「おっ、パクにハクぅ! こんなとこにいたのかよ~」

 暁美ほむらがそんな異質な声に気付いたのは、彼女たちが診療所への道に連れられて、暫くしてからのことだった。
 デビルヒグマの着込んだ鎧の内からでも、何やら近くに新たなヒグマがやってきたことはわかった。


「こんなとこで油売って、何やってんだぜお前らよぉ!」
「……誰かと思ったらクックロビンくんじゃん……。侵入者かと思った……」
「あなたこそ何してるの、毎度のごとくそんなヘンな格好して……」


 デビルヒグマの脇を支えていた、パクとハクという二頭のヒグマが、胡乱なモノに出会ったような声で、そのヒグマに応対している。
 二頭があからさまに出会ったものへ倦厭の情を抱いていることは、その声だけで伝わってきていた。

(デビル。外で何が起こってるの……!?)
(あ、ああ、これは……。着ぐるみか……!?)

 血まみれの鎧の隙からその様子を見ているデビルヒグマに、ほむらはテレパシーで尋ねる。
 そのデビルも、目の前にいるヒグマに対して、明らかに当惑していた。


「俺は勿論、星空凛ちゃんのテーマパーク『星空スタジオ・イン・ヒグマアイランド』の建設さ!!
 ほら、パクもハクも、建材運ぶの手伝ってくれよ!!」
「何バカなことやってんの……? あなた、今ヒグマ帝国がどれだけ物資カツカツかわかってる?」
「そんな命令ツルシインさんから来てないじゃん。通路の補修しなよ……」

 パクとハクの眼前に現れたのは、二頭身にデフォルメされた、星空凛の巨大な着ぐるみであった。
 その着ぐるみのヒグマはあろうことか、この殺し合いの実験が行われている環境下で、津波が引いたか引かないかというタイミングで、よりによって人間のアイドルの、テーマパークを作ろうとしているらしかった。

(テーマパーク……!? しかも、星空凛の!?)
(……意味がわからない)

 ほむらとデビルは、パクとハク同様に、凄まじい困惑に囚われた。
 ナイトヒグマから奪った鎧の中で身じろぎしたほむらは、盾の中に隠している残りの人員にもこの情報を聞かせるべく、僅かに盾を傾けて内部空間との交通を作る。


「ちっちっち! 実はこれは、シバさんから依頼された、ちゃんとした仕事なんだな!!
 もう、通路の補修にあたってたカーペンターズは、ほとんど集めて上に向かわせたぜ!!」
「あなたアホでしょ!? 津波の水が溢れたら建造どころじゃないのよ!? その上、浸水した土地に碌に基礎も作らずテーマパークとか……。
 アイドルにかまけすぎてツルシインさんに教わったことも忘れたの!? そんなんすぐにぶっ壊れるよこのバカオタク!!」
「シバさんは建築のこと軽く見過ぎなんだよなぁ……。僕たちは建築班なんだからツルシインさんの指示に従わなきゃだめだって……」

 帝国のヒグマ同士においても、この着ぐるみヒグマ・クックロビンの語る事柄は、まったくの常識外れのことらしかった。
 次第に嫌悪と苛立ちを露わにしていくハクを気遣いつつ、パクはクックロビンに向けて血まみれのデビルヒグマを指す。

「あのね……。それに僕たちは、侵入者との戦闘で負傷したナイトさんを診療所に連れていくところなんだよ。
 それどころじゃないのは見てわかるでしょ!?」
「まだ、地上からの侵入者が近くにいる可能性だってあるのよ!? 悠長に上行ってる場合じゃないわよ!!
 しかも実験に干渉するようなことすんなって、固く言われてるでしょうがこのバカオタク!!」
「あ、そっかぁ!! もしもーし、ナイトさんわかります~? 俺だぜ、クックロビンだぜ!!」
「聞いてないし!!」

 パクとハクの怒声や罵声をよそに、クックロビンと言うらしい着ぐるみのヒグマは、ナイトヒグマのふりをしたデビルヒグマに顔を寄せてくる。
 デビルは、演技でなくかすれた声で、「ああ」と呟くのが精一杯だった。


「うん、意識あるし大丈夫じゃん!! さすがナイトさん!! じゃあパクとハクは送るのやめて一緒に凛ちゃんのテーマパーク建てに行こうぜ!!」
「ふざけんじゃねーよ!! 誰呼ぶんだよニンゲンの遊園地なんかに!! てめぇらオタクで勝手にマスかいてろバカどもがぁ!!」
「ハ、ハクちゃん、ハクちゃん落ち着いて……!!」

 ついにデビルを支えるのをやめてクックロビンに殴りかかろうとしたハクを宥めて、パクは震えながらデビルヒグマへ振り向く。


「す、すいませんナイトさん……。ちょっと僕たち、この奇行の真偽を確かめに地上に行きますので……。
 ここから診療所、わかりますよね。この先すぐなので……!! 本当にすみません!! 僕の弟分がこんなにバカで!!」
「お、パクぅ!! ちょっと早生まれだからって兄弟子ヅラするんじゃねぇよ~」
「私だって絶縁したいわよてめぇみたいなバカオタクとは!!
 ほんと、艦これ勢といいアイドルオタクといい、バカばっかりじゃないのよぉ……!!」


 着ぐるみを着たよくわからないヒグマと、泣き喚きながらパクに連れられて行くハクを見送りながら、デビルはそこに呆然と立ち尽くすだけだった。


【D-6地下 ヒグマ帝国 昼】


【穴持たず89(パク)と99(ハク)】
状態:健康
装備:おそろいのヘルメット
道具:工事用の工具
基本思考:ツルシインの指示に従い、他のカーペンターズも下水道補修に戻させる。
0:ふざけんなアイドルオタク。てめぇのそれ仕事じゃねぇから。
1:本当にすみませんナイトヒグマさん……!!
[備考]
※仲がいいです。 


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(……何だったのかしら。あのヒグマ)
(私に聞かないでくれ。さっぱりわからん)


 分かれている通路の南側へ向かったヒグマたちの足音がデビルヒグマの聴覚で完全に消えたのを確認してから、暁美ほむらは鎧から這い出るタイミングを窺い始めた。
 彼ら『建築班』なるヒグマたちの会話は、趣旨としてはほとんど意味不明なものであったが、有用な情報は多分に含まれていた。


 このヒグマ帝国の指導者クラスであるらしい、『シバ』および『ツルシイン』という名の個体の存在。
 『シバ』は重度のアイドルオタクであるということ。
 『ツルシイン』は『建築班』もしくは『カーペンターズ』と呼ばれる集団のトップであるらしいこと。
 なぜか『艦隊これくしょん』および『アイドル』にハマっているヒグマが存在しているらしいこと。
 この近辺と思しき地上で、なぜか星空凛のテーマパークが建設されているということ。
 ビショップヒグマの発言通り、帝国のヒグマの大半は、実験への不干渉を言い渡されているらしいこと。 
 そして、その制約を平気で破っていくヒグマもまた、大量にいるようであること。


(……本当に、個性が豊か過ぎね。意思統一が全くできていない。これでは『診療所』とやらの内情も思いやられるわ)
(外に出てどうする……? 『トロイのマトリョーシカ作戦』とやらは?)
(あのヒグマ2体が立ち去ってしまった以上、そのまま潜入できるかがそもそも分の悪い賭けになった。
 『トロイの木馬』と違って、治療の際には、腕の立つヒグマに囲まれたような状況で鎧が外されてしまうでしょうし……。
 先方の戦力がわからない状態で迂闊に突っ込めないわ)


 もともと『トロイのマトリョーシカ作戦』は、ほむらの持つ残り5秒の時間停止猶予に賭けた部分が非常に大きかった。
 デビルヒグマも自由な行動がとれず、ほむらも周囲の視界が無い状態で、複数の医者ヒグマなどに囲まれてしまえば、奇襲もへったくれもあったものではない。
 怪我人の衣服を脱がさず、寝かせるだけ寝かせて医者が立ち去るなどという、『トロイの木馬』そのままの都合のいいシチュエーションは、絶対に期待できないだろう。
 せいぜい可能性が高い成功パターンは、診療所から通じている地上へのルートを搬送中に見つけ、周りの者を振り払って一気に逃げ去る。というぐらいのものだった。

 それにつけて、2体のヒグマに運ばれているという初見のバイアス付与手段を失ったのは大きかった。

 『診療所』の指導者クラスのヒグマとなれば、おそらく、『患者の一挙手一投足から病状を把握する』ほどの鋭敏な感覚と、『診断』や『治療』に関した特殊能力を持っていておかしくない。
 事実、暁美ほむらがかつて心臓病で入院していた病院の指導医ですら、そのような能力を全て持っていたのだ。
 よりによってこのナイトヒグマたち『ピースガーディアン』は、直前までその診療所で養生していたらしい。
 もしデビルヒグマが、ナイトヒグマのふりをしたまま単独で診療所に上がり込めば、仮に血臭でほむらの臭いを隠し切れたとしても、その歩き方一つ、喋り方一つで、なりすましを看破されてしまうだろう。

 そして、鎧の中で周辺環境を窺えないほむらが時間停止のタイミングを見つける前に発見され、例えば『触れただけで相手を麻酔させる能力』だったり、『全身から自在に血液を抜く能力』だったり、そんな得体の知れない能力で殺滅されてしまう可能性は非常に高かった。
 人質を保有していることを明らかにできるかもわからないし、そもそも人質ごときで相手が靡くかもわからない。
 デビルヒグマの能力は、鎧で肉体が覆われていては満足な活用ができず、遊戯王カードの具象化の術式も地上だけのものだった。
 そしてほむらの武装と魔力は、あまりに残りが心もとなく、この二名で診療所を制圧できるかははなはだ怪しい。
 その場合、取りうる作戦は限られる。


