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悪人同行

「ふむ。俺が此処に存在しているということは、つまり俺はまだ死ぬには早かったってことか」

ずずずず、と下品な音を立ててコーヒーを啜る若い男性。

「さあなあ。おれは楽しめりゃそれで構わないが」

じゅるるる、とこれまた品のない音を立てて酒を啜る男性。

缶コーヒーと酒瓶、互いに飲んでいる液体こそ異なれど二人の男の本質はさほど変わりはしない。
只、娯楽を。
只、混沌を。
白崎ミュートンと酒々楽々、その二人の目指すものは違くとも、本質は娯楽である。
どちらも自らが壊して狂わせた存在に殺されて居ながら、彼らに反省の色は微塵もない。
むしろどちらも、最初に出会えたのが俗に言う『似た者同士』であったことを幸運と思っている始末。
彼らはどうしようもなく歪み、淀んだ生き方をしている。
だからこそ、二人が意気投合したのにも無理はない。
彼らは互いに余りにも似すぎている―――共通点が、余りに多すぎる。
例えば二人はどちらもこのバトルロワイアルにて、俗に能力と呼ばれるものを保持しているのだ。
白崎ミュートンの《才能》と酒々楽々の《ルール能力》。
相手の精神を徹底的に破壊して崩す才能と、酒を操り物を落とすルール能力。
これも本質は何も違わない、何かを壊すための力。
そして問題はこの二人、その力を《悪いこと》に使うことに余りに特化しすぎている。
まさに誰かを狂わせる宿命を持って生まれたかのように、たとえ意識せずとも悪いことをする。
生まれながらの悪徳ほど厄介なものはない。

「で、あなたは勇気凛々ちゃんでしたっけ――その子に、殺られたと」

白崎はニコニコと、不快感を振り撒く笑みを浮かべて酒々楽々の記憶を掘り返す。
死の瞬間をフラッシュバックさせて楽しもうとは考えていないし、この白崎ミュートンという男は大変健全な性癖を持っている為に酒々楽々を壊したところで何もそそりはしないのだ。
むしろ白崎が気にしているのは、酒々楽々を殺したという少女《勇気凛々》の方だ。
女子中学生を壊すなんてどれほど楽しいだろうか、白崎は考えるだけで笑顔が浮かぶ。

「そういうてめえは相当な化物に殺されたんだったか、確か柳とかいう」

そうだ、と白崎は笑顔で頷く。
既に酒々楽々とは最低限の情報交換を済ませて――生存する為の、同盟を組んであった。
思えばそうだ、白崎が殺されるときに《酒の霧》があったなら、死ぬことはなかったかもしれない。
酒々楽々が勇気凛々に殺されるとき、白崎の《蠢く怪異》があったならあの少女を更に壊せたろう。
その点、この二人の悪人の同盟関係は互いにとって非常に合理的であった。
この二人、決して世の中に認められる存在ではないが――何かを利用する悪知恵には長けている。
今この状況だって、白崎が酒々楽々を壊すことは余りにも容易だし、酒々楽々が白崎を急性アルコール中毒なり何なりで殺害することもまた、どうしようもなく簡単だ。
それこそ、赤子の手を捻るかのように。

が彼らはそれをしない。
今の同盟関係が互いにとってどれほど合理的で、考えられる最高のペアだと理解しているから。
白崎は強力な《才能》を持つ上に相手を懐柔して心に隙を作り出す、話術に長けている。
酒々楽々のルール能力は言わずもがな、暗殺でも何でも容易く行える素晴らしい力である。
白崎が騙して酒々楽々が殺す。
当然楽しむにも事欠かない、二人の悪人は人壊しに長けている。

