目を覚ましたあたしは上半身を起こした
液体に浸されたカプセルから起きたあたしの体は全裸だった。
すぐに起き上って側のシャワーで体を洗う。
タオルで体を拭いた後、ブラとショーツを手に取って身に着ける

視線をさっきまでいたカプセルに向けると、隣のベッドでいろんなコードやチューブをつながれたまま裸身を横たえてるあたしの体があった。
それはさっきまでのあたしの体だった。

身支度を終えるとインターホンで伝える。
すると女性の係員がやってきた
「お疲れ様でした」
そういいながらベッドに横たわるあたしのだった体からチューブやコードを外す
続いて天井から降ろされた鎖につながれた鉄製の輪を足に嵌めてボタンを押す
すると鎖はうなりとともに動きだし、あたしの裸身を逆さに吊り下げる
そのままベッドの奥の真っ暗な空間にあたしの体を運び出していった

あたしも係員もそれに何の感情も浮かべない
そのままあたしは部屋を出て建物の外へ出ていった

21XX年
異星人との交易を行う地球の最大の輸出品は女性の肉だった。
異星人にとって地球人の女性は食肉としてのニーズが高まっていた
他に異星人への魅力を持つ商品を持たない地球で人口を減らさずに女性の肉を大量生産する為に
様々な試行錯誤と技術革新の果てにひとつの技術に行きついた。
生きた女性から意識といくつかの組織を摘出し、それをもとにクローンを培養する。
結果申し分ないクローンが一時間程度で作り出せるようになったが、意識を抜き取って来るために元の体は意識のない脳死状態になった。
そこで「クローンの代わりに抜き取られた体を食肉にする」方法が考えられた。

そして、食肉を大量に確保する為にひとつの法律が施行された
「すべての15歳から30歳までの女性は月に一度自分の体を食肉として提供しなければならない」

意識抜き取りによるクローン培養自体に苦痛がないことと必要な時間が1時間程度であることから次第にこの法律は受け入れられ、
毎月すべての女性がまるで運転免許の更新のように最寄りの食肉処理場に自分の体を提供することが当たり前になっていた。

処理場を出たあたしの服装は制服姿だった
テニス部の部活動の帰りにシャワー室代わりに処理場へ寄っていたのだ。
同じ部活動をしている里香が出てきた。
「おまたせ」
そして里香と一緒に家路に就く。
今頃あたしと里香が一緒にテニスで汗を流した体は解体されて他の娘の肉と混じって流通ルートに乗っているのだろう。
あたしは一度その光景を見たことがある
提供者に限り希望があれば解体の風景を見れるというので里香と一緒に興味本位で見たのだ。
吊るされた裸身は機械的に首と手足を落とされて内臓と肉を分けられ、残った胴体は縦に二つに分けられて吊り下げられる。
そして、部位ごとに箱詰めされて冷凍されていった。
そんな風景をみても不思議と気持ち悪さはなかった。
あまりに機械的すぎたせいか生々しさがなく、むしろ「あ、あれがあたしの足」「あたしの胴体があんなとこに」ときゃいきゃいいながら見学した。

とはいえ、毎回見て変化があるわけでもないから今日は見学はしなかった。
あたしと里香は同じことで思案を巡らしていたのだ。
「ねえ、洋子はあの話、どうする?」
里香はあたしに向かって聞いてきた
「そうしようか。まだ気持ちの整理がついてないの。里香は?」
「あたしも」
お互いの悩みの種はカバンの中にある一通のプリントにあった

「高校生食肉品評会への推薦状」

女性の肉が食肉として輸出されると高級食材としてより高品質なものが求められた
そこで、特に食肉としての質が高い女性を志願制でより高級な肉にするための「人間牧場」が営まれていた。
その人間牧場に入るための品評会への招待が二人に来たのだった。
人間牧場に食肉として入ることのできる女性は数少なく、ステータスとされていた。
また、特に質の高い食肉少女はアイドル以上の人気を得ることもあった。


だから、あたしも里香も食肉少女に興味がないわけではない。
でも、品評会に出て誰もが食肉少女になれるわけではないし、なにより誰にも見られずに名もない肉として処理されるのと違って
品評会では自分の裸身を堂々と晒さないといけない。
審査の際には料理になる。
生きたまま自分の体がバラバラになって煮たり焼いたりされるのに耐えなければならないのだ

なによりこの品評会には全国から美しい女性が集められる。
そこで自分が渡り合えるのかと思うとやはり気後れしてしまうのだ

「とりあえず家で相談しながら考えるよ」
あたしはそういって里香と別れた

家に着くと、隣の家に同じ高校の男子制服を着た男が入っていくのが見えた
「浩太も部活遅かったのかな」
小さいころから見慣れた幼馴染の後姿を見てそう思った
家に着いたあたしは推薦状を見ながら考えた
浩太、これを知ったらどんな顔するだろう?


