【女装探偵イコの事件簿/『ロリータ連続殺人事件』 後編】




           Ⅵ


 右手に金属バット。左手にスタンガン。ポケットにナイフを持って俺は闇の中に息を殺して気配を紛らしている。
あれから数日後にさっそく殺人鬼からの接触があった。
 イコの家のポストに手紙が入っており、スカウトマンを装って『キミを本当のアイドルとしてスカウトしたい』と言った内容だ。中身はもっと細かく契約の内容などが書かれていて、最後に『契約確認のためにその手紙も持ってくるように』と書かれている。これで手紙の証拠を処分するつもりなのだろう。しかしこれに引っかかる女の子も女の子と言うしかない。いや、彼女らは寂しかったのかもしれない。誰かに相手にしてもらいたかった寂しい少女たち。
そんな彼女らにつけこみ、挙句惨殺するなんて許せない。
俺たちは心を奮わせて殺人鬼の指定した場所にやってきた。
 夜の暗黒に包まれた犬山公園。昼の爽やかさが嘘のようで実に不気味だ。電灯も切れかかっているのかちかちかと光っているだけだ。人の気配は他に無い。俺は茂みに身を隠し、イコは例のロリータ服姿であいつを待っている。
 指定時刻までの一分一分が永遠のように感じられる。イコも格好はふざけているが、顔は緊張しているのかいつもの笑顔はない。やがて、道の奥から歩く音が聞こえ、黒いシルエットが暗闇の中で微かに見える。
 俺はその姿を見てぞっとした。真っ黒なレインコートを着込み、顔は不気味なガスマスクで覆われ、右手を後ろに隠してはいるが、俺からは見える。まるでランボーにでも出てきそうなごついナイフをギラギラと光らせている。
 あれがロリータ殺しの殺人鬼。棘野恭一。いや、今はハンバートハンバートと殺人鬼としての名前で呼ばせてもらおう。
 俺はイコとハンバートの距離が縮まる前に飛び出した。後ろからの奇襲、俺は声を上げるなんて馬鹿な真似はせずに無言でスタンガンをハンバートの腰に当てる。だが手ごたえはない。俺は「しまった!」と初めて声を上げてしまった。ハンバートが着ているレインコートはゴム製でスタンガンは無意味だったのだ。奇襲失敗。
「ハルくん!」
 イコが悲痛な声で叫ぶが、そんなことを気にしている余裕は無い。ハンバートはこちらを振り向くと同時にナイフを横一文字に振り、俺はそれを鼻先ぎりぎりでよける。ナイフをよけられたハンバートは回転する身体をさらにひねり、奴の左拳が俺の顔面に入る。
 思った以上に重く、強烈な衝撃に俺は後ろに倒れこんでしまう。やばい。予定と違う。
 尻餅をついた俺を見下すように眺めているガスマスクの舌の表情は読み取れないがきっと嘲笑っているのだろう。俺がすぐさま立ち上がろうとした瞬間、ハンバートは右足を振りかぶり、思い切り俺の顔面を蹴り上げた。
 顔の中心に熱が集まり、蹴られた部分を手で触れるとぬるりとしたものが手に触れる。赤い。大量の鼻血がぼたぼたと溢れてくる。頭を揺すられたせいで吐き気もする。やばい。
 まずいぞこれは。
 俺は殺人鬼を甘く見ていた。
 あの時のように俺は恐怖で身体が固まってしまった。
 ハンバートはナイフをかざし、俺に向かって思い切り振り下ろそうとしている。立て、立って反撃しろ、このまま殺されたら意味が無い。畜生。やばい。
 俺が死を悟った時、ハンバートの動きが止まった、俺は一瞬獲物を仕留めることに酔っているだけかと思ったが違う。
「ハルくん逃げて!」
 ハンバートが動きを止めているのはイコが奴の体にしがみついているからだった。あの小柄なイコがこの殺人鬼を恐れず俺を守るために……。俺はこのチャンスを逃さないために恐怖で竦む足を無理矢理奮い立たせ、金属バットを構える。ハンバートはイコを力づくで引き剥がして「ああっ!」とイコが地面に転がる。ハンバートは標的をイコに変えたのか、イコの方を振り向く、だがそんなことは俺が許さない。
