――――単純に、状況が飲み込めず呆然としていた。
あの悪夢のような戦場から、生還したと思ったのに。
もう、こんな状況とは無縁になるだろう、と思っていたのに。
それが、このザマだ。
「……何てこった」
1回だけでも、異常過ぎるのに。そんな異常事態に、2回も巻き込まれるなんて。
でも、もしかしたら……また、生きて帰ることが、できるかもしれない。
この時点では、夜空に瞬く星の様に、手が届かない場所にある可能性……。
掴み取れるか分からないほど、離れた場所にある、可能性……。
「……」
もう1度、前の様に。
首輪を外し、できるだけ多くの人と共に生きて帰る。
上手く出来るかは分からない。でも、誰かが、やらなければならない。
(ああ……やってやるさ。やってやるよ)
そのために、ゆくゆくしなければならない事は2つある。
協力者を募る。首輪に対しての情報を集める。たったこれだけだが……。
たった2つだけなのに、おそらく、難易度はべらぼうに高いだろう。
協力者にしろ、情報にしろ、一筋縄ではいかなそうだ。
……とりあえず、今すぐにでも出来る事から始めよう。
(……持ち物検めるか)
◇
「こんなもんか。前と随分違うんだな」
こまごまとしたモノは、ひとまず置いておいて。
――――自分に支給された武器、それは……結構立派な軽機関銃だった。
この手の銃は、自分の好みではないのであまり詳しい名前は知らないが……。
それでも、使用する分には特に問題は無いだろう。
セーフティ等のコントロールも、見れば大体分かるし。
「……さて……」
その時だっただろうか。
近くに、人の気配を感じた……が、何か妙だ。
――――殺気を、全く感じないのだ。
殺気を隠すにしても、よほどの達人でもないとちょっとは漏れてしまうもんだ。
もしかすると……俺を殺す目的でこっちに来ている訳じゃ、ない?
「―――ちょっといいですか」
「……誰だ?俺に何か用か」
……こいつの体からにじみ出るように伝わってくる闘争心……こいつは何だ?
もしかして、殺し殺されじゃなく、ただ単純に戦いたいとかか?
こんな状況だってのに、変わった奴もいるもんだ……。あながち、嫌いでもないけど。
とにかく、もしそうだとしたら結構面倒なことになるかもしれない。
「たった今会ったばかりで不躾ですが、どうやらあなたは相当お強いとお見受けしたのですが」
「……俺と、手合わせでもしたいのか?」
「単刀直入に言えば、そうです。どうか、手合わせ願えませんか?」
「……」
とりあえず、この男の全身をチェックしてみる。
髪の毛を赤茶に染め、耳にはピアスを付けている、いかにも若者、って感じの奴。
そして両手にはごたごたした手袋。格闘技をするには、いささか鍛えが足り無さそうに見えるが。
もしかしたら、強いかもしれないし、そうじゃないかもしれない。こればっかりは、やってみないと。
もし強ければ、心強い仲間が出来るし、弱くても、まぁそれはそれで。
「分かった……条件付きで、その挑戦受けてやる」
「ありがとうございます!……それで、条件と言うのは」
「お前が、今出せる全力の力で来い。じゃないと、やる意味がないだろ」
「分かりました!」
……随分と元気のいいヤツだ。
それに、最近こんなに気持ちのいい挨拶をするヤツも、そうそういない。
その点では、結構こいつの事を気にいってしまったかもしれないな。
こんなことを、心の中で思っている内に、どうやらあっちの方の準備が整ったようだ。
さて、どれほど出来るか、お手並み拝見と行こうじゃないか……。
「……よし、来い。試合開始だ」
◇
勝負は、そんなに長引かなかった。
たった1撃、ボディブローを入れただけで、いとも簡単にダウンしてしまったんだから。
幾度と無く色んな人間と戦ってきた俺にとっては、楽勝すぎて欠伸が出る程だった。
「……大丈夫か?ちょっとやりすぎちまったな」
「うう……だ、大丈夫です」
……どうやら、俺はこいつのことを少々買い被っていたようだ。
せめて、一発くらい耐えてくれるかと思っていたんだが……。
まぁ、過ぎた事は仕方ない。
「お……お強いですね……いてて」
「初対面の奴に、こんなこと言うのも何だけどさ……お前が弱いんだろ?」
「ううっ……」
「まあ、そうしょげるなよ。鍛えていけば、強くなれるかもな」
……強くなるまで、生きていられるかはあえて黙っておく。
このままじゃ、そこらの武器持ったヤツにも押し負けてしまいそうだ……。
俺の銃を持たせる選択肢もあるが、このままじゃ銃も碌に使えそうに無い。
「ほれ、水。お前のバッグから拝借させてもらったよ。勝手に探って悪いな」
「……ありがとうございます」
「格闘技やってるんじゃないのか?体とか、鍛えてないのか?」
「いえ、実は……」
……これはちょっと予想外だった。
こいつの話によると、自分は寂れたジムで、片づけやら何やらの雑用やらをやっていたらしい。
つまり、それらしいトレーニングやらはあまりしていない訳だ。
そう考えると、あんなに簡単にダウンしてしまったのも頷ける。
――――でも、1つこいつの話で気にかかったことが。
(……何で、こいつは「記憶がある」なんて言い回ししてんだ)
何でこんなことを言うのか聞いてみようとも思ったが、やめた。
もしかしたら、こいつ独特の言い回しなのかもしれないし。
もし指摘されたくないような事だったら、気まずいし……。
「そういや、お前の名前を聞いてなかったな。何て言うんだ」
「
切磋琢磨と、申す者です」
「切磋、琢磨……?」
ジョークか、マジか。
表情を見れば、マジなのはよく分かるが……それにしても、こんな名前、存在するのか?
