• atwiki
  • nomad
  • 長門有希の憂鬱IV 未公開シーン 三章

nomad

長門有希の憂鬱IV 未公開シーン 三章

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
メンバー限定 登録/ログイン

買収劇と長門の部分


ハルヒがTOBをかけるという流れもありこの後の展開もずっと続いていたのだが
どうも経営っぽい路線に傾倒してきて
長門メインの話に戻すために削った



「なあハルヒ、思ったんだが」
「まだいたのあんた、さっさと、」
「お前が打ち合わせに行くたびに中河テクノロジーの株価が動いてるの知ってるか」
「そうなの?」
ハルヒが古泉に向かって首をかしげると黙ってうなずいた。
「買収の目的が一緒に仕事をしたいってのは表向きで、情報やら技術やらの資産を持っていかれた挙句骨抜きにされるなんてことはよくある話なんだが」
「そ、それくらい知ってるわよ」
「正直、今回の買収の話は気に食わん。あいつらが欲しいのは長門の技術だけじゃないのか。ほんとに丸ごと俺たちが買われる必要があんのか?」
世の中そんなにうまい話ばかりじゃないぜ、なんてかっこつけて鼻を鳴らしてみた俺だったが、ハルヒはぜんぜん別のことを考えているようで、やおら目んたまがキラキラと輝きだした。
「そういうことはもっと早く言いなさいよね!」
ハルヒは突然電話の受話器を引っつかんだ。
「もしもし、鶴ちゃん!?作戦変更よ、中河テクノロジーにTOBをかけるわ!」
なんだかまたあらぬ方向に話が進んでいきそうな悪い予感がするのだが、杞憂だと言ってくれ。

買収劇と長門の部分


投下後に再校で書き直した元のテキスト
古泉のミステリースタイルを入れた



「長門さんがあのように感情を露にされるのを見るのははじめてのことで、僕も唖然としてしまいました」
 俺はといえば、長門、よくやったという気持ちだった。最初この話があったとき、長門の評価がもっと上がればいいという正直な気持ちも確かにあった。ところが上がったのは中河テクノロジーの株価で、新技術の買収に動いてるというネタのリークがあったようだ。古泉によると親会社の役員筋からの情報漏れらしいのだが、インサイダー無法地帯にも等しい日本の株式市場ではよくある話だという。そして今日、SOS団の経営陣が交渉を渋っているという噂が流れた途端、株の買い気配が止まった。ざまあ見ろだな。
 いやいや、株価なんかはどうでもいいんだがなにか腑に落ちない。ここに来てなにが不満なのかよく考えてみたが、俺たちの作ったSOS団を誰か外部の人間に操られるのが嫌だという、非論理的でマネージメントともビジネスともまったく関係ないところから来る率直な気持ちだった。SOS団を金を生むためのネタにされるのが嫌なのだ。金にあかせて会社を食っちまうアメーバみたいな大手グループなんぞにSOS団を渡してなるものか。中河なんぞに長門を渡してなるものか。これは俺の会社だ。俺の長門だ。

消失長門の部分


エピローグに持ってくるか迷ったが使われなかった



「わたしは小説を書いている」
「ぜひ読ませてくれ」
「まだ草稿しかできていない」
「それでいいよ」
お前が小説を書くなんて、実はあのときそうじゃないかと疑ってはいたんだが。
「完成したら見せる」

タイトルは、長門有希の憂鬱。

消失長門の部分


朝倉を登場させるかどうかかなり迷ったが
この章は中河と長門の関係が重要なので使われなかった
変わりにエピローグで雰囲気だけ出演している

喜緑江美里によればこの世界は十二月十八日に分離された時間線ということになっている
原作の件によると二度目の十二月十八日に出てきた朝倉はどう見てもヒューマノイドなのだがどっちにするか迷っていた
ここでの朝倉はただの人として扱った



 話しこんでいるとインターホンからピンポンという音が響いた。長門はスクと立ち上がって、振り返り、
「晩御飯、食べていって」
邪険に断ってさっさと帰ってしまう気にもなれず、ちょうど小腹も空いていたので食って帰ることにした。なんだかこれが、この長門との最後の晩餐なような気がしたのだ。
 玄関に通じる廊下から現れたのは朝倉だった。髪型も姿かたちも変わらない、怖いほど秀麗なスマイルを浮かべたあいつだった。その姿を見て俺は鳥肌が立つのを感じた。朝倉とはその後何度も会ったし、さして悪いやつじゃないってことが自分なりに分かったのだが、刺された傷がうずくようにトラウマになっちまってるらしい。
「あら、誰かと思えばキョンくん?いったい何年ぶりかしら」
「お、おう。今カナダから帰ったところだ」
あからさまに取ってつけたような嘘を見抜いたのか、朝倉は鼻先でふっと笑った。
「ちょうどいいわ、いつもより多めに作っておいたから」
あのときと同じ土鍋を抱えて、たぶんメニューも同じおでんで、俺はちょっとしたデジャヴを感じていた。これは偶然なのか。
 長門がキッチンに小皿とねりからしを取りに行った。
「八年間もいなかったのに、どうして今になって帰ってきたの?」
「実はうちの親は外交官でな、八年の任期がやっと終わったところなんだ」
「へー、エリートだったんだ。じゃあ向こうの学校を出たの?」
「あ、ああ。いちおう地元のスクールに通った」
あまり突っ込まれると返答に困るような無理なでまかせを言ってしまったが、泥沼にはまらないうちに話題を変えたほうがよさそうだ。

