「…………は?」
ぽかん、と口を開ける丹羽だったが、凜と清正はそれをすぐに察したらしく、目を細めた。
紅い狐が
一刀両断と一戦を交えたのは既に数時間前。
それから凜と同盟関係を結び、清正達と接触したのが十数分前――ならば、彼が狐に襲撃されたのは一体『いつ』だ?――――たかが数十分で、こうはならない。
血痕は完全に渇いているが、一刀両断の後に彼女に襲われたなら数十分前と見るのが妥当だろう。
数十分の内に、こんなに完全に渇き、湿り気一つ残さないまでになるだろうか?
「一刀両断の前に戦ったとしても同じだ。お前は息を切らしているが、まさか数時間も走ったのか?
いや、走り続けていたのか? 疲労することもなく、ずっと?」
そんなことは無理だ。
長距離ランナーなどであったなら他愛もないことなのかもしれないが、彼の体は鍛えているようには見えない。とても、化け物じみた体力の持ち主とは思えなかった。
だが何よりの証拠は、彼の身体にある。
やっと状況を理解した一刀両断は、そういうことか、と笑った後に指摘した。
「お前、汗をかいてないよな。ずっと走ってきたなら、汗くらい流すだろ。
走り慣れてる、なんて言い訳はナシだぜ。それとこれとは別の話だ」
丹羽はすっかり黙っていたが、それは相手を論破できない為の沈黙ではない。
自分の下らなく些細なミスを、後悔しているかのようなそれだった。
彼らの推論、そして恐らく誰もが懐いている懸念は的中している。
丹羽雄二―――否、
早野正昭は、既に一人を殺した殺人者である。
当然、彼らに言ったことも全て嘘。嘘の中に本当を織り混ぜているから分かりにくいだろうが、自分自身がこんなミスを冒していては無理もない。
暴かれた殺人者は、彼らに弁解することなく、声を出さずに、だが確かに笑って見せた。
「名推理だ」
次の瞬間、彼はディパックから取り出した木製のバットを勢いよく――『天高く放り投げた』。
当然それはブラフ。
だが、人間の意識を集中させるには十分な、最適とも言える行動だ。
須藤凜が、
飯島遥光が、
加藤清正が、銀丘白影が、一刀両断が、
璃神妹花が、その一点に集中する。
正昭はその間に隠し持っていたM4カービンを取り出し、何の躊躇いもなく引き金を引いた。
ここにいる者は全て人間。ならば、鉛弾の嵐を余すところなく浴びて生きていられる道理がない。
しかし、早野正昭はたった一つ、見落としていた。
このフィールドである意味最も害がなく、同時に最も危惧すべき存在を、見落としてしまっていた。
邪気なき邪―――そんな存在を、見落としていた。
発射された弾丸が目掛けたのは正昭から見て一番厄介と思われた銀丘。
流れ弾はほぼ隣に位置していた一刀両断にも及んだが、たかが数発ならば通す彼女ではない。
『一刀両断』。その言葉に恥じぬ斬撃を浴びせ、致命的なダメージを受けずに終わる。
流石に完全に避けきることは叶わなかったが、それでも腕の薄皮一枚を裂くだけに止めた。
銀丘は無言のままに、飛来する弾丸の飛行距離上に『爆弾』を設置する。
限界数使うまでもない。二つもあれば、弾丸くらい優に撃ち落とせるのだから。
激しい爆発音と爆風が吹き荒れるが、彼は全くの無傷。
地面には抉れた痕跡と、弾丸の破片が刻んだ痕跡が残されていた。
「―――――なっ」
「「こんなものかよ」」
ほぼ同時のタイミングで二人の異能者が笑う。
そんな形で攻撃を防がれるとは思いもしない正昭は、即座に二次波を放とうとする。
が、加藤清正という実力者の存在がそれを許さない。
圧倒的な速度で彼を捕縛せんと迫り、逃げようとするが真横からは端麗な触手が迫る。
銃撃をあえて足元に放つことで何とか清正の進軍を止めるが、触手は容赦なくその身体を殴打する。
致死には至らなかったが、見た目からは想像も出来ない威力に正昭は跳ね飛ばされる。
地面を何度かバウンドした後、意識を失ったのかぴくりとも動かなくなる。