「うおおおおおおおおおおお!」
 俺は全力でハンバートとの距離を縮め、バットを奴の頭に狙い定める。だがこっちの動きに気付いたハンバートはぐるりと振り返り、ナイフを俺の腹部に思い切り突き刺した。 
 ナイフが俺の服を通過してどんどん突き刺さっていく。
 しかし痛みは無い。
 血も出ない。
 問題はない。
 俺は絶叫を上げながら思い切り奴の頭めがけて金属バットを振り下ろした。見事にクリーンヒットして金属の音が公園に鳴り響く。ハンバートはその衝撃で地面に崩れ落ちた。俺はすぐさま用意していたロープで奴の腕を縛って、足で踏みつけて押さえ込んだ。
 ハンバートはうつ伏せの状態になっている。これで逃げたり抵抗したりはできないはずだ。
 勝ったんだ。ナイフは以前俺の腹に突き刺さっているから奴にはもう武器も無い。そんな俺をイコは心配というより不思議そうに見ていた。
「ハルくん……。大丈夫なの?」
「へへ、見ろこれ」
 単純な細工。俺は念のために腹に雑誌を仕込んでおいた。シンプル故にばれずに安全性も高い。しかしこれがなかったらどうなっていたかわからない。
「ハルくんのバカ!ほんとに死んじゃったかと思ったじゃん!」
 イコはぽかぽかと俺の頭叩く。いてーっつーの。
「そんなことより、おい殺人鬼ハンバートハンバート。いや、棘野恭一と呼ぶべきか」
 奴はまだ地面にうずくまっている。顔はガスマスクで隠れている。だが冷静になって見てみると、こいつの体格があの日会った棘野恭一よりも少し小柄に見える。
 ああ、俺の脳裏に嫌な予感がよぎる。
 思えばあの日栗山未来ちゃんを殺してきた帰りだというならなぜ棘野恭一は手ぶらだったんだろうか。いつもナイフとガスマスクにレインコートならばあれらはどうしていたんだろうか。もしかしたら前提が間違っていたのか。ああ、今目の前にいるこいつは誰なんだ!
 俺は恐る恐るガスマスクに手をかけ、思い切り引き剥がした。
 ああ、畜生、糞ったれ!なんなんだ!どういうことなんだこれは!
 マスクの下から現れたのはチョコレートのように甘そうな栗色のロングヘアに端正な顔、おしゃれ眼鏡こそはかけていないものの、間違いなく俺たちがよく知る棘野サニアだった。
 棘野サニア。ネットアイドル『いばら姫』。殺人鬼ハンバートハンバート。
 俺は思考が停止してしまった。意味がわからない。なぜサニアが。あの日、サニアの家の前で感じた殺意の恐怖は棘野恭一からではなく、目の前にいたサニア自身から発せられていたのだと今にして思う。サニアが俺に殺意を向けるわけが無いという思い込みが、俺にそう考えさせていたのだろう。それにあの日起きたロリータ殺人は、サニアが早退した時間と合致する。
「サニアちゃん……」
 イコも驚きのあまり二の句が告げない。サニアは俺たちを一度睨みつけると、口をくいっと歪めて笑いだした。その歪んだ顔は綺麗な顔をしたサニアとはとても思えない。
「ははははは、鏡があったら自分の顔見てみなさいよ。今凄く笑える顔してるわよ。まったく、まさかあんたたちの罠とは思わなかったわ。私の完敗ね。だってイコくん凄く可愛かったんだもん、つい殺したくなっちゃったわ」
 イコは顔が青ざめている。自分をイジメから守ってもらった少女に「殺す」なんて言われてどうしたらいいかわからないのだろう。俺だってそうだ。 しかし一体これはどう言うことなんだ、イコが言うには確かにあのサイトのサニアはコラージュだったはずだ、それで運営下はサニアの自宅……。だから俺はそれがサニアの兄だと踏み、そこから殺人鬼の正体を棘野恭一だと思い込んでいた。
