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長門有希の憂鬱IV 未公開シーン 七章

最終更新:

hiroki2008

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ハルヒの無限ループの部分


古泉とハルヒのウエディングは後日別の話でまとめるので使われなかった部分



「恋愛は恋愛、フォロー役とは別です。あなたにはあなたの役割を担っていただかないと」
「むぅ……」
この野郎、ジョンスミスの名前を封印しろとまで言ったくせに都合のいいときだけ逃げを打つのか。歴史を書き換えてまで役を譲った俺の苦労はなんだったんだ。
「じゃあハルヒはいったいどうしたいんだ」
「この状況からして、涼宮さんは自分が花嫁じゃないことに不満なんじゃないでしょうか」
「ハルヒが長門に嫉妬してるってのか」
「いえ、そういう意味ではなくて“自分が花嫁衣装を着ていない”ことが不満なのではと」
自ら仕切るから任せろと言っておきながら自分が主役じゃないと気に入らないのか。まったくわがままなやつだな。
「それはもう、この披露宴なら誰でも主役になりたいものです」
「そうなんですか?朝比奈さん、喜緑さん」
「ええ」
「そうですね」
二人とも異口同音に同じ反応をした。
「ということはだ、古泉。もうやることは分かってんじゃないか」
「えっ、と申しますと?」
「ここでハルヒにプロポーズしちまえ」
墓穴を掘ったな古泉。お前が自らの理屈で自分の首を絞めることになろうとは笑いが止まらん。
「それはいくらなんでも無茶が過ぎると思いますが」
「んなこた分かってるさ。だがこのループを抜け出せる方法がそれ以外思いつかん」
「よそ様の披露宴でプロポーズなど聞いたことがありませんが」
「いいんだよ、ハルヒに前例なんて適応できるわけないだろ」
「いくらなんでも早すぎます、無茶ですよ……」
「俺に任せろ。ここからは俺が仕切る」
目が裏返ったかのような画面蒼白の古泉がブツブツとつぶやいていた。今までずっと無茶を通してきた俺にはもう怖いものなんてない。人生がすべて計画通りのお前とは違ってだな、行き当たりばったりの俺には定石なんてものは存在しないんだ。
 俺は古泉にハルヒを押し付けようとして、古泉は役柄のおいしいところだけを引き受けようとする。二人とも相手に嫌な仕事をさせようとしているのが見え見えなのだが、まあ今までの半分くらい肩代わりさせてもバチは当たらんだろう。
「長門、唐突ですまんのだが」
「……心得た」
なにが必要かすでに分かってくれているらしい。
「……鉛筆」
なぜこんなもんが俺のポケットに入っているのか、虫でも知らせたんだろうかね。
「一本でいいか」
「……十分足りる。あと、貴金属」
「古泉、そのカフスボタンとタイピンをよこせ」
「これですか」
古泉が安物のアクセサリーを着けるわけはないし、たぶん金かプラチナだろう。
 長門が詠唱すると鉛筆が宙に浮かび、印刷された部分が剥離し、木が二つに分離し、芯だけが残った。その芯が白熱化しキラキラと光る小さな粉になって螺旋を描いた。一瞬だけ光る球になって広がり、やがて小さくなって長門の手の上に降りた。キャラメルくらいの大きさの透明な石が乗っている。カフスボタンとネクタイピンを握り締めて手を開くとやたら豪勢なダイヤの指輪が現れた。
「な、長門。これはちょっと大きすぎるって。せめて一とか二カラットくらいにしてくれ」
「……そう」
「いいじゃありませんか、大きいことはいいことです」
「しかしこのサイズのダイヤの値段を知ったら目んたま飛び出すぞ」
「僕の涼宮さんはそれくらいじゃ驚きませんよ」
余裕かまして言ったなこの野郎。じゃあこれで行こうじゃないか。そのへんのセレブでも持てないようなカラット数のダイヤモンドでな。

俺はハルヒからヘッドセットを取り上げ、長門にキューサインを出し披露宴タイマーをリスタートした。
『れでは、アレ?』
「はなはだ異例だとは思いますが、ここで新郎より媒酌人へのサプライズがあります」
ふつうは両親への手紙とか友人一同からのプレゼントなんかがサプライズなのだが、祝い事だからまあこういうハプニングもありだろ。
「ハルヒと古泉、ちょっとステージに上がってくれないか」
「なんなのよこれは。ぜんぜん聞いてないわよ」
ハルヒがブツブツ言いながら着物の裾を気にしつつ歩いてきた。俺はマイクに向かってしゃべった。
「ハルヒに、古泉。お前達にはいろいろと世話になったが、今までこれといったお礼もしていない。だからこれは俺たち二人からのお返しだ」
俺は長門手作りのダイヤの指輪を古泉に渡した。


消失長門の思い出


三章が書かれる前に七章に存在していた断片



 白い透き通るようなウエディングドレスをまとった長門の隣に、もうひとりの影が見えた。ぼんやりとかすんで、俺が涙目で姿がにじんで見えていたのかそれとも本当にそこにいたのか。メガネをかけた長門だった。目をこすってよく見ようとすると、そいつは俺を見て少しだけはにかんで、スッと消えた。ずっと前に、長門が世界を改変してしまったあとに生まれた人間の長門。あいつのことはずっと心のどこかで消化不良のままひっかかっていた。メガネの長門はあれからどうなったんだろう。もしかして向こうの世界はまだ存在していて、俺が消えたあと一人ぼっちで暮らしているんじゃなかろうか。そんな心残りがいつまでも漂っていた。
 あのときの長門はお前の記憶の中にいるのか、それとも別の存在だったのか。それをこのヒューマノイドの長門に直接尋ねたことはなかった。
 長門は怪訝な表情で俺を見ていた。
「……なに」
「い、いやなんでもない。古い知り合いがいたかと思ったんだが気のせいだった」
たぶん長門には分かっていたんだと思う。なにも言わなかったが、ただうなずいていた。


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