死んではいない。
呼吸はしているようだし、上手く気絶させることが出来たらしい。
一件落着か――。
再び流れた安堵の空気。
しかしながら、ここにきて今まで誰もが気に留めなかった存在が、動く。
ゲル状の触手『うにゃー』を持った誰よりも小さく無邪気な少女、璃神妹花。
正確には彼女ではなく背中の触手。
正式名を『人喰らいの触手』と呼ばれるそれが、今ここで、押さえ込んだ食欲を解放せんとしていた。
既に気絶している正昭の身体を撫でるように――『うにゃー』は捕食を開始せんとする。
妹花自身はそれを止めるでもなく、まるで部外者であるかのようにじっとそれを見つめる。
一瞬何をしているのか、誰も分からなかった。
唯一何が起こるのかを察したのは、彼女と最初に出会い、彼女の『サイキック』をこの場で一番把握している清正だ。
とにかく、放置しておいては大変なことになる。
少なくともあの青年は死ぬし、璃神妹花に過ちを犯させることにも繋がっていくだろう。
加藤清正の矜持に懸けて、そんなことを見過ごすことは出来なかった。
たとえ犯罪者だろうと、このゲームで無益な死は出したくない―――その思いに彼は突き動かされる。
「待てッ!」
如何にサイキックで生み出されていようが、不意打ちでなら攻撃も通る。
今にも正昭の身体を喰らおうとしていた「うにゃー」を横から正拳突きで殴り飛ばし、強引に行為を中断させた。
騒然となる一同を余所に、妹花は小首を傾げ、心底不思議そうな顔をして言う。
「……どうして止めるの、清正おじちゃん?」
「うにゃー殿は間違っている……! 何も命を奪うことはない筈だ」
「そんなことないよ。殺すわけじゃない――うにゃーは、食べるだけなんだよ?」
その表情は無垢そのもの。
自分の言っていることに何一つ間違いはない、そもそも正しいとさえ思っていない。
これは、璃神妹花という少女が生きてきた中での普通なのだ。
「………妹花殿。自分が何を言っているのか、分かっているのだろうな」
普段ならば幼子に決して見せることのない、一際強い気迫で清正は妹花を見る。
しかしそれも意味を為さない――何を言っているのか。そんなこと、彼女からすれば当たり前の常識を唱えている認識しかないのだから。
「だって、うにゃーがお腹空いたって言うんだもん。
おじちゃん達を食べるのはうにゃーが嫌だって言ってるけど、この人は悪いひとなんでしょ?
だったら食べたっていいと思うな。よくわからないよ」
清正は、彼女の本音を聞いた上でやっと理解した。
彼女は決して人間が破綻しているわけではない。
もしそうだったなら、知能に長けるあの銀丘白影が行動を共にし続けている筈がない。
清正本人も、最初に出会ってから彼女が邪悪なものだと感じた瞬間は刹那とてなかった。
これが、璃神妹花の常識。
生まれてから、これだけ目立つ触手を抱えて生きてきたのだ―――その過程で迫害や差別があったことなど想像に難くない。語りたくないが、世の中はそう綺麗なものばかりではない。
時には泣きたくなるような苦しみも、痛みもあっただろう。
それに適応してしまったから、無垢故に彼女は大きな歪みを抱えてしまった。
狂っているのではない。ただ彼女は、知らない。
人間の優しさを、汚さもあれどそれ以上に美しい面を、知らない。
どれほど失望して彼女がその小さな身体で生き抜いてきたのか――清正は心が傷む思いだった。
「妹花殿。いいか、よく聞け。人間は――悪いものではない。時には醜悪だが、時にどんな絶景よりも美しい」
「―――そんなことない」
妹花の声色が鋭く、鋭利なものに変化した。
まるで人が変わったように、彼女は清正の言葉に反論を唱える。
「人間は醜いよ、清正おじちゃん。
まいかもうにゃーも、今までいっぱいそういう人たちを見てきたからわかるんだ」
彼女にとっては、人間の住む常世はもはや掃き溜めのように見えているのか。