 だが現実は違った。サニアが犯人なのはなんでだ。
「何あんたたち、もしかしてネットアイドルの私が狙われると思って犯人を捕まえようとしてたの?お生憎様、ロリータ連続殺人の犯人は私自身よ」
「なんでだよサニア……なんで」
「なんで?いちいち春馬くんに答える義務があるの?私はミステリ小説の犯人じゃないのよ、アホみたいにぺらぺらと喋ると思う?弁護士を要求するわ」
「なんでだよ!」
 俺は混乱と怒りが頂点に達し、無意識のうちにサニアを抑える足に力が入ってしまった。サニアは「ぐえっ」と無様な声を吐き、痛そうにしている。だけど俺は力を弱めるどころか逆にサニアを踏み潰したくなってきた。畜生。
 暴力の徒である棘野サニアの裏の顔もまた、暴力の悪魔。殺人狂。
「痛いよ春馬くん。女の子を踏み潰そうとするなんてあなたも相当クズね」
 こんな状況でも毒を吐くサニアはやはり俺の知るサニアだった。四年のときに変ってしまった暴力のサニアだ。
「なんでサニアちゃん……。サニアちゃんは優しい女の子だったじゃない」
 イコは嗚咽を漏らしながら泣いていた。俺とは逆に悲しさが先に来ているのだろう、鼻水をたらしてロリ服が汚れていく。
「私が優しい?そうね、昔は私も優しさってものの存在を信じてたわ。人に優しくすれば自分も救われる。そう思ってたわ。でも世界に優しさなんて存在しなかった。私は世界に裏切られたわ。だから傷つけられる前に私は傷つけるの」
 サニアはどろりとした瞳で俺たちを、いや、この世界を睨んでいた、恨んでいた。
 何が一体サニアを変えてしまったのだろうか。小四の夏休みの間に何があったんだろうか。両親の離婚。それだけであそこまで歪むだろうか。いや、恐らく……。
「サニア、お前がそうなった原因は両親の離婚。その離婚の理由に何かあるんだろ?」
「うるさいわね、あなたたちには何も関係ないでしょ!」
 その反応、俺は確信した。それこそサニアの心の闇の根源なのだと。だが一体何なんだろうか、それにしても少女たちを殺す理由は無いはずだ。
「サニア、お前の兄貴がお前の写真でコラージュを作ってネットアイドルを演じているのは何でだ、お前はそれを知っているのか」
 サニアは俺を唾棄するものでも見るように俺を睨みつけている。俺はそんなサニアの。殺人鬼の態度にカッときて思い切り腹を蹴飛ばした。「痛いわ春馬くん、やめて!」自分のことを棚に上げてサニアはそう叫ぶ。イコが慌てて俺を止めに入るが、俺の怒りは収まらない。守りたかった人間に裏切られた。その気持ちは一気に憎悪に昇華される。
 まてよ、サニアは『世界に裏切られた』と言った。世界とはなんだ。小学四年生にとっての世界とは何だ。裏切られたとはなんだ。
 俺の中に一つの仮説が浮かび上がる。それは救われない、悲しい話。
 そして、漠然とサニアが少女殺しを始めた理由も、棘野恭一がサニアを騙ってネットアイドルを始めたことの真相も見えてきた。
 なんで世界はこうも狂っていて残酷なんだろう。
「サニア、お前父親と何があった?」
 サニアは突然核心を突かれて酷く驚いている。それとは反対に俺は段々と冷静さを取り戻していく。夜の冷たい空気が肺に染み込んでいく。俺は白い息を吐いて自分が狂気の世界ではなく現実の世界にいることを確認する。
「サニア、お前は小四の頃父親に強姦されたんじゃないのか。それがお前の両親の離婚の原因。家族、家庭という子供にとっての小さな世界に裏切られた。だからお前はこんなにも過剰に人を傷つける。自分が二度と傷つかないために」
 俺のその発言にイコは戸惑っている。サニアは俺を睨むことを止め、もはや諦めにはいった表情で俺を見上げた。
