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信じる人と演じる人

信じる人と演じる人 ◆Hxm7duMiWg



「それで、世界さんは一人でここに飛ばされちゃったの?」
「うん、名簿を見たんだけど私の知ってる人はいなかったかな……」

魅音の確認に同意し、世界はやや落ち込んだ口調で返した。
何もない深夜の森の中は思っていた以上に静寂であった。2人の声だけしか聞こえない。虫も鳥も、本来はいるであろう生物が一切いないのだ。
もし、この場所に一人でいることになったら今頃間違いなく精神が崩壊していたに違いない。それだけの恐怖がこの一帯には溢れていた。
故に静寂。故に響く。もちろん、他に気づかれぬよう小さな声で会話を成立させてはいるが、油断は禁物である。いつ誰が襲ってくるのかわからないのだから。
彼女達が出会ったのは偶然。それこそ神様が気まぐれに2人を近くの場所にテレポートさせたとしか説明ができない。
とにかく、2人はゲーム開始から1分も満たないうちに出会ったのだ。
もちろん、出くわした当初は一悶着あったが、今ではこうして互いの思考を理解し、情報を交換しあっていた。
そんな中、自分達の知り合いも同じように参加しているのではないか? と思い、名簿を確認したのだ。
その結果、魅音は自分達の知っている人間がいて少し安堵し、世界は自分以外に昔からの知り合いがいなかった為、このように落ち込んでいたのであった。
ここは殺しあいの場。初めて知り合う人と楽しい楽しいサバイバル生活を送る場ではない。
そういった意味では、知り合いが死ぬ心配を考えなくてもいい一人は気が楽なのかもしれない。
しかし、場合によってはそれが逆効果になる可能性もある。
すなわち、知り合いが一人もいない状況。
知っている人がいない孤独感。いつ誰に殺されるかわからない恐怖。
安心出来るビジョンが見えない、自分が信頼できる人がいないというのは全てを忘れてしまうほどに恐ろしいことだ。
案の定、世界は表情がすぐれない。魅音という、このゲームに乗っていない人と最初に出会い、今こうして一緒にいてもだ。

(うーん……、どうしよ。そりゃ『友達が死ぬ可能性はないんだし、頑張ろうよ!』なんて言ったら余計不安になっちゃうよね)

珍しく空気を読んだ(?)魅音は、励ましの言葉を模索する。
本当のことを言うのならば、魅音も恐怖で一杯だ。しかし、別のことを考えているとそっちに夢中になるという言葉は案外嘘ではない。
何よりも、自分が励ます立場であると理解しているから、というのも大きいであろう。
うーん、うーん。と唸る魅音に対し、世界は自分のせいであることに気付いたのか、

「あ……、そんな大丈夫だよ。も、もしかしたらいきなりし、死んじゃったかもしれないし……。そういう意味では魅音さんと最初に会えてラッキーかな」

言葉に恐怖が宿ったのか、やや震えている。
自分が死ぬ瞬間なんて、誰が想像するであろうか。今まで幸せに暮らして、過ごした世界の中で、誰が想像するであろうか?
それが、今では隣り合わせになってしまったのだ。自分で『死ぬ』という言葉を使うなんて本当に、本当に初めてのことであった。
が、魅音はそっちよりも後半の言葉しか聞いていなかった。いや、後半の返事に夢中になった、というのが正しいのであろうか。

「へ? そそそんな、おじさんと会えてラッキーと言われてもどうやってこんな所に連れて来られたのかさっぱりだし。そりゃまぁ、他の人より力はあるだろうけど支給品がこんなんじゃねぇ……」

そういい、自分のディパックに入っていた黒く光る物体を手に持つ。
拳銃――、であったらどんなに嬉しいことであったであろうか。それはいつも魅音が愛用しているエアガンの拳銃であったのだ。
何という運のなさ、と言うのは不謹慎であろうか。下手したらどうでもいいアイテムが1つしか入っていない可能性も考慮すると、及第点というべきなのか。
だが、殺し合いという場において、護衛用としてある程度殺傷能力のある武器はほしかった。何もできずにおさらば、なんてもってのほかなのだから。
一応はダム闘争のときに使用していたもので、改造されたエアガンではある。
人を殺す、にも不十分ではあるが、人を傷つける、には十分な武器ではあった。
これをどう視るかはその人次第。魅音自身はやや不満が残っているようだが。
そんなハズレ(?)武器。エアガンをくるくると廻しながら呟く。

