止めた今無力化されてるか……?
2:龍田……、本当にありがとう。
3:れいちゃんは無事なんだろうか……!?
4:そろそろごはん食べたい。
5:間桐さんは変態。はっきりわかんだね。
[備考]
※鬼斬りに寄生されました。本人はまだ気づいていません。
※バーサーカーの『騎士は徒手にて死せず』を受けた上に分枝したので、鬼斬りの性質は本来のものから大きく変質している可能性があります。
∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴
「龍田さんはそれで本当に大丈夫かい」
「そうね~。間桐さんがよだれ塗れにしなければ大丈夫かな~」
「服じゃのうて左腕のことな?」
柔らかい声音で、二人の女性の会話が続いている。
時速50キロ台の高速で走りながらだ。
艦娘である龍田と、ヒグマであるツルシインは、地下階層から研究所跡まで上がり、北のしろくまカフェまでの道のりを一息に疾駆している。
道々は、
艦これ勢の反乱で破壊されたと思しき瓦礫がそこここに散り、わずか半日前の様子は二目と見られぬほどに荒らされている。
龍田はその光景を見やりながら、僅かに眉根を顰めた。
「これくらい、おふとんに就かなくてもまだ沈まないわ~……。それにしても、これが本当に提督たちのやる所業~?
おしおきでもされたいのかしら~……」
「己(オレ)が出会った艦娘は、那珂ちゃんとお主じゃ。シバやシロクマ、シーナーは意見が違うじゃろうが、見る限り己(オレ)にはどうしても、お主ら作られた者に落ち度があるとは思えん。
まことに申し訳ない話じゃが、単純にこの反乱は己(オレ)らの管理不行き届きよ……」
「いつの世もプロパガンダに民衆は踊らされるものね~……。気付かない民衆も悪いけれど、根源の悪はその扇動者よ」
「そうじゃ、だからまずは『彼の者』を直接――」
「叩く♪」
ツルシインと龍田は、にっこりと顔を見合わせる。
「……ちゃんと挨拶をしとらなんだな。穴持たずツルシの四十九院(ツルシイン)。建造も破壊もある程度熟知しとる」
「軽巡洋艦、天龍型2番艦の龍田よ。生まれは佐世保なの。今生では、ツルシインさんは産婆さんみたいなものよね~。ありがとうございました~」
「『天龍型龍田』。天地人外運全てが圧巻の高止まりじゃな。才能と統率力に優れ、剛毅で知謀にも長けたあんたは、大層長い間活躍して来たんじゃろ?」
「私なんてまだまだだよ~」
笑いながら薙刀をひらつかせる龍田に、ツルシインはわずかに声を落とす。
「……そうして始めが良い分、晩年は波乱と浮き沈みばかりじゃ。ゆめ、気を付けるんじゃぞ。
カーペンターズの奴らがいればもう少しマシに戦えたんじゃろうが……。何故あいつらほとんどが地上に出払っとるんじゃ……。何も依頼してはおらんのに……」
「占いは良い報せばかりだといいのですけどね~。まぁ、天龍ちゃんを助けるまでは沈んであげないわ~」
身構えて立ち止まる二人の眼下には、氷や瓦礫、焦土が散在した帝国の一角があった。
その中心が、しろくまカフェ。
ツルシインは鼻眼鏡の上から目を覆って上を向く。
瞬間的にシバの運勢を辿れる所まで辿っていた彼女は、地上に作られた何らかの建造物が童子斬りと同形の凶兆に破壊されたことと、シバが何かとんでもない凶兆を身に纏ってしろくまカフェに突入したことがわかっていた。
「ああ……こりゃ直視できん。真っ黒な太陽を眼に叩き付けられるようじゃわい。
それにしても全く……、シバのヤツ、見つけたらはっ倒してやるぞ……。自分でどんどん凶兆を引き込みおって……、世話無いわ……」
「指導者の方がここにもう3人いらしててこれでしょ~? 本当大変ねあなたたちも~」
「世話になるのぉ、龍田さん……」
ワンピースを脱いでいる龍田は、その左腕に虚空を揺らす。
純白のブラウスとキャミソールの脇に薙刀をぴたりと構え、彼女の艦橋は静かにエンジンを回していた。
【C-4 しろくまカフェの手前/日中】
【
穴持たず49(ツルシイン)】
状態:健康、失明
装備:水晶の鼻眼鏡
道具:なし
[思考・状況]
基本思考:ヒグマ帝国と同胞の安寧のため建造物を建造・維持し、凶兆があれば排除する。
0:起源弾の結界は真じゃったか。それにしてもシバは莫迦じゃなかろうか。
1:シバ、お主、地上に何か建てたな? その資源と人材を何故こちらにまわさなかった……!!
