最近にしては珍しく、めっちゃ強い雨が降った日のことだ。
それは、いつものように、朝目が覚めた時の出来事であった。
眠たい目を擦りながら、体を起こす。
相変わらず寝心地は最低だが、慣れてしまえばどうと言う事はない。
「……今日は……。久々の休みだな」
あのうっとおしい検査やら実験やらをやらないで済む。
そう思ったら、なんだか気分が晴れ晴れとしてきた。
これで、どっかに飲みにでも行ければ最高なんだがなぁ……。
せっかく晴れ晴れとしてた気分に、速攻で雲が出てきてしまった。
ま、後で研究員に酒でも持って来させりゃいいか。
「コーヒーでも淹れるか」
部屋の隅に置いてある、古ぼけた湯沸かし機。
今じゃ、誰も使わないくらいの古さだ。
もうちっと、いい物を用意してくれてもいいだろうに。
所詮、俺達は研究用のモルモット、ってか。
俺達だって一応人間だってのによ。
少しばかり、人と違うだけじゃねえか。
全く、世の中ってのは世知辛いもんだねぇ。
「……こういう小物は古い割に、他のはそれなりに新しいんだよな」
湯が沸くまで、大体5分。
部屋の中には、今の所小さく雨の音が響いているだけだ。
少々経てば、湯沸かし機が騒がしくなる。
「さて……今日は何すっかな。久々の休みだし、ゲームでも――――!?」
フッ、と急に明かりが消え、一気に部屋中が暗くなる。
「おい、何だよ!!どうした!!」
……返事は無い。
いっつも、1人か2人は部屋の近くをうろついてるってのに。
何だか、様子が変だ。
1人2人うろついているどころか、人の気配を全然感じない。
いよいよ、警察のガサ入れでも入ったのか?
そう思っていたところに、扉の開く音が……。
「こんにちわ」
「……誰だよ、お前は」
俺の力を用いてもぶっ壊せない錠の付いている鍵を、開けやがった。
これだけでも十分驚くべき事だってのに、それに追い打ちをかけるのがそいつの容姿だ。
……間違い無い。未成年、だ。
一体、どうやってここに入って来たんだ?
「用があるなら、マネージャーを通してくれないか?」
軽く、ジョークをぶつけてみるが、クスリとも笑わない。
……何だってんだ、こいつは。
「ボクに協力して下さい。そうすれば、絶対あなたの望む物を差し上げます」
新しい被験体でも生まれたんだろうか。
となると、こいつの力はすさまじいかもしれん。
電気を切って、俺でも開けられない扉を開けて、こんなことを言い出す。
……力はあるが、頭はカラッポ、ってか?
いや、あながちそうでもないかもしれないが……。
どっちにしろ、怪しい奴と言うのは変わらない。
「とりあえず、何をすればいいのか教えてくれよ。話はそれからだ」
◆
話を要約すれば、大体こんな感じだ。
――――バトルロワイアルなる、殺し合いを開催するから、参加してくれ。
ただし、俺は『参加者』では無く『ジョーカー』として参加してほしい。
一応、特権として首輪なる物を最初から外してくれるらしい。
「……なるほどねえ。で、俺が参加して、なんかメリットはあるのか?」
「あなたのような人が参加すれば、ゲームもきっと盛り上がるでしょう」
「へぇ……」
怪しくないと言えば嘘になる。
いきなり現れた奴の話を、すんなり受け入れるほど物分かりは良くない。
でも、気になる話でもあるんだよなあ……。
自分は、人殺しになる気は無い。その点では、参加する意味は全くない。
しかし、こいつはなーんか気に入らない。
生意気な野郎の鼻を明かしてやりたいくらいだ……ん?
従った振りをして、こいつの鼻を明かす……我ながら、良いアイデアかもしれない。
こいつが他人に出しぬかれて、悔しがるツラを一遍拝んでみたいもんだ。
「分かった。やるよ。ただし、あと1日待ってくれ。心の準備をさせてくれ」
「……承知しました」
そいつが言った瞬間、明かりが一斉に元に戻った。
それとほぼ同時に、妙な奴の姿も……消えてしまった。
まるで、最初からいなかったかのように……。
だが、さっき起こったことは、間違い無く現実に起こっていたことだ。
……なんつーか、不可解だなあ。
「とんでもねぇ事になったな……やるっきゃねえか」
煙草に火を付け、深くゆっくりと煙を吸い込む。
……なるようになるさ。
いままでも、そうして来たんだから。
◆
そして、今。
こうやって、殺し合いの場に立っている。
まさか、本当にこんなことになっちまうとは。
……一応、あいつは約束を守っているらしい。その証拠に、俺の首には何も付いてない。
まあ、俺のやりたいことはもう決まってるし、あんま関係無いか。
――――あいつの鼻を明かしてやる。
あんな生意気な奴は、個人的に気に入らない。
「……さて、っと。超久々の屋外だな」
やっぱり、窮屈な室内より、自由な屋外の方が好きだ。
元々、俺はアウトドア派だし。
……とにかく、もう殺し合いは始まってる、ってことだ。
そう都合よく人に出会うかどうかは分からないが、まぁいつかは遭遇するだろう。
そいつが殺し合う気があれば、適当にブチのめして放置しときゃいい。
そうじゃないなら……まあ、その時に考えよう。
「さて……どーすっかなぁ。とりあえず、バッグの中でも見てみっか」
別に、武器が無くたって戦える。俺の場合、全身が武器のような物だし。
だから、別段、武器が出てこなくてもがっかりしない。
がっかりしない……。
……いいや、やっぱりがっかりだ。
「鶴嘴……?武器じゃねえだろ、これ。殺傷力はあるけどさあ……」
他には、栄養ドリンクが1ケース、計9本。
……1本足りないのは、俺が既に飲み干したからだ。
栄養ドリンクと言うと、味が悪いイメージがあったが、これはなかなかいける。
「……さて、どっか行くか……」
【C-7/平地/一日目/朝】
【
被験体01号@新・需要無しロワ】
[状態]:健康
[服装]:特筆事項なし
[装備]:鶴嘴
[道具]:基本支給品一式、栄養ドリンク(残り9本)
[思考]
基本:あいつの鼻を明かしてやるぜ。殺人は……あんまやりたくないな
1:さて、どこに行くか……
2:誰かいねえのかな、ここ
[備考]
※ロワ参加前からの参戦です
※ジョーカーの特権として、首輪を装着していません
≪支給品紹介≫
【鶴嘴】
被験体01号に支給。
穴を掘ったり岩を砕いたり等に用いる、土木工事の道具。
重量もなかなかあり、武器としてもそこそこ使える。
【栄養ドリンク】
被験体01号に支給。
爽やかなのどごしと後味で人気。1本飲めばやる気がグングン湧いてくる。
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053:死逢わせ |
最終更新:2012年05月10日 21:57