「でも、圭ちゃんってこういう男の子っぽい女の子好きじゃない気もするんだよね~。そりゃまぁ料理とかもおじさんできるけど、家庭的な子、というわけじゃないし……」
「? 魅音さんどうしたの。ちょっと聞き取れなかったんだけど?」
「ふえ? あ、い、いや、別になんでもないよ。ただの独り言だよ! だよ!」

アハハハハー! と顔を赤くしながらも適当にごまかす魅音。
何時も持っていた武器を目の前に、ちょっと呆けてしまったのだろう。自分が好いている男の子のことがどう自分を想っているかを考えていただなんて絶対にいえない。
もっとも、この口調を普段から使っている某知り合いは『嘘だッ!』とか言ってきて見事に魅音が何を考えていたか当ててくるだろう。
そう思うとちょっと吹き出しそうになった。こんな場所なのに、何時ものメンバーがすぐそばにいるように思えてくる。
それだけ、彼女にとってあのメンバー達は大事な人なのだ。そして、何人かは魅音と同じようにこの島にいるのだ。
やっぱり安心する。彼女らがいる、というのは魅音にとってはとても、とても大きいプラス材料である。
そんな魅音に対し、何を考えているかわからない世界は?マークを頭に浮かべる。
なにやら自分の世界に入っているような感じもする。こんなときに大丈夫なのかな……? とちょっと不安になりながらも魅音をこちらの世界へ戻そうと口を開く。

「それで、とりあえずは魅音さんの知り合いを探すことにしましょうか」
「あ、そうだね。うん、とりあえずこの首輪をなんとかしないといけないしね。私の時代のものだったらまだなんとかなったのかもしれないけど……。仕組みがちょっとわからない以上他の人頼みになるかな」

この殺しあいから脱出したい二人は、最大の枷となるであろう首輪に着目した。
魅音も機械関係に関してはそこそこの知識があるが、一目で自分達の時代のものではないと判断できた。
明らかに昭和58年に造られたものではない。それぐらい精密でどういった仕組みで動いているかわからない代物である。
となると、重要なのはこの首輪がどういった構造で出来ているかを知っている人。世界が魅音の時代より先に存在していた人間であるから、魅音みたく機械に詳しい未来人がここに参加している可能性はある。

「となると、おじさんの知り合いも探すことを含めて情報収集すべきだね」
「気をつけながら、ね。ここで私たちがやる気のある人に殺されたら意味がないし」

世界の警告に魅音はコクリと頷く。自分達は戦力としては不十分。魅音が銃火器を扱える程度(それでも一般的に見たらすごいのだが、場所が場所である)、世界に至ってはただの女子高生なのだ。しかし、それが死んでいい理由になるかといえばノーだ。
足手まといにならない、とは言い切れないが、足手まといになる気はない、とは言い切れる。
自分達の些細な一言が流れを変えるかもしれないし、自分達が皆のパイプ役になれるかもしれない。
とにかく、簡単に捨てていい命ではないのは間違いない。
だからこそ二人は立ち上がる。
だからこそ二人は歩く。
目標は人が集まりそうな民家。もちろん『やる気のある』人達も狙っている可能性はある。
しかし、それは『脱出する気のある』人達が来ることを見越しているのだ。多少の危険は仕方ない。
自分達だけのうのうと生きて脱出しようなんて考えじゃ達成するわけないのだから。


【H-4 森/1日目・深夜】
【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康
[装備]:エアガン(32/32)予備マガジン×3
[道具]:支給品一式、不明支給品0~2(ただし、武器ではありません)
[思考・状況]
基本:主催者打倒・脱出
1 廃村へ向かう
2 何で建物こんなバラバラなんだろう(・3・)