2:帝国にとって凶とならない者は基本的に見守ってやっていいんじゃないかのぉ。
3:帝国の維持管理も骨じゃな。
[備考]
※あらゆる構造物の縁起の吉凶を認識し、そこに干渉することができます。
※幸運で瑞祥のある肉体の部位を他者に教えて活用させたり、不運で凶兆のある存在限界の近い箇所を裂いて物体を容易く破壊したりすることもできます。
※今は弟子のヤエサワ、ハチロウガタ、クリコに海食洞での作業を命じています。
※穴持たずカーペンターズのその他の面々は、帝国と研究所の各所で、溢水した下水道からヒグマ帝国に浸水が発生しないよう防水工事に当たっています。
【龍田・改@艦隊これくしょん】
状態:左腕切断(焼灼止血済)、中破、ワンピースを脱いでいる(ブラウスとキャミソールの姿)
装備:三式水中探信儀、14号対空電探、強化型艦本式缶、薙刀型固定兵装
道具:なし
[思考・状況]
基本思考:天龍ちゃんの安全を確保できる最善手を探す。
0:出撃します。死にたいロボットはどこかしら~。
1:当座のところは、内地の人間を守って事故を防げるように行動しましょうか~。
2:この帝国はまだしっかりしてるのかしら~?
3:ヒグマ提督に会ったら、更生させてあげる必要があるかしら~。
4:近距離で戦闘するなら火器はむしろ邪魔よね~。ただでさえ私は拡張性低いんだし~。
[備考]
※ヒグマ提督が建造した艦むすです。
※あら~。生産資材にヒグマを使ってるから、私ま~た強くなっちゃったみたい。
※主砲や魚雷は
クッキーババアの工場に置いて来ています。
∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴
「……どうして、キリカちゃんは、那珂ちゃんの体に、入れたの?」
「いやぁ、あの狂戦士が操れるほどの肉体なんだから、私だってそれくらいできるはずだと思っただけさ。
後は、愛する織莉子のもとに帰るまでは死ねないし。彼女を想って力をもらった!
ただ……、やっぱり他人の体だからね。もうそろそろ操縦がきついや」
キュアドリームの変身が解けた夢原のぞみを背中におぶって、黒い衣装を身に纏った軽巡洋艦が草原を辿っていた。
バーサーカーとの戦場から北方の街に向け折り返すように歩みを進めていた彼女だったが、その足取りは徐々に重いものとなってきていた。
彼女はのぞみを慎重に地面に降ろして、眼帯を付けた少女はのぞみの肩を支える。
黒い魔法少女衣装はほどけ、その掌の上に、青紫色の宝玉となってわだかまっていた。
「すまないけどのぞみ……、あとはこの女が目覚めるまで頼む。
それと、この宝石は比喩じゃなく私の魂だから、壊れないように大切に持っておいてほしい。
あと抜け目なく確保しといたこのぬいぐるみも頼むね」
「う、うん……。わかった……」
彼女の瞳を見つめ返したのぞみは、その次の瞬間には、唇を噛んでうつむいてしまう。
柿色の衣装に戻った軽巡洋艦・那珂の体で、呉キリカは極力剽軽に笑いながら彼女の背中を叩いた。
「おいおいのぞみ、そう深刻な顔しないでくれよ! 何も今生の別れじゃないんだ。私は魔力さえ戻ればなんとかなる!
あ~、どっかに魔女の1、2体でもいればいいんだけどね! まぁ大丈夫! なんとかなるなる!」
「キリカちゃんそれ、私の口癖じゃん……」
「そうさ! もう方針は決まってるんだ! 後は迷わず、一意専心の上善は激流だ。
天下に私たちより柔弱なるはなし! しかれども堅強を攻めれば私たち以上のものもなし!