 ――出来る限り遠距離から、ここの階層構造、『診療所』周辺の敵を探査し、総戦力で切り抜ける手段を見つける。


(デビル。あたりにヒグマの臭いはする? ここは研究所で言うとどのあたりなの?)
(いや、近くにはいないな。ちょうどここは、既存の研究所通路の南西の隅だ。魔術師たちの保護室があるところだな)
(――魔術師!?)
(ああ。この島に、結界だったり、召喚獣の具現化だったりをさせるための魔力を引くために連れて来られていたらしい

 ……まぁ今は。喰われたんだろうな。ついさっきまで何人か人間がいたような臭いはするが。5部屋全て、もぬけの殻だ)


 ほむらが意識を集中させると、確かにはっきりと、自分の周囲に、部屋の形に魔力が充満し、そこから辺りへ拡散していることが感じられた。
 今まで通って来た通路とは、段違いに濃い、結界を張っているような魔力だった。
 苔に含まれている僅かな魔力とは明らかに違う。
 恐らくそれで、拉致した魔術師の逃走を阻んでいたのだろうが、それはすでに、扉が開け放たれていることで実質的に無効化されていた。
 何かしらスタンドのような、自分の知らない技術で、魔力を補填できる可能性もあるのではないだろうか。

 ここは変則的な十字路のようになっている研究所通路の、東側の道だ。
 南側に3つ、北側に2つの保護室があり、北の奥は、そちらに折れる正規の通路がとおっている。
 正面は、本来つきあたりになっていたのを、ヒグマが掘り抜いたものらしい。
 そのため、西側への道と、そこから枝分かれする南への道が存在していた。
 パクとハク、クックロビンの3頭は、この南側の通路に去っていったのである。


(何かしら有用そうなものって、残されてないかしら?)
(どうだろうな……。そもそも武器の類は没収されていたようだし……。今もほとんど……)


 一番手前の部屋には、南北とも何も残っていない。
 二番目の部屋には、南にひしゃげた車椅子、北に干からびて死んだ芋虫のようなものが目につく。
 だがその他にデビルヒグマが気づくのは、床や壁に散る人間の血飛沫くらいのものだ。
 ふらつく歩行を演出しながらゆっくりと彼が通路を進んでいった時、その眼に、ふと止まるものがあった。


(ほう。これはすごいな……。壁に、日記が掘りつけてある)
(なんですって?)
(出て来て見ればいい。研究所の地図まである……。伝聞情報だけでここまで正確に描いたのか)


 暁美ほむらは、デビルヒグマの聴覚と嗅覚に敵が探知されないことを確認して、鎧の外に這い出した。
 ここから先は完全に、敵陣真っ只中での行動になる。
 幸いだったのは、この周辺には、保護室の結界から続く魔力が、かなり濃く通路に広がっていたことだった。
 魔法少女の探知能力で正確に周囲の地形を探れるほどに、その濃度は高い。
 西側の通路は、程なくして終点になっている。
 そこが目的の、『診療所』であるはずだった。

 ――最小の時間で、最大の情報収集を。

 そう思って彼女が南の最奥の保護室に降り立った時、初めに襲ったのは、違和感だった。

 眼が、霞んでいる。
 数畳の広さしかない保護室の内部にさえ焦点が合わず、ただぼんやりとした灰色の空間にしか見えなかったのだ。


(どうした、暁美ほむら?)
(……本当に、魔力が欠乏してきてるみたいだわ。増強した視力が、近眼に戻ってる……)


 筋力もまた、相当に落ちているようだった。
 魔法少女としての身体強化が、根こそぎ効力を失っている。
 心臓病の病み上がりの、ミッション系学校に通っていた当時の、ひ弱な少女の体力しか、暁美ほむらには残っていなかった。

 『トロイのマトリョーシカ作戦』を決行しないで良かっただろう。
 これでは、数十メートル走っただけで息が切れる。
 機関銃の反動にさえ耐えられるかどうか。
 ヒグマとは到底勝負にならない、凡人以下の身体機能だった。


 ――嫌な懐かしさね。


 ほむらは溜息を吐きながら、盾の中に腕を差し入れた。
 ループの初めに毎度保管する赤いセルフレームの眼鏡と共に取り出すのは、その内部に確保していた仲間たちだ。

 自分と同じく、『嫌な懐かしさ』に直面しただろう彼女。
 巴マミは。大丈夫なのだろうか――。

 そんな不安を胸に抱くほむらの上に、正午を告げる第二回放送の音声が、降り注いでいた。


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「……迷惑にも程があるクマ。『艦これ』に関与した者がみんなテロリストみたいに思えるクマ、あんな放送……」


 保護室の入り口付近で、デビルヒグマと共に通路の様子を伺う球磨が、苦々しく呟いていた。
 第二回放送で呼ばれた天龍と島風の消息にやるせなさを感じながらも、直後に発された暴徒の言葉は、彼女の感情を上から塗りこめて余りある衝撃だった。
 その内部では、暁美ほむら、巴マミ、ジャン・キルシュタイン、纏流子、碇シンジといった面々が、揃ってその呟きに頷く。


「それを言ったラ、アイドルオタクはみんな詐欺師デス……。貴重な物資を仕事の建前で掠め、我欲を満たすためダケに使うなど……。汚職も甚だシイ……」
「『艦これ勢』も似たようなことをしていたわけじゃないの?」
「仕事と地位を利用してヤッテいる分、アイドルオタクの方がよっぽどタチが悪いデスよ……」


 巴マミの胸元で頭を抱えているのは、ガラス玉に入ったビショップヒグマだった。
 人間社会に例えるならば、防衛相が土建業者とがっつり癒着し、自分の趣味だけで集客見込みゼロの歓楽施設を、公金横領してぶち上げたようなものである。
 そんな指導者は、住民から総叩きにあって即座に降ろされるのが当然だろう。

 それを見るに、今回、第二回放送で叩き殺されたのは、どうやらそのアイドルオタク、『シバ』であるようだった。
 構図としては、帝国に反旗を翻したらしい『艦これ勢』が、その汚職指導者を引き摺り降ろしたことになるので、どちらかというと、大義は『艦これ勢』にあるようにすら思えてくるから不思議だ。

「……てか、どんぐりの背比べだろ」
「どちらにせよ、この国はめちゃくちゃってことなんですね……」

 流子とシンジが、ビショップヒグマの嘆きへそう端的に結論をつけていた。

「……ビショップさんは、そのシバさんって方の部下ではないの?」
「……お恥ずかしながラ、警備担当という意味では、部下デス。帝国の皆様……。本当に申し訳ナイ……」

 巴マミの語り掛けに、ビショップヒグマはるずるずとガラス玉の下方に沈み込んでしまう。


 帝国の要職という面で、『ピースガーディアン』である彼女たちにとっては、この艦これ勢の反乱は一大事であった。
 先程の戦闘で実力の知れた手負いの侵入者たちより、大規模なそのヒグマたちの暴動を鎮圧することが、ビショップヒグマにとっては最優先の事項だ。
 暁美ほむらの計らいで、クックロビンたちの一連の会話および、デビルとほむらのテレパシーを聞いていた彼女の決断は、早かった。
 ビショップヒグマは、ナイトヒグマと自分の解放を条件に、星空凛の『診療所』での治療および、暁美ほむら一行の地上への帰還を仲立ちする約束を取りつけていたのである。
 当座のところは、彼女にとってもほむらたちにとっても、協力した方が事態は好転するのだ。
 ほむらとビショップは互いに、相手が話のわかる者だったことに感謝した。


 ビショップの知る『診療所の指導者』がそこにいるならば、既に一行の動きはパクとハクが同行していた辺りから全て察知されており、なおのこと、直近まで来たならば、鎧の中に隠れている暁美ほむらの存在は音響の反射の差異で感知されていたはずだ。
 奇襲は成立しない。
 ナイトヒグマを人質にとって脅したとしても、『彼』ならば、暁美ほむら自身に、ナイトヒグマを進んで解放させるように仕向け、その上で殺害するという芸当を容易く行える。

 こうしてビショップを目前に構えて害意なく話していることは、暁美ほむらたちにとって人質所有のアピールであり、また、ビショップ自身を感知器として据えておくがゆえの処置である。
 『診療所の指導者』は、もしそこに居るならば、この状態にも既に気付いているはずだ。
 『彼』はこんな状況なっていれば、まず子細を確認するために、話しかけることから始めるはずであった。
 それが無いということは、今診療所に『彼』はいない。
 その上で、球磨とデビルヒグマの感覚に掛かるような者が来ていないということはつまり、まだ自分たちの存在は診療所の面子に感知されていないということを意味していた。

 口に出すわけではないが、ビショップヒグマの所感としては、暁美ほむらの方針転換は感嘆すべきものである。


 いまだ気絶しているナイトヒグマは鎧と共に、一番中身の少なかった纏流子のデイパックに押し込められている。
 ほむらの盾の中で保護されている星空凛と、付き添いの球磨川禊が、何かの間違いで傷つけられないようにするための措置だ。

 裸パンツ先輩と化している球磨川と、意識のない凛を二人っきりにすることに関しては、球磨やマミといった女子から若干の懸念の声が上がった。
 だが、球磨川本人と、デビル含む男性陣から「いやいや流石にそれはない」との弁護があり、流子とほむらが、「もし間違いがあったら、しばく」という結論に至ったため、こういうことになった。