全てに失望し、裏切られ、世界の悪を知りすぎた少女は強い口調で清正の言葉を否定した。
彼女の感情に応えるかのように触手は動作を止め、清正の方を向いている。
いわば臨戦状態。
「うにゃー」が妹花の意志とは関係なく行動することがあることは、清正が既に確認していた。
危険な状況下にあることは、言うまでもない。
「―――退け」
凛、と声が響く。
黙りを決め込んでいた一刀両断が、模造の刀を構えて同じく臨戦体勢を取っていた。
それが意味するところは、場の誰もが理解できただろう。
「埒が明かないだろ。あたしがそいつを殺す」
一刀両断という人間は、時に合理的な判断を下す。
例えば銀丘白影を信用できないと断じた時のように、迷いさえも切り捨てる質だ。
その彼女が出した結論は、須藤凜との約束を守るのを最優先すること。
即ち、危険因子の璃神妹花を排除―――殺害する道を、彼女は選んだ。
「一刀両断殿……待ってくれ、まだ」
「まだ早い、ってことはないだろ。これは殺し合いだ――最悪を想定することが必要だと思うけど」
そう言いながら、一刀両断は璃神妹花を殺害するビジョンを脳内で少しずつ組み上げる。
あの触手の速度は相当速いが、自らのルール能力の前には所詮只のスライム同然だ。
避ける攻撃と迎え撃つ攻撃を見極めて戦っていけば、あれを掻い潜るのは造作もないこと。
後は無防備な幼女の首を斬りでもすれば、それにて一件落着だ。
しかし彼女を非難するように、陰鬱のジョーカーも口を開く。
「おい、待て。加藤の言う通りだ。幾ら何でも早計が過ぎるぞ、四字熟語」
「――――だから早いってことはねえっつの」
「随分と短気だな。恐れているのか?」
「言ってろ詐欺師。あたしは約束を守る女なんだよ」
ざん、と一歩前に踏み出す。
妹花は突然敵意を向けられることに戸惑っているようだが、そんなことは意にも介さない。
目的は果たす。
その過程に、情だとかそういうものは要らない。
誰にも、彼女は止められない――――「そうはいきませんよ、一刀両断さん」
――――須藤凜を除いては。
彼はかつて彼女と交換条件を取り付けた時のように毅然と、彼女を見て言い放っていた。
とてもじゃないが、先程まで自己嫌悪に燻っていた少年と同一人物とは思えない。
だがその堂々とした態度は、一刀両断という四字熟語の足を止めることに成功した。
「……何だ、お前。お前も止めるのか?」
「いや、俺が言いたいのは―――"これは約束違反だ"ってことですよ」
挑発的とも取れるその言い回しに、場は凍り付く。
須藤凜という少年の本質がどの程度か密かに測っていた銀丘も、これは予想外と言う他なかった。
「んーと、よ……あたしにはお前の言うことがよく分からないんだが、どういう意味だ、須藤?」
戦意を収めて、一刀両断は風に揺れるポニーテールを手で押さえて言う。
その顔は怪訝そのもので、僅かながら苛立ちの色も覗かせている。
当然だろう。彼女の真の目的は決して、須藤凜と飯島遥光を守護することではない。
それはあくまで第二のもので、本来は『
紆余曲折の盾として彼を捜す』ことなのだ。
なのに、どこまで自分を束縛するのか、という苛立ちを懐くのは当然の話だ。
「俺は言いました、『俺達』を護ってほしいと」
「ああ、そうだな―――って、お前まさか」
「そういうことですよ、一刀両断さん」
それは屁理屈を通り越して、もはや詭弁の域の論だった。
しかし凜自身も、これより他にこの状況を――不幸(アンハッピー)の繰り返し(リフレイン)を止める術などどこにもないと信じて、その上で行った行動である。
一刀両断を止めて、そしてその先は―――自分が背負う。
中学生の少年には重すぎる気さえする選択だったが、須藤凜は選び取る。
「俺達を護ってほしい――誰も、俺と遥光ちゃんだけを『俺達』とするなんて言ってない」
「………そういうことか、やってくれたなてめえ」