参加者を助ける、ヒグマ帝国と交渉する、必要とあらば黒幕を消し飛ばす! けって~い!!」
切れた額の血を拭いながら、キリカは那珂ちゃんの指先をビシッと伸ばして、先へ見える街を指し示す。
そしてそのまま、那珂ちゃんの体は電池が切れたように動かなくなり、力なく地に崩れ落ちていた。
「キ、キリカちゃん……!」
キリカから託されたぬいぐるみとソウルジェムを抱え、のぞみは気絶した那珂ちゃんの元へ駆け寄る。
ゆすっても反応の無い彼女から、暫くしてのぞみはキリカのソウルジェムへと目を落としていた。
キリカにつられて無理やり笑顔を作っていた彼女の表情は、次第に泣き笑いとなる。
そして次々と、その頬に大粒の涙が零れていった。
「ねぇ……、帰ったらさ、キリカちゃんの大好きな、織莉子ちゃんって子、私にも紹介してね……。
私も、キリカちゃんみたいにこんなすごいことのできる力……、欲しいな……」
濁りの濃い青紫色の宝石を洗う雫は、炎天の日差し以上の熱さを持っていた。
「でも、りんちゃん、うらら、こまちさん、かれんさん……。みんなの所に帰るまで……、私も、絶対に死んだりしないよ……。
キリカちゃんの愛……、死なせたりしないから……。みんなで、絶対に、帰るよ――!!」
のぞみは、その身にキュアドリームの意気を着て、涙を拭って立ち上がった。
負傷した脚にも構わず、その肩を那珂ちゃんに貸し、ゆっくりと一歩一歩進んでゆく。
そしてゆっくりとのぞみは、その爪を陽光に光らせて指を伸ばす。
――何言ってんだいのぞみ。のぞみは私よりもずっとすごい力を持ってるじゃないか。
ソウルジェムに包まれた魂のみで、キリカはのぞみの熱を感じながらそう思考する。
夢原のぞみは、魔法少女となって以来初めて、自分に織莉子以外の人間として関心を持たせた。
ただの恩人としてじゃない。
自分の魂さえ預けても、そのまま受け入れてくれると思わせた彼女の包容力。
この期に及んでみんなを助けるとか言ってのける底抜けの博愛と無鉄砲さ。
それでも、自分が着いて行こうと思ってしまう、人を惹きつける力強さ。
――織莉子を紹介? 勿論さ。私こそ、のぞみを紹介してやりたいと思ってたんだ。
「けって~い!!」
愛の実現を代理人に頼む。
それはキリカにとっては、なかなか理解に容易く苦しむ事柄だった。
それでも、彼女の選んだ代理人は真っ直ぐに、進むべき光の先を示していた。
【B-6 街の端/日中】
【夢原のぞみ@Yes! プリキュア5 GoGo!】
状態:ダメージ(中)、キュアドリームに変身中、ずぶ濡れ、右脚に童子斬りの貫通創
装備:キュアモ@Yes! プリキュア5 GoGo!
道具:ドライバーセット、キリカのソウルジェム@呉キリカ、キリカのぬいぐるみ@魔法少女おりこ☆マギカ、首輪の設計図
基本思考:殺し合いを止めて元の世界に帰る。
0:みんなで絶対に帰るんだ……! けって~い!
1:参加者の人たちを探して首輪を外し、ヒグマ帝国のことを教えて協力してもらう。
2:キリカちゃんと一緒にリラックマ達を捜しに行きたい。
3:ヒグマさんの中にも、いい人たちはいるもん! わかりあえるよ!
[備考]
※プリキュアオールスターズDX3 終了後からの参戦です。(New Stageシリーズの出来事も経験しているかもしれません)
【呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ】
状態:ソウルジェムのみ
装備:ソウルジェム(濁り:大)@魔法少女おりこ☆マギカ
道具:なし
基本思考:今は恩人である夢原のぞみに恩返しをする。
0:のぞみは強いなぁ。すまないが暫く胸を借りさせてくれ。
1:この那珂ちゃんって女は、何を考えてたんだか。まぁいいや、聞き込みはのぞみに任せる。
2:恩返しをする為にものぞみと一緒に戦い、ちびクマ達を捜す。
3:ただし、もしも織莉子がこの殺し合いの場にいたら織莉子の為だけに戦う。
4:戦力が揃わないことにはヒグマ帝国に向かうのは自殺行為だな……。
5:ヒグマの上位連中は魔女か化け物かなんかだろ!?