 ビショップヒグマを封じた本人ということで彼女を抱えている巴マミは、ほむらの不安をよそに、その顔からほとんどさっぱりその憂いを払い去っていた。

「――ん? どうかしたかしら暁美さん」
「あ、巴――、いや、マミさんにも、この図を一緒に見てもらおうと思って」

 顔を上げたマミと視線を合わせたほむらは、彼女を部屋の奥の壁側へ招く。
 そこには、ここに捕まっていた魔術師が描いたらしい、細かな血文字の記録が残っていた。

 ちょうど、人ひとり分の大きさがあれば隠れるくらいの範囲に記載されているそれは、日々の些細な出来事の抄録となっていた。
 それだけでは単なるとりとめもない事柄に思われたが、その下部には、その会話の聞き込みから描き上げたらしい、詳細な研究所の間取り図が残っていた。

 地上との出入口である火山横のエレベーター。
 非常通路としての下水道との交通箇所と階段。
 島内のエネルギー供給を担う示現エンジンという何か。
 ヒグマの培養室。
 その他研究員の控室、ヒグマの檻などもろもろ。

 デビルヒグマの檻が研究所の北東の隅にあることまで特定しているその図面は、確かに貴重な情報ではある。
 しかし、一見すれば済みそうなその空間に、いまだ暁美ほむらが留まっているのは、そこに何かが隠されている感覚を、その図に感じていたからである。
 ビショップヒグマは、帝国について必要以上のことを話さなかったし話すつもりもなかったが、どちらかというと早急に診療所へ行くことを促していた。
 直前までほむら自身も早急な行軍をするつもりだった予定を差し止めてまで、ここで一旦小休止を挟んでいるのは、その感覚のためであった。


「……ジャンさん、彼女、預かっててもらえる?」
「おう。気になってたんだけどよ。お前らは、クマとかリンの演舞を見たいとかは、ぜんぜん思ってないわけか?」

 マミから手渡されたビショップヒグマに向け、ジャンがそんなことを尋ねていた。
 球磨とデビルの後ろの入り口正面でビショップを抱えるジャンに、彼女はその液化した体を揺らして憤慨する。


「当たり前でシょう!? なんで我々が、鼻も低い、体毛も薄いサルの仲間をカワイイと思わなくてはならないンですか?
 アナタ方さっきからカワイイカワイイ言い合ってましたけど、私にはどこがカワイイのか正直ワカリマセン」
「……もしリンの舞台が完成しても、行かないのか。そうか……」
「行きまセんよ……。少なくとも、私の知り合いは誰も興味ナイと思いますネ」

 答えるビショップの声音は相当に辟易している。
 呟くジャンの声は、どことなく残念そうだった。

「ふーん。それじゃあヒグマ帝国内での一般的な『カワイイ』の基準って、どんなものクマ?」
「ビショップさんは、仲間内ではモテる方だったんですか?」

 球磨とシンジの質問に、ビショップはその透明な顎を掻いた。


「そうデスねェ……。小さくてモコモコしてる子はカワイイ扱いされてマスね」
「お!? じゃあ球磨はどうクマ?」
「顔と手足にも毛が生えて、マズルがもう少しあレば、ここでもやっていけると思いまスよ、熊として……」
「ん~……。惜しいクマ。じゃあ今のまま堂々と潜入は出来んクマ」

 『艦これ勢』という勢力の存在を知って、ヒグマ帝国の大部分に自分の容姿が通用するなら、美人局まがいの強行突破もできなくはないのではないか。と踏んでいた球磨の計画は、流石に空ぶる。

「モテるという意味では……、ルークとかも異性の注目を浴びていたような気がしマス。あとは、デビルさん方初期ナンバーの方は羨望の的でシたよ。
 ……私はこの通リ異形でスので、そのようなコトは一切ありまセんでしたが」
「そうか? あんたの包容力はある意味すごいと思うんだが」

 最後にぼそりと付け加えられたビショップの呟きを、纏流子が耳聡く拾っていた。
 実際ビショップヒグマの包容力は、物理的にすごい。
 彼女に抱かれた球磨川がこの場にいたら、おそらく彼女のナカの感想を詳しく述べてくれていただろう。
 皮肉とも本気ともつかない流子の言葉に、ビショップはうんざりした様子で首を振った。

「包容力があったトコロでつがいはできまセんよ、残念ながラ……」
「そりゃあんたが、毅然としすぎだからじゃねぇのか? ちょっと自分の弱いところを見せて、男に守ってもらえば、すぐチャンスはくると思うぞ」
「オスなどに守ってもらわズとも、我々雌性体は生物学的に十分強いのでス!! 余計なお世話デス!!」

 ジャンの指摘は、ビショップの痛いところを突いたらしい。
 憤慨した彼女は話題を逸らすべく、通路の方を見張っているデビルヒグマに向かって尋ねかけていた。

「むしろ、栄えある穴持たず1であるアナタともあろう方が、なぜ人間と同行しているのカ。私は純粋に疑問でス」
「……私は、マミに命を救われたからな。だから、私の眼の届く限りは、その恩を返そうと思っているわけだ」
「アハぁ、それならわかりマス。艦娘も、生まれの由来が似ているから感情移入した、と考えレば、理解できなくもない。
 デスが、人間のアイドルにハマる奴の気は知れまセんね。人間から吹き込まレて、影響を受けたんでスかねェ……」
「そのシバという奴は、人間なのか……!?」
「アー、軍事機密に関スる事項なので、そこはノーコメントでスね。スミマセン」
「……いや、待てよ。確かに、居たじゃないか、『二期ヒグマ』には、あいつが」


 答えをはぐらかそうとしたビショップヒグマだったが、デビルヒグマはその時、既に記憶と閃きを繋ぎ合わせてしまっていた。
 研究所には、確かに、ヒグマであり、人間である人物が存在していた。
 島内の魔法に関する事柄の一切を取り仕切り、この保護室の結界からカードの具現化まで可能にさせた一人の少女。

 その少女の名を呟いたデビルヒグマの声に、暁美ほむらの声が重なっていた。


「「『シバ ミユキ』だ」」


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 だいたい、私の周りにいた仲間は、男がどーだとか、独りぼっちは嫌だとか、女の腐ったような魔法少女しかいないのが問題だった。
 それに関しては、まどか以外の全員をないがしろにして突っ走ってきた私もほとんど同列だったわけで。
 私たちが正しい道に至るためには、その意識改革が必要だった。

 巴マミは、私に魔法少女としての心得を、まどかと共に教え込んでくれた、憧れの大先輩だ。
 だがそのメンタルは、「魔法少女が魔女になる」という事実を知っただけで煮崩れる、おぼろ豆腐レベルの代物だった。
 そして仲間全員を巻き込んで無理心中しようとするのだから、そのタチの悪さは船幽霊もかくやだ。

 憧れは憧れ。その傷はその傷ではあるが。流石に、その重篤な意識の欠陥はどうにかしなくてはならなかった。

 私は今まで、彼女と関わる時もそこに極力触れないようにしてきた。
 今回、すんなりと巴マミにその事実を教えてしまったのは、「まどか以外の仲間も慮る」という私自身の意識改革であり、彼女の意識改革でもある、一種の大博打だった。
 私はあの瞬間に、巴マミが即座に私と自分のソウルジェムを砕きに来たとしても驚かなかっただろう。

 それが少しでも耐えて、黙然と同行を続けてくれていただけで、私には相当な希望に見えた。
 星空凛に守られるがままに固まっていたあの場面でも、私はむしろ、彼女が自分の命を守ろうと魔法を発動させたことに心中雀躍した。

 だが正直、それ以上どう彼女に接すればいいのかは、私にはわからなかった。

 なので、盾の中のその他の面子に、その後を丸投げした。
 そうするしかなかった。
 今の私が彼女に声をかけたとしても、トラウマを抉り返して自殺に追い込むのが関の山だっただろうから。
 私はやっぱりまだ腐っているのだとは我ながら思うのだが、無理して私が急造の慰めをひけらかすより、期待の持てる私の仲間たちが多角的にフォローしてくれた方がより回復の見込みがあるだろうと、単純数理的に計算してそうしていた。


 ――そして、その効果は、私の思っていた以上に、覿面に表れていたらしい。


「暁美さん、その眼鏡カワイイわね。魔法少女になる前は、眼鏡っ子だったの?」
「――え? ええ、まあ」
「ごめんなさいね。暁美さんがそこまで魔力が削れるほど頑張っていてくれたのに、今まで押し付けっぱなしで。
 でも、もう大丈夫よ。暁美さんが休んでも、支えてあげられるくらいには、自分で立てるから」


 私のところにやって来た巴マミの第一声は、それだった。
 開口一番に、他人を褒めるところから入る――。
 そんな少女だっただろうか。巴マミは。
 そんな言葉、彼女から久しく聞いた覚えがなかった。

 見つめ合った瞳は、かつて『初めて』私たちが出会った時のような、先輩然とした力強いものに見えた。
 この眼鏡のせいもあるかも知れない。
 しかしむしろ、あの時よりも今の方が、その力強さは自然に湧き出ているもののように感じた。


「……で、暁美さんが違和感を覚えていたのは、この結界のことよね」
「――!! その通りよ。この部屋だけ……、何というか、その走行が『引き攣れている』というか。
 まだ何かが隠されている、そんな感じがするの」
「そうね。北側の保護室なんかは、きちんと結界が編まれていたけれど……」

 巴マミは、私の思考に懸っていたいた事柄を、的確に言い当てていた。
 しかも既に、私が呼ぶ前の段階で、周囲の部屋との比較まで行なっていたらしい。
 初めて会った時の巴マミをしなやかなリボンとするなら、今のマミは、そこに鋭さと強靭さが加わった、鋼線のようにすら私には思えた。