「春馬くんいやらしいわね。いつもそんなことばかり考えているのかしら。本当男って生き物は気持ちの悪いものね。あーやだやだ。やだやだやだやだやだ!お父さんもそうやって私をいつもいやらしい目で見ていたんだわ!」
 サニアは胃から何かを吐き出すかのように叫んだ。俺がそのことに気が付いたのは棘野恭一の存在のおかげだ。彼がサニアをネットアイドルにしたて上げている理由。
「ハルくん、一体どういうことなの。それがロリータ殺しの真相に関係あるの?いくらサニアちゃんが殺人鬼でも可哀想だよ、そんなサニアちゃんの心の傷を……」
「いや、これが全てのきっかけなんだよ。これが惨劇の要因」
 俺はサニアを見下ろす。サニアは全てがどうでもいいと言った調子で、ゆっくりと語りだした。その瞳はもはや何を見つめているのか解らない。
「そうよ、父が私の寝室に侵入してきたあの日、家族が狂って、私の世界は壊れたわ。あの日を境に私がおかしくなったようにお兄ちゃんもおかしくなったの。お兄ちゃんは私の存在を消した。お兄ちゃんにとって私は可愛く穢れを知らない幼い妹だったの、だから私が父に汚されてお兄ちゃんは私を認識するのをやめたわ。汚れてしまった妹なんてこの家にはいないってね。それから数年してお兄ちゃんはネット上に架空の私を作り上げた。それが『いばら姫』なのよ」
 棘野恭一にとっての理想の妹。ネットアイドル『いばら姫』。
「最初は私も驚いたし、少し気味が悪かったわ」
「で、でもサニアちゃん。それでどうして他のネットアイドルを殺したりしたの……。そんなことする必要なんて」
「私がお兄ちゃんを愛しているから」
 サニアははっきりとそう言った。
 そう、これこそ俺が最大煮の勘違いをしていたことだ。俺は棘野恭一が異常な兄妹愛をもってしてサニアを苦しめていると考えていたが、それは逆だった。
異常な兄妹愛を抱いていたのはサニア自身だったのだ。棘野恭一もまた架空の妹を作り上げるという異常な存在だが、サニアはその兄のために連続殺人まで犯した。これは狂気だ。正気の沙汰だ。壊れている。俺には理解できない。
「私はお兄ちゃんを愛してる。たとえお兄ちゃんが私を見てくれなくても。だから私はお兄ちゃんの理想の妹『いばら姫』をずっとランキング一位するために他の娘たちには死んでもらったの。たとえネット上の架空の私でも、お兄ちゃんが私を見てくれているのには違いないもの。『いばら姫』すらも見捨てられたら私は生きていけないの」
 サニアは架空の自分を兄の中でさらに輝かせるために他者を犠牲にした。
 俺は、なんだか身体も心も冷え切った感じがする。
 天を見上げれば星々が輝いていて、まるで今起きている俺たちの狂気の世界とは隔絶されているかのようだ。寒い。
「イコ、帰ろうぜ」
「え?」
 俺はサニアを踏みつけている足をどかして、地面に転がっているバットやスタンガンを拾いなおす。イコは俺とサニアを交互に見ておろおろしている。
「ハルくん、サニアちゃんはどうするの……?」
「しらねえ。俺はもうそいつと関わるのをやめる」
「そんな、サニアちゃんはボクたちの……」
 イコは鼻声で俺に訴えかける。まだ目から大量の涙を流していて、俺の腕にすがり付いてくる。やめろよ、服に鼻水と涙がつくじゃねえか。別にいいけどさ。
「ふふふ、そうね。それが懸命よ春馬くん。私もあなたに関係を持って欲しくないもの。でも私を放置していいのかしら」
 挑戦的なことをサニアは縛られ、地面に転がった状態でもまだ言い続ける。俺はそんなサニアをうんざりしながら見下す。
「そうだなサニア、お前はまた少女たちを殺すかもしれない」
「殺すわよ。殺し続けるわよ。お兄ちゃんの理想の私のために」
「クラスメイトとしての最後の頼みだ。自首してくれ」
「いやよ。何人殺してると思ってるの、死刑になんかなりたくないわ」
「そうか……。イコ!」
