静かな湖畔の陰に私は立っていた。
その手に一振りの刀を握り、立っていた。
広い湖は青く澄んでいて。
波ひとつ立っていない水面が、何かの形を映している。
そこに映っていたのは、血まみれのパーカーを着た、黒髪の女性だった。
この女性は、名前を
守谷彩子と言う。
私の名前も守谷彩子。つまり、湖に映っているのは私の姿だ。
まるで現実感のない風景。
湖の中の私は、言った。
『傍らを見てみなさい』
言われるがまま、私は目線を動かした。
そこに転がっているのは、……四人分の、惨殺死体だ。
私はその死体たちを覚えていた。覚えていなければいけなかった。
これはすべて、私が行った殺人の記録だ。
凄惨な光景に私は思わず目を逸らそうとしたけれど、
湖の中の私はそれを許してくれず、目線さえ自由に動かせない。
ずっとこうだった。
こうして、操られて。私はこの刀、妖刀村正に、血を吸わせるためだけに行動させられて。
最終的には人を四人も殺した。まるで悪夢のような、辻斬り。
守谷彩子が殺し合いの中で行ったこと。
私の、罪だ。
『そう、それがお前の罪よ。だから私が罰を与えてあげる』
もう一度湖を見ると、そこにいたのは私だった。
黒髪を振り乱し、舌なめずりをしながら私を見据え、妖刀の切っ先を突き付けて笑うそれは、
湖から立ち上った霧のようなぼんやりとした姿で私の眼前に立つ。
『お前が与えていた痛みを――お前に返してあげるわ』
湖の私は。
削るようにして、ゆっくりと私の身体を切り刻み始めた。
人差し指が無くなって。腕が無くなって。足が無くなって。肩がスライスされて。
赤い赤い血がどばどばと流れていく。
痛い。痛い。
澄んだ青の水が、赤に塗りつぶされていく。
血の抜けるすっとした感覚と、苦しみが私を襲う。
同時に。こんな痛みを人に与えていたんだという思いが、私を苛んだ。
湖の私は笑っていた。
私だ。これは、これも、私だ。
妖刀村正は持った人間を支配するけど、洗脳まではしない。
あくまで宿主の心の中にあるちょっとした思いを強制的に膨張させるだけだ。
『死ね。死ね。死んでしまえ。誰でもいいの。
私が生き残るために、お前を殺せれば、それでいい』
つまり、この私は。
今も百分の一くらいは私の中に存在する――それを見せつけられて、いる。
『全く思っていなかったなんて、言わせないぜ?』
悪夢だった。
++
「う……あぁああっ……あぁぁあああああ!!」
自分でも驚くような叫び声を上げながら起き上がると、私はいつのまにかベッドの上だった。
わりと大きなシングルベッド。私の部屋ではない。
ベージュ色の壁が優しい、ホテルの一室のような場所だ。
夢だった、の?
不安定な感情を安定させようと、私は両手をシーツから抜き取って眺めた。
びっしょりと汗をかいてはいるものの、確かに自分の手がそこにはある。
ただし、その手にはやはり……掠れた返り血の跡があった。
「夢じゃない」
「ええ、夢じゃありません。ここは殺し合いの真っただ中です」
「きゃあ!?」
「そしてそんな中で眠りこけていたあなたが、
相当なお気楽人間であるということは間違いないでしょうね。
正直、今のわたしが偶然ここを通りかからなかったら、いつ死んでもおかしくありませんでしたよ?」
「……だ、誰?」
突然の声に目線を横に向けると。
シックな空間の手前には簡素なテーブルとソファー、奥にはテレビとBDレコーダーがあった。
テレビはついてなくて、テーブルの上にはデイバックが二つ。
これは、私のものと――彼女のものだろうか。
よく見ると、ソファーに。両向かいに設置された片方のソファーに、少女が一人、ちょこんと座っていた。
銀色の髪を黒いヘッドドレスで飾って、ゴシックな服を着てじっとこちらを見ている。
お人形さんみたいだ、と思った。
異質すぎてそこに座ってると気づくのに時間がかかるくらい、綺麗でかわいい子だ。
うろたえる私を仕様がなさそうな目で見ながら、霊歌ちゃんは自己紹介をした。
「あ、ども」
丁寧な物腰に、思わず自己紹介を返す。
「私は、守谷彩子って言うの。K大学の二年生よ」
「それはどうでもいいです」
が、なんかばっさりと切り捨てられてしまった。
そして霊歌ちゃんはやけに冷徹な瞳で、真剣な感じで私に質問をしてきた。