「最低限の悪知恵、ですよ。猿知恵でも間違っちゃいませんね」
今の『俺達』は―――六人だ。
彼女が捉えていたように、須藤凜と飯島遥光。
次に、加藤清正。
彼女と反りが合わないジョーカーの男、銀丘白影。
そして璃神妹花もまた、例外ではない。故に、妹花を一刀両断が殺すことは重大な違反行為。
「っく、くくく、くく……出し抜かれたな、四字熟語」
「全くだよ……まさかこういうことだなんて思わないさ」
「おにーさん素敵っ!」
感想の声が聞こえてくる――が、とりあえず状況を収めることには成功したようだ。
安堵の息をつかずにはいられない。
だが、これからが本番だ。
繰り返される不幸せを終わらせるために、須藤凜は決断を下す。
「聞いてほしい話があります。このままじゃ俺達は崩壊したっておかしくない」
事実だ。
この『対主催集団』には、あまりにも不和の要素が多すぎる。
銀丘の過剰なまでの冷徹さ、妹花の問題もある。問題はまさに山積み、いつ崩れてもおかしくはない。
だからこそそれを抑える為に、『リーダー』が必要になるだろう。
「これからは俺が、このチームを纏める」
これが、須藤凜の精一杯の、しかしこの殺伐を終わらせる最大の奇策だった。
自らの器でこの面子を取り仕切れるかはわからない―――だが、そのくらいの覚悟、背負えなくてどうする。
自らを鼓舞するように凜は茫然とする面々に向け自信たっぷりを装って言い放つ。
「妹花ちゃんにも、当分は…えと、『うにゃー』の食事を我慢してもらわなきゃならない。
でも大丈夫だ、必ず方法を見つけるから―――絶対に」
「ふん、絶対に、か。その根拠はどこにあるのだ?
はっきり言うが私は賛成できない。お前に、そんな大役が勤まるとはとても思えんからな」
銀丘の表情は固い。
須藤凛という少年は、何の力も持ってはいない。
平和ボケした日常を悠々と生きてきただけの人物に大役の任を任せるのは、無謀が過ぎるのではないか。
そんな至極全うな、苛立つ程に正論な意見を彼は唱える。
見れば、この件に関して言うならば―――加藤清正も、同じ意見のようだった。
その表情は優れず、どうしたものか、という迷いの色が窺える。
「……儂も、その案には正直同意しかねる。
須藤殿を罵るつもりは毛頭ないが、その役目はあまりに重い。……分かっているのか?」
この不幸せを引き起こした張本人の璃神妹花は、現在幸いにも捕食の動きは見せていない。
彼女を――彼女の背負っているモノを理解してくれた仲間には牙を剥かない。
あくまでこの場の『対象』は早野正昭だけで、目の前の仲間を無理に退けて、傷付けてまでして、相棒の食欲を満たそうとはしなかった。
それは、相棒にとっても本意ではないだろうと思ったのもあるが。
怪訝な顔で凛に問う清正。
普段の彼ならば臆してしまっていたかもしれない。だが今は違う。
死の淵で出会った親友。
この戦いを終わらせることは、彼へ捧ぐ供物でもあるのだ。
故に須藤凛少年には、自らの意志を曲げる気など―――さらさらなかった。
「はっきり言って、俺は貴方達より絶対に弱い。変な力は持っていなけりゃ、別に何か達人級の腕前を振るえる分野があるわけでもない―――だからこそ、ですよ」
「ふむ? 済まんが説明してもらえるか」
「人無は――主催者は、何も適当に参加者を選んだわけではない筈です。
パワーバランスを考えて、それでいて面白いゲームになるように考えて、選んだと思う」
考えてみれば、おかしいのだ。
清正のように、生身でも達人と呼ぶに相応しい力を持つ人間。
銀丘や妹花のように、未知の力を思うがままに振るう人間。
一刀両断のように、ルールで定められた力を振るう「四字熟語」。
そんな化け物揃いのゲームに――どうして、自分のような人間まで参加させられているのか。
下手をすればそもそも勝負にならない可能性さえあるのに、こうして参加者が選ばれた理由。
それはひとえに、『バランス』を保つためなのだ。
