そのデパートは20階はある高層建築物で、様々な店や企業の看板や広告が壁に貼り付けられている。
周囲は草原が広がっていて、こんな所にこんな大掛かりな商業施設を建てて元は取れるのか、と、
古川正人はデパートの建物を見上げながら思った。
「随分大きな建物だね、誰か一人ぐらい、人がいるんじゃないかな?」
「そうだな、入ってみるか」
カインツの言う通り、遠目からでも目立つこのデパートに他の参加者がいる可能性は大いにあった。
もしかしたら自分の捜す
三瀬笑子も――――過度の希望的観測は良く無いとは分かっていても、
正人はそう思わずにはいられない。
二人はデパートの正面玄関へと歩いて行く。
入口の自動ドアは開き、中に入ると照明も点灯しており、空調の音や音楽等も聞こえる。
建物の電源は正常に機能しているらしい。
しかし、人の気配は全くしない――――はっきり言って、正人は不気味に思っていた。
デパートと言えば開店直後か閉店直前でも無い限り常に人で溢れているため、
人っ子一人もいないと言う状況は馴染みの無いものだからだろう。
「やっぱり中も広いね……どこかに誰かいても、これじゃ見逃してしまいそうだ。
いや、こうも言えるね……『やる気』になっている奴がいて、隠れていても、分からなそう」
「……気を付けないとな」
外観通り内部も相当に広く、隠れられる場所は多い。
誰か隠れて息を潜めていたり、こちらの様子を伺っていたとしても簡単には分からないであろう。
不意を突かれる危険もあった。
その内、デパートの地図が置かれている場所を発見する。
「ご自由にお取り下さい」と書かれた下にあるそれを一つ取り正人は広げた。
スーパー、書店、玩具屋、化粧品店、有名ブランドショップの数々、100円ショップ、スポーツ用品店……。
とにかく多種多様な店舗がこのデパート内には入っているようだった。
これらを全て調べるのは、はっきり言って非効率的で、労力の無駄、と言える。
「何度も言うけど、広いね」
「……全部見て回るのは流石に時間の無駄過ぎる、絞ろう……そうだな、取り敢えず……」
正人はデパートのとある場所を指差す。
そこは。
◆
デパート最上階は、フードコートとなっている。
座席の数もさる事ながら、設けられた飲食店の数も多い。
牛丼屋、コーヒーショップ、ハンバーガーショップ、ラーメン屋、うどん屋、ステーキハウス等。
「誰か来たか?」
椅子に座っていた三人の一人、酒をあおっていた男、酒々楽々がフードコートの複数ある入口の一方に目を向ける。
同じく座っていたコーヒーを飲んでいた
白崎ミュートン、オレンジジュースを飲んでいた
愛崎一美も、同じ方向を向く。
フードコートに入って来たのは二人の少年、片や刀を持ち、片や外国人風。
それを見て、酒々楽々とミュートンはくくっと笑みを浮かべる。
「一美、お前、悪人になりたいんだったなァ」
「そうだよ」
「じゃあ、ちょっと見ておくと良い、『悪人』の行動を、な」
「分かった」
酒々楽々とミュートンの後に、一美は後ろからついて行く。
「……よぉ、お前ら二人もこの殺し合いに巻き込まれたクチかい」
軽い調子で酒々楽々は二人に話し掛けるが、二人の方は警戒している様子だった。
「俺は……まあ酒々楽々と呼んでくれ。んで、こっちが」
「白崎ミュートン。そんな怖い顔しなさんなお二人さん」
「あたしは愛崎一美」
「……俺は古川正人」
「僕は、カインツ・アルフォード」
