西の森を流れる川の中流、
そこに架かる街燈のない橋に紅の薔薇乙女はいた。
欄干に座り、月明かりを頼りに名簿を見ている。
「……蒼星石」
かつて自分とアリスゲームで戦った相手。
彼女の強さは知っているつもりだ。
それが、あんなにあっけなく。
「ジュン、翠星石」
自らのマスターと人見知りな姉妹を思う。
ジュンは幾度も超常の出来事に遭遇している。
取り乱す事はないと信じているが、人もドールも同じように死んだ。
不安に思っていることは間違いない。
問題なのは庭師の姉の方。
あれ程、慕っていた妹をジャンクに…
(自棄になっていなければいいけれど……)
最後の見知った名前を見る。
―――あなたは、何のために戦ったの?
(水銀燈…)
ローザミスティカは奪わなかった。でも私が彼女をジャンクにしてしまった。
(…あの時は、そうするしかなかったもの)
ジャンクになってしまった水銀燈がなぜいるのか。
考えても答えは出ない。
名簿をしまう。どうするかはまだ決めていない。
「ホーリエ……やはり、いなくなってしまっている」
何度も探しているが人工精霊の姿が見当たらなかった。
これではステッキも召喚できない。
先ほど水面を覗いたときにnのフィールドも確認できなかった。
(ここはどこ?夢の世界でもないようだし…それに時間の感覚もおかしい)
あの壇上の少女のしわざだろうか。
(…この戦いの仕組みはアリスゲームに酷似している)
彼女はアリスゲームを知っているというの?
だが楽しませろと言い放った。
良質の作品は数多くの模造品を作り出すという。
アリスゲームを知っているとすれば
彼女はそれを作品と捉え楽しもうとしているのね。
貴女は私達のお父様に成り代わろうというの?
……それは無理よ。
楽しむ、その刹那的な快楽を求める事だけでは何も得ることはできないのだわ。
おそらく彼女達はどこかで見聞きしているのだろう。
だから、
「私は私のやり方でこのアリスゲームを終わらせる」
強い意志を込め、この超常を起こした少女へ静かに宣言した。
橋の欄干を降り、街へ向かう道を見据える。
(私達ドールは、お父様に創られ人と共に生きてきた)
だから文明に惹かれるのかもしれない。
何よりジュンなら街へ行きたがるだろう。
北の街を目指し歩を進めはじめる。
「ジュン、貴方は仮にも私のマスター(家来)なんだから無事でいてよね」
【F-3 橋/1日目・深夜】
【真紅@ローゼンメイデン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3(確認済み)
[思考・状況]
基本:このアリスゲームを自分のやり方で制す。
1:早くジュンや翠星石と合流。
2:水銀燈は気にはなるが、会いたくない。
3:あの壇上の少女はいったい…。
◇
同時刻、同じ川の下流にて白黒の魔女が橋の欄干に座り、
こちらは街燈の光を借りてコンパス、地図、山とを交互に見比べていた。
年齢はまだ10代半ばという人間の少女。
「ああね。やっとどこか分かった。
夜中に知らない土地に放りだされて現在位置なんて分かる訳ないだろ…
この橋に来るまで普通に迷子だったぜ」
ほっと一息つく。
この島に降り立ったときに自分の持ち物を没収されていた為、かなりの不安があった。
魔法の箒、魔法の燃料、これらはまだいいとして、
ミニ八卦炉という彼女にとっての生活必需品兼護身用武器まで
奪われたことに気づいたときは憤慨した。
(殺し合いさせたいのに武器奪うって、意味わかんない)
苛立たしげに溜息をつく。
黒いドレスのポケットに突っ込んでいる唯一使えそうだった武器を撫でる。
(銃っていうのもねぇ…)
命を奪うような武器はできれば使いたくない。
「まあいいや、この首輪も殺し合いも他人の物を勝手に盗むってのも気に入らないけど、
珍しい所に来られた事だ。いい物があれば勝手に拝借させてもらうぜ。
もちろん八卦炉も返してもらう」
不敵ににやりと笑った。
そこまで考えてから、地図を見てまた渋い顔をした。
この島には川が三本も流れている。
橋の下を見ると水量も結構あった。
海も囲まれている事もある。これは明け方に霧か、昼過ぎに夕立が来るかもしれない。
屋根のある場所に向かったほうがよさそうだ。
そこにはプログラムに乗った者もいるかもしれないが…
「ここらでゆっくりしていく訳にもいかないか。時間制限もあることだし」
カリカリと首にかけられた金属をひっかいてみる。
1日経って、死人が出なければ首が吹っ飛ぶという。
考えただけでぞっとする。
(保険で、殺し合いに乗っていて弱くて悪い奴探しておこうかな…
そんな人物を近くに置いておけば、危なくなったら隙をついて時間稼ぎに………)
「…やめよ」
やはり殺しはしたくない。
「さて、霊夢は神社辺りを目指してくれるかね?…紅魔館の妹様も洋館に行っていればいいけど」
思考を切り替え荷物をしまう。
(まずは神社に行こう)
欄干から下りると、魔理沙は一路道を北上しはじめた。
紅のドールと白黒魔女。
二人の行く先の道は交わるが、出会うかどうかはまた別の話―――。
【E-2 橋/1日目・深夜】
【霧雨魔理沙@東方project】
[状態]:健康
[装備]:ベレッタM8000F@現実(15/15)
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2(確認済み、魔理沙に使えそうな物ではないようです)
[思考・状況]
基本:殺し合いなんておっかねぇ、でも死ぬのは嫌だぜ。
1:霊夢を探しに神社に向かう。
2:1の後、霊夢と対策を練る。できれば脱出。
3:フランとも合流したいが…。
4:八卦炉を返せ。
【ベレッタM8000F@現実】
ピエトロ・ベレッタ社が1995年に開発した
半自動拳銃(セミオート)。
重量925g。9mmパラベラム弾。
通称『クーガー』シリーズ。
最終更新:2009年12月05日 11:22