強者と弱者の間の力の差を埋めるためには、否が応でも強き者の力を借りねばならない。
最初から、このゲームはそうやって力関係が保たれていると、彼は考えていた。
ならば、これを利用しない手はない。
「………成程な。そういう考えもある」
一足早く意味を察したのか、銀丘は少しだけ表情を崩す。
よく考えたな、という賞賛の動作にも見えて、凛は少しだけ自分が誇らしく思えた気がした。
「このゲームを打倒するのに、間違いなく俺達は相応しい戦力だ。
清正さんの力に銀丘さんのジョーカーとしての権利、一刀両断さんの《ルール能力》。
妹花ちゃんは少しだけ不安があるけど、俺も力を合わせて遥光ちゃんを一緒に護る。
―――誇張表現じゃなく、今の俺達は完璧な布陣です」
「司令塔、だな。貴殿が請け負おうとしているのは」
「そうです」
凛が何故そんな役目を請け負ったかと言えば、ひとえにそれは『戦える中で彼が一番弱い』からだ。
本当に普通の中学生の彼では、精々殴り合い程度しか出来ない。
適材適所で考えるなら、自分のような役立たずはこういう役割こそが相応しい。
こういうと言い方が悪いが、戦力として飯島遥光をカウントすることは無理だ。
彼女をより確実に護るために、自分と妹花の共同体制でいく。
万一他の『能力者』と交戦になれば、戦況を見て自分が退却や進軍の判断を下す。
責任重大だが、秩序のない団体が成り立つわけはない―――絶対に必要なのだ、リーダーは。
実際、ジョーカーでもあり知略にも長ける銀丘の方がお誂え向きの役目かもしれない。
だが、彼から感じられる胡散臭さがどうしても不安だ。
実質の消去法で、自分が請け負うことが最も、これ以上不和を生まないと凛は判断した。
自惚れではない。これは、戦う覚悟だった。
巣食う迷いを完全に断ち切り、戦うための。
「俺は見せてやりたい。人無結の鼻を――――明かしてやらなきゃ、気が済まない」
「………いいんじゃないのか? あたしとしちゃあ別に誰でも構わないぞ」
一刀両断は興味なさげな、むしろ「なんか面倒なことになったなぁ」といった様子だったが、彼女は彼女で、紆余曲折を一刻も早く見つけられれば他はどうでもいいようだった。
面倒臭がっても、約束を守るあたりが律儀だと凛は思い、心の中で感謝する。
「おにーさんがリーダーだったら、安心だと思うなっ!」
「うむ。そこまでの覚悟があるとは立派――良い。気が済むまで、お主の思うようにやってみろ」
まさか。ここまで上等な意見を貰えるとは―――凛は内心、感激めいた感情さえ懐いていた。
あれだけ痛烈に批判していた銀丘も、異論はないらしい。
相変わらずその表情は陰鬱そのものだったが。
「………凛お兄ちゃんが、リーダーさん?」
「そうだよ。頼りないかもしれないけど、俺がリーダーさんだ」
純粋な瞳で、しかし穢れを知り尽くしたその瞳で、妹花は凛の顔をじっと見つめる。
まず最初の問題は、彼女だ。
『人喰らいの触手』をどうにかしなければ、布陣を整えることさえままならないだろう。
一刀両断と(あくまで必要最低限の)情報交換を行った時に彼女自身の口から聞いた《ルール能力》の存在にも驚いたが、これはそれ以上に彼に衝撃を与えた。
その残酷な在り方に―――幼い少女にはあまりに重すぎる苦しみに。
「ごめんな、妹花ちゃん。少しだけ――寝ていてくれ」
何を言いたいか察したのか、清正は「うにゃー」が何かしらの反応を示す前に彼女の意識を奪っていた。まさに速攻、見惚れる程に美しい動きで。
すぅ、すぅ――――と寝息を立てる妹花を清正が抱き上げると、全員の視線が凛に集中する。
少しだけ気圧されそうになったが、精一杯の虚勢を張って、リーダーらしく宣言した。
「妹花ちゃんを助ける。力を貸してくれますか?」
あくまで下手であった。
呆れたように笑い、遥光が言う。
「おにーさんはリーダーなんでしょ? だったらもっと堂々としてていいと思うよっ!」
「全くだ。全く以て頼りない。つい爆破してしまいそうだ」
「お前は本気でやりかねないから止めろ」
自分にはやはりリーダーは向いていないかもしれない。
それでも少しでも、多くの人を救えたらいい。
(――――そうだよな、匠)
【C-6/市街地/一日目/朝】
【須藤凛@変哲もないオリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:顔に腫れ、体中にダメージ(大)、肉体的疲労(大)、左肩に刺し傷(処置済)
[服装]:特筆事項無し
[装備]:トンファー@現実
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2
[思考]
基本:この殺し合いを潰す
0:リーダーとしてチームを纏める。
1:妹花ちゃんの問題を解決する
2:まず狭山さんを見つけたい
3:さっきのは……夢?
[備考]
※変哲オリロワ参加前からの参戦です。
※
石川清隆の外見のみ記憶しました。
※飯島遥光が年上と知りません
※一刀両断のルール能力について聞いたようです
【飯島遥光@数だけロワ】
[状態]:健康
[服装]:特筆事項無し
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1~3
[思考]
基本:生き残る
1:おにーさんたちと行動
2:
熊本潤平と合流
[備考]
※数だけロワ参加前からの参戦です。
※石川清隆の外見のみ記憶しました。
※須藤凛が年下とは知りません
【一刀両断@四字熟語バトルロワイアル】
[状態]:肉体的疲労(中)、肩に掠り傷
[服装]:特筆事項無し
[装備]:模造刀
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:紆余曲折の盾になる
1:須藤との約束を果たす
2:紆余曲折、
切磋琢磨との合流(紆余曲折を優先)
[備考]
※四字熟語ロワ23話「仲間意識」で刀を取りに行ったところからの参戦です。
※小神さくらの外見のみ記憶しました。
※四字熟語のルールは規制されていません。
【加藤清正@DOLバトルロワイアル4th】
[状態]健康
[服装]特筆事項なし
[道具]基本支給品一式、同田貫正國、ランダム支給品×2
[思考]
基本:殺し合いやらを止める
1:須藤殿達と一緒に行動する
[備考]
※ロワ参加前からの参加です
※うにゃーの存在を良いモノと認識しました
※銀丘白影から『ジョーカー』について聞きました
【璃神妹花@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]気絶中
[服装]特筆事項なし
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×3
[思考]
基本:殺し合いなんてしない
1:このおじちゃんたちと一緒にいる
2:うにゃーの≪食事≫を探そうかな?
[備考]
※ロワ参加前からの参加です
※うにゃーを認識してくれる者は≪食事≫として見られません
◆ ◇
おお、感動的だな。
無力だった少年が成長して、一つのチームを纏め上げるまでになるとは。
私も思わず涙してしまいそうだ。
えー、というわけで銀丘白影がここから先をお送りしよう。
予想外に早く大きな対主催グループに所属することが出来たことはひとまず幸運としておくか。
どこかの馬鹿のせいで『力』を晒す羽目になったが。
だがまぁ、そこは大目に見てやるとしよう。私の力はたとえ予期していても簡単に凌げるそれではない。
おまけに、支給品と合わせればこの場で――こいつらを皆殺しにだって出来る訳だ。
無論そんな愚を犯す気など毛頭ないが、自分の身は自分で守らなければいけない。
保険をかけておくに―――越したことはないだろう?
話を戻そう。
結論から言って、私にとって非常に都合のいい展開になった。
須藤凛の采配がどう働くかは全くの未知だが、この集団に戦力が集中していることは間違いない。
逆にこの布陣でどうにかできない敵なんて存在するのかどうかも疑わしい程だ。
璃神妹花の存在が現時点では不安要素だが、それで止まるとも考え難い。
この勢いはそうそう簡単には止まらない。それこそ、本当にこのゲームを転覆させたっておかしくはない。
熱血物語に浸る気は更々ない――だが、私は私が安全に生還できるならそれでいいのだ。
優勝だろうと脱出だろうと、主催者の打倒だとしても、何も構うことはない。
そういう観点から見れば、須藤が下手糞であってもこのチームを纏めてくれるのは有難い話。
只でさえ我々は他の参加者に比べ『私』というアドバンテージを獲得している。
それで戦力までも揃えば、対主催の最大派閥に成り上がることだって何ら難しくはないだろう。
―――首尾よくそうなれば、私は心を入れ換えて正義を気取らせて貰う。
何にせよ、まずは璃神妹花だな。
人喰いの魔物を匿っていると知れれば、他参加者からの不信を買いかねない。
一刻も早く彼女の対策を行うことが必要か。
当分は、須藤の小僧に従ってやるとする。
だが驕るなよ。いつでも私はお前を切り捨てる覚悟がある、と肝に銘じておくがいい。
―――流行りのツンデレ? ふん、そんなものと一くくりにするんじゃないぜ。
【銀丘白影@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]健康
[服装]特筆事項なし
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ガソリン(5リットル)、首輪のサンプル、ラハティL-39(10/10)
[思考・行動]
基本:今は偽善者気分
1:一回目の放送までには『ジョーカー』か『偽善の勇者』かを決める
2:須藤に従っておく。
[備考]
※ロワ参加前からの参加です
※主催者と契約した『ジョーカー』なので首輪の解除と支給品での援助を受けています
◇ ◇
目を覚ますと、俺、早野正昭は一人だった。
どうやら命は助かったらしいが、あいつらを殺すことは出来ずじまいだ。
だけど―――ちょっとばかり、想像の枠を超えすぎていた気がする。
銃弾を爆弾で撃ち落としたり、真っ二つにしてみたり。
挙げ句の果てにはスライムで出来たような気味の悪い触手まで振り回してくる始末。
この世界は一体いつからあんなにファンタジーな連中が蔓延るようになったのだろうか。
はっきり言って、最初の狐の時もそうだったが、ああいう奴を相手にするのは怖い。
下手をすれば殺されるのはこっちだ。銃を持っているからといっても、連中を倒せるかはわからない。
なんて酷いバランスのゲームだ―――と、悪態の一つや二つつきたくなる。
強い者が勝ち、弱い者はどんどん死んでいく。堕ちていく。
「ま、そんなもんか」
はは、と乾いた笑い声。紛れもなく、俺の声だった。
服にべっとりとこびりついた
大塚英哉の血液の痕を撫でて、俺は自嘲するように呟く。
後戻りはもう出来ない―――そんなこと、わかりきっている。
「……俺は正しい、そうだろ」
それが誰に向けた言葉だったのかは、俺にもわからなかった。
【早野正昭@個人趣味ロワ】
[状態]:全身にダメージ(中)、精神疲労(大)、衣服が血塗れ
[服装]:特筆事項無し
[装備]:M4カービン(20/30)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~2
[思考]
基本:優勝して自らが殺した全ての人間を蘇らせる
1:当分は替えの衣服を探したい。
2:対主催グループに潜入して、隙を見て一網打尽にする
[備考]
※個人趣味ロワ、死亡後からの参加です
※木製バットは回収していません
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最終更新:2012年12月17日 17:55