翌日

あたしと里香は品評会に参加の返事を出していた
「やっぱり出るの?」
「せっかくだし、ダメでもともとだってお姉ちゃんに言われたから」
里香の姉は品評会に出たことがあったらしい
「でも、ダメだったんだって。だからあたしが推薦もらったって聞いたらあたしの仇を討ってきてって変なハッパかけられちゃった」
照れながらそう答えた。

ずっと悩んで結論出したあたしなんかは里香みたいに背中推してくれる人がいるのがうらやましかった


そして、当日

あたしと里香は品評会の控室にいた
「みんなきれいな人ばっかり」
あたしはため息をつく。品評会自体は知っていたけど、こうして見たらなんか場違いの気がしてしまうのだ。
「今更何を言ってるの?こうなったらなるようにしかからないわよ」
里香が励ましてくれた

やがて、品評会での説明が始まった
「今回の品評会は肉質審査、調理審査、試食に順に行います。肉質審査は…」
説明が続く中で全員に一瓶の液体が渡された
「…今お渡しした液体は調理審査の前に飲んでください」
食肉少女や品評会のように生きたまま調理される為に痛覚を麻痺させるとともに絶命後も意識を維持する作用がある薬品だった。
「この薬には副作用として体の動きが止まる作用もあるため調理される直前に飲むようにお願いします」

説明が終わり、全員にあてがわれたロッカーで服を脱いだ

今日はもう服を着ることはない。
里香もあたしも裸身を晒しながらみんなと一緒に肉質審査の会場に向かった

肉質審査

ここで多くの異星人に向けて裸身を見せる
異星人が体を触っては肉質を確認している。
しかし、事前に想像していたそれとは明らかに違っていた。
異星人があたしに求めているのは食肉としての質だった
そのために肉の多い太腿や腹部、そして乳房にばかり触っては感触を確認していた
だからそのさわり方には全くいやらしさがなかったが、それ以上にどこかうすら寒いものを感じていた
自分を食べるものとして認識している視線にさらされている
そこに本能的な恐怖を感じていた。

あたし…このままこの人たちに食べられちゃうんだ…

ほのかな恐怖が芽生えてきた

肉質審査を終えて全員が隣の部屋に移動する
そこにはベッドと太い管につながれた機械があった
「ここで腸の掃除をします。そのまま内臓まで食べられるので味を良くするために全員順番に受けてください」
そういわれて順番にベッドに横たわってお尻に管を刺されて腸の中をきれいにされた。
腸の中を洗浄液で満たされては抜き取られる感覚はちょっと癖になりそうだった。

その後連れてこられたのが厨房だった
全員に調理担当があてがわれた
みんな食肉少女の調理に多くの経験を持つ人ばかりだという。
あたしにあてがわれた調理担当はイケメンで、どこか安心した
「あ、洋子もこの人に調理してもらうんだ」
里香も同じ調理担当だという

品評会のための調理と試食は交代で行われる
どっちが先に調理されるかは…
「里香さん、先に調理台に上がってください」

里香は一瞬驚いた顔を見せたが、すぐにカプセルを飲んで調理台に上がっていった
「それじゃあ、お先に」
里香はそのまま裸身を横たえた
調理師は里香の裸身をじっと見て、そのまま包丁を手に取る。
調理担当が里香をどう調理するかは裁量に任されている
里香の魅力を最大限に引き出すのも仕事だった

「君、きれいな肌してるよね。言われたことあるかい?」
頷く里香。あたしもそう思う。
母親が雪国育ちだという里香の肌はきめが細かくてとても綺麗だったのだ
「じゃあ、活きづくりとかやってみようか。我慢してくれる?」
そういうと調理担当は里香の手足を手際よく調理台に縛った
包丁を持って近づく調理担当に対し緊張した面持ちの里香
「ああ、そんなに固くならないで。思うほど痛くないから。マッサージでもされるみたいな気持ちでいて」

冗談を交えながら里香と話す調理担当
やがて里香はリラックスした体勢で体を横たえる
その里香の首筋に包丁が入る
白い首筋から赤い液体が流れる
里香の目が少しずつうつろになって行く

そして、調理担当の包丁は里香の首筋から胸腹を一直線に切り開く
白い里香の裸身が幾条もの赤い線で彩られる
里香はされるがまま時折
「ああ…ああ…」と声が漏れるままになっていた
「大丈夫だよ。これから君はもっと綺麗になって行くんだから」
調理担当はそういいながら里香の腹部を切り分けていく