[備考]
※参戦時期は不明です。
【那珂@艦隊これくしょん】
状態:額に裂傷、気絶
装備:無し
道具:探照灯マイク(鏡像)@那珂・改二、白い貝殻の小さなイヤリング@ヒグマ帝国、白い貝殻の小さなイヤリング(鏡像)@ヒグマ帝国
基本思考:アイドルであり、アイドルとなる
0:私の歌は――……。
1:艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよ!
2:お仕事がないなら、自分で取ってくるもの!
3:ヒグマ提督やイソマちゃんたちが信じてくれた私の『アイドル』に、応えるんだ!
[備考]
※白い貝殻の小さなイヤリング@ヒグマ帝国は、ただの貝殻で作られていますが、あまりに完全なフラクタル構造を成しているため、黄金・無限の回転を簡単に発生させることができます。
※生産資材にヒグマを使ってるためかどうか定かではありませんが、『運』が途轍もない値になっているようです。
∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴
「……布束特任部長は、大丈夫でしょうか」
「彼女は、海食洞で闖入者に遭遇した際も、10秒あまりで決着をつけました。襲われても問題はないかと」
「いえ、彼女の戦闘能力はとくと拝見させていただきました。そうではなく、あの実力ではデビルさんまで殺害してしまうのではないかと思いましてね」
「……人的資源の重要性は特任部長も理解していらっしゃいます。匙加減はお任せして大丈夫だろうと、ヤイコは考えます」
「……そうですか。ヤイコさんがそうおっしゃるなら間違いありませんね」
示現エンジン前の通路を埋めた根を、かつ千切り、かつ燃やし、3頭のヒグマが掘り進んでいた。
灰色熊を先頭にして、シーナーとヤイコの三体は、ついに発見されたモノクマ――『彼の者』、江ノ島盾子の本丸を落とすべく侵攻している。
彼らにとっては、江ノ島盾子の排斥が本懐ではない。
あくまで彼女は、ヒグマ帝国にとって路傍の石でしかない。
その石がとんでもなく大きく数多く、道の全てを埋め尽くしてしまっているのが問題なのだ。
彼女以外にも、シバさんが吹っ飛ばした地上は本当に大丈夫なのかとか。
シバさんの作った得体の知れないものがヒグマを食って逃げ出したこととか。
体術にも優れているはずのシバさんと、大局を見るのに優れたキングが一緒に居てなぜ苦戦が予想されるのかとか。
ツルシインがカーペンターズを集めようとしたらなぜかほとんど帝国に残っていなかったこととか。
懸案事項が多すぎて疲弊している色が、シーナーの声の端々から漏れ聞こえていた。
「シーナー……、大分疲れてるだろお前。無理するなよ……?」
「こと対生物に関しては、私の能力はほぼ無敵です。あなた方に心置きなくモノクマさんを破壊していただくためにも、同行しなくては……」
「この作戦行動が終わりましたらゆっくりとお休みくださいシーナーさん」
童子斬り戦で負った浅手も新しいままに、灰色熊とシーナーはその傷を押しての戦いだ。
特にシーナーは
相田マナから受けた被害もばかにならない。
バリキドリンクは、これ以上人手を損失せぬよう願って間桐雁夜の処置に使用したため、シーナー自身を回復させるよすがは、あれ以来何もない。
今の彼は、痛覚遮断で動いているのみの幽鬼と言っても過言ではなかった。
「……ま、そのご苦労もこれで終わりだ……。行くぞ!!」
岩壁に擬装していた電子ロックの扉を、灰色熊は一息に体当たりでぶち破った。
張り裂けた扉の先には、モノクマの工房のだだっ広い空間が広がっている。
「ん……!?」
その中央には、一台のテーブルが据えられており、その上に、白と黒とに分かれたロボット・モノクマが、こちらに背を向けて座っていた。
その隣には、電球型蛍光灯のはまった卓上スタンドが置いてあり、モノクマの体をスポットライトのように照らしていた。
――部屋の中には、それ以外のものが、存在しない。
「……これはどういうことですか、モノクマさん」
「消え去った……? いや……、これは……」
「おい、ダンマリ決め込んでんじゃねぇぞてめぇ」