「早速ですが、あなたのその――返り血の理由。そして、
寝ながらあなたがしきりに呟いていた『妖刀』という単語の意味。お聞かせ願えますか?」
「えっ……あなた、私をどうするの」
「どうもしません。今のところは。支給されていたものが、この通りなので」
ぐい、と自分のだろうデイパックを掴んで見せる霊歌ちゃん。
その中にはじゃがいも、にんじん、お肉、玉ねぎ、ごはんパックなどと一緒に、
よくある感じにパッケージングされたカレールーの素が入っていた。
林間学校みたいな支給品だ。
「わたしは、刃物が無いと話になりませんから。なくても別に気にしませんが、力を使いますし。
だったら情報を収集してから『や』ってもいいかなと思ったんです」
言いながら次に隣の――私のデイパックを見せてくる霊歌ちゃん。中身は調理器具のようだ。
中型の鍋、皮むき器、調味料各種。
確かにカレーを作るには包丁が足りない。
それで、えっと、「情報交換してから『や』る」、「今のところはどうもしない」、
ってことは……もしかしてこの子、カレーを作ってくれるつもりだったんだろうか。
見た目に反して家庭的というかすごくいい子だ。
倒れてたらしい(なんでだろう?)私をベッドに寝かせてくれたのもこの子なんだろうし、
ここはお礼を言わなければなるまい。
「そっか。ありがとう。じゃあ、それは後のお楽しみにしときましょう。私も手伝うわ」
「えっ?」
「えっ」
「手伝うって……あなた正気ですか?」
「わ、私は正気だけど。何か私、おかしいこと言ったかな」
「自殺行為に等しいことを言いました」
「……?」
私は不思議そうな顔をし始めた霊歌ちゃんを、同じく不思議そうに見つめる。
ちょっと話の流れが分からなくなってきた。
霊歌ちゃんは何を言いたいのだろう?
ええっと、カレー作りを手伝うのを「自殺行為」と言われた。ということは……。
まさか私――初対面の子に料理が下手だと思われているの? 嘘! ひどい!
というかなぜばれたし!
「し、失礼ね。べつに私は一人でもできるわ」
「そうなんですか」
「包丁で切ったりするだけだもの。誰だってできるわよ」
「だから、それが自殺行為だと言っているんですが」
「『や』るんでしょ? だったら一人でやるより二人でやったほうが早いわよ」
「ええ、『や』りますとも。でも、わたしがやりたくて『や』るわけだから、
あなたは何もしなくていいというか。むしろ積極的になられると腕が鈍るので、やめてほしいんですが……」
「むむむ……?」
ちょっと困った顔をしたあと、霊歌ちゃんはうつむいてしまった。
私も困る。これ、意思疎通出来てるよね? しかしこの子、しょんぼりした顔もかわいいな。
ええと、整理しよう。「積極的になられると腕が鈍る」。「出来れば一人で『や』りたい」。
ということは、私が下手だと思われたというより、
もしや霊歌ちゃん、料理の腕にすごく自信があるのだろうか。
料理人的な人って素人に邪魔されるのを嫌うっていうし、
思えば最初「わたしは刃物が無いと話にならない」って言っていた気がする。
「なるほど」
「理解してくれましたか?」
「うん、分かったわ。私はただ、霊歌ちゃんが仕事を終えるまで待ってればいいのよね。
どんな技を見せてくれるのか期待してるわ!」
「ちょっと違う気もしますが……まあ、おおむねそんなところです。
ただ、技といっても切るだけですよ?」
「だから刃物が必要なのよね。情報交換したら探しに行きましょう。
地図にデパートがあったわよね。あそこになら、刃物の一つや二つありそうだし……」
あれ。
ここで私と霊歌ちゃんは同時にさらに首をかしげた。
今までの会話もどこかおかしい部分はあったけれど、これはさらにおかしい。自分でも思う。
「――あなた、地図見たことあったんですか?」
「え? あれ、なんでだろう」
廊下に倒れていた(らしい)私には地図を見る時間なんてなかったはずだ。
でもなぜか、私には「地図や名簿を見た記憶」があったのだ。そこだけ、鮮明に。
そう、
最初廊下で目覚めた私は、沢山の部屋が並ぶホテルみたいなその通路を歩きながら、
地図と名簿を確認していて――それで、突きあたりで、曲がろうと――。
「「まさか」」
私と霊歌ちゃんは同時にその考えに行きついた。先に行動を起こしたのは、霊歌ちゃんの方だった。