手際よく里香の腹部は切り分けられて露出した内臓が取り出された
内臓が取り出されるとき、里香は一瞬目を剥いた
「うぐっ…が!…」
体がビクビクッと動き、里香の表情が苦痛にゆがむ
腸やそのほかの臓器、そして、見覚えのある器官が取り出された
「これは特に美味しく料理してあげるからね」
そういって丁寧に取り上げられたのは里香の膣と子宮卵巣だった。
里香を女性たらしめている器官を調理担当はまるで里香を抱くように丁寧に扱っていた。
調理担当は里香の腹部の肉と内臓をきれいに切っては元に戻す

「里香、頑張って」
あたしは里香の手を取って励ました
最初はこっちを向いていた里香の目の焦点が合わなくなっていく

続いて調理担当はそのまま乳房を切り取って胸の肉をアバラごと切り離す
綺麗に切り分けては元の形に戻す。

心臓と肺が切り取られた瞬間里香は一瞬大きく跳ねてそのまま動きを止めた
絶命したのだった

それでも里香の意識は薬の作用で明晰なままで
切り分けた腹部と胸部はまだぴくぴくと動いていた

調理担当は里香の手足を切り分けて最後に血を拭い取って野菜で美しく彩った後ソースを全身にまぶした。

美しく食材に飾られた里香は試食に供されるために運ばれていった

里香と同様に料理になった娘たちが試食に並べられる
その様子をあたしたちも見ることができた
彼女たちが紹介され、一人ずつ壇上に運ばれては食べられていく

里香が呼ばれて、壇上に運ばれる
その姿に歓声が上がった
里香はどこかうつろな表情のままうっすらと笑みを浮かべた
それは自分の体への賞賛でもあった
そこか誇らしげな笑みを浮かべた里香の姿は何枚もの写真に収められる
それが食材少女としてのプレゼンになるとともに、本人にも渡される
自分の一番美しい姿の写真がこの品評会への志願者が後を絶たない理由の一つでもあった

里香の体は居並ぶ審査員の口に入る
里香の肉は薄切りにされてもその瑞々しさと弾力を失っていなかった
調理師の腕ゆえかわずかにぴくぴく動く里香の肉が審査員の口に入り、口の中で踊る
それは里香自身が自分の味を誇示するかのようだった
里香は少しずつなくなっていく自分の体をうつろな目で見ていた
手足や腹部の肉がなくなるとともに異星人が内臓をとりわけ始める。
それでも里香の意識は明晰なまま自分の内臓が異星人に食べられるのを見ていた
里香は自身の胃や腸、子宮までが食べられるのをうつろな表情で見ていた
絶命した彼女の体はもう動くことはなかったが、目はじっと里香の意識に食べられていく自分の姿を流し込んでいた

ああ…あたしの…おなかのなか…なくなっていく…あ…あれは…あたしの子宮…美味しく…食べてくれるかな…
里香の意識はもうすっかり食材のそれになっていた。

やがて里香はその体のすべてを異星人に供して満足げな表情で運び出されていった。

次はあたしの番だった

「里香ちゃんに負けないように君の魅力を引き出してあげるよ」
あたしはローストになることになった
手足を紐で縛られて、塩や胡椒、香味野菜を擦り込まれる

動きが取れなくなった股間にニンニクが入れられる
ちゅぽんとニンニクを飲み込んだあたしの股間に大きなソーセージが二本も差し込まれる
冷たい肉とニンニクの感触が下腹部を満たす
あたし、こんな体で焼かれるんだ
そう思うと羞恥に震える。

そのままオーブンに運ばれる
熱気が届く
あの中で焼かれるんだと身が固くなった。
その横にもう一人の女の子が調理担当に伴われて運ばれてきた
隣にいた女の子も同じような姿になっていた
「あの子もローストになるんだって。でも、君の方がずっと魅力的だよ。ほら、もっと自信を持ってみせつけてやりなよ」
そういわれてふと体が楽になった

あたしはそのまま首だけを露出したままオーブンで焼かれる
感覚が鈍くなったといっても体が焼かれる感覚は伝わってくる
同時に心臓の鼓動が急速に弱まる
里香と同じようにあたしの命が止まっていくんだ
そう感じていた
やがて股間に差し込まれたソーセージが肉汁をほとばしらせながらはぜる
「ぁあっ!あ!」
弱弱しいながらも思わず声が漏れる
その喘ぎ声も絶命するとともに最後の吐息とともに止まる
でも、あたしの意識はそのまま残っていた
とても不思議な感覚だった。

焼き上がり、オーブンから出されて皿に移される
全身から流れる肉汁を調理担当は入念にあたしの体にかけ直す
ローストされて色が変わった体が隣の女の子とともに運ばれる

入れ替わりにすっかり食べつくされた里香が運び出された
あたしもああなるんだ…

あたしの乗った皿に銀のフードがかけられる
熱気がこもったフードの中。外が見えないまま縛られたまま横たえられたままあたしは運ばれていく
あたしは熱いうちに食べられる料理なんだということを実感した