工房の中にシーナーたちが踏み込むと、モノクマはゆっくりと彼らに向けて振り返った。
それは、センサーか何かをきっかけにして、自動的にテーブルの天板が180度回転するように仕込まれていたものらしい。
こちらを向いたモノクマの顔には、墨痕くろぐろとした筆致で、文字の書かれた半紙が張り付けられていた。
『バカが見る クマのケツ』
「――!?」
「爆弾です――!!」
「クオオォォッ!!」
ヤイコと灰色熊が反応した瞬間、モノクマの体は閃光を吹いて大爆発を起こした。
体を固溶強化しながら、灰色熊は2頭を抱えて室外へ飛び出す。
童子斬りの根で荒らされていた一体の空間はたちまち崩壊し、落盤として彼ら3頭の上に降り注いだ。
「――上層階に気流の吹き抜けてゆく穴が、部屋の反対に空いておりました……! 彼の者は全資材を持って遁走したのです!!」
「クッソおおおおッ!! 皆殺しを嘯いてたのは陽動だったのか……ッ!! どこだッ!! どこに逃げやがった!!」
「……なるほど。起源弾と人海戦術ごときで、ヤイコたちに勝てると思うはずです。ここまで的を分散されては、追いきれません……」
灰色熊の背に守られて、シーナーとヤイコは負傷こそ免れた。
しかし彼ら3頭は、島の地下のヒグマ帝国の、そのまた地下深くの岩盤に、生き埋めとなってしまった。
猛り狂った獣の声が、そこから暫く唸り上がっていた。
【E-7の地下(元・モノクマの工房) ヒグマ帝国/日中】
【穴持たず81(ヤイコ)】
状態:疲労(小)、ずぶ濡れ、生き埋め
装備:『電撃使い(エレクトロマスター)』レベル3
道具:なし
[思考・状況]
基本思考:ヒグマ帝国と同胞の安寧のため電子機器を管理し、危険分子がいれば排除する。
0:モノクマ……。予想以上に策のめぐる相手ですね……。
1:モノクマは示現エンジン以外にも電源を確保しているとしか思えません。
2:布束特任部長の意思は誤りではありません。と、ヤイコは判断します。
3:ヤイコにもまだ仕事があるのならば、きっとヤイコの存在にはまだ価値があるのですね。
4:無線LAN、もう意味がないですね。
5:シーナーさんは一体どこまで対策を打っていらっしゃるのでしょうか。
【
穴持たず47(シーナー)】
状態:ダメージ(大)、疲労(大)、生き埋め
装備:『固有結界:治癒の書(キターブ・アッシファー)』
道具:相田マナのラブリーコミューン
[思考・状況]
基本思考:ヒグマ帝国と同胞の安寧のため、危険分子を監視・排除する。
0:まだ休めるわけないでしょう、指導者である私が。
1:莫迦な人間の指導者に成り代わり、やはり人間は我々が管理してやる必要がありますね!!
2:モノクマさん……あなたは、殺滅します。
3:懸案が多すぎる……。
4:デビルさんは、我々の目的を知ったとしても賛同して下さいますでしょうか……。
5:相田マナさん……、私なりの『愛』で良ければ、あなたの思いに応えましょう。
[備考]
※『治癒の書(キターブ・アッシファー)』とは、シーナーが体内に展開する固有結界。シーナーが五感を用いて認識した対象の、対応する五感を支配する。
※シーナーの五感の認識外に対象が出た場合、支配は解除される。しかし対象の五感全てを同時に支配した場合、対象は『空中人間』となりその魂をこの結界に捕食される。
※『空中人間』となった魂は結界の中で暫くは、シーナーの描いた幻を認識しつつ思考するが、次第にこの結界に消化されて、結界を維持するための魔力と化す。
※例えばシーナーが見た者は、シーナーの任意の幻視を目の当たりにすることになり、シーナーが触れた者は、位置覚や痛覚をも操られてしまうことになる。
※普段シーナーはこの能力を、隠密行動およびヒグマの治療・手術の際の麻酔として使用しています。
【灰色熊(
穴持たず11)@MTG】
状態:ダメージ(小)、生物化、固溶強化、生き埋め
装備:無し
道具:ヒグマの爪牙包丁
[思考・状況]
基本思考:ヒグマ帝国と同胞の安寧のため、危険分子を監視・排除する。
0:
HIGUMA発祥時からの危険人物であるモノクマを抹殺する。
1:モノクマはシメる!! 絶対にシメ殺す!!