殺気立ち、ガタッと音をさせて立ち上がると、
部屋中を回って人が隠れられそうな場所をしらみ潰しにあらため始める。
テレビとBDレコーダーが収まっている棚の裏。その隣にあったクローゼットの中。
開けたクローゼットにはメイド服やらナース服やらコスプレ衣装が妙に多く入っていたけど霊歌ちゃんは無視。
続いてカーテンを開ける。ベランダは無い。窓から見える景色は少しだけ高い。
ここはホテル施設の二階らしい。舌打ちを一つ、霊歌ちゃんは次に洗面所らしき方へと向かった。
向かいながら自分に言い聞かせるように語り始める。
「おそらくあなたは、名簿を見たり地図を見たりしていたところを後ろから気絶させられた。
見る限り外傷はなかったから、ある程度のやり手でしょう。気絶させたあなたを、襲撃者はこの部屋へ連れ込もうとしていた」
ガラっと扉を開ける音や電気を消したりつけたりする音があわただしく鳴る。
――そう、おそらく私は連れ込まれそうになっていた。
でも霊歌ちゃんがやってきたから、襲撃者はあわてて隠れた。おそらく、私が倒れていた場所の近くに。
例えば、この部屋とかに。
「ただ、なんで私を部屋に連れ込もうとしたのかって疑問は残るけど……」
「そんなのレイプするために決まってます。ここ、そういうホテルですよ? 地図には名称は載ってませんでしたが」
「えっそうなの?」
「テレビを点けてみればわかります。机の上にリモコンがあります」
「ほうほう――ってうおおお!?」
ついノリでベッドから降りて、テレビを点けてしまった私の眼前に飛び込んできたのはAVの映像だった。
赤い髪の女の人と狼みたいな黒い犬(?)がこれ以上ないくらい恍惚とした顔で交わっている。
なんかあんあん聞こえてくる。犬とだなんて! 予想していたより遙かにマニアックだ。
壮絶すぎる光景に魅入りそうになってしまうくらい。さすがに首をぶんぶんと振ってスイッチを切る。
同時に霊歌ちゃんがリビングへと戻ってきた。その、少し悔しそうな表情で大体わかった。
「い、居なかったのね」
「はい……。やっと……やっとあの男にたどり着けるかもしれないチャンスだったのに……」
「?」
「あ、すいません。その――手口が似ていたんです。わたしの知っているある男に。
そう、わたしの敵たる
沖崎翔という男も、よく女性を気絶させて部屋に連れ込んでいました。
100%ではありませんが、可能性の一つとして。あの男がこの近くにいたかもしれない、そう思うだけで……!」
怒りを耐えきれないと言った様子で体を震わせる霊歌ちゃん。
その人形みたいにかわいい瞳から、徐々に光が失われ、さらに人形めいていく。
沖崎翔。その男が霊歌ちゃんにどんな仕打ちをしたのか私は知らない。
でも、霊歌ちゃんはその男に傷をつけられたのだ、ということは分かった。それも、一生かけても治らないような傷を。
不意に夢を思い出す。
そして、ここに連れてこられる前、私がしてしまったことを思い出す。
――『妖刀村正』がやったこととはいえ、私にも四人を殺した責任はある。
呪われた私は、あの人たちに、あの人たちの知り合いや家族に、傷をつけたのだ。
悲しみや、痛みや、苦しみ。悔しさやむなしさ、復讐心。
「殺さなきゃ……わたしが。あの男を。沖崎翔を殺さなきゃいけないんだ。そうだ、何をやっているんだ柄部霊歌。
こんなところで油を売っている暇があったら、さっさと殺しに出ていればよかったんだ」
心の傷は一生消えない呪いだ。そして場合によっては人を狂わせるほどに強い。
私や霊歌ちゃんだけじゃない。ここが殺し合いなら、それこそ大量の呪いがこれから作られていくことになる。
湖の中の私のような、ほんの一握りの殺意から生まれた化け物によって。
……あの時、私は『妖刀村正』を止めることができなかった。意思も行動も制限されていたから。
でも今は違う。
「申し訳ありません。わたし、あの男を探しにいかなきゃ――」
「待って」
私は自分の意志で、霊歌ちゃんの細い手を掴むことが出来る。
「まだ情報交換をしていないわ」
「そんなものいりませんっ」
「あと、霊歌ちゃんはその前に『や』ることがあるんじゃないの」
「あなたに構っている暇は――」
「落ち着いて!」
肩を掴んで揺らす。
