「……どうしよう」
美術館と街を結ぶ道の真ん中にて、坂井悠二は頭を抱えていた。
視線の先にあるのは、和服姿で道に転がり、すうすうと寝息を立てている少女。
その少女にどう対処するかが、悠二の目下の課題だった。
(まさか、ここに放置しておくわけにもいかないし……かと言って、起こしてパニックを起こされても困るし……。
このまま運ぶと起きた時に変な誤解をされるかもしれないし、第三者に見られたら誘拐犯って疑われるかもしれないし)
と、いった感じに、見事に思考の坩堝にはまってしまっているのである。
しかし、今悠二らが居る場所が殺し合いの会場である以上、延々と迷っている暇は無い。
ここで時間を食えば食う程、誰かに発見される可能性は高まるのだから。
それが悠二と同じ、殺し合いからの脱出を目的とする者ならばいいが、そうでない場合は―――
(ええい、もうどうにでもなれだっ!)
最悪の事態だけは避けなければならない。
ついに覚悟を決めて、少女を起こすため声をかけようとした、その時だった。
「…………?」
和装の少女が目覚めたのは。
固まる悠二をよそに少女はゆっくりと起き上がると、寝惚け眼でじっと悠二を見つめる少女。
あまりに唐突な少女の目覚めに、何を言っていいのかわからなくなる悠二。
(……どうしよう、何て言えばいいんだろう。ああ、池とかならこんな時にも的確な対応を―――)
と、そこまで考えたところで悠二は少女の名前を知らないことに気付く。
(……そ、そうだ。まず名前を質問して、こっちに敵意が無いことを示そう)
「君、名前は?」
「鷺ノ宮伊澄と申します」
よく澄んだ声で、少女―――鷺ノ宮伊澄は、自らの名前を名乗る。
その様子を見て、特に状況に怯えていたりはしないようだ、と悠二は判断する。
「そ、そっか。じゃあ、鷺ノ宮さん。今、何が起きてるのか理解してる?」
「……?」
悠二の質問に、伊澄は小さく首を傾げる。
(こんな道端で無防備に寝てた時点で薄々感じてはいたけど……やっぱり彼女、今の状況を全く分かっちゃいないんだな。
このままじゃまずいよな……正直僕自身ロクに理解できていないけど、大雑把にでも説明しておかないと)
「え、えーと鷺ノ宮さん。実は僕達は今、殺し合いに……」
「おーい、そこのお前!」
しかし、悠二が説明を試みようとしたその瞬間、背後から誰かの声がした。
反射的に振り返ると、そこにいたのは特徴的な帽子を被った、いかにも魔女といったいでたちの少女。
「おっと、そこを動くなよ? 動くと撃つ!」
少女は悠二に対して実にフレンドリーな笑顔を向けていたが……手に構えた拳銃のせいで全てが台無しだった。
拳銃の銃口はどう見ても真っ直ぐ悠二の胸に向けられており、何時でも撃てるように引金に指がかかってまでいる。
(……あれ、もしかしなくても結構なピンチじゃないのか、これ。)
生憎、悠二の武器は一対の双刀のみで、拳銃に対抗できるようなものでは無い。
ポケットの中の宝具・バブルルートについては存在自体忘れてしまっている。
もしも少女が殺人者ならば、悠二は何も出来ずに―――
「ああいや、そう構えなくていい」
しかしそうはならず、少女は銃を向けたまま、悠二に笑いかける。
430 :名無しさん:2009/10/05(月) 03:27:56 ID:v3ViHU0.O
「私はちょっとお前に質問したいだけなんだ」
「銃を向けられて構えるなってのも無茶な話だと思うんだけど……質問って?」
「お前は、最後の一人を目指していたりするのか?」
少女の質問は極めてシンプル。
この場で最後の一人を目指すということは、それ即ち他者を殺すということ。
「違ったなら謝るが……もし最後の一人になる気なら、この引金を引くぜ。
殺人者になる気は無いが、私の知り合いも巻き込まれてるんだ。お前が誰かを殺すなら、その前に私がお前を殺す」
少女の言葉に、悠二はゆっくりと首を振って答えた。
「……人を殺す気なんて無いよ。僕の友達も、この場に居るんだ。皆で協力して、ここから脱出したい」
悠二の返答に、少女は少しの間考える素振りを見せたが、やがて、徐々に銃を持った手を下ろし始めた。
「見た感じ嘘じゃないっぽいな。こんな物で脅して悪かった」
「いや……こんな状況だもの、仕方ないよ。ええと」
「ああ、魔理沙だ。霧雨魔理沙。お前の名前は?」
(格好は少し変だけど、まともな人っぽいな……。
まあ、何事も無く済んでよかったよ。僕だけならともかく、鷺ノ宮さんも居たんだし)
「僕は坂井悠二。後ろの彼女は鷺ノ宮伊澄さんって言うんだ。
霧雨さんさえよければ、僕達と一緒にここから逃げ出す方法を探さない?」
三人寄れば文殊の知恵と言うわけでは無いが。
自分一人では無理でも、三人で考えれば、少しは事態も進展するかもしれない。
そう考えての悠二の言葉だが、しかし魔理沙の反応は薄かった。
薄いというか、「こいつは何を言っているんだ」とでも言いたげな視線を、悠二に向けてすらいる。
「ど、どうかした……? 僕、何かまずいことでも」