そして。不意に視界が広がる
あたしの裸身を囲む多くの人の目に突然さらされる。


うう…恥ずかしいよう…でも…もう動けないし…

今あたしは裸身をみんなの前で晒している
しかも、おおきく足を広げてお股もおっぱいも丸見え
皿の上でこんな恥ずかしい姿を晒してるけど、体はもう動かない
足と手がきっちり縛られてるし、そもそもそれがなくてももうあたしの手も足も全く動かない
あたしの首から下はまるでローストチキンのようなキツネ色になってて惜しげもなく肉汁を染み出させている
これがあたしの体じゃなくて料理か何かだったらあたしも「美味しそう」とでも言ってたかもしれない
でも、これは今のあたしの姿

横で営業スマイルを浮かべた調理担当があたしを縛る紐を切った
紐を外されたあたしの裸身には紐の跡がくっきりと映る
それを見ている巨大な化け物
もちろんその目線はあたしを食べようとしているもののそれだった
しかし、不思議と恐怖はなかった

調理担当が大きな刃物をあたしのお腹にあてる
ローストされた腹部が切り開かれるが、もうあたしは何も感じなかった
切り開かれた腹部からは肉汁をしたたらせながら内臓がこぼれた
視線を向ける化け物の前であたしは不思議に晴れがましい気持ちになった
自分のすべてを見てもらえている
生まれてからのあたしのすべてがこんな形でさらけ出されてるのに、みんな嫌な顔せず自分を見てくれている
食べられる時ってこんな気持ちだったの?

「続いて審査番号5番島野洋子さんです。どうぞお召し上がりを」
調理担当の声とともにあたしは群がる異星人に切り分けられて食べられることになった

あたしの肉や内臓が異星人の口に入る
バラバラになった内臓や肉が皿の上に乗っているのを見る
ああ、美味しく食べてもらえてるかな?
首が動かずさらに乗ったあたしの肉はそのまま視界の外へ消えていくのが惜しかった
あたしを食べた時の顔が見れないなんて…

あたしは手足を切り分けられて食べられていく
肉の多い太腿は大きく切り取られて異星人に食べられた
お尻もおっぱいも食べられて消えていった

あたしの体は首と骨とわずかな肉だけが残る食べ残しに変わっていった
皿の上のあたしの残骸は運ばれていく

あたし…こんなになってもまだ意識あるんだ。これからどうなるんだろう

そう思っているとあたしの残骸は皿から大きな穴の中に放り込まれた
残骸でしかないあたしはされるがまま転がっていった

ここは…目の前に一つの首が転がってるのが見えた

…里香…

そこにいたのは里香だった

里香も残骸になってここに放り込まれたのだった

そして、同様に食べ残しになった娘たちが放り込まれ、一杯になったところで、それがやってきた

バリ…ゴリ…

大きく丸い体の動物が何頭も入り込んできた
異星からもたらされたゴブリンという動物だった
食べ残した人間の骨や肉を餌に育ち、育った後は人間の食料になる
あれに食べられるんだ…

あたしたちのもとに一頭のゴブリンが近づいてきた
あたしと里香はゴブリンの口の中に入る
ゴブリンの顎でかみつぶされる直前あたしは里香の顔を見た
またね…

あたしの意識が戻ってきた

…ああ、そうだ。あたし食べられて…

身体を起こし、そこにあるのがさっきまでと同じあたしの体なのを確認してしまう
それくらい生々しい体験だった

食べられるって…あんな気持ちになるんだ
身体の奥底でじゅんと湿るものを感じた

あたしと里香は人間牧場に入れることになった
お互いその知らせを聞き顔を見合わせながら言った
「どうする?牧場行く?」

答えは一つだった

「食べられた後ってどこまで覚えてる?」
洋子からこんな話を聞く
「あたしは食べられて運び出された後かな…気がついたらって感じ。洋子は?」
「あたしも同じくらいかな。なんか聞いたことあるんだよね。あの薬飲んだら意識抜き取られたあとまで意識残ってるんだって」
洋子が話した内容は今は教科書にも出ているのであたしも知っていた
あの薬の開発過程で「クローンに意識を残した後も意識が残る現象」が問題になったことがあったのだ
実験の結果生まれたクローンと残った体と二つの自分が生まれる
残った体の自分とクローンどちらが本当かというのがしばらく議論の種となったのだ
しかし、その議論は数年後終わりを告げた
薬の作用で残った意識とクローンに引き継がれた意識。
この状態でどちらかが死亡すれば残った方は変わらず生き続ける。
しかしふたりが同時に生きていた場合、10年たつと両方ともに意識が消えてしまい植物状態になることが判明した。
理由は不明であり、解消することもなかった。
そして、クローンの食肉への活用が進む中でこの現象は一つの形で利用されることになる。