 イコは唐突に俺に呼ばれて吃驚したのか、嗚咽としゃっくりが止まった。「なに……?」と不安げな顔で俺を見つめる。俺は用意していた鞄からイコのノートパソコンを取り出す。
「お前ならできるだろう。あのサイトを破壊してやれ」
「え」とイコとサニアは同時に声を上げる。だけどイコは一瞬躊躇した顔をしたがすぐに顔を上げて「わかった」と返事をした。
「実はね、こんなことになるんじゃないかって、もうプログラムは組んであるんだ」
「やめなさいイコくん。やめて。やめて!」
 イコはパソコンを地面に置いてカチャカチャと素早い手つきでキーボードを叩き、何が書かれているかわからない英字や数字が高速で流れ続ける黒い画面を見つめている。
「イコくん、駄目よ。それだけは駄目。お兄ちゃんから私をこれ以上消さないで!」
「ごめんねサニアちゃん。ボクね、サニアちゃんのこと大好きだったよ」
 イコはそう言うとエンターキーをカチッと押した。俺はパソコンの画面を覗いても何がどうなっているかはわからないが、おそらく決着がこれでついたのだろう。サニアはもはや言葉なくがっくりと項垂れている。
 俺はイコの手を取り、この狂気の空間から一緒に抜け出した。

            Ⅶ

 後日談、という名の蛇足。あれから数日サニアは当然学校には来なかった。例のサイト『眠りの森』も消滅して、もう二度と『いばら姫』を見ることはなかった。
 そしてさらに数日が経って、サニアは警察に逮捕されたと聞いた。
 何があったのかわからないが、兄を、棘野恭一を殺したらしい。それを母親に発見され逮捕され、そこからロリータ殺しの件も発覚して未だ裁判は続けられている。しかしサニアの心はもう完全に壊れていると風の噂で聞いた。
物語の出来事のようにハッピーエンドなんてこの世にはなくて、ただただ後味の悪い結果だけが残された。俺が選んだことだけど。
「ハルくん、これでよかったのかな」
 授業をさぼり、学校の屋上で俺たちは風を浴びていた。イコはまだサニアのことを引きずっているらしい。無理も無い。
「これでよかったなんてことはないけどさ、きっとどんな道を選んでいても後悔する道しかなかったと思うぜ俺は。だから考えてもきっと無駄だ」
「そんなの悲しすぎるよ……」
 体操座りして小柄な身体をさらに小さく丸めながらイコはそう呟いた。俺は「よしっ!」と気合を入れて立ち上がり、イコの柔らかな髪をぐしゃぐしゃと撫で回してやった。
「暗い顔すんなよバカ。いつものようにバカ笑いしてろっての」
「だってハルくん」
 イコは口を尖らせながらそう言う。
「今からミスド行こうぜイコ。サニアと三人でっていうのは駄目になっちまったが、サニアの分もお前が食え。奢ってやるよ」
 そうするとイコはようやく顔が晴れて、「やったー、ハルくん愛してる!」とばんざいをしている。無理に明るくふるまっているかもしれないけど、今はそれでいい。いずれは傷も癒えてサニアのこともたまに思い出すだけになるだろう。
 けど、それでいいんだ。
 俺たちはまだずっと生きていかなくちゃいけない。
もっと長く人生を歩まなければいけない。
こんなところで壊れるわけにはいかないんだ。だって俺たちの世界はまだこんなにも素晴らしいものがいっぱいあるのだから。
ミスドのポンデリングとかね、たまにはイコにも食わせてやろう。

                                      (了)



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最終更新:2010年04月07日 23:30
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