 この保護室群に展開されている結界は、魔女の結界に比べて、大分整然としている。
 魔女の結界を、魔力の糸を寄せ集めて固めたフェルトの服だとすれば、これらの部屋を覆っているのは、精密に編み込まれた毛糸のセーターだ。
 強い魔力の糸で織られている分、縦横に並ぶその一段、一目まで、魔力が十分にあれば私も追えていただろう。
 しかし、私が気づけたのは、ここに存在する『歪み』どまりだ。
 そのセーターの繊維が、どことなくバランスを崩しているような、縮れているような、そんな些細なもの。
 それが、この地図の周囲にだけ、存在していた。

 デビルヒグマたち魔力を持たぬ者から見れば、これはただの地図にしか見えないのだろう。
 しかしここは、こんな緻密な調査と思考を重ねる『魔術師』がいた部屋だ。
 私には、それよりも遥かに重要なものがそこには描かれているような気がして、ならなかった。


「うん。これは……。よく見ると結界が、『焼き切られている』わ……」


 その時、血で描かれた地図に触れていたマミが、そう微かに声を震わせる。
 何かをつまむように引き戻された彼女の指は、その指先に、『結界を織っていた魔力』を掴んでいた。

「え!?」

 普通なら、有り得ないことのはずだった。
 セーターの糸がつまめる――。
 それは、一本の糸を編んで作られているセーターにとっては、致命的なことだった。
 簡単にほどけてしまう。
 存在していないのと一緒だ。

 縫い終わりならばその糸はつまめるだろうが、通常それは生地の末端に巧妙に入れ込んで止めてあるし、当然、この結界の『縫い終わり』も、『示現エンジン』と呼ぶらしいさらに地下の構造物にまで繋がっていた。
 つまりこの部屋の結界は、途中で魔力を分断されていたことになる。
 扉の開放うんぬんに依らず、初めからこの部屋の結界は、形骸化していたのだった。


 マミは、魔力の糸を引く。
 するとそれは壁と床の境目に繋がり、ほどけていくさなか、結界の一部として縫い合わされていたそこに切れ込みを入れる。

 パカッ。

 と音を立てて、床材がめくれ上がっていた。
 ウレタンとコンクリートの床の隙間に形成されたその空間に入っていたのは、小さな手帳と、一本の人間の『歯』だった。
 巴マミはその二つの物品を掴み上げ、華やいだ声を上げる。


「……あなたの見立て通りよ暁美さん! やっぱりここに捕まっていた人は、情報を残していてくれたんだわ。
 魔法少女にだけわかる隠し方……。ヒグマに対抗する人間が来ることを、予期していたのね……」

 彼女の様子を見つめて、私は唖然とするばかりだった。
 返事のない私に気付くと、マミは私にその物品を手渡しながら問いかけてくる。


「……どうしたの暁美さん?」
「……変わったわね、あなた。正しく私の先輩だった時よりも、むしろ先輩らしい……」

 今までの彼女だったら、自分の発見した功績を、「あなたの見立て通りよ」なんて評価で語ることは、有り得なかったのではなかろうか。
 独りぼっちでいることを恐れ、『理想の先輩』、『正義の味方』を演じていたころの彼女からは、考えられないことだ。
 それとも何か。度重なるループで私の認識が汚れすぎていただけなのか。
 一体何が、あんなに打ちひしがれていた彼女を、絶望の檻から脱出させたのだろうか。
 これは後で詳しく、聞いてみる必要がありそうだった。

「……アイドルって話が出たから、そんなに独りが嫌なら、極論アイドルにでもなれば良いじゃないとか言おうとも思ってたんだけど……。
 その必要は、なかったみたいね……」
「アイドル――?」

 マミは首を傾げた。
 我ながら頭の悪い提案だ。
 だけど、もし球磨やジャンたちで巴マミを復帰させることが出来なかったら、最後のダメモトで、そんな提案をしてみるつもりだった。正直、今さっき思いついた急造案なのだが。
 正方向のエネルギーで皆の注目を集めるアイドルは、それだけ見れば、別に頭ごなしに否定すべき案でもないだろう。
 ……ビショップヒグマなどの言うとおり、こんな島で、誰相手に公演するんだという話だが。
 本当に、なんでこんな慰めにもならないような慰めしか出てこないんだろうか、私は。

 マミは、首を傾げたまま、じっと私のことを見つめていた。


「……前から聞こうと思ってたんだけど。暁美さんは、初対面の時から、私たちの名前だったり、そして今、私の悩みだったり……。どうしてそう、色々なことを知ってるの?」
「――!?」
「暁美さんの魔法って、心を読むとかじゃなく、『時間停止』なのよね……?」


 彼女の視線がリボンとなり、蛇のような素早さで私の心の中に侵入していた。
 些細な、塵芥のような言葉尻を、捉えられた。
 その上、私の魔法まで知られている。

 ――何という勘の良さか。

 この巴マミがいつの時間軸の巴マミなのか知らないが、私が彼女に手の内を明かしたのは初めの数ループ程度だ。
 そして、現時間軸の私は、まだ見滝原で彼女に遭遇していない。
 だとすれば、彼女が私の魔法を知ったのは、先の『ピースガーディアン』との戦いで漏れた些末な情報の断片からでしか有り得ない。
 往年の、見滝原の伝説の魔法少女の才覚は、健在ということか。


 私は眼鏡を外しながら、彼女の視線を切り払った。
 このまま眼を合わせていたら、遠からず、私の秘密を察知される――。
 何の準備もないままに、裸の心を絡め取られてしまう――。
 そんな予感すらした。


「それより、早く、この手帳に目を通しましょう」
「ええ……。もっと時間のある時にするわ」


 無意識下の反射速度でマミの踏み込みを手帳で躱したものの、私との対話はしっかりと彼女に予約されていた。
 ゆくゆくは、話したい。
 話さなくては、ならない。

 だがまだ私は、魔法少女としての『望み』に囚われた、腐りきった女だ。

 私は彼女ら彼ら全員を、まどかへ続く道を張る、駒だとしか捉えられない。
 そう捉えなくては、進めない。
 そしてそれが、申し訳なくて仕方がない。

 だからまだ、この『望み』だけは、彼女たちに展開して見せることは、不可能だった。


    ∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈


『これをよむのは、この施設の研究者だろうか。
 それとも首尾よく潜入に成功した、実験とやらの参加者か。
 少なくともそれは、魔術の心得がある者だ。
 誰だっていい――』


 眼鏡を額に押しやり、視線を落した手帳には、整然とした血文字で、走り書きの文面が記されていた。
 衛宮切嗣という魔術師が、今わの際に、ヒグマへの対抗策として、この手帳を残していてくれたらしい。

 そこには前文の後、5つの小単元が並んでおり、初めの1つ以外には、その下に詳しい解説のようなものが続いていた。
 その項目は。

①ここには万能の願望機である「聖杯」がある
②聖杯降臨の術式を施設全体に布いたのは「シバ ミユキ」という魔術師
③マナの一部を令呪として小魔力(オド)に変換する
④確認できているヒグマ
⑤魔術刻印

 の5つ。
 中でも②と③は内容が連続しており、衛宮切嗣が、隣室の魔術師とともにこの島の結界の欠陥を突き、逆に利用していたその方法が記されていた。

 ここに記載されている、研究所所属の魔術師の名前には、聞き覚えがある。
 私は、巴マミと共に顔を上げた。


「「『シバ ミユキ』だ」」


 私の呟いた声は、入り口のデビルのものと重なった。
 彼と顔を見合わせると、彼は薄く笑いながら、ビショップヒグマの方に語り掛け始める。


「……あの魔術師の女が、このヒグマ帝国の成立に一枚噛んでいたんだな?
 恐れいった。あいつがアイドルオタクか。そして……、放送していたのは男の声だったから……、その兄貴か何かだな。
 兄妹揃って、裏切り者のアイドルオタクの汚職指導者か。やはり中途半端に人間なんかを上に据えると大変だな……」
「お二方を弁護したいのは山々なのデスが、言ってしまうと機密に抵触スるので……。言いたくもあり、言いたくもナシ……」
「……弁護できるところ、あるのか?」
「……いえ、実のトコロあんまり……」


 ビショップヒグマは、ガラス玉の下部に顔を埋めて、その軟体をひたすらに平身低頭させていた。
 司波深雪の名は、④に列挙されているヒグマ80体のうち、その46番目にも記載されている。
 職員であった彼女は、『穴持たず46:シロクマ』としても登録されていたらしい。

 そこの直下の47番目から50番目までの4体のヒグマは、研究員の口に一切のぼってこなかったヒグマとして、注意すべきだという但し書きが附されていた。
 デビルの口振りと併せるに、研究所に通じていた『シバ ミユキ』が密かにこの4体を集め、魔法で研究員の印象や記憶を操りながら帝国を建設していたと考えるのが最も自然なシナリオだろう。

 そして当然、この5体のヒグマが、帝国の指導者ということになる(うち『シロクマ』と『シバ』には頭に“汚職”という形容がつくのだろうが)。
 パク、ハク、クックロビンの発言を鑑みるに、残りのうち1体は『ツルシイン』という建築担当の指導者。
 シバを防衛関連、シロクマを庶務と見ると、恐らく残る2体は、医療・公衆衛生と、食糧関係の指導者という感じになるのだろう。
 やはり診療所には、プレーンでない強力なヒグマが控えている可能性が高い。
 迂闊に近寄らずに正解だっただろう。


「アケミ、何かわかったのか!?」
「ええ……。ここの魔術師が、かなり詳しい情報を手帳に残してくれていた。あと、魔力の回復手段もね」
「おお!? 良かったクマ!! 念願のことクマ!!」

