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μ(無音)

世界は皆に平等に不平等である。

だから救われるべきものは救われず、悪人こそ救われることがある。

『神様はいつも見ている』――――それは確かに当たっているだろう。

尤も、『面白おかしく』という部分に限り、だが。



本来ならば日々恋人たちが情事に耽る場所である俗なる建造物、ラブホテル。
しかしながら状況が状況であり、こんなところで情事を行っているような人間の余程の変態か命知らずの馬鹿くらいしか居ないだろう現在、漂う不気味な静寂が恐ろしく感じられる。
廊下を歩くは一人の青年。
ついこの前までの絶望に打ちひしがれた悲愴なる表情は消え去り、今は焦燥に焦がれている様子だ。
彼の心から殺し合いなど、バトルロワイアルなどは現在消え去っている。
一人のかけがえのない存在だけが、今の彼の世界を構成する全てであった。
妹、という。
血の繋がりこそない代用品の存在ではあるものの、それは決して本物に劣らない。
福沢正也の『妹』に対する価値観は余りにも異常で、余りにも正しいものだ。
たとえ植物状態であろうとも、辻斬りの殺人鬼でも、それが『妹』であるなら全て平等に、公平に、溺れるように、盲目に、愛する。溺れ死ぬ程に、溺愛する。

もしも妹に傷を付けたりしたならば、徹底的に赦さない。
その身につけた我流の格闘技を、間違った方向にフル活用してでも、徹底的に惨殺する。
生きていない―――妹という存在があるから生かされているような、福沢正也はそういう人間であった。
静寂の廊下に、かつかつと足音だけが響く。
ゾッとするような瞳をして、いつ取り出したのか手に調理用のナイフを数本持って、歩いていく。




さて。福沢正也、彼はこのような殺し合いに参加するのが別に初めてというわけではない。
正確に言うなら、一つの別の殺し合いに参加させられていながら、強引にこちらに連れてこられたような。
まだ一人も殺してはいないし、まだ『妹』以外の誰とも遭遇していない状態で、だ。
しかし困惑はなかった。

名簿にあった四文字の名前、愛すべき『妹』の名前を確認した瞬間にやることは完全に決まったのだ。
守る。
守るべき妹と一刻も早く合流し、それからどうするかを決める。
前回こそ殺し合いに乗ったが、別に彼にしてはどちらでもいい。
乗るも乗らないも彼の一存次第、たとえ『妹』が殺し合いに乗れと命じたところで、それが『妹』に大して本当に正しいのかどうかもよく考えて、決める。
前回は孤独だった彼女を守るために、その果てに死ぬために殺し合いに乗った。

一つ、自殺志願者であることは今も変わってはいない。
福沢沙耶を事実上失った彼には、最早世界の全てが仄暗く見えているといっても過言ではない。
代用品でも平等に愛する―――とはいえ、福沢正也は人間である。
シスター・コンプレックスを患っているだけの、人間である。
家族たる人物の代用品が出来たからといって、そこで安堵できる程出来すぎた人間ではない。
『妹』―――柄部霊歌をどうにかして生還させ、自分は死ぬ。

けれど、彼がそれを語ることは無いのだろう。
少なくとも今の彼は、きっと霊歌にさえ、語らない。


【F-1/ラブホテル城/一日目/朝】


【福沢正也@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]健康
[服装]特筆事項なし
[装備]調理用ナイフ(能力により精製)
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・行動]
基本:全ては霊歌の為に。
1:柄部霊歌が生還でき次第自害する
2:もしも霊歌が殺されたら皆殺しにする
[備考]
※サイキッカーバトルロワイアル、柄部霊歌と出会った後からの参加です


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GAME START 福沢正也 049:二人で行く未来は、穢れのない強さで(前編)

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最終更新:2012年05月05日 22:58