「リプレースと同じだよね」
リプレース。食肉少女として牧場に行く女性のための救済措置だった
食肉少女が牧場で肉となると子孫を残す女性が減ってしまう
そこで、食肉少女に代わって生殖を担当する存在。それがリプレースだった。

「そう。この体見て思ったんだよね。あのときのあたしもこのリプレースみたいな状態だったんじゃないかって」
目の前にあるのは眠った状態の陽子と里香のリプレースだった。
彼女たちはリプレースに人間としての生活を託して牧場へ行く。
そして数年後の検査まで牧場で食肉少女としての日々を送るのだ。
「あたしの代わりを頼んだよ。もうひとりのあたし」
洋子は小声でそうつぶやいた

そして、洋子とあたしの食肉少女としての日々が始まった
「長谷川里香さん。長谷川里香さん。処理室へお越しください」
アナウンスが響く。あたしは手元にあった漫画を置いて処理室へ行った

「あ、里香。あなたもこれから?」
「ええ、そうよ。洋子も?」
洋子は頷いた
「昨日審査の結果届いたよ。不合格だって」
「あたしも。やっぱり肉質強化ルーム行かなきゃダメかな?」
「でも…あそこいくのは…抵抗あるし」
あたしも同意見だった

肉質強化ルーム

そこは食肉少女としての肉質を高めるための部屋だった
具体的に言えば女性ホルモンの分泌を高めるために特に育成されたクローンの男性たちに抱かれる部屋だった
今の里香や洋子はそこに行くのは任意だったが、見学で数人の男に交換で犯されてる食肉少女を見て以来そこには近づいていない

「でも、上のクラス行くにはやっぱりあそこいかなきゃだめだよね」

食肉少女にはいくつかのクラスがあった
まず入ったばかりのあたしや陽子が入ったのはB級食肉と言われるクラスだった
日々を施設の中ですごすが、それぞれの個室が与えられていて、生活は今までと変わりがなかった
違いはせいぜい施設の外に出られないことと食事が肉質をよくするためのピンク色の植物と果実だけになったことくらいだった
服も脱走防止のために制服を着てはいるがそんなにおかしなものではない

昼間はプログラム通り肉質を良くするための運動と入浴に時間をかける以外は自由にしてよかった

あたしはやがて肉質強化ルームへ自分から行くようになっていた

あたしたちの目標はほどなくかなえられた
あたしと洋子は審査に通り、A級食肉相当の品質だと認められたのだ。
残るは自分たちの意志だけということで、目の前に一枚の書類が示された
人権を放棄して食肉少女として残りの生涯を送る誓約書。


ついに念願の食肉少女になれる。
そして、あの感覚を味わうことができる。
ここを目指しながら挫折したお姉ちゃんの顔が頭に浮かんだ。
お姉ちゃん。私、やったよ。
あたしは迷わず誓約書を書いた


あたしは自分の手で人権を放棄してA級食肉のクラスへ移った
全裸で暮らす日々は最初は戸惑ったがやがて慣れた
毎日放牧場に生えるB級食肉の時に食べたのと同じ植物の葉っぱと果実を食べて過ごす
そして、強制的に毎日肉質強化ルームで意思のないクローンに貫かれる

出荷されるのは1日2回に増えた。
まず、朝に一回全員で機械で解体されて出荷される。

牧場から全員で処理場へ向かわされた
一糸まとわぬ体でももう恥ずかしさはなくなっていた
建物の向こうで服を着た娘たちが見える
B級食肉の娘たちだ
あたしは幸せそうな笑顔を彼女たちにふりまいた
彼女たちの憧れの存在になれた喜びだった

処理場はB級のそれとは異なっていた
全員一列に並んでは機械に手足を拘束される
そのまま生きたまま解体されるのだ。
しかし、それも毎日のこと
みんな慣れた表情で自分を解体する機械に身を委ねていた
前の娘が機械に入っていく
「ぐえーっ!!」
不気味な声は最初は驚いたがすぐ慣れた
自分もかかってみたらそんな声を出すのだった
あたしの体が切り裂かれていく
あたしも絶叫を放ちながら意識を手放した。

意識を取り戻したのはお昼前
そのまま昼は牧場で過ごす

夜は生きたまま出荷されては地球か異星の飲食店で飾られた

通りに大きく開かれたショーウインドーか店の前の道で全裸を晒し、異星人のために自分を売り込むのが仕事だった
美しい全裸を惜しげもなくさらす食肉少女は人間にとっては「認められた美しい少女」としてあこがれの対象であり、
ここで目に留まってモデルやアイドルになった女性も多い
(ただし、モデルやアイドルとなるのはリプレースの方だったが)