 ジャンや球磨から寄せられる声に、私とマミは頷く。
 手帳すべてに目を通し切るには、時間がかかりそうだった。
 しかし気になること。そして、私たちが最も期待を抱いていたことは、その項目のうちの一か所だった。


『③マナの一部を令呪として小魔力(オド)に変換する

 マスターでなくとも、令呪は強力な無色の魔力だ。
 起動させれば誰にでも使える。
 次に手順を記す――』


 ②の単元にはこの部屋の結界が、『地脈の大魔力(マナ)を、ぼくら魔術師を経由して施設と聖杯に供給するもの』なのだとある。
 記されている手順は、その供給先を一時的に変更して窃取ためのものであるようだった。
 私たち魔法少女の用いる魔力とは、その根源が大分違うものかも知れない。

 しかし、試す価値は、ある。
 そして試さなければ、私たちは『魔女化』という奈落の崖っぷちに立っているままだった。


「……暁美さん。やってみて。あなたの方が、魔力は消耗してるみたいだから……」
「そうね……。私個人としては、これが呪いよりおぞましい色に染まったとしても、諦めるつもりはないけど」


 マミから、糸のように伸びる結界の魔力を受けとり、私は左手甲のソウルジェムに繋いだ。
 菱形の宝玉は、ほとんど濁りで真っ黒になっていたけれど、黒いなら黒いなりに、輝きは失っていない。
 それはまだ、私の『望み』が、壊れていないことを意味していた。

 その魂の形に糸巻きをイメージするようにして、私は、手帳に記載されている文言を唱える。


「『――変革準備、自失、忘我、接続、開始』」


    ∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈


 瞬間、世界が私に、流れ込んでくるような感じがした。
 喉が詰まった。

 なんだ――、これは。

 見えていたのは、太陽のような、真っ赤な灼熱だった。
 地下深くから湧きあがる、マグマそのもののような。
 そこに向けて、私は、上空から真っ逆さまに落ちてゆく。
 吹き上がるプロミネンスの炎に炙られて、私の衣服はたちまち焼け落ちる。

 骨肉を熔かす熱量。
 膨大な魔力の噴流だ。

 それが湧きあがる音は、ヒトの唸り声のように、低く高くどよめいている。

 この星全体。
 この星の人間全体。
 この星に息づく生命全体。

 私の視界一面を埋め尽くす、真っ赤な『願望』の塊に、私は同調してしまったかのようだった。


 ――こんな莫大なエネルギーに、私の体は耐えられない!!


「『小さく、小さく、小さく、小さく』――! 『円環航路、開示』!!」


 現実の肉体で、私は辛うじてそう詠唱した。

 すると即座に、急速に私の精神は上空へ引き戻される。
 視界を埋めていた赤色は遠くなり、広漠な闇の中を落ちて、私の尾骶骨の奥底に消え去った。

 吹き上がった炎の一筋の煽りだけで、私は全身に火傷を負ったような凄まじい痛みを覚えていた。
 特にその痛みが強かったのは、右腕の部分だ。
 その手の甲には、焼き付けられたかのように、黒色の文様が描かれている。

 上下に、太く毅然とした平行線として描かれた二画。
 そしてその中を、女性的な丸みを以て描かれる、Xの形をした一画。
 一見すると、砂時計のように見える図案だった。


 そして続けざまに、私の中には、誰かの記憶のようなものが流れ込んでくる。

 見えているのは、この部屋だった。
 夜だ。
 誰もが寝静まったかのようなその時間に、私と重なっているその人物は、隣の部屋から聞こえる男性の呟きに囁き返していた。

『――クソッ。僅かでも魔術的干渉力のある礼装があれば……』
『……僕の手が、必要かな』
『貴様とて礼装などなかろう。この結界は単純だ。容易に編集できる……。その書き込みに使うペンさえあればな……』
『ペンならあるさ……』

 この人物の手には、私が今持っている手帳が握られている。
 彼は右手を、自分の口の中に突っ込んでいた。

『僕が、君に打ち込んだ銃弾を、覚えているかい……?』
『忘れられると思うかね、アインツベルンの犬……』
『あれは僕の、肋骨から作られていたんだ』
『……なに?』
『僕の起源は、「切断」と「結合」だ……』

 ボキ。
 という音を立てて、この人物は自分の犬歯を、折り取っていた。
 口の端から血を零しながら、彼は深く笑みを浮かべていた。

『その名も高きロード・エルメロイ……。今回は僕を、君のお付きの画家に雇ってくれないか?
 君の素晴らしい魔術の実力ならば、必ずやこの難問を解いてくれると思っていた。
 さぁ。言ってくれ。君の指示通りに描くよ。カット・アンド・ペーストなら自由自在だ……』

 彼の指先に摘ままれた歯が背後の結界に触れると、そこは焼きごてを押し当てられたようにぶくぶくと沸騰する。
 そしてそれは隣室の壁をも貫き、部屋同士の結界の間に、見事な瘻孔を形成させる。
 二人の男性の含み笑いが、そこに響いていた。


「『大きく、大きく、大きく、大きく。隘路港道、連続閉鎖』――!!」


 流れ込む記憶が増えるにつれ、私の骨身は軋みを上げていた。
 同時に、右腕にはさらに黒い文様が描かれていく。
 もう、これ以上は、無理だ。
 全身をすり鉢に投入されて突き砕かれるような痛みに、身を捩った。

 体が。精神が。壊れる。

 その前に。
 私は最後の息で、呪文の詠唱を終了させていた。


「――暁美さん! 暁美さん!! 大丈夫!?」
「え、ええ……。なんとか……。魔力の吸収は、早めに切り上げた方がいいみたいね……」


 私の体は、巴マミに抱えられていた。
 その周りから、心配そうに、ジャン、球磨、流子、シンジたちが私を見下ろしている。
 ソウルジェムは――。
 真っ黒に濁ったままだった。

 魔力は、充溢している。

 実感としてはかなり大量に、私はこの大地から魔力を摂取していた。
 しかしそれは、魔法少女の魔力とは、だいぶフォーマットの違うものだったらしい。
 パソコン用に使っていたデータCDに、コンポから音楽を書き込もうとしたようなものだ。

 魂の魔力と、肉体の魔力。

 そのまま同一の媒体には書き込めない。
 魔法少女としての魔法を使ったり、絶望したりしてしまえば、相変わらず私はすぐ魔女に堕ちる場所に立っている。
 だが今の私には、この衛宮切嗣という魔術師から託された、何本もの命綱が繋がっていた。


「……球磨。今までの間に、経路の探査は終わった?」
「研究所と新規通路の寒暖差で、曼哈頓(マンハッタン)水偵の調子はばっちりクマ。
 診療所まで飛んで、位置も頭数もしっかり把握終わってるクマ!」
「ありがとう……。さすがね」


 身を起こした私は、デビルやビショップを含めた全員を、近くに集めた。

「新しい作戦が決まったわ……。作戦名は、『マラトンの加速機略戦』」


    ∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈


「ど、ど、どうなっちゃうんですかぁあ!? た、大変ですよぉ!! シバさんが殺されるなんてぇえ!!」
「……テンシちゃん、いい加減落ち着きなさいよ。シバさんは再生能力持ちじゃろもん」
「こ、これで落ち着いてなんていられませんよ!! シーナーさんもヤスミン姉さんもいないんですから、私たちがこの診療所を暴徒から守らなきゃぁ!!」


 ヒグマ帝国の診療所。
 第二回放送を聞いた後から、艦これ勢の暴徒化を知った穴持たず104は、独り大騒ぎして所内を駆け回っていた。
 穴持たず88のベージュ老が、彼女をなだめようと車椅子から声をかけるも、その混乱はほとんど収まらない。

 薬品棚や分析装置を手あたり次第ドアに寄せてバリケードにしたり、点滴用のガートル台を構えて槍のように武装したりと、やりたい放題だ。


「……そんなことしたら、ケガした子が入って来れないよ」
「ハッ――!! そうでした!! それじゃあバリケードはどかさなきゃ!!」
「……じゃが戦時救護は戦闘の要じゃから、真っ先に潰しにくるかも知れんのう」
「ハッ――!! そうでした!! それじゃあバリケードは要りますよ!!」
「……空襲とか爆撃が来たら、バリケードは意味ないのう」
「ハッ――!! そうでした!! ベージュ老さん、防空壕ですよ、防空壕!!」


 呟きのままに、今度は一階の診察室の隅に塹壕を掘り始めた彼女の姿を、ベージュ老は慈愛と呆れのないまぜになった視線で見守った。
 車椅子を軋ませて受付部分に乗り込んだベージュ老は牙を噛む。


 放送の最後で騒いでいた暴徒は、『艦むす』、『ヒグマ提督』などという単語を発していた。
 ベージュは午前中に、艦船のような装備を背負った何人もの少女と、士官帽を被った若いヒグマが連れ立って地上に行くのを看過している。

 ――彼らが、目下反乱中の、暴徒の首領だったのだ。

 ベージュ老は、その最重要の者の亡命を許してしまった自分の不甲斐なさに舌打つ。
 まさかそんな者が、人目もはばからず、公的機関から堂々と出ていくなんて、普通ならとても考えられない。
 その意識の死角をついた大胆不敵な逃避行はベージュに、この暴徒たちがとても一筋縄ではいかないだろうことを想定させていた。


 しかし、診療所は、戦時下においても基本的に中立の立場だ。

 誰であっても、患者であれば敵味方の別なく治療するのが常であるし、大抵は、その理念に感じ入って、野戦病院には攻撃の手が入らない。
 ここでもし、そんな理念にお構いなく、敵方の設備だからと破壊行動の餌食になるとすれば、戦闘用の道具も、個体レベルの戦闘能力もほとんどないベージュ老たちに対抗手段はない。