「詩織ちゃんは凄かったね。俺の腕をまるで割り箸のようにへし折っちまった」

へらへらと笑う――やはりそこに、懲りた様子などこれっぽっちもない。

まさに生き残ることに長けた同盟関係。
そして《悪いこと》に長けた同盟関係。
バトルロワイアルにて自業自得の死を遂げた死者二人は、一切反省せずに舞い戻る。

「そういえば主催の――つなぎちゃんだっけ?あの娘も可愛かったねえ」

下卑た瞳。
そして応じるように下卑た笑顔で微笑む酒々楽々――。

「俺はこうも考えていてね。もしも俺達が首輪を予定通りに外して、他の連中を皆殺しにしてやったらその後に――――あの生意気な餓鬼共、ちょーっと懲らしめてやろうか、ってね」
「悪くねえ話だ――ああ、そいつぁ最高に楽しそうだな」

彼らに見境はない。
白崎は生まれながらに破綻した人間だし、酒々楽々は楽しめればそれでいい。
楽しむ為には、白崎ミュートンと行動するのが一番安全に、それでいて一番楽しめる。
生存の保証もある、まさに互いにとって利益を生む出会いだったといえよう。


「じゃあよぉ、白崎。まずああいう子から壊してくのかよ?」

酒々楽々が指差した先には、黒髪のツインテールが特徴的な小学生くらいの少女。
良いねえ、と口元を歪めて笑う白崎の方をその少女は興味深げに見つめ――――そして、白崎ミュートンと酒々楽々、両者が想像もしなかった展開に物事は進む。
たたたたた、と。
幼い無邪気な走り方でその少女は二人の元にやってきて――そして、また止まった。
まるで観察者のように、死んだ虫に群がる蟻を見つめる無邪気な子供のような瞳。
その瞳が意味するのは純粋に興味だけだった。
この二人が行っている《悪いこと》の話し合いに、子供らしいを通り越した興味を抱いてしまった。
それは主催者や白崎たちからすれば最高で、そして少女、愛崎一美にとっても最高で。
けれど、善人の視点からしたら最悪の興味だったといえるだろう。

「……あたしも混ぜてくれっ!」
「構わないよ。全く以て確実に、自信を持って《構わない》と言おう――な、酒々楽々」
「ああ……成る程な、そういうことかい……こいつぁ楽しそうだ」

悪人二人は気付く。
愛崎一美は、とても無邪気で壊し甲斐がない人物だと。
だからこそ、零から人間性を描くことができる。
いわば《悪人同盟》―――その、一員とするに十分すぎる逸材ではないか。
白崎ミュートンは笑う。
酒々楽々も酒瓶を傾けて、笑う。
そして愛崎一美も、凄く楽しそうに笑う。

くるいくるった、はきけのするようなおはなし。


【C-2/デパート/一日目/朝】

【悪人同盟】

【白崎ミュートン@才能ロワイアル】
[状態]健康、ハイテンション
[服装]特筆事項なし
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、コーヒー(飲みかけ)、ランダム支給品×2
[思考]
基本:悪人として酒々楽々と行動し、悪人のみで主催打倒
1:少女(愛崎一美)を悪人に染める。
[備考]
※才能ロワイアル死亡後からの参加です
※《蠢く怪異》は制限されていません

【酒々楽々@四字熟語バトルロワイヤル】
[状態]健康、ハイテンション
[服装]特筆事項なし
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、酒瓶、ランダム支給品×2
[思考]
基本:白崎の作戦に従って生き残る。
1:少女(愛崎一美)を白崎と共に《染める》。
2:勇気凛々には会いたくない。
[備考]
※四字熟語バトルロワイヤル死亡後からの参加です
※ルール能力の二つに規制はありません

【愛崎一美@数だけロワ】
[状態]健康
[服装]特筆事項なし
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×3
[思考]
基本:????
?:目の前の二人から話を聞く
[備考]
※数だけロワ参加前からの参加です


支給品説明

【コーヒー】
白崎ミュートンに支給。
缶コーヒーで味はブラック。

【酒瓶】
酒々楽々に支給。
中身は普通の焼酎で、安物。


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最終更新:2012年04月19日 18:19