ある日の夜、森のくまさんに出会いました。 ◆bVosw4LjS6


「うぅ……。なに?ここは?」

通学中、突然何者かに襲われ昏倒していた柵川中学に通う中学一年生、
佐天涙子は薄暗い広間の中央で目を覚ました。
周囲が薄暗くよく見えないが自分以外にも何人かが倒れているようだ。

「やあ、お目覚めかね君達?」

数名が目を覚ますと同時に、部屋の奥にスポットライトが当たり、
眼鏡をかけた青年がツカツカと歩いてくる。

「あ!あいつは!?」

先日、自分が御坂美琴らと共に壊滅させた暗部組織「スタディ」のリーダー、
企業「スタディコーポレーション」の取締役、有冨春樹である。
佐天と同じ無能力者である彼は能力よりも知性が勝ることを示すべく、
「革命」と称したテロ行為を決行し、そして敗北した。その男が何故ここに?

「なに、君達を呼んだのは他でもない。僕達の新しい実験に付き合ってもらいたいと思ってね。
 実験の内容は簡単だよ――――――今から君達に最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。」

その理不尽な要求に会場がざわつく。
当然だ。いきなり見ず知らずの他人と殺しあえなんて命令が聞ける筈がない。

「……有冨さん!あんた!ふざけてんじゃ―――
「おい!ふざけんなてめぇ!オラは怒ったぞ!」

佐天の言葉を遮り、彼女の隣に倒れていた胴着を着た男が立ち上がった。
その筋肉質な肉体からはオーラのようなものが常に放たれ、只者ではないことがよく分かる。

「おやおや、気をつけたほうがいいよ。君達の首には爆弾付きの首輪がかかっているからね。
 ボクの気分次第でいつでもどこでも爆発させることができる。」
「爆弾?じゃあ爆発する前におめぇの首を刎ねてやるよ。心配すんな。後で生き返らせてやる。」
「やれやれ、仕方がないな。」

有冨が指をパチンと鳴らすと、部屋の奥の扉が開き、中から巨大な生き物が荒い息を吐きながら
地響きを立てて四足歩行でゆっくりと歩いてきた。

「……何!?」
「あれは……ヒグマ!?」
「さて、君達の中には彼の様に殺し合いに乗らずに我々スタディに刃向う者もいるだろう。
 こんなこともあろうかと素敵な当て馬を用意しておいた。彼女を只のヒグマだと思わない方がいい。
 彼女は冬眠に失敗した餓えたヒグマ―――――穴持たずだ。」

三毛別羆事件。

1915年の12月半ばにかけて北海道苫前郡苫前村六線沢で発生した、日本史上最大規模の獣害事件である。
羆(ヒグマ)が数度にわたり民家を襲い、開拓民10名が死傷、事件を受けて討伐隊が組織され、
問題の熊が射殺されたことで事件は終息したという。
この事件を引き起こしたヒグマはあまりの巨体のため、自分の身に合う越冬穴を見つけられず
冬眠に失敗したことで、エサに貪欲で非常に凶暴になっていたのだ。
この状態になったヒグマをマタギ達は「穴持たず」と呼んでいる。

「なるほど。殺し合いに乗らなくてもボーッとしてたらこいつに食い殺される、てわけか?
 考えたじゃねぇか。―――でもよぉ、相手が悪かったな。」

そう言った瞬間、胴着を着た男は突然その場から姿を消しかなり離れていた筈のヒグマの目前に移動した。

「空間移動(テレポート)!?あの人、白井さんと同じ大能力者だったの!?……いや、それだけじゃない!?」
「かめはめ!波ぁぁぁぁぁーーーー!!!!!!」

ヒグマの顔の前に突き出した男の掌が光輝き、気功弾がゼロ距離から発射された。
凄まじい光が放たれ、風圧が佐天の所まで届き捲りあがるスカートを押さえながら驚愕する。

「原子崩し(メルトダウン)!?すごい!あの人、一体いくつの能力を持ってるの!?……え?」

勝利は決した。その筈だった。だが胴着を着た男の顔が驚愕に包まれる。

「―――やれやれ。君はさっきの説明を聞いてなかったのかい?彼女はとても飢えているんだよ?」

頭部を吹き飛ばす筈の気功弾は、大きく口を空けたヒグマがジュースをがぶ飲みするように全て吸い込んでいたのだ。
一週間ぶりのカロリーを胃袋に入れたヒグマは満足気な表情で大きくゲップをした。

「こいつ!?かめはめ波を喰いやがった!?」
「グオォォォォォォオオオオオ!!!!!!」

活力を取り戻したヒグマは右腕をコークスクリュー状に回転させながら動揺して動きの止まった
悟空の腹部に叩き込み、その鋭い爪で彼の胴体に孔を空け、突き破った。

「……がはぁっ!?」
「おじさん!?」
「……へへっ……オラもヤキが回ったぜ……すまねぇな、チチ……。」

ヒグマは目の光が消えた悟空の頭部に左腕のクローを横なぎに叩き込み、頭部を吹き飛ばして絶命させた。

「グオォォォォォォオオオオオ!!!!!!」

咆哮を挙げながら、首のない胴着を着た男の死体を咥えて引き摺り、ヒグマはその場から姿を消した。
その無残な光景に会場は静まり返る。

「……こ、これが野生の力なの……!?」

あのおじさんが何者なのか知らないがひょっとしたら美琴と同じレベル5の能力者だったのかもしれない。
だがどんな強力な能力でもねじ伏せる純粋な力。圧倒的なナチュラルパワー。
無能力者である自分の境遇と重ね合わせ佐天は不謹慎にも少し高揚していた。

「やあ、これでわかっただろう?抵抗しても無駄だって。
 ちなみにヒグマは会場中に解き放っておくから気を付けて行動することだね。
 じゃあ、彼らに喰われる前に頑張ってゲームを成立させて生き延びてくれたまえ。健闘を祈るよ。」
「え?ちょっと待って?ヒグマってあの子以外にもまだい―――?」

佐天涙子が言い終わる前に首輪の内部のスタンガンが起動し、気を失った。




【孫悟空@ドラゴンボール 死亡】
【佐天涙子@とある科学の超電磁砲 ゲーム開始】

※初めての方はルールをお読みください 本編SS目次・投下順 No.001:グリズリーハンターSATEN
本編SS目次・時系列順 No.001:グリズリーハンターSATEN
佐天涙子 No.001:グリズリーハンターSATEN
有冨春樹 No.044:(1D6)
ゴクウコロシ No.059:最強との遭遇

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最終更新:2015年01月18日 01:41