 『ピースガーディアン』からは、地上からの侵入者が何人もやってきたことが通信されていた。
 彼らはその時、目下戦闘中であったらしいが、果たしてその戦いはどうなったのか。
 診療所の主であるシーナーからは、自分たちヒグマの真の敵と目される、機械らしきものについてと、この実験と闘争における勝利条件が、長々とした文面で送られてきていた。
 こういうものを送っている時間があるなら、正直シーナーには休息して欲しいと切に思う。
 彼ら『ピースガーディアン』が帰ってきたならば、この文面を見せようかとも思っていたのだが、この環境下ではそれが叶うかどうかすら怪しい。


 さらに、シーナーの文面の『勝利条件』とやらの部分は、多分に彼の主観が溢れているようで信憑性に乏しかった。
 彼が相当に疲弊している証拠だ。

 シーナーの伝える『勝利条件』に照らすなら、帝国産のヒグマであるヒグマ提督が、今まさに地上に行って参加者と接触しているだろうわけで。
 そこで何かの間違いで彼が参加者を殺してしまったら、
“参加者以外のヒグマ、あるいは参加を許されていないヒグマを以って、
 島外や地下に行く、首輪を外すなどの禁を破っていない、まっとうな参加者を殺害してしまうこと”。
 という禁じ手を破ったことになり、ヒグマは全滅、参加者の勝ちになるという。

 ――そんな理不尽なことを、イソマ様がするか!?

 と、ベージュ老は思う訳である。
 穴持たず48・シバは、参加者を殺せる帝国の人材として最強。と謳っているが、その彼は、今さっきその帝国の臣民によって殺害された。
 間違いなく復活はしているのだろうが、それはもはや既に、帝国の意志が一塊ではないことを示している。
 そんな禁じ手とやら一つで、勃発した諍いの全てが、何も終わらないうちに結末を迎えてしまうなど、許されることだろうか。


 シーナー自身が、文面の冒頭に書いているではないか。
 『協力し、迎え撃て』と。

 イソマ様は、この島の者たちが一丸となり、未来への意思決定をすることを望んでいるのではないか――?

 今度も主観は主観だが、ベージュ老はそう思うのだ。


 結局のところ、何もわからない。
 バリケードを張ったり医療機器をひっくり返したり防空壕を掘ったりしても、ただ一つはっきりしているのは、ベージュ老自身は、その未来へと行くことは、できないということだった。

 それならば、ベージュ老のすべきことは、一つだった。


 例えばここに、間近ではとても視界に収まらない、穴持たず104が散らかし、混乱した、膨大な医療物品がある。
 それは5秒かけて離れれば、視界の中にすっぽりと入る。
 ゆっくり片付ければ、その残りは僅かになる。
 さらに3分かけて整理すると、その混乱はなくなった。

 混乱はなくなり、使いやすく並べられた、薬品棚に戻るのだ。


「ベージュ老さん、ベージュ老さん! 防空壕掘り終りましたよ……って、あっ、バリケードなくなってる!!」
「……あんなんじゃバリケードにならんよ。テンシちゃん。もうちょっと、引いて物事を見なさい。
 落ち着いて、起きた事柄をきちんと見据えて対処するんじゃ。慌てても仕方ない。これ以上騒いで、三階で寝てる患者さん起こしたらどうする」
「う……、そ、そうですね……」

 ベージュ老のすべきこと。
 それは未来ある若者たちの混迷を解き、導いてやることだった。


 未来に何が待っているかはわからない。しかし、その道を進む者に協力し、道筋に地図を描いてやることは、できるはずだった。
 診療所は、いかなる状況でも中立だ。
 患者であれば、敵味方の別なく導いてあげよう――。

 そう、ベージュ老は思っていた。


 その耳に、ふと何の前触れもなく風の音が届く。
 瞬間、ベージュ老とテンシの周囲を、まばゆい光でできた三本の剣が取り囲んでいた。

「えっ」
「なっ」

 考える時間もないままに、診療所正面の窓から、颶風のように何かが入り込み、生物として有り得ない程の高速で、一瞬のうちにベージュ老とテンシの背後に取りついていた。

「……動くなよ。上には患者が寝てんだろ? ちょっとの間大人しくしててくれ」
「……怪しい動きをしたら、目ん玉にハサミが突き立っちまうからな」

 ベージュ老に剣、テンシに片刃の鋏を突き付けているそれらは、一組の人間の男女だった。
 何が起きたのか把握できるより先に、続いて診療所のドアが開け放たれていた。


 そこにいたのは、人間の少年1人、少女2人、そして、ヒグマ。
 少年は手元の機械に、『光の護封剣』と書かれたカードを設置している。
 彼が背後の少女2人に道を譲ると、彼女たちが診療所の中に入ってきた。
 眼鏡をかけた黒髪の少女と、彼女に肩を貸す金髪の少女だ。

 黒髪の少女が口を開こうとするが、その顔は真っ青だった。


「あな……っ、ごほっ、はぁ……、ちょっと治、はっ、りょう、し、ごほっ、あはっ、てっ、はあっ、はあっ……」


 息の切れている彼女は、ほとんどまともに喋れない。
 ベージュ老たちを指して何かを訴えようとしているのだが、その足取りは見るからにふらついて、立つのもままならないようだ。
 痰の絡んだようなその咳き込みは、医療班であるテンシとベージュ老をして、あまり彼女の心臓が良くないことを、容易に察知させていた。
 『ちょっと治療して』というその対象は、果たして彼女自身のことなのだろうか。


「あ、あの……。とりあえず、坐位になった方が、いいですよ……?」


 その場の全員から、彼女へ心配そうな視線が向けられる中、穴持たず104が、震える声で、彼女にそう語り掛けた。
 少女は「わかってる」とでも言うように頷きながら崩れるように座り込み、発言を隣の金髪の少女の方に預けていた。

「あの……、突然すみません。ちょっと、治療していただきたい子がいるんです」
「……拒否したら、わしとテンシちゃんを殺すということかね。お嬢さん?」

 結った髪の毛をふるふると揺らして、金髪の少女は首を横に振る。
 彼女は、隣の黒髪の少女の背を擦りながら、片手に何やら、通信機のようなものを掲げていた。


「悪いんですけれど。上階の4名のヒグマさんの命も、私たちは握っています」
『おう。いつでも魚雷発射できるクマ』


 通信機からは、そんな声が返ってきていた。
 ベージュ老とテンシが対応できぬ間に、窓から入った艦娘が、既に階段を上がって三階に突入していたのだった。


 余りの事態に絶句するしかない二名の元に、後ろから大柄なヒグマが、体を折り畳むようにしてドアから入ってくる。
 ナイトヒグマさんか――!?
 と、一瞬そう思った彼らの前に、そのヒグマの手元から、何か液体の入った大きなガラス玉が差し出されていた。


「――スミマセン、お二方。ピースガーディアンは、侵入者に敗北いたしまシた。要求をきいてあげて下サイ」


 つい先ほど送り出したビショップヒグマが、その球の中で白旗を振っていた。


【C-6 地下・ヒグマ診療所/日中】


【穴持たず104(ジブリール)】
状態:狼狽、纏流子から片太刀バサミを突き付けられている、光の護封剣で封殺中
装備:ナース服
道具:なし
[思考・状況]
基本思考:シーナーさん、どうか無事で……。
0:何が起きてるの!? 何が起きてるの!?
1:ビショップさん、そのガラス玉は一体!?
2:黒髪の子、大丈夫!?
3:このハサミ片方しかない!! 使いづらそう!!
4:夢の闇の奥に、あったかいなにかが、隠れてる?
[備考]
※ちょっとおっちょこちょいです


【穴持たず88(ベージュ老)】
状態:加速老化、ジャン・キルシュタインからブレードを突き付けられている、光の護封剣で封殺中
装備:車椅子
道具:なし
[思考・状況]
基本思考:がんばれよ、若人
0:患者は診るつもりじゃが……。流石に凄まじい手際と警戒心じゃな、侵入者さん方。
1:いざとなれば、わしらは未来に殉ずるよ
2:他のピースガーディアンは、どうしたんじゃ、ビショップさん……。
3:ピースガーディアンが来たらシーナーのメッセージを見せる
4:帝国で勃発している反乱は、大丈夫かのう……。
[備考]
※ベージュ老宛ての粘菌通信に、シーナーの秘密メッセージ
 (イソマが提示した実験の勝利条件、現在の敵がモノクマであることなどなど)が記されています。
※ヒグマ診療所で安静にしているのは、748~751番のヒグマ(「気付かれてはいけない」で布束さんにやられた奴ら)です(光の護封剣で封殺中)。


【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
状態:魔法少女でなかった当時の身体機能、労作時呼吸困難、魔力消費:極大
装備:自分の眼鏡、ソウルジェム(濁り:極大) 、令呪(残り3画)
道具:89式5.56mm小銃(30/30、バイポッド付き)、MkII手榴弾×10、切嗣の犬歯、切嗣の手帳
基本思考:他者を利用して、速やかに会場からの脱出
0:息切れ……! ダメだ、全然走れない……!!
1:凛を筆頭に消耗した軍隊を休息させる。
2:まどか……今度こそあなたを
3:脱出に向けて、統制の取れた軍隊を編成する。
4:巴マミ……。一体あなたにどんな変化があったの?
5:ジャン、凛、球磨、デビルは信頼に値する。球磨川、シンジ、流子は保留ね。
6:魔力は、得られた。他にもっと、情報を有効活用できないか……?
7:巴マミと、もっと向き合う時間が欲しい。
[備考]
※ほぼ、時間遡行を行なった直後の日時からの参戦です。
※まだ砂時計の砂が落ちきる日時ではないため、時間遡行魔法は使用できません。
※時間停止にして連続5秒程度の魔力しか残っておらず、使い切ると魔女化します。
※島内に充満する地脈の魔力を、衛宮切嗣の情報から吸収することに成功しました。
※『時間超頻(クロックアップ)』・『時間降頻(クロックダウン)』@魔法少女まどか☆マギカポータブルを習得しました。
※盾の中に、星空凛と球磨川禊がいます