「沖崎が近くに居た可能性があったとしても、もう時間が経っているんでしょう。じゃあ会える確率は低いわ。
それに万一発見できたとして、霊歌ちゃんに勝ち目はあるの? 武器なんてここには鍋くらいしかない。
しかも鍋は私の支給品よね。だったら、私を納得させてから持っていかないといけないわよ」
「邪魔するんですか」
「提案しているの。行動する前に、誰かに自分の意思を話しておかないかってこと。
一人で行動するのは危険だし……誰かに話すことで楽になることも、あると思うの」
「話すことで、楽に」
「そう。私は『妖刀』について。霊歌ちゃんは、沖崎について。
お話しながら意思を固めて、冷静に考えてからでも、遅くはないわよ」
「……」
「ほら、それに。あれもあるしね」
そう言って机の上のカレールーを指差すと、やっぱり意味が分からない、といった顔を霊歌ちゃんはした。
ただし、その目には光が戻っていた。
何だかよく分からないけれど、気を抜けさせることには成功したらしい。
はぁ。とため息を一つ、「あなたといると調子が狂います」と言ってから、
「どうせすぐ別れることになるんですしね。分かりました。お話しましょう、彩子さん」
霊歌ちゃんは初めて、私を名前で呼んでくれたのだった。
少しだけ心の距離が縮まったような、気がした。
「……よし、それじゃお風呂行こっか!」
「はい?」
「情報交換と言えばお風呂よね」
「ちょっと、え、なんでですか!?」
「いや、だって私、体とか服とか血が付いてるし。一回こういうとこのお風呂ってどんななのか見てみたいし。
それにほら、女子同士、裸の付き合いのほうが色々と話しやすかったりするものよ!」
「ひ、一人で行ってください! わたし、お風呂に一緒に入るのは兄さんとだけです」
「兄さん……? ほう、ほうほう。その話も聞かせてもらおっかな。それ~」
「きゃ!」
というわけで私は華奢な霊歌ちゃんの身体を抱き上げて、
じたばたする霊歌ちゃんをたしなめながら一路、お風呂場へと向かうのだった。
……まだ。
私が犯してしまった罪にどう向き合えばいいのかはまだ分からない。
だけど、今度は逃げないでいようと思う。
今度こそは、私らしく生きようと思う。せっかく貰った、二度目の命なのだから。
【F-1/ラブホテル城2Fの一室/一日目/朝】
【柄部霊歌@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]:健康、困惑
[服装]:ゴシック服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、カレーの材料セット
[思考]
基本:全員殺す
1:『妖刀』についての情報を聞く
2:沖崎翔を殺す
3:刃物を手に入れ、死にたがり(守谷彩子)を殺す
[備考]
※登場時期は未定。サイキック《刃物を持つと身体能力向上》に制限は無し
※
福沢正也のためなのか、世界を壊すためなのかは不明だが、マーダーなのは確か
※守谷彩子を自殺志願者だと勘違いしています
【守谷彩子@需要なし1st】
[状態]:健康、お気楽
[服装]:血まみれパーカー(着替えよう)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、鍋、皮むき器、調味料一式
[思考]
基本:自分らしくお気楽に生きよう
1:霊歌ちゃんの話を聞く
2:刃物を手に入れ、霊歌ちゃんのカレーを食べる
3:なにか罪滅ぼし的なことは出来ないだろうか
4:あのAV衝撃的すぎたわ……
[備考]
※需要なし1st死亡後から登場
※柄部霊歌がカレーを作ろうとしていると勘違いしています
※
稲垣葉月と
レックスのAVを見てしまいました
++
バタン、と脱衣所の扉が閉まり。
一転してしんとなったF-1、「ラブホテル城」の一室のリビングで、
とても静かな、最小限になるように気を配られた……ガタッ。という音がした。
「ふう」
推理は当たっていた。守谷彩子を襲った者は、部屋に未だ隠れていたのだ。
唯一、柄部霊歌が調べ損ねていた場所。
守谷彩子が寝ていたベッドの下からぬるりと出てきたのは、鎧の下に着る白衣だけを身にまとった女性。
源平の戦いで活躍した女武将、
巴御前その人であった。
「危うく見つかるとこやったな。それにしても、これはあかんで……」