二人と三人は緊張の解けぬ中、互いに自己紹介をする。
「……あんたらは、殺し合いには乗っていないのか?」
正人が三人――――主に酒々楽々、白崎ミュートンで明らかに子供の愛崎一美は外していた――――に尋ねる。
酒々楽々とミュートンは互いに顔を見合わせ、くくっと笑う。
「……主催者の人無には、俺達も確かに腹を立てている。何とかして打倒したいと思っているよ」
ミュートンが正人の問いに対し返答するが、正人の質問に答えたものでは無い。
正人も、カインツも、酒々楽々、白崎ミュートンの二人を警戒していた。
二人は外見からして、決して善人とは言えない風貌だったが、
それだけではなく二人から発せられる気配は身を刺すような「邪悪」である。
「……人無を打倒したい、と言うのはつまり、殺し合いには乗っていないと言う事ですか?」
カインツが様子見のつもりで二人にそう尋ねる。
「……しかしだ、古川正人君、君は真っ直ぐな目をしているな」
「確かになぁ」
しかし、二人は正人の時と同様、問いにまともに答えようとせず、むしろカインツは無視したような感じだ。
「……何だ」
「白崎、ここは俺に任せてくんねぇかな」
「良いだろう」
「一体何の話を――――」
「まぁ待てよ……カインツ君だったか?」
「……っ」
「おい、さっきから何なんだ? 一体何がしたい? 俺達も暇じゃないんだ、余りふざけるのはよしてくれ!」
酒々楽々、白崎ミュートンの意図が掴めず、苛立つ正人はつい声を荒げた。
カインツと一美が一瞬びくっとするも、二人には大して効果も無くむしろ正人の神経を逆なでするような笑みを続けるだけ。
ますます正人の苛立ちは募る、こんな所でこんな連中相手に時間を潰したくないと言うのに。
早く笑子を見付けなければ、守ってやらなければならないと言うのに。
「へぇ、暇じゃない? 何か急ぎの用事でもあるのか?
そうだな例えば……誰か大切な人がこの殺し合いの中にいて、それを捜している途中、だとか?」
「……!」
脈ありか、と、酒々楽々は思った。
もう少し、掘り下げてみようと彼は続ける。
「へぇ、恋人か何かか?」
「なっ……」
「図星か、恋人のためねぇ……」
「……何だ、何が言いたい?」
「お前さんがこの殺し合いに抗っているのは何となく分かる、んで、お前さんを動かしてんのは、
その恋人って訳だ、良いねぇ、青春って奴かァ? くっくっくっくっ」
気に障る笑い方をしながら、酒々楽々は「ある事」をした。
それは彼自身の、以前の殺し合いにおいて賦与された能力であり特権。
「何が可笑しい? おい、人をおちょくるのもいい加減にしてくれよ」
「正人君、落ち着くんだ……」
「……古川正人、お前さんは真っ直ぐな人間だ、恐らく恋人を守るために、救うために、
この殺し合いに反抗している、『善人』なんだろうなァ……だから」
「……?」
ここに来て、正人はどこからか酒の香りが立ち込めている事に気付く。
しかしカインツには酒の香りは全く感じられなかった。
当然である、その香りの元となっている「霧」は正人のみに向けられたものだったのだから。
「俺らとは相容れないなァ」
「――――――ッ」
酒の香りが一層強くなった、直後、正人の意識は消失した。
「正人君!?」
突然の事に驚きの声をあげカインツが倒れた正人の元に駆け寄る。
(酒の臭い!? 正人君は酒なんか飲んでない筈なのに、だけどこの症状はほぼ間違い無く、
急性アルコール中毒……あの男、何かしたのか!?)