消失長門


ハルヒがTOBをかけているパターン
途中で方向転換したので使われなかった



「では、帰りましょうか」
「また来れますよね」
喜緑さんはただ微笑むだけで肯定も否定もしなかった。

 喜緑さんが右手を上げて詠唱し、二人の周囲にぼんやりとオレンジ色の球体が生まれた。俺たちを包む球は最初ゆっくりと浮上し、地面を離れてからぐんぐんと急上昇した。町の明かりが次第に小さくなってゆき暗い宇宙が目の前に迫ってきた。だんだんと気が遠くなる。今までのことがすべて意識の彼方に飛んでいく。

 気がつくと俺はベンチで眠っていた。公園だった。見上げると星が出ていた。
「喜緑さん?」
見回してみるが気配はない。先に帰っちまったのかそれとも最初からいなかったのか、俺はもしかしたらあれがすべて夢だったんじゃないかという感覚にかられた。確かに眠ってはいたが夢にしちゃリアルすぎるよな。
 俺はかくも長き長編映画を見た後のような余韻に包まれ、しばらく頭がぼーっとしていた。気温はかなり下がっているはずだがなぜか顔だけは火照っている。メガネをかけた長門を思う後ろ髪を惹かれるような気持ちと自分の現実に帰ってきた安堵とがないまぜになって、浮かんだ花びらのように俺の心の水面をくるくると踊っていた。やがて俺の長門のことを思い出し、エレベータの中での心臓が締め付けられるようなモヤモヤが少しずつ消えていった。

 俺はポケットを探って携帯を取り出した。ベンチの背もたれに体を預けたまま夜空を見上げ、呼び出し音を数えた。向こうの中河がどうあれ、こっちの中河には話をつけておかなければならん。俺のモチベーションが下がらないうちにな。
『なんだ、キョンか。どうした』
「おい中河、お前に言っておくことがあるっ」
必要以上にハァハァと鼻息が荒い気がするんだが、まあ普段からこういうことに慣れていないからだな。
『尋常じゃないな、なにがあったんだ』
「愛してるんだ。誰にも渡さん」
『は?大丈夫か、酔ってんのかキョン』
「俺は八年をかけてやっと本当の愛に目覚めたんだ。横槍を入れるやつは許さんぞ」
『気持ちは嬉しいんだがキョン、すまんが俺にはそういう趣味は、』
気のせいか、前にも同じシーンがあったな。
「俺の女に手を出すなつってんだよ。お前がアメフト出身でも喧嘩の相手くらいいつでもなってやるぞ」
体力勝負からいってタックルは無理だがコイントスなら勝てる自信はあるぞ。
『な……』
中河はしばし唖然としたまま、どう答えていいのか分からないようだった。
『もしかして長門さんのことか』
「あったりまえだろうが」
『その……なんだ。キョン、すまん。俺が思い違いしてたようだ。お前はてっきり涼宮さんと付き合ってるのかと思ってたんだ』
ま、またそれか。ったくどいつもこいつも俺とハルヒをくっつけないと気がすまんのか。
「ハルヒは古泉と付き合ってるんだよ」
『知らなかった、あのハンサムなニヤけたヤサ男とか』
ニヤケ男は合っているが、お前に言われるとなぜか腹が立つな。
「いくら長門が好きでも先に誰かに打診するもんだろうが。たとえば俺にだな」
『そうだな。いや、八年前に道化師を演じた大失態があるから分かってくれてるだろうって思ってたんだが』
まあ、気持ちは分からんでもない。
『どうだ、これから飲みにいかないか。お詫びに俺のおごりだ、長門さんも呼べばいい』
俺は腕時計を見たがすでに十時を回っていた。あ、ええっと、どうだろう。
「今ちょっと長門とトラブっててな、今日は無理だな」
『なにかあったのか』
「お前のせいで長門を怒らせちまったんだよ。俺と中河の好きなほうを選んでいいなんてことを言っちまったのさ」
『俺もかっこ悪いが、お前も相変わらずだな』
携帯のスピーカーから中河の笑い声が漏れてきた。つられて俺も他人事のように笑った。
『まあ、俺が言うのもなんだが、長門さんを大事にしろ。ああいう女性は滅多にいない』
「当たり前だ」
中河は悪いやつじゃない。女のことになるとちょっと空回りするってだけだ。空回りしすぎてひとりクラッシックバレエを踊ってしまうことも多々ありだが、世の中に男と女がこれだけいりゃ、こういうこともあるさ。

「ああ、それからな中河」
『なんだ』
「今回の買収の件なんだが、どういう結果に終わっても恨みっこはなしだ」
『分かってるさ。もし合併の話が流れてもビジネスパートナーとして付き合っていきたいと考えてる』
「俺は交渉の場には出ないことにする。あとはハルヒ次第だ」
『分かった。まあそのうちにまた顔を出す』
ハルヒが逆買収を企んでいるなんてことは言わなかったが、あいつの突発的思い付きパワーをとくと味わってもらおうじゃないか。


記事メニュー
ウィキ募集バナー