2:どうやってここから抜け出す!?
3:これ、実効支配者全員で対処しねぇとまずくないか?
4:同胞の満足する料理・食材を、田所恵と妻とともに探求する。
5:蜂蜜(血液)ほしい。
6:表向きは適当で粗暴な性格の料理人・包丁鍛冶として過ごす。
[備考]
※日ごろは石碑(カード)になってます。一定時間で石碑に戻るかもしれないししないかもしれない。
※2/2のバニラですが、エンチャントしたら話は別です。
※鉱物の結晶構造に、固溶体となって瞬時に同化することができます。鉱物に溶け込んで隠伏・移動することや、固溶強化による体構造の硬化、生体鉱物を包丁に打ち直すなどの応用が利きます。
※ヒグマ帝国のことは予てよりシーナーから知らされており、島内逃走中にモノクマや
カーズが潜伏しそうな箇所を洗い出していました。
※実験は初めから、目くらましとして暴れまわった後、適当な理由をつけて中座する段取りでした。
∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴
「お、『帝国産ヒグマの生き埋め風』。もう出来上がったんだァ~♪ 流石灰色熊ちゃん、仕事が早いねぇ~」
示現エンジンが落ちて真っ暗になってしまったその他の空間とは異なり、煌々とした蛍光灯の光に照らされるその部屋で、液晶画面の中に手を叩いて喜んでいる少女がいた。
江ノ島盾子は、そのまま心底おかしそうに画面の中で肩をすくめる。
「こちとら『超高校級の絶望』江ノ島盾子ちゃんですぜ? 各種の敗戦計を使わせたらあんたらケダモノ如きに読み切れるかっつーの。
切られたら終わりのライフラインを敵方に晒しとくほど馬鹿でもないし。バッテリーくらい用意してるんだよ~ん!」
手を打ち広げた周囲には、着々と内部で肉体の出来上がりつつある培養槽や、ずらりと並んだモノクマロボットが部屋の中に据えられている。
「ま、それでもぉ、やっぱりあたしぃ電力大食いだからぁ、このバッテリーも4時間くらいでペロッと食べちゃうんだよねー☆
ブルーアイランドの示現エンジンに繋いだら、一色博士どもにバレてファイナルオペレーションがぶっ飛んできてお終いだしぃ~☆ やっばぁ~☆ ぜっつぼぉー☆」
一人で盛り上がってゆく江ノ島盾子はそう語りながら上機嫌に隣の培養槽を指し示す。
「ですが、なんとなんと、私様のスペシャルでぷりちーなぼでーも、ちょうどその4時間後くらいにできるわけですわ! そうなりゃもう私様の維持に電力なんて必要ない訳ですし! 第三回放送……ができるかどうかは知らんけど、その時が楽しみですなぁ!!」
そして急激に沈鬱な顔になって彼女は声を落とす。
「でも……でも……、それまで4時間、アタシ結構無防備ですよね……。復讐の炎の塊みたいになったシーナーさんとか灰色熊さんとかメクラインさんとかに発見されたら、今度こそ乱暴されて終わりですよね、薄い本みたいに!!」
咳払いをして、江ノ島盾子は声を張り上げた。
「オホン。という訳ですので、わたくしは早急にスペシャルなボディーガードを製造致しました。
『H』! こっち来なさい~!」
その声に反応して、足音もなく、パソコンの前に一人の少女が歩んできていた。
その体は、全身がぴったりとした黒いボディースーツに包まれていた。
濃い赤色の髪が、短いポニーテールと共に快活な末広がりになっている。
しかし彼女の眼は、まるで死者のように開ききった瞳孔を澱ませていた。
彼女の容姿を、この島にいた一部のものは見知っているだろう。
具体的に言うならば、
円亜久里と、山岡銀四郎と、
御坂美琴と、シーナーあたりの面子である。
「はいは~い。実地運用前にちょっとテストしましょうか『H』ちゃん。この名前に見覚えありますか!」