苦々しくつぶやきながら、巴御前は脱衣所の扉のほうに聞き耳を立てる。
断片的にしか会話は聞こえてこない(どうも胸の話をしているようだ)が、こちらに気付いている様子はない。
別に気付かれても死にはしなかっただろうが、すごく気まずいのは確かだ。
巴御前は守谷彩子をレイプなどする気はなかったし、ついでに言えば殺し合いにも乗っていない。
ただ、血まみれで歩いていた守谷彩子を「もしかして危ない奴では」と考えて気絶させ、
部屋に運んで縛り上げようとしていたところ柄部霊歌がやってきたため中断せざるを得なくなり、
たまたま隠れたベッドの下で待機していた、というのが事実なのだが……。
「あいつらの中で完全に悪者になっとる」
仕方ないとはいえ誤解されてしまっている。
それだけじゃない。聞く限りでは、今脱衣所にいる二人すらお互いに誤解し合っているのだ。
「黒い衣装の少女のほうは、血まみれのやつが自分に殺されたがっとると思っとる。
変わって血まみれのは、黒い少女が自分に料理を振る舞ってくれると思っとったようやな」
テーブルの上の野菜類と調理器具。
加えて、ベッドの下で聞いていた会話から巴御前は結論付けた。
相互誤解……あまりにお気楽思考な彩子はいいとして、ここでの問題は霊歌の方だ。
誤解が解けてしまうか。あるいは刃物が彼女の手に渡った瞬間、彼女は守谷彩子を殺すだろう。
現状では凶器になりうるものがないからことを起こしていないだけで、
柄部霊歌は間違いなく、殺し合いに乗っている。それどころか、殺すことしか考えていない。
危険な存在だ。
無理にでも今、殺しておくべきか?
巴御前は支給された安物の弓――その柄を強く握りこむ。
精霊たる巴御前は弓さえあれば矢を必要としない。
概念的に作り上げた『最強の矢』で、すべてを貫通させることが出来る。
多少制限が加えられて威力が減っているかもしれないが、少女一人の頭蓋に穴を空けることは造作もないはずだ。
そうすれば確実に守屋彩子は救うことが出来る。少なくとも、身体的には。
「精神的には、どうやろな」
だが、これはいわば強硬策。
守屋彩子からしてみれば仲間を突然失うようなものだ。
かといって、ここで彼女らが風呂から上がるのを待ち、対面して誤解を解き、
柄部霊歌の狂気を晒したうえで仕留める――これも無理だ。
本来巴御前はここにいないはずなのだから、誤解のきっかけとなった会話を聞いているのはおかしい。
上手く話術を使うことが出来れば可能性は無くもないが、
憤怒の称号を持つ巴御前は気が短く、そこまでの話術は持ち合わせていそうにない。
八方ふさがり、である。
「……分からん……せやけど、今のところは悲劇は起きん。……と思う。
とりあえず、ややこしいことになる前に部屋から出るべきやろ」
あとで考えよう。
巴御前は音を立てないように部屋から出て、彼女らがこれから向かうであろうデパートへ向かうことにした。
そこまでの道筋で何か思いつけば御の字。
思いつかなければ、デパートにある凶器になりそうなものを片端から破壊してしまえばいい。
弓がある代わりにいよいよ鎧を完全に失ってしまったし、今の巴御前に取れる善策はこのくらいだ。
ばたりと、扉が閉まった。
【F-1/ラブホテル城/一日目/朝】
【巴御前@夢オチだったロワのキャラでバトルロワイアル】
[状態]:混乱
[服装]:白装束
[装備]:安物の弓
[道具]:基本支給品、不明支給品×2
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:とりあえずデパートに行く
2:柄部霊歌と守谷彩子が気になる
[備考]
※夢オチロワ「怠慢な革命家」より登場。傷は主催により治っています。
【安物の弓】
中学校の工作で作ったかのような荒削りな弓。すぐ折れそう
【カレーの材料セット】
カレールー、ごはんパック、インスタント肉、各種野菜など
支給品枠3つ分の量がある
【鍋】
中型鍋、すごく丈夫で人を殴れる
【皮むき器】
いわゆるピーラー。一応刃物である
【調味料セット】
塩コショウとかブラックペッパーとか一式
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最終更新:2012年03月29日 13:49