【エアガン@ひぐらしのなく頃に】
園崎魅音が使用している武器。ダム闘争のときに使用しており、威力強化のため違法改造されている。
殺すことはできないが、当たったらかなり痛い。
元々はおもちゃなので装弾数は多い。もちろん弾はBB弾

    * * *



(クス……)

魅音の背を見て、世界は心の中でにやけた。
こんなに上手くいくだなんて、我ながら満点を送りたいわね、と自画自賛してしまいたいぐらいであった。

(ごめんね、魅音さん。本当なら私も貴方と一緒に脱出したいかな)

もし世界が本当に一人きりであったら、魅音と同じように脱出派になっていたであろう。それは間違いないと自分でも思うくらいだ。
けど、誠が死んだ。
呆気なく、死んだ。
あれが私達をやる気にさせるための偽物だなんて思えない。
誠を知っているのは世界と言葉。誠とそばにいた世界だからわかる。あの名簿の中に誠を知っている名前はいないし、世界が知っている名前はいなかった。
ただの女子高生二人だけをやる気にさせるためにあんな真似はしない。
そう、つまりは本物。おそらく、本来は三人参加する予定だったのだが、主催者の気まぐれによってあぁいう結果になったのだ。
もちろん、あの主催者を殺したい、という気持ちはある。今すぐにでも殺したいという気持ちはある。
しかし、

(……、脱出するということは主催者の概念に反するということ、すなわち彼女が言ったことは事実上不可能になる)

『優勝者には元の世界に戻してやるついでに一つだけ願いをかなえさせてやるわ』
今の世界は、彼女が何気なく言った言葉しか見えていない。
いや、その言葉を土台にし、今を生きていると捉えた方がよさそうだ。
あの主催者が、このような場所に皆を連れてきたんだ。今更人間を生き返らせることを言われても不思議と許容できる。
だから、それまではあいつらは生かす。誠を生き返らせた後に殺せばいい。それだけのことだ。

(誠がいない世界なんて認めない。そんな世界はいらない。新しく、誠がいる世界を作らなくてはならない)

つまり、世界はこのゲームの勝利者とならなければならない。しかし、何の力もない世界にとって、優勝を狙うにはあまりにもハードルが高い。
だからこそ頭を使うのだ。ただ、やみくもに人を襲っていたら返り討ちに遭うのが関の山。あっという間にゲームオーバーであろう。
ならばどうするべきか。
簡単なことだ。安全な場所に身を潜めればいいのだ。
どこが安全な場所であろうか。森の中? 禁止エリアのせいで移動している最中にやられてしまったらどうする? 一人で敵に出くわすよりも、二人で出くわした方がまだ生き残る可能性がある。

そう、普通に考えたらこういった場面で一番味方を作りやすいのは『脱出派』になること。

(フフ、私みたいな微力な人は間違いなく一番『安全な位置』に配置される。早く頼れる味方を見つけましょうね、魅音さん♪)

言葉に関しては世界にとってどうでもよかった。彼女も非力な人間。どうせ出会う前に殺されてしまうだろう、と世界は踏んでいる。
だが、もしものことがある。魅音に一人ぼっちである、と言った以上言葉とも初対面であることを演じなければならない。
向こうが反応しても、知らないと言えばいい。

(学校内では有名人だから知られていたのかもね、とでも言えばいっか。そう、一人ぼっちを演じないと。一人ぼっちは人の心を動かしやすい。護りたくなる対象になる。あぁ、ホント、人間ってこういう状況になるとホント頭が働くのね)

魅音に気づかれないよう、世界は笑う。




クスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクス


【H-4 森/1日目・深夜】
【西園寺世界@School Days】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本:安全な場所に居座る。最終的にはゲームの勝利者となる
1 廃村へ向かう
2 味方をつくり、自分を護ってもらう
3 自分達のグループが最後になったら皆殺し
4 それまでは脱出派の人間を演じる
5 場合によっては周りの人間を見捨てることも


24:しあわせの?手乗りタイガー 時系列順 26:烈火の将 その決意
24:しあわせの?手乗りタイガー 投下順 26:烈火の将 その決意
園崎魅音 40:揺れる想い
西園寺世界 40:揺れる想い


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最終更新:2009年10月03日 15:05