【星空凛@ラブライブ!】
状態:感電による重体
装備:劣化大嘘吐きの螺子@めだかボックス
道具:基本支給品、メーヴェ@風の谷のナウシカ、手ぶら拡声器
基本思考:この試練から、高く飛び立つ
0:しっかり状況を見極めて、ジャンさんをサポートするにゃ。
1:ほむほむが戻って来たにゃ!
2:自分がこの試練においてできることを見つける。
3:ジャンさんに、凛が女の子なんだって認めてもらえるよう頑張るにゃ!
4:クマっちが言ってくれた伝令なら……、凛にもできるかにゃ?
[備考]
※首輪の通信機能が消滅しました。
※球磨川の劣化大嘘吐きによって、球磨川と同じステータスになっています。


【球磨川禊@めだかボックス】
状態:疲労(最大)、裸パンツ先輩、みそくん
装備:なし(裸パンツ)
道具:基本支給品、ランダム支給品0~2(治療には使えないようだ)
基本思考:???
0:『マミちゃんと凛ちゃんは大丈夫かな?』
1:『みそくん』『みそくん……』『みそくんかぁ……』
2:『そうだね』『今はみんなについてこうかな』『マミちゃんも巨乳だしね』
3:『凪斗ちゃんとは必ず決着を付けるよ』
4:『アイドルとかゲームとかに現を抜かしてる場合じゃないよね』
5:『……でもマミちゃんのアイドル姿ならちょっと見たいかも』
[備考]
※所持している過負荷は『劣化大嘘憑き』と『劣化却本作り』の二つです。どちらの使用にも疲労を伴う制限を受けています。
※また、『劣化大嘘憑き』で死亡をなかった事にはできません。
※『大嘘憑き』をあと数時間使用できません。
※首輪の通信機能が消滅しました。


【穴持たず1(デビル)】
状態:疲労極大
装備:伏せカード(【サイクロン】、【神の宣告】、【和睦の使者】)
道具:ビショップヒグマのガラス玉
基本思考:満足のいく戦いがしたい
0:マミが心配だ。
1:ヒグマ帝国……一体誰がこんなことを?
2:私は……マミに一体何の感情を抱いているのだ?
3:この様子では、実験はもう意味がないのでは?
4:アイドルといい、艦娘といい、大丈夫かこの国は?
5:……だがマミのアイドル姿ならちょっと見たいかも
[備考]
※デビルヒグマの称号を手に入れました。
※キング・オブ・デュエリストの称号を手に入れました。
武藤遊戯とのデュエルで使用したカード群は、体内のカードケースに入れて仕舞ってあります。
※脳裏の「おふくろ」を、マミと重ねています。
※暁美ほむらの令呪で、カードの具現化が一時的に有効化されています。


【穴持たず203(ビショップヒグマ)】
状態:ガラス玉の中に閉じ込められ中
装備:なし
道具:なし
基本思考:“キング”の意志に従う
0:スミマセンねベージュさん……。協力してください。
1:……艦これ勢に相対するには、夏の虫たちの力も借りるのもありでスかね……?
2:球磨さんとか、通信の龍田さんとか見る限り、艦娘が悪い訳ではナイんでスよね……。
3:ルーク、ポーン……。アナタ方の分まで、ピースガーディアンの名誉は挽回しまス。
4:シバさんとアイドルオタクは何やってるんデスか……?
[備考]
※キングヒグマ親衛隊「ピースガーディアン」の一体です。
※空気中や地下の水と繋がって、半径20mに限り、操ったり取り込んで再生することができます。
※メスです。


【ジャン・キルシュタイン@進撃の巨人】
状態:右第5,6,7,8肋骨骨折、疲労
装備:ブラスターガン@スターウォーズ(80/100)、ほむらの立体機動装置(替え刃:3/4,3/4)
道具:基本支給品、超高輝度ウルトラサイリウム×27本、永沢君男の首輪
基本思考:生きる
0:許さねぇ。人間を襲うヤツは許さねぇ。
1:リンが心配だ。それにしても、俺が何を分かってないって、ミソクン?
2:アケミが戻って来た以上、二度と失わせねえ。
3:ヒグマ、絶対に駆逐してやる。今度は削ぎ殺す。アケミみたいに脳を抉ってでも。
4:しかしどうなってんだ? ヒグマ同士で仲間割れでもしてるのかと思ったら、帝国だと?
5:リンもクマも、すごい奴らだよ。こいつらとなら、やれる。
6:リンのステージ、誰も行く気ないのか? そうか……。
[備考]
※ほむらの魔法を見て、殺し合いに乗るのは馬鹿の所業だろうと思いました。
※凛のことを男だと勘違いしています。
※首輪の通信機能が消滅しました。


【球磨@艦隊これくしょん】
状態:疲労、中破
装備:14cm単装砲(弾薬残り極少)、61cm四連装酸素魚雷(弾薬残り少)、13号対空電探(備品)、双眼鏡(備品)、マンハッタン・トランスファーのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
道具:基本支給品、ほむらのゴルフクラブ@魔法少女まどか☆マギカ、超高輝度ウルトラサイリウム×27本、なんず省電力トランシーバー(アイセットマイク付)
基本思考:ほむらと一緒に会場から脱出する
0:ほむらの願いを、絶対に叶えてあげるクマ。
1:マミちゃんたちは球磨と同じクマ。仲間になるクマー
2:ジャンくんも凛ちゃんも、本当に優秀な僚艦クマ。
3:これ以上仲間に、球磨やほむらのような辛い決断をさせはしないクマ。
4:今度こそ! 接近するヒグマを見落とすなんて油断はしないクマ。水は反則すぎクマ!
5:天龍、島風……。本当に沈んでしまったのクマ?
6:何かに見られてる気がしたクマ……。
7:みそくん。球磨川の名を冠するなら、球磨川についてもう少し知っておくべきクマ。
[備考]
※首輪の通信機能が消滅しました。
※四次元空間の奥から謎の視線を感じていました。でも実際にそっちにいっても何もありません。


【碇シンジ@新世紀エヴァンゲリオン】
状態:疲労大、【光の護封剣】発動中
装備:デュエルディスク、武藤遊戯のデッキ
道具:基本支給品、エヴァンゲリオン初号機
基本思考:生き残りたい
0:魔法少女って、本当にすごいんだな……。
1:脱出の糸口を探す。
2:守るべきものを守る。絶対に。
3:……母さん……。
4:ところで誰もヒグマが喋ってるのに突っ込んでないんだけど
5:ところで誰もヒグマが刀操ってるのに突っ込んでないんだけど
6:ところでいよいよヒグマっていうかスライムじゃん
7:ところでアイドルオタクのヒグマってなんなんだよほんと
[備考]
※新劇場版、あるいはそれに類する時系列からの出典です。
※エヴァ初号機は制限により2m強に縮んでいます。基本的にシンジの命令を聞いて自律行動しますが、多大なダメージを受けると暴走状態に陥るかもしれません。
※首輪の通信機能が消滅しました。
※暁美ほむらの令呪で、カードの具現化が一時的に有効化されています。


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『時間超頻(クロックアップ)――二重加速(ダブルアクセル)』


 暁美さんはその魔法を、そんな詠唱で発動させていた。
 『令呪』というその新たな形式の魔力を取り込んだ際に、直感的にその発動方法が理解できていたらしい。

 それは、ある種の『結界』だった。

 暁美さんの盾の内部を流れ落ちる砂時計の砂を加減速することで、自身と、そして周囲の者の体内時間をも加減速する――。
 『魔女』としての自分の固有の結界を、『魔法少女』として発現させたとき、きっとそれはそういう形態になるのだろう。
 極限まで魔女に近づき、その奈落を覗き込んだ上で、なおも確固たる魔法少女として歩む暁美さんだからこそ、出来た芸当なのかもしれない。
 そんな、彼女の新しい力の使い方だった。


 暁美さんは、既に球磨さんの有する『マンハッタン・トランスファー』という名の気流察知魔法で、待機時間の間に診療所の内部をすっかり把握させていた。

 そして彼女は、腕の方にまで刻まれた令呪の魔力を使い、デビルと碇さんの持つ有用そうなカードに、あらかじめ具現化術式をかける。
 匂いや物音を探知されないだろう遠距離から、味方全体に『時間超頻(クロックアップ)』をかけ、『光の護封剣』で診療所内の全ヒグマの行動を制限。
 同時に、通常速度でも高い機動力を持つ、ジャン、纏、球磨さんの三名を電撃的に突入させ、一気に所内を制圧させていた。
 予防線は、デビルの持つ各種の魔法・トラップカードだ。
 相手方がどのような反撃行動に出ようとも、間違いなく一回以上それを無効化できる、万全の構え。

 とても私には真似できない、鮮やかな作戦だった。
 全力疾走で、立てなくなるぐらい息切れしてしまっていたのは、痛々しかったけれど。


 ……そう。今、私の隣で喘いでいる彼女は、なんだか私の知っている暁美さんとは、違っているようだった。

 暁美さんは謎だらけで、神出鬼没で、付き合いも悪くて、グリーフシードだけを狙って隙あらば他の魔法少女を蹴落とそうとする手の輩だとばかり思っていた。
 彼女が見滝原中学の後輩だと知った時には、私は鹿目さんと美樹さんをどう彼女の魔の手から守ってやるかばかり考えていた。