江ノ島盾子の声に合わせ、モノクマの一体がフリップを持ってその少女の前にやってくる。
『相田マナ』
という人名が、そこには書かれていた。
彼女自身の名前だったその文字列を見ても、少女は全くの無反応だった。
「オッケーオッケー! ぜーんぜん覚えてなくていいからね~。
じゃあ次~。こんな顔の女の子が来たら、ちゃんと失敗せずに殺せるかな~?」
次のモノクマは、お面を被って出てきていた。
それは彼女の親友――。
彼女をかつて陰ひなたに支えてきた少女、菱川六花こと、キュアダイヤモンドの塩ビのお面だった。
『H』は、何の感慨もなく腕を振るった。
その手刀が通り過ぎたあと、キュアダイヤモンドの面は縦に真っ二つとなり、一拍遅れて、それを付けていたモノクマのボディも二つに割れて地に落ちていた。
「うふ、ふふふふふ……。合格……」
その光景に、江ノ島盾子は満足げに笑う。
「オートヒグマータ君と解体君で培われたSTUDY謹製のサイバネ技術は――いたいけなヒグマ化プリキュアの肉体を、短時間でここまでの上質な殺戮マシーンに仕立て上げたのです……!
自身のデータを江ノ島盾子に捧げた上、自身の名も、友の姿も思い出すことのなくなった、命令一筋のヒューマノイド!!
ああ、哀れなシーナー先生、あなたの施術は今いづこ……!!」
江ノ島盾子は、酷薄な笑みで、かつて相田マナだったその少女に命令を下した。
「さぁ『H』。時間を稼ぎなさい。弱ってる者から優先的にぶち殺し、島中を絶望のズンドコに叩き落としなさい。
自分の身が危うくなりそうだったら直ちに逃走して、最大多数に最大損害を与えるのよ――!」
アンドロイドは弾丸の眼差しで、今踏み来た道を戻る。
意志に愛の心根もなく。
かつて始原が回っていたそのエンジンには、どす黒い膿が回っている。
【???(新・モノクマの工房) ヒグマ帝国/日中】
【モノクマ@ダンガンロンパシリーズ】
[状態]:万全なクマ
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:『絶望』
0:絶望だと思った!? 残念それはこれからでした!?
1:前期ナンバーの穴持たずを抹殺し、『ヒグマが人間になる研究』を完成させ新たな肉体を作り上げる。
2:混乱に乗じてヒグマ帝国の命令権を乗っ取る……つもりだったけど、すぐそうする旨みは少なくなったかな?
[備考]
※ヒグマ枠です。
※抹殺対象の前期ナンバーは穴持たず1~14までです。
※江ノ島アルターエゴ@ダンガンロンパが複数のモノクマを操っています。 現在繋がっているネット回線には江ノ島アルターエゴが常駐しています。
※島の地下を伝って、島の何処へでも移動できます。
※ヒグマ帝国の更に地下に、モノクマが用意したネット環境を切ったサーバーとシリンダーが設置されています。 サーバー内にはSTUDYの研究成果などが入っています。
※示現エンジンが落ちた後も、用意していたバッテリーであと4時間程度は活動できます。
※江ノ島盾子の新たな肉体も、あと4時間程度で完成します。
【『H』(相田マナ)@ドキドキ!プリキュア、
ヒグマ・ロワイアル】
状態:半機械化、洗脳
装備:ボディースーツ、オートヒグマータの技術
道具:なし
[思考・状況]
基本行動方針:江ノ島盾子の命令に従う
0:江ノ島盾子受肉までの時間を稼ぐ。
1:弱っている者から優先的に殺害し、島中を攪乱する。
2:自分の身が危うくなる場合は直ちに逃走し、最大多数に最大損害を与える。
[備考]
※相田マナの死体が江ノ島盾子に蘇生・改造されてしまいました。
※恐らく、最低でも通常のプリキュア程度から、死亡寸前のヒグマ状態だったあの程度までの身体機能を有していると思われます。
最終更新:2014年11月19日 00:02