変わった名前がある、のはテレビとかでたまにやるから知ってはいるが、それにしても。
しかし、それを問い詰めても答えは出てきそうにない。
「俺は……
一ノ瀬進だ。好きなように呼んでくれていい」
……まただ。
今度は、俺の名前を聞いて首を傾げている。一体、何だって言うんだ。
訳分かんねえ。こんなに、一筋縄じゃいかないなんて。
(……複雑過ぎるっての)
「さて……何処に行く?お前が決めて……おい、どうした?」
「い、いきなり、体が光って――力が、力が漲って来るっ!」
……どれだけ、信じられない事が起これば気が済むのか。
突然、琢磨の体から赤い光が飛び出し、その後筋肉がとんでもない速さで付いていく。
まるで、筋トレをみっちりしたかのように。こんなこと、物理的に有り得るはずがない……。
「信じられん……さっきとは別人のようだ」
「自分でも、よく分かりません……」
「……ま、特に害がある訳でもないようだし……いいんじゃないか」
◇
「ところで、お前知り合いとかはいるのか?ほれ、確認してみろ」
「……いないようです」
「そうか。……どうやら、俺もいないようだ」
こんな状況で知り合いがいるなんてのは、おそらく運が悪い方に入るだろう。
知り合いなら、信頼を早く得られるが、ここにいる以上「死」のリスクから逃げられない。
つまり、自分の身のみならずその知り合いの分も心配することになる。
一般人が、こんな状況に置かれるだけでも相当のストレスだろうに。
俺みたいに、こんなクソッタレな状況に慣れているならまだしも……。
(……久々に、戦場を思い出すよ……)
フラッシュバックする、いくつもの戦場。
――――誰もが、必死で戦っている。
己の主義の為でも、国の為でもなく、ただ生き延びるために戦っている。
誰も、足元に転がる死体に目もくれずに。
少しでも気が散れば。少しでも、集中が途切れれば、鉛玉が自分を貫くのだ。
そうなれば、自分も足元の死体に「仲間入り」だ。
(……場合によっちゃ、一般人を「殺す」必要もあるんだよな)
俺も、前回やむを得ず1人殺害した。
それと、同じ事が、起こるかもしれない。
だが、それはあくまで最終手段だ。殺さずに済むなら、それでいい。
(この事は、黙っとくか。口に出して、気持ちのいいもんでもないし)
「よし、行くか」
「行く、ってどこに行くんですか?」
「そりゃあお前…………どこにするかな。目的地を決めるか」
とりあえず、軽く辺りを見回してみる。
……丁度いい場所に、丁度いい目的地があった。
「とりあえずは、あそこに向かう。着いたら、中を探索するぞ。いいか?」
「……はい!」
俺の指差す先には――――大きな、大きな建物が存在していた。
「ところで、どうしてパジャマ姿なんですか」
「……あんま気にすんな」
【F-3/市街地/一日目/朝】
【一ノ瀬進@需要なし、むしろ-の自己満足ロワ2nd】
[状態]:健康
[服装]:パジャマ姿
[装備]:H&K MP5A2(40/40)
[道具]:基本支給品一式、MP5予備弾倉(2)、ランダム支給品×1
[思考]
基本:出来れば誰も殺さずに生還したい、が危険人物次第
1:……もうちっと動きやすい服が欲しいな。これじゃキツい
2:指差した建物へ向かい、探索する
3:ゆくゆくは仲間を集め、首輪を外したい
[備考]
※エピローグ後からの参戦です
※切磋琢磨の話に少し疑問を抱いています
【切磋琢磨@四字熟語バトルロワイアル】
[状態]:健康、疲労(小)
[服装]:特筆事項なし
[装備]:フィンガーレスグローブ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1
[思考]
基本:誰かと戦いたい
1:一ノ瀬さんと共に建物に向かう
2:もっと拳を交えて、強くなりたい……!
[備考]
※ロワ参加直後からの参戦です
※自身の能力をあまりはっきりと理解していません
【支給品紹介】
【H&K MP5】
一ノ瀬進に支給。
色んなゲーム、漫画、映画等で知れ渡っている、一般人でも知ってる(?)ような知名度の高い銃。
【フィンガーレスグローブ】
切磋琢磨に支給。
指の先が露出する形になっている物。武器にはあまりならないかも……。
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最終更新:2012年06月19日 14:34