里香は飲食店のショーウィンドーに飾られて一所懸命通る異星人に上目づかいで訴えた
「あたしを買ってください。この体を食べてください」
買ってくれる異星人がいなければこの後処理場に戻されて体だけをバラバラにされてしまう。
しかし、せっかく食肉少女になったんだから自分を買ってくれる誰かに目の前で食べられたい。
そして、自分が食べられるときの感覚を味わいたい。
それが今の里香の願いだった
幸いにも自分を買ってくれる異星人が現れた

今日のあたしの体は異星人一家のパーティーの食材になるらしい
「今日もあたしを美味しく料理してくださいね」
厨房でシェフに頼み込んだ
この店のシェフは異星人とのハーフながらなかなかのイケメンで料理の腕も一流だった
ハーフだから女性の肉を食べることもあるし、そのために女性の肉のうまみを知った料理を出せるのだ
里香の品評会で里香を調理したのもこのシェフだった
里香はこのシェフとここで再び会えた時には飛び上がってよろこんだものだった
自分を料理にしちゃう人に恋しちゃうなんて変かもしれない
でも、今の里香にはシェフの包丁で身体を切り裂かれて料理にしてもらうのが何よりの楽しみだった
シェフは笑顔であたしに笑いかけた
「君は魅力的だから美味しく料理しないと罰が当たっちゃうよ。ほら、大きく体を開いて」
調理台に上がったあたしは言われるままに裸身を大の字にした
シェフはマッサージでもするように冗談を言いながらあたしの体に調味料を刷りこんでいく
幸せな時間が流れていた
まるでデートでもしてるかのようだった

今日も綺麗にローストされた里香の体が運ばれる
調理されて動かなくなったあたしの体からは惜しげもなく中の肉汁を染み出させている
「今日の食材は当店契約人間牧場のA級食肉のまりかです」
まりかというのは今の私に与えられた名前だった。
人権を放棄したあたしにはもう名前はなくなっていた
すでにいる人である島野里香の名前は使うことができなくなっていたのだ。
正確にはC-15872という識別番号が名前が与えられていたが、食材としての付加価値をつけるための名前が別につくことになっていた

シェフは里香改めまりかの手足を切り分けては異星人にふるまっていた
あたしは自分を食べる異星人の嬉しそうな顔に満足しながら体の奥が熱くなるのを感じていた
自分が食べられている。
あたし手や足やお尻やおっぱいが目の前で食べられて消えていく。
みんな無心にあたしを食べて喜んでいる
失われていく身体と裏腹に心が満たされていくのを感じていた
ああ、このまま食べられて…


意識が戻った

あたしの体は牧場に戻っていた
手も足も元通りだった
あたしは軽い溜息をついていた
いつもあそこで意識が途絶えている

あのまま食べつくされたらどうなっていたんだろう。
薬を飲んでたからあのあとまであたしの意識は残っていたはず
でも、今のあたしにはその記憶はない
もう一人のあたしはあのまま全身を食べつくされた後の記憶もあるはず
もしかしたらその後廃棄されてゴブリンに食べられるときの意識もあるかもしれない
あのまま食べつくされたらどんな気持ちになれるんだろうか…

このところずっとそればかり考えていた

あたしは朝の解体に向かった
そして、10年後。
運命の日が来た

食肉少女としての務めを終える日が来たのだ
そして、それは里香の生命の終わりを意味するものでもあった
人権を放棄した里香はこのまま食肉として処理されて、もう目覚めることはない。
里香は今すぐ生きたまま肉にならなければ1か月以内にリプレースとともに植物状態になるしかなかった
そして、どちらにしても自分の体は食べられる

ただひとつ許された選択は「食肉処理機で解体されるか苦痛を承知で生きたまま解体されるか」
食べられることの喜びを知っていた里香にとって選択肢は一つだった
里香は答えた。
「構いません。一思いに生きたまま食べてしまってください」
これで、もう後戻りはできない
これで、いつも記憶が途絶えたあの向こう
食べられた後の世界をついに見ることができるのだ。

翌日里香は久しぶりの服を着て街にいた
この世との最後の名残に1泊2日だけ許される外出だった
この日だけは放棄した人権が回復されて、里香は里香に戻ることができた。
そして、自分の意志で動くことのできる最後の日だった
里香は街を歩いて人間としての最期の一日を過ごした後、最後の夜は自宅で過ごした
リプレースと一緒に食べる夜ご飯
リプレースから聞いた食肉になってる間のもう一人の自分の人生