「悠二……協力自体は別に吝かでも無いんだが、一つ聞きたい」
「その、後ろの彼女ってのは何処にいるんだ?」
「ええぇっ!?」
慌てて悠二が背後を見る。
そこには伊澄の姿は無く、ただ暗闇だけが残されていた。
◆
「……あら?」
悠二にとって、鷺ノ宮伊澄の性質を知らなかったことは不幸だった。
「ちょっと蝶々を目で追っていただけなのに……ここは何処でしょう?」
伊澄の、前代未聞の迷子っぷりさえ知っていれば、悠二は一瞬たりとも彼女から目を離さなかっただろうに。
「先程の殿方も、いつの間にか居ませんね……まったく、迷子にでもなってしまったのでしょうか?」
学院への登下校中に迷子も日常茶飯、三回の外出で五回迷子は当たり前、三外出で八迷子も、な彼女は、
日本から太平洋を越えて何故かアメリカ合衆国へと辿り着く、という前代未聞で無茶苦茶な迷い方をする彼女は、
某団長が「ある意味、どんな異能よりもこの子の迷子を制限するのに骨が折れたわ……」とか言ったとか言わないとかな彼女は、
「……よくわかりませんが、歩き続けていればどこかには着きますよね。さて、練馬駅はどちらでしょうか……」
バトルロワイアルについてついに何一つ理解しないまま、会場に解き放たれてしまった。
これから彼女が何処をさ迷うのか……それはまだ、誰にもわからない。
【?-?/一日目・深夜】
【鷺ノ宮伊澄@ハヤテのごとく!】
[状態]:健康
[装備]:高級そうな和服@ハヤテのごとく!
[道具]:支給品一式、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本:家に帰る
1 練馬駅はどちらでしょう?
※
オープニングは寝ていたので、殺し合いを理解していません。
※伊澄の迷子には制限がかかっており、会場外までは迷えません。
※伊澄が次に何処に現れるかは、次の書き手さんにお任せします。
◆
ローゼンメイデンが第1ドール・水銀燈は、体を休める場所を求めて南の美術館に向けて夜の闇を飛んでいた。
体を休めるだけならばすぐ北の市街地でもできただろうが、街には物資、休息、安全、治療、情報など様々な物が存在する。
それらを求めて街に集まる参加者は多いだろうし、参加者が集まれば参加者同士の殺し合いが始まることだろう。
そんな場所で体を休めていて不意を衝かれるのは回避したいし、何もせずに参加者が減ってくれるのであればそれに越した事は無い。
(参加者の数からして、持久戦になるのは間違い無いものねぇ。ある程度参加者が減るまで温存しておけば、最後に笑うのは私よぉ)
故に、水銀燈は市街地からほどよく離れた、E1の美術館を休息の地に選んだのだが。
(美術館なら殺し合いに利用できそうな物も無いから、来客も少ないだろうしね……あらぁ?)
『だから、さっきまで本当に居たんだよ、鷺ノ宮さんって和服姿の女の子が!』
『……あー。お前が居たって言うなら本当に居たんだろう。別に私は疑っちゃいないぞ、うん』
『だったら目を反らさずに言ってくれないかな!?』
水銀燈の瞳に映るのは、大声で騒ぐ二人組の姿。
どうやら、空中に浮かぶ水銀燈にはまだ気付いていないようだ。
(ちょっと疲れちゃったから無視して通り過ぎてもいいんだけど……ピーチクパーチク騒ぐ餓鬼は好きじゃないのよねぇ……)
自分が手を下さずとも、すぐに他の誰かに殺されるだろう。
しかし、確実を望むならば、今ここでの奇襲で終わりにするのも悪くない。
(さぁて……どうしようかしらぁ……)
水銀燈の、決断は―――
【D-2/一日目・深夜】
【水銀燈@ローゼンメイデン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本:自分の命を最優先にゲームに乗る(乗る意図は不明、積極的に参加者を殺して回る気は無い)
1:二人を襲うか、美術館に向かうか……。
2:体を休めたい。
[備考]
参戦時期は次の書き手さんにお任せします。
【霧雨魔理沙@東方project】
[状態]:健康
[装備]:ベレッタM8000F@現実(15/15)
[道具]:支給品一式、不明支給品1~2(確認済み、魔理沙に使えそうな物ではないようです)
[思考・状況]
基本:殺し合いなんておっかねぇ、でも死ぬのは嫌だぜ。
1:悠二と、霊夢を探しに神社へ向かう。
2:1のあと、霊夢と対策を練る。できれば脱出したい。
3:フランとも合流したいが……。
4:八卦炉を返せ。
5:こいつ(悠二)大丈夫なのか?
【坂井悠二@灼眼のシャナ】
[状態]:健康
[装備]:オボロの刀@うたわれるもの、バブルルート@灼眼のシャナ
[道具]:支給品一式、PSP@現実
[思考・状況]
基本:殺し合い脱出。
1:脱出のため、魔理沙に協力する。
2:シャナと吉田さんを探す。
3:フリアグネ、サブラクを警戒。できれば両方とも討滅したい。
4:吸血鬼とアズュールが欲しい。
5:鷺ノ宮さんは本当に居たんだよ……。
[備考]
参戦時期は、少なくとも二期21話以降です。
最終更新:2009年12月05日 11:20