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第二十二章-第一幕- 全力疾走






ストレンジャー・タウンの防衛に成功した勇者軍主力部隊は、
敢えて態勢を整え直そうとする円盤浮遊都市を追撃せず、
戦力拡充を実行するため、クルーズ・シティを目指すのだが、
アンノウン・ベビーという不安要素を未だに抱えていた。
そして一同は、カシミア大橋に差し掛かった。
かつて幾度と無く勇者軍の関わる紛争に巻き込まれ、
その都度未完成ながらも破壊と修理を繰り返されてきた橋であるが、
それも随分昔の話で、既に完成して
人々の主要通路の一つとなっている。

もちろん今でも多くの人間が行き交っており、
中には人間以外どころか、多種族の集団が往復していたりして、
どこか独特な風情を醸し出しているのも事実である。
そんなカシミア大橋を渡り始めた勇者軍ではあったが、
大体からして、かなりの距離がある橋だ。
十分そこらで渡ったりできるほど生易しい橋ではない。
半ばで襲撃を受ければ、逃げ場が前か後ろにしか無いことを示す。

「気を付けないとね……ある意味ここでさっきのエリミノイドってのに
 襲われたら、危険度はストレンジャー・タウンの比じゃないわ。
 隠れ場も逃げ場もロクに無いんだから、めっちゃ性質が悪いわよ」
ルシアが幾分か緊張して言う。
「ここを選んだのは失敗だったかもしれませんね。
 素直にコンラッドさん達を呼ぶべきだったかもしれません」
いきなりリゼルが呟き、空を指差した。
「敵襲!?」
遠くにロボットらしき姿を確認した勇者軍。
「エリミ……ノイドじゃありません! 警戒を!」
真っ先にシルヴィアが気付いた。サイズが違い過ぎる。
「わーっ! 何だありゃー!!」
周辺の民間人が一斉に退避を始めた。
勇者軍目線で言うのも問題だが、民間人にしては
見事な逃げっぷりと言って差し障り無かった。
その間、エリミノイドよりいくらか大きなロボットは
こちらを監視するかのように、付かず離れず、
微妙な距離からこちらを眺めていた。

敵なのか、味方なのか?
それすら把握出来ないまま、不気味な監視を続けるロボット。
と、ジルベルトがとある事に気付いた。
(人間乗ってる?)
「えっ?」
その思念に、一斉に振り向く勇者軍主力部隊一同。
望遠モードの端末を通してみると、確かに頭頂部のあるべき箇所に
人間が雑に乗っているような印象を見受ける。
即ち、どこぞの人間勢力のマシンなのだろう。

「まさか、小型のライディング・フレーム!?」
シルヴィアがそう結論付けた。
ライディング・フレームとは『骨格に乗る機械』という意味で、
端的に人型の巨大マシンを示す用語である。
だが、一般的なライディング・フレームは二十メートル前後であり、
目の前のものは、三~四メートルほどしか無いように見える。
「貴官等は勇者軍主力部隊、違うか?」
拡声器を使って、所属不明である相手の
ライディング・フレームパイロットが呼びかけてくる。
「確かにその通りよ。あなた達は?」
ルシアが極力冷静に問いかける。
「我々はザン共和王国民政部第17特殊部隊
 ライディング・フレーム『ホークマン』第4小隊の者だ!
 悪いが、貴官等を無期限拘束処分とさせてもらう!」
「何のためによ!」
「例の円盤浮遊都市『FSノア49』に対抗するための措置だ!
 今回の惑星アース防衛は、より確実かつ精密な情報を
 保持する我々ザン共和王国民政部で対処する方針だ!
 従って、勇者軍のように無秩序で動き回る連中を
 野放しにしておく事は出来ない。我々の作戦成功までの間、
 悪いが官邸客室にて大人しくしていてもらうぞ、よろしいか!?」
「よろしいわけないでしょ!」
ソニアが激怒する。
「あんた達、私達の組織の性質を知っていて言ってるの!?
 自衛互助組織なのよ! ウチの味方も巻き込まれてるの!
 あんな危険物放っておけないの、分かるでしょう!?」
「分からんではないが、優先度の問題だ。
 抵抗するというのなら、力づくで拘束させてