とある民家の浴室で、
璃神妹花と
神谷茜は身体を洗っていた。
特に身体の汚れが酷い妹花は隅々まで念入りに洗う、出来れば湯船にも浸かりたい所であるが時間的な余裕が無い。
先の放送で現在いる市街地全域が禁止エリアに指定されたためだ。
放送から一時間後の午後一時までにエリアC-6、D-6の市街地を脱しなければ首輪が作動し、死に至る。
放送を聞いた時点で早急に避難を始めるべきだったのだがそれが出来ない理由があった。
それが、妹花と茜が身体を洗っている理由に繋がる。
放送前の出来事で、二人、特に妹花の身体と衣服は酷く汚れそのまま共に行動する事が憚られる程の悪臭を放つまでになった。
茜はまだましだったがそれでも着替えと湯浴みが必要な状態だった。
そのため、適当な民家に侵入し、二人は入浴、そして茜の同行者である
佐原裕二と、グループの仲間である
稲垣葉月が、
民家を家探しして二人の着替えを調達する事になった。
「妹花ちゃんそろそろ……」
「うん」
お互い身体が綺麗になった事を確かめるとシャワーで身体を流し、浴室を出る。
浴室の暑い空気から脱衣所の冷えた空気に幼い二人の裸体は晒され身震いをする。
「二人共出た? 一応着替え見繕ってきたんだけど」
脱衣所には二人分の衣類を持った稲垣葉月。
早急にバスタオルで身体を拭き、妹花と茜は葉月から手渡された衣類を受け取り、着始めた。
「サイズどうかな?」
「私は大丈夫です……妹花ちゃんは」
「だいじょうぶ……」
サイズが合うかどうか心配していた葉月だったがどうやら問題は無いようだ。
二人と葉月は脱衣所から出る。
裕二が三人を出迎えた。
「綺麗になったじゃないか、茜ちゃんに妹花ちゃん」
茜と妹花を見て裕二が言う。
茜は両肩部分が青くそれ以外は白い半袖シャツと、紺色のホットパンツ。
妹花は淡い桃色のパーカーと、チェック柄のスカート。
下着も調達品である。余り汚れていなかった靴下と靴はそのままではあるが、
身体も洗い着替えも終えすっかり綺麗になったその姿は風呂に入る前を知る裕二や葉月には別人にも見えた。
少し二人は照れ臭そうにした。
「さて、時間が余り無い。こっちへ」
刻限である午後一時は刻々と迫っているため、裕二達は早々に行動を始める。
民家のガレージには銀色のミニバンがあり、脇に
銀丘白影と
被験体01号が立っていた。
ミニバンは民家の家主の物だろうが、銀丘が民家の中で鍵を見付けたらしく、
既に乗り込める状態になっていた。
「これでこの街から出るぞ。さあ乗るんだ」
「あ、あの、銀丘さん……」
「? 何だ妹花」
「須藤のお兄ちゃんや、
一刀両断のお姉ちゃんは……」
妹花はグループから脱した二人、
須藤凛と一刀両断の事が気がかりだった。
凛は先刻の戦闘の時、どさくさに紛れていなくなってしまい、
一刀両断は、それより以前に単独行動を申し出ていなくなってしまった。
それ以外にも、
飯島遥光がグループから抜けてしまっていたが、彼女の名前は先の放送で死亡者として呼ばれた。
凛と一刀両断の名前は呼ばれなかったため今もどこかで生きていると思われる。
ただ、現在いるメンバーの中で凛と一刀両断の両方を知っているのは、銀丘だけだった。
その銀丘は、さして二人の事を気にしている様子は無い。
「探している暇は無い。あいつらも放送を聞いているのなら避難するだろう。
私達は私達の安全を考えるべきだ、分かるな?」
「……」
「悪いが議論している余裕は無いんだ、乗ってくれ」
まだ何か言いたげな妹花を車の中に押し込むように乗せると、次に茜、裕二、葉月を誘導して乗せる銀丘。
そして銀丘は運転席に、01号は助手席に乗り込んだ。
「行くぞ」
銀丘がキーを回すと、エンジンが唸りを上げた。
一行を乗せたミニバンは民家のガレージを出て、走り出す。
運転しながら銀丘はこれからの行動指針について考える。
放送で発表された死者は二十一人。
自分や01号のように名簿に載っていない参加者も何人かいるらしい。
他にもジョーカーがいる可能性は否定出来無いがそれは今は考える必要は無いだろう。
かつて一緒に行動していた飯島遥光の名前も呼ばれた。
どういう経緯で自分達のグループから離れたのかは、銀丘はその場にたまたま居合わせていなかったため、分からない。
当事者である須藤凛からは詳しい事は聞いていない。聞く気も無かったのだが。
その須藤も、放送前の戦闘のどさくさに紛れ消え失せてしまった。
放送で名前は呼ばれなかったのでまだ生存はしていると思われるが、銀丘には彼を捜す気は毛頭無かった。
元々役に立たないようなら切り捨てる算段はしていた、彼にも彼なりの事情はあっただろうが、
仲間を見捨てて一人で逃げてしまうような者を無理に捜し出す理由は無い。
もう一人、一刀両断については、役立たずとは思わなかったがやはり捜すつもりは無かった。
やはりその場に居合わせていなかったので、一刀両断が単独行動を取り始めた理由も不明だったが、
彼女の戦闘能力は銀丘も一時共闘した故に知っており、簡単に死ぬとも思えない。
思慮深い訳では無さそうだが浅慮と言う訳でも無いようなので単独行動にもそれなりの理由があるのだろうと銀丘は考えた。
二人共、多少理由は違えど、禁止エリアの刻限が迫っている時に捜索しなければならない程の重要度は低い。
今は一刻も早く、禁止エリアに指定されたこの市街地から脱する事を優先するのが得策だろう。
妹花は心配しているようだったが、それを歯牙にかける銀丘白影では無い。
「取り敢えずどこに行くんだ? 銀丘」
助手席の01号が銀丘に尋ねる。
「北に向かおう。施設が比較的多い、それに別の市街地もある」
「成程……」
「他に案があるなら聞くが?」
「別にねぇよ。訊いただけだ、気にすんな」
助手席の01号は、座席の背もたれに身を任せリラックスしているように見えたが、
その実周囲に気を配り続けていた。
車での移動は非常に目立つ。
機関銃のようなもので狙撃されると最悪全滅する可能性もある。
銀丘も周囲を警戒はしているようだったが、運転をしているため行動は制限される、それ故に助手席の彼が辺りの様子を窺っていた。
後部座席。
中列のシートには窓側に葉月、中央に妹花、後列のシートにはやはり窓側に裕二、中央に茜が乗っていた。
少女二人を中央に乗せるのは銃撃された時、少しでも被弾の危険から遠ざけるためであった。
どれぐらい有効なのかは葉月にも裕二にも分からなかったが。
(
レックスはまだ無事みたいだけど……二十一人も死んでるなんて)
葉月は放送で自分の愛狼、レックスの名前が呼ばれなかった事を喜ぶのと同時に、
全体の四分の一近くがたった六時間の内に死亡した事実に衝撃を受けた。
この殺し合いで初めて仲間になった
浅倉翔も死に、名前が呼ばれた。
彼の友達らしい須藤凛は現在行方知れず。
自分はまだマシかもしれないが、この殺し合いで家族や友人、恋人を失った者もきっといるだろう。
もし、放送で「レックス」の名前が呼ばれたら、その時自分は、きっと冷静ではいられないと葉月は思う。
絶望し、悲嘆に暮れ、選ぶ道は愛する者を追うか、愛する者を生き返らせるために優勝を目指すようになるか、
狂って自分を失うか、何にせよ暗い未来しか無いだろう。
だが、いずれかの道に堕ちてしまった参加者もいるかもしれない。
本当に恐ろしいゲームだと、葉月は改めて思った。
◆◆◆
早野正昭は放送を聞いた後、市街地から出るために歩き続けていた。
北部の市街地全域が午後一時から禁止エリアになってしまう。
その前に街から避難しなければならない。
彼の衣服は変わっていた。
元々着ていた水色のパーカーと灰色のカーゴパンツから、紺色のトレーナーとジーパンになっている。
適当な民家で失敬した物だ。
前の衣服は血塗れで目立つため、着替えた。
それに、主催に抗おうとする者達の中に潜入する気もあったので、血塗れの衣服では都合が悪い。
右手骨折と言う重傷を負っている中で、着替えるのは困難を極めたが。
その骨折した右手も一応の処置は済ませてある。
「急がないとな……」
現在いるエリアが表示される機能が付いた懐中時計で時刻を確認しながら、
正昭は足早に道路を進んで行く。
「ん……?」
正昭の耳にある音が入り、彼は足を止める。
場所は交差点、音は正昭から見て左折側の道から聞こえる。
その音は車の音だった。
「!」
正昭の目の前を銀色のミニバンが通り過ぎる。
誰が乗っているのかはよく見えなかった。
ミニバンは止まる気配も見せず、そのまま走り去って行った。
「車か……俺も、何か乗り物調達しとくべきだったかな」
ここに来て足替わりの乗り物を確保しておいた方が良かったと正昭は思ったが、
今更探す余裕も無い。
何とか自分の足で市街地から避難するしか無いと、再び足を進め始めた。
◆◆◆
とある交差点を通り過ぎる時、人影があった。
それは裕二と、銀丘、葉月が目撃した。
「おい、今誰かいなかったか」
「ああ、いたな」
後部座席にいた裕二が運転席の銀丘に人影の事を言うが、返事は素っ気無いものだった。
「無視して良いの?」
「構ってる暇は無い。少なくとも須藤や一刀両断では無かった。
殺し合いに乗っているかもしれんしな」
葉月が人影を確認した方が良いのではと意見を出すが、あくまで銀丘は冷静に返答する。
銀丘にとっては、例え人影が須藤や一刀両断だったとしても車を停めるつもりは毛頭無かったが。
余りに冷徹で情を介さない銀丘の物言いには裕二達も眉をしかめたが、無駄に争っても何の利も無い事も分かっていたため、
それ以上は何も言わなかった。
【C-6/市街地/一日目/日中】
【銀丘白影@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(小)、爆弾残量1、ミニバンを運転中
[服装]:特筆事項無し
[装備]:同田貫正國
[道具]:基本支給品一式、ガソリン(5ℓ)、ラハティL-39(9/10)
[思考]
基本:勝算がない。よってゲームへ反逆する。
1:C-6エリアから避難し、北へ向かう。
2:場の流れに任せる。険悪になりそうだったら自分は抜けてもいい。
3:須藤凛、一刀両断については割とどうでもいい。
[備考]
※ロワ参加前からの参加です。
※主催者と契約した『ジョーカー』なので首輪の解除と支給品での援助を受けています。
※01号がもう片方のジョーカーであることを把握しました。
【被験体01号@新・需要無しロワ】
[状態]:疲労(中)、全身各所にダメージ(中)、銀丘白影の運転するミニバンに乗っている(助手席)
[服装]:特筆事項なし
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、栄養ドリンク(9)、鶴嘴、首輪のサンプル
[思考]
基本:あいつの鼻を明かしてやるぜ。殺人は……あんまやりたくないな。
1:銀丘達と行動。C-6エリアから避難する。
2:とりあえず、場の流れ次第でどうするか考える。
3:あの獣(
須牙襲禅)とはもう会いたくねぇな。
[備考]
※ロワ参加前からの参戦です。
※ジョーカーの特権として、首輪を装着していません。
※銀丘がもう一人のジョーカーであることを把握しました。
※人影(早野正昭)の姿は見ていません。
【稲垣葉月@新訳俺のオリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康、銀丘白影の運転するミニバンに乗っている(中列座席窓側)
[服装]:特筆事項なし
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、治療道具、ランダム支給品(1~3)
[思考]
基本:レックスに会いたい、死にたくない。
1:01号さん達と行動。C-6エリアから避難する。
2:凛君は余裕があったら捜したい。
[備考]
※新訳俺オリロワ参加前からの参加です。
※
高原正封の外見と名前を記憶しました。
※須牙襲禅の容姿のみ把握しました。
※人影(早野正昭)の容姿はほんの一瞬見ただけなのでほとんど把握していません。
【神谷茜@需要無し、むしろ-の自己満足ロワ3rd】
[状態]:健康、入浴済、銀丘白影の運転するミニバンに乗っている(後列座席中央)
[服装]:着替え済(両肩部分が青くそれ以外は白い半袖シャツと、紺色のホットパンツ)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1~3)
[思考]
基本:佐原さん達についていく。
1:妹花ちゃんはもう大丈夫かな?
[備考]
※死亡後からの参戦です。
※人影(早野正昭)の姿は見ていません。
【佐原裕二@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]:疲労(小)、背中に裂傷(処置済)、銀丘白影の運転するミニバンに乗っている(後列座席窓側)
[服装]:特筆事項なし
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1~3)、ピッケル、
青木林の支給品一式
[思考]
基本:《ヒーロー》としてこの殺し合いをハッピーエンドで終わらせる。
1:茜ちゃんを守る。
2:銀丘さん達と行動。
3:これ以上人を死なせたくない。
[備考]
※サイキッカーバトルロワイアル開始前からの参戦です。
※サイキックに制限はありません。
※人影(早野正昭)の容姿はほんの一瞬見ただけなのでほとんど把握していません。
【璃神妹花@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]:健康
[服装]:着替え済(淡い桃色のパーカーと、チェック柄のスカート)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1~3)
[思考]
基本:殺し合いをする気はない。
1:分かんないけれど、間違った存在なりに正しく生きてみたい。
2:清正おじちゃん――まいかは、がんばります。
3:茜おねーちゃんについていく。
[備考]
※ロワ参加前からの参加です。
※《うにゃー》の食欲そのものがいけないことであると理解しました。よって、今後彼女が人を食物と認識することはまずないと思われます。
※入浴と着替えをした事で、悪臭と口臭は消えました。
※人影(早野正昭)の姿は見ていません。
【C-6/市街地/一日目/日中】
【早野正昭@個人趣味ロワ】
[状態]:右手骨折(応急処置済)、全身にダメージ(中)、精神疲労(大)
[服装]:着替え済(紺色のトレーナーにジーンズ)
[装備]:M4カービン(16/30)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1~2)
[思考]
基本:優勝して自らが殺した全ての人間を蘇らせる。
1:C-6エリアから避難する。
2:対主催グループに潜入して、隙を見て一網打尽にする。
[備考]
※個人趣味ロワ、死亡後からの参加です。
※ミニバンに誰が乗っていたかまでは見ていません。
《調達品》
【ミニバン】
銀丘白影がC-6市街地の民家より入手。
車種は日産・セレナ(3代目C25型、2005年5月-2007年12月の前期型)。カラーはシルバー。
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最終更新:2013年04月29日 15:47