酒々楽々を睨むカインツ。
当の本人は薄ら笑いを浮かべている。
「俺の事睨む暇あったらさっさとそいつ何とかした方が良いぜ? ほっといたら、死ぬかもしれねぇぞ」
「何でこんな……!?」
「俺らは『悪人』と『悪人志望』なんだよ、お前らのような『善人』はお呼びでねぇってこった」
「……くっ」
全く持って酒々楽々と白崎ミュートン、彼らについている愛崎一美の意図が読めなかったが、
ともかく、一刻も早く正人を治療しなければならないと言う事はカインツにも分かった。
意識を喪失している正人を担ぎあげ、カインツはフードコートの出口に向かい始める。
追撃される可能性も懸念したが、意外にも三人ともカインツに手を出そうとする様子は無かった。
結局、あの二人、いや、三人の意図は今一つ分からないがこれだけは言える。
彼らは紛れも無い「悪人」であり「敵」だと。
「なぁ、あのカインツって奴は放っておいて良いのか?」
一美が酒々楽々とミュートンに訊く。
「一気に壊すより、ゆっくりじわじわやる方が面白い事もあんだぜ、一美」
「まあ、酒々楽々とほぼ同じだ」
「ふぅん、そう言うもんかなぁ」
「さあて、そろそろ俺らも出発しようぜ」
「そうだな、行くぞ、一美」
「あいよー」
三人は荷物を纏め始める。
【C-2/デパート最上階フードコート/一日目/午前】
【悪人同盟】
【白崎ミュートン@才能ロワイアル】
[状態]:健康
[服装]:特筆事項なし
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、コーヒー、ランダム支給品(2)
[思考]
基本:悪人として酒々楽々と行動し、悪人のみで主催打倒。
1:愛崎一美を悪人に染める。
[備考]
※才能ロワイアル死亡後からの参加です
※≪蠢く怪異≫は制限されていません
※古川正人、カインツ・アルフォードの名前と容姿を記憶しました。
【酒々楽々@四字熟語バトルロワイヤル】
[状態]:健康
[服装]:特筆事項無し
[装備]:無し
[所持品]:基本支給品一式、酒瓶、ランダム支給品(2)
[思考]
基本:白崎の作戦に従って生き残る。
1:愛崎一美を白崎と共に《染める》。
2:
勇気凛々には会いたくない。
[備考]
※四字熟語バトルロワイヤル死亡後からの参加です。
※ルール能力の二つに規制はありません。
※古川正人、カインツ・アルフォードの名前と容姿を記憶しました。
【愛崎一美@数だけロワ】
[状態]:健康
[服装]:特筆事項無し
[装備]:無し
[所持品]:基本支給品一式、ランダム支給品(3)
[思考]
基本:悪人になりたい。
1:酒々楽々とミュートンについて行く。
[備考]
※数だけロワ参加前からの参加です
※古川正人、カインツ・アルフォードの名前と容姿を記憶しました。
◆
急性アルコール中毒に罹った場合、早急に救急車を呼び、
集中治療室(ICU)管理下で輸液と利尿とを施してエタノールを体外に排出させることが唯一の治療法になる。
しかし、今は殺し合い。ここは、デパート。
電話をしても救急車は来る事は無く、近くに病院も無い。
急性アルコール中毒患者にとっては絶望的な状況、しかしそれでも、カインツは正人を救わなければならない。
14階の家具売り場のベッドの上に、カインツは正人を寝かせる。
体と頭を横向きにして寝かせる。回復体位と呼ばれるもので、
寝ているうちに舌がのどに落ち込んだり、嘔吐物がのどに詰まって窒息する危険を避けるためだ。
「すぐに病院に連れて行く事が最善なんだろうけど……」
地図には病院の場所も記載されていたが、距離がそれなりに離れており、
運んでいる内に手後れになる可能性の方が高かった。
「……取引したからね……救ってみせるよ、正人君」
先刻、正人と交わした取引を無碍にする訳にはいかない。
ここで正人を死なせたりはしない、何が何でも、助ける。
それが自分の使命だと、カインツは自分に言い聞かせた。
【C-2/デパート14階家具売り場/一日目/午前】
【カインツ・アルフォード@オリキャラで俺得バトルロワイアル】
[状態]:健康
[服装]:特筆事項無し
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1~2)
[思考]
基本:なるべく多くの人間と脱出
1:正人君と行動、多くの人間と同盟を組む。
2:「取引」は守る。
3:危険にさらされたら、刺し違えてでも危険人物を止める。
[備考]
※俺得オリロワ参加前からの参戦です。
※古川正人と「取引」しました。
※白崎ミュートン、酒々楽々、愛崎一美の名前と容姿を記憶しました。
【古川正人@DOLバトルロワイアル2nd】
[状態]:急性アルコール中毒による意識喪失(応急処置済)
[服装]:特筆事項無し
[装備]:黒作大刀@俺得ロワ3rd
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1~2、刀剣類は無い模様)
[思考]
基本:今度こそ笑子を守る。
1:…………。
2:カインツと行動する。
3:笑子を探す。
[備考]
※DOL2nd死亡後からの参戦です。
※カインツ・アルフォードと「取引」しました。
※白崎ミュートン、酒々楽々、愛崎一美の名前と容姿を記憶しました。
※カインツと古川の取引は、
1:カインツが古川に武器を貸す。
2:その代わり古川がカインツを守る。
3:怪我をした場合は医者としての力をカインツが古川に貸す。
以上です。
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最終更新:2012年06月23日 00:16