どうやらもう一人の自分は順調に大学を卒業し、就職したらしい
それを聞いてもどこか遠い世界のような感じだった

食肉として牧場で過ごした期間が里香の意識を変えていたのだ
里香の意識はすでに明日の自分の最期の日に向かっていた
その眼は夢見る少女の目だった

リプレースは今男の人と交際中だという
その名を聞いてあたしはハッとした
「なんだ…やっぱりあたしはあたしなんだ」
あたしはその夜ひそかに家を出た

翌日


あたしは処理場に戻って待つ
その間にあたしは競りにかけられて買い手が決まる
その買い手に食べられてあたしの人生は終わるのだ。

心臓が早鐘のようにドキドキいってるのがわかる
あたし…これで最後なんだ…


そして、迎えが来た
自分を買った誰かがここにあたしを迎えに来るのだ


そこにいたのは…今まで何度も自分を料理してきたシェフだった

シェフはあたしの手を取って処理場から連れ出した


そして、あたしとシェフはレストランの厨房にいた
営業はすでに終わっていて、ここにはふたりだけだった
「いいんだね?」
シェフに聞かれてあたしはこくりとうなづいた
あたしは昨日シェフに「あたしを買ってください」と頼んだのだった

牧場に戻ったあたしは服を脱いで引き取られる時を待っていた
そして、他にもいたであろう買い手を抑えてあたしを買ったのはシェフだった
あたしにはシェフが白馬の王子に見えた

もちろん、買ってもらった目的はそのまま救い出してもらうことではなかった
「昨日お願いした通り、ここであたしを食べてください」
最後まであたしを美味しく料理しながらあたしを食べることのなかったシェフにあたしの味を味わってほしかったのだ

あたしは裸身を横たえる
横には大きな刃物が多数あった
もう、ここから自分で降りることはないのだ
ここでバラバラにされて食べられる
刃物を手に取るシェフの顔を見る
あたしを料理してくれた料理人であり、もうひとりのあたしの恋人
明日からはリプレースがあたしの代わりにあたしの人生を歩んでくれるのだ
あとはお願いね。
そう思ったところで唐突に目から涙が浮かんだ
「う…ひぐっ…」
シェフが思わず覗き込む
「やだよ…あたし…シェフのこと好きなのに…これで食べられて終わりなんて…あたし…死にたくない…もっとシェフと…いろいろしたかった…」
なきじゃくるあたし
こんなこと言うつもりなかったのに…とっくに覚悟は決めてたはずなのに…
「…でも、もう君を自由にすることはできない」
そうだった。すでにあたしの人権は失われていて、脱走させてもすぐに捕まって食肉にされてしまう
もうあたしには肉になるしかないのだ
「…うん…わかってるの…わかってるんだけど…」
急速に湧き上がる未練
「…お願い…こんなことやっていいかわからないけど…あたしを食べる前に…一度だけ、あたしとセックス…して…」
シェフはしばらく考え込むと、服を脱いであたしにのしかかってきた

あたしはすべてを忘れてシェフに抱かれた
シェフもあたしを激しく抱いて犯して貫いた
息が切れるまで抱かれ続けた

厨房に食肉の血を流すためにシャワーがあった
そこであたしは体を洗う
「やっぱり、あれの跡が残ってると嫌でしょ?」
冗談めかしてシェフに言った
もう、思いのこすことはなかった
「シェフもお腹すいたでしょう?さあ、思いっきりあたしを食べて」
吹っ切れた笑顔であたしは調理台にのぼり体を横たえた

あたしはカプセルを飲む
今のあたしに与えられたカプセルはいつもの物ではなく、ただ単に痛みをなくすだけのものだった

このまま解体されて絶命したらそれ以上意識は続かない
あたしの意識が残ってるうちにシェフにはあたしをたくさん食べてほしかった
シェフは包丁を手に取ってあたしの喉から刃を入れた
つーっと一直線に白い裸身に赤い線が流れ、そこから血が流れる
いつも見てきた光景だった

シェフはあたしのお腹に手を入れて、内臓を一つ一つ取り出していく
お腹の中に手が入る感覚は慣れたといっても気持ちの良いものではなかった
でも、シェフにそうしてもらえるなら…不思議な心地よさがあった
お腹が裂かれ、柔らかい内臓が取り出されていく

シェフはその内臓を薄く切って皿に並べ、オリーブオイルをまぶす
真剣な顔であたしの内臓を料理するシェフの横顔に安心する
ああ、こんなに真剣に料理してくれるんだ
極上の一皿が出来上がった
シェフは続けて取り出したあたしの内臓を丁寧に下処理しては事前に用意していた鍋に放り込んでいく
あたしの体はみるみる空洞になった
「ぐっ…ひぐっ…」
内臓が取り出されるたびにあたしの体が声を上げる
苦しんでるところは見せたくないから一所懸命我慢してるがそれでも声が出てしまう
「…ひぎっ…あが…」
それを聞いたシェフがこちらに視線を落とす
「…が…だい…じょうぶ…だから…おね…がい…続け…て…ひいっ…」
必死に涙をためながら内臓が引き出される感覚に耐える
体温が急速に下がっていき、体を不気味な感覚が覆う
テーブルの上ではあたしの内臓で作られたフルコースが並ぶ