 それが蓋を開けてみたらどうだ。
 彼女はこんなにも有能だった。そしてただ一人きりで、今まで頑張ってきていた。
 彼女のよそよそしい態度は、私たちから、『魔女化』という悪夢を隠してくれていたからだった。

 そんな事実を知るまで、そして知ってから、彼女はどれだけの惨劇を越えてきたのか。
 私だって魔法少女ではベテランの部類だけど。
 戦術眼も、経験値も、暁美さんは私より遥かに多く備えている。
 彼女は絶対に、私より魔法少女経験が長い。

 私が彼女の先輩であることは、ありえない。


 それじゃあ何だ?
 彼女が先程ふと漏らした、『正しく私の先輩だった時よりも、むしろ先輩らしい』という発言は。
 私は今まで一度も、暁美さんに先輩として振る舞ったことはない。

 ひ弱な体力。
 内気そうな眼鏡。
 今の暁美さんは、私の見てきた暁美さんとは、ほとんど真逆の要素の集合体だ。
 これで髪が三つ編みおさげとかだったら、それこそまるっきり、庇護欲を掻き立てる、カワイイ後輩の姿だ。

 そして、彼女の『望み』から生まれた魔法は、『時間停止』。
 そしてさらに、『時間加速』。『時間減速』。
 私の、世界と繋がりたい欲求から生まれた魔法が、『リボン』なら、それは……。


 ――やめましょう。


 これ以上推測だけで、彼女の起源に土足で踏み入ることは、正義ではない。
 彼女の計らいで、私は、ここにいる仲間に連れられ、りょうしんを取り戻した。


 寄り添おう。


 私と暁美さん。
 私と球磨さん。
 私とデビル。
 違っているものも、同じ。

 魔女と魔法少女。
 魔女と深海棲艦。
 魔女とヒグマ。
 同じものも、違っている。

 例え深海棲艦に寄り添う手段が、船幽霊に寄り添う手段が、雷撃処分しか無いのだとしても。
 魔女に、ヒグマに、それだけしか寄り添う方法がないとは限らないじゃないか。
 全ては単に、視点の違いだ。

 崩れた像を、濁ったソウルジェムを、他愛無い愛称を、乙で、カワイイと思えるかは、全て心の持ち方次第だ。


 見つけてみせる。


 殺し、殺される以外の解決策を。
 寂しいあなたに、ヒグマたちに、寄り添ってあげられる方法を。
 それこそ、私がりょうしんの遺灰で描くべき展開図。
 それこそが正しき、『Credens justitiam(正義を信じる者)』の姿勢だろうから。


【C-6 地下・ヒグマ診療所/日中】


【巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ】
状態:健康
装備:ソウルジェム(魔力消費(大))、省電力トランシーバーの片割れ
道具:基本支給品(食料半分消費)、ランダム支給品0~1(治療に使える類の支給品はなし)
基本思考:正義を、信じる
0:殺し、殺される以外の解決策を。
1:誰かと繋がっていたい。
2:みんな、私のためにありがとう。
3:暁美さんにも、寄り添わせてもらいたい。
4:ごめんなさい凛さん……。次はもう、こんな轍は踏まないわ。
5:ヒグマのお母さん……ってのも、結構いいんじゃない?
6:アイドルって言うなら……、実は持ち歌あるのよね、私……。
※支給品の【キュウべえ@魔法少女まどか☆マギカ】はヒグマンに食われました。
※魔法少女の真実を知りました。


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 魔法少女ってものの実情を聞いて、あたしにはふと思い浮かんできてしまうものがあった。
 自分自身のことだ。
 巴マミも暁美ほむらも、普通の人間なら絶対に死んでいる負傷から、復活してきたらしい。
 それを聞くだに思いだしたのは、痴漢の船から逃げ戻ってくる時に狂女に襲われた、あの時のことだった。


 途中で有耶無耶にはなったが、あたしは確かに心臓をぶち抜かれた。
 血管はズタボロ。
 出血も多量。
 鮮血に吸われた分も考えると、とても貧血とかそういうレベルで済まされなかったことはわかりきっている。
 あたしは間違いなく死んでた。


 人は人。服は服。自分は自分。


 そう思って、今までのあたしだったら、別にそんなことあろうが今生きてるんだから良いじゃん。
 と、何も考えずに邁進していただろう。

 だがもう、その考えは通用しなかった。
 巴マミに。だ。

 あいつの悩みを、バッサリ断ち切ってやれると思っていた私の言葉は、全く届かなかった。


 届いたのは、戦艦と魔法少女と、幽霊船と魔女を一緒くたにしている球磨の言葉とか。
 ちゃらんぽらんなこと言っているようにしか聞こえない、球磨川……、いや、みそくんの言葉だった。

 そんなアホなことがあるか。
 ヒグマはヒグマだし。
 人間は人間だし。
 沈んだ船は幽霊船ではあっても死んだ魔法少女であるはずがないだろう。
 艦娘とかいうのにもそうだが、人間のアイドルにヒグマがハマるとか、理解できない。

 『なんで我々が、鼻も低い、体毛も薄いサルの仲間をカワイイと思わなくてはならないンですか?』という理屈は、至極当然だ。
 ヒグマが好きかと問われて、「なんであたしが、知り合いを食い殺し、意味不明な挙動ばっかするケダモノを好きにならなきゃいけないんだ」と返すくらい、当然の言葉だ。


 ……そう。こいつらは、智子を殺したんだ。


 第一回の放送で、古明地さとりが。
 さっきの放送で、黒木智子が、呼ばれた。
 ついでに、あの痴漢とかもだったが。

 あたしと出会い、そしていつの間にか切り離されちまったそいつらは、あたしがもう一度見つけて守ってやれる前に、ヒグマに殺されてしまったんだ。

 あたしは、殺し合いなんてするつもりはねぇ。
 人間同士ではな。

 だがヒグマ同士の内乱なんか知ったことか。
 アイドル好きと艦娘好きとで争って勝手に滅んでしまえばいい。
 あたしたち人間を巻き込まず、勝手に死んじまえ。
 そうすれば、智子も、さとりも、人間は死なずに済んだんだ。


 この世界には、わけわかんねぇヤツが山ほどいる。
 わけわかんねぇならわかんねぇなりに、それでいいよ。
 あたしだって、自分の正体は、わかんねぇ。
 あたしが死なない原因だって、なんか魔法少女的な何かがあるんだろうがわかんねぇ。

 父さんを殺し、片太刀バサミの片割れを持ち逃げした女の正体も、まだわかんねぇ。
 もしかすると、あたしの正体がそいつと関係してたりするのかも知れねぇ。


 だが、そんなどうでもいいこと、知ったことか。


 わけわかんねぇ、それだけなら、いい。
 だがわけわかんねぇ挙動で、ヒト様に迷惑かけるのだけは、やめろ――!!


 壊惨総戦挙の途中でラチられたあたしは、とっとと帰って、鬼龍院皐月との決着をつけなきゃならねぇ。
 手を広げるだけ広げても、あたしには自分と周りの人間だけで手一杯だ。
 ヒグマなんてどうでもいい。
 これ以上あたしたちにわけわかんねぇ挙動をしてくるなら、もう許さねぇ。


 あたしはハサミだ。
 どんなものでもぶった切るハサミ。

 わけわかんねぇものは、わけわかんねぇまま、ぶった切らせてもらう。
 他人の悩みも、むしゃくしゃも、そのままぶった切ってやる。
 片太刀バサミの女も、見つけたら、それ相応の報復をさせてもらうだけだ。

 あたしの言葉がマミに届かなかったのは、そのハサミの切れ味が、鈍っていたから。 
 だから研ぐ。
 邪魔する奴ら全員を斬り伏せられるように、その刀身を研ぐ。


 ……だからよぉ。
 くれぐれも、大人しくしてるんだぞ、診療所の看護婦ヒグマ。
 みそくんを溺死させかけたスライムヒグマ。
 あたしのデイパックで寝こけてるバカヒグマ。
 デビルというのとか、その他のヒグマ連中もそうだがよ。


 わけわかんねぇ挙動起こしたら、いつあたしがてめぇらをズタズタの展開図にしちまうか、わかんねぇからな?


【C-6 地下・ヒグマ診療所/日中】


【纏流子@キルラキル】
[状態]:疲労大、貧血気味
[装備]:片太刀バサミ@キルラキル、鮮血@キルラキル
[道具]:基本支給品、ナイトヒグマの鎧、ヒグマサムネ、ナイトヒグマ
[思考・状況]
基本行動方針:ヒト同士の、殺し合いに対する抵抗
0:どんなものでも切れるよう、心身を、研ぐ。
1:今のところ、こいつらは信用できそうだが……。
2:ドルオタとか艦これ勢とか知らねぇよ。バカなヒグマはとっとと滅べ。
3:マミには言葉が届かなかったが、勝手に復帰したようだからそれでよし!
4:智子……。さとり……。すまねぇ……。
[備考]
※首輪の通信機能が消滅しました。


【穴持たず202(ナイトヒグマ)】
状態:“気絶”、マミさんの“リボン”で“拘束”中
装備:なし
道具:なし
基本思考:“キング”にもう一度認められる
0:“メシ”より大事なもんなんてねぇ。
1:俺の剣には“信念”が足りねえ……だと……。
[備考]
※キングヒグマ親衛隊「ピースガーディアン」の一体です。
※“アクロバティック・アーツ”でアクロバティックな動きを繰り出せます。
※オスです。

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最終更新:2015年01月25日 19:15