「ああ…あ…」
涙をためた視界が急速にかすんでいく
視界の隅でシェフはあたしの内臓をシロップで甘く煮込んでいた
ソースで飾り付けられたあたしの内臓はハート形にソースをかけられ花びらを散らされる
「…あれは…」
あの内臓に見覚えがあった
あれはあたしを女性たらしめていた臓器だった

「シェ…フ…おねがい…もう…あたし…ダメ…み…たい…だから…最後…に…あた…しの体…を…食べて…」
シェフは帽子を脱ぐ
そのままあたしの体を起こしてくれる
もう、立ち上がる力を失ったあたしの体は支えだけで立たされる
その視界にはあたしの内臓で作られたフルコースがあった
テーブルに着いたシェフは
「いただきます」
そういってあたしに手をあわせてあたしを食べていった

少しずつ消えていくあたし

満足感だけがあたしの心を支配していた
胃も腸も膣も子宮ももう、あたしの体にはない
すべてシェフが食べてくれている
あたしがシェフとまじりあえる
幸福感でいっぱいだった
いつもは味わうことのなかった最後まで食べられていく幸福感だった。
しかし…それとともに今まで味わうことのなかった寂しさが広がる
もうすぐあたしは死んでしまう
それが意識の中を支配し始めた
徐々に消えていく意識
冷えていく身体
弱っていく心臓の鼓動と呼吸
その時はもうすぐだった

覚悟を決めていたはずなのに涙が止まらない
「…う…ぐ…」

デザートを食べ終わったシェフはあたしの小さな涙声を聞き逃さなかった
「…やだ…よ…このまま…死…んじゃうなんて…寂…しい…側で…いて…」
シェフは横に寄り添うと、あたしは残った力でその手をあたしの乳房に当てる
戸惑うシェフに目で訴えた
シェフは戸惑いながらあたしの乳房を揉んでくれた
あたしは嬉しかった
もう膣も子宮もないし、動くこともできないけど、シェフが与えてくれた感覚だけは伝わってきた
シェフに快感を与えられながら残った器官で絶頂へ導かれていった
わずかに残った感覚が快感で埋まるのを感じながらあたしの意識は消えていった


里香の呼吸が止まったのを確認したシェフはそのまま里香を横たえると再び帽子をかぶり包丁を手に取った
手際よく里香の胴体から心臓と肺を抜き取る
里香に最後まで生命を保たせてきた器官が取り出される
それは里香が人間ではなく完全に食肉になった証でもあった
里香に生命の実感を与えてきた乳房も切り落とされる

シェフはさらに大きな包丁で里香の両手両足を切り落としては手際よく部位ごとに切り分けて箱詰めしていく
両手両足を失った里香の首を切り落とすと、今度はチェーンソーで背骨から胴体を両断していった
こうして里香は首だけを残して部位ごとに箱詰めされた

シェフが里香に言わなかったことがあった
シェフが買えたのは里香の内臓だけだったのだ
残りの部位は他の異星人たちが競り落としたのだ
この晩餐会はシェフが牧場主と飲食店に頼み込んでできたことだったのだ
もう里香の腕も足も乳房もお尻ももう里香の物でもシェフの物でもなくなった

冷凍庫にしまいこまれた里香だった食肉は翌朝業者が持っていくことになっていた
そして、残ったのは里香の頭部だった
食肉として扱われない部位である頭部はこのまま廃棄物としてゴブリンに食べられてしまう
シェフは里香の頭部を見て考えをめぐらし、ひとつの答えを得た

「ありがとうございました~」
里香、正確にはリプレースの里香は今、飲食店で働いている
結婚以前の仕事からの異動であったが、そのために毎日夫の顔を見ながら仕事をすることができた
夫はこの飲食店のシェフだった。
シェフはもうひとりのあたしを食べた後、あたしと結婚した
それまで妙によそよそしかったシェフがあれから急にあたしに対して積極的になったのだ
あの夜に何があったのかはあえて聞いていないが、たぶんあたしを食べたことがひとつの原因なのだろう
あたしはもうひとりのあたしに頭が上がらない。

そして、それとともにシェフとこの飲食店は新しいメニューでさらに名声を上げた
あたしがここにいる理由のひとつでもあった

調理場に戻るとあたしは食前酒をオーダーして調理台の先を見た
視線の先にあったのは瓶詰めになったあたしの頭
残ったあたしの頭部は蒸留酒で漬けられてエキスのしみこんだ食前酒として提供されている
当初みたあたしは「趣味悪いよ」と思ったけど、実際に出してみたら異星人にも好評で、名物となりつつある
あたしのエキスが目の前で提供されているのには複雑な感じだったが、美味しそうに飲んでいる異星人を見るとほっとしてしまう。

今、あたしは幸せだった
だから…心配いらないから…見守っていて。もうひとりのあたし。

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最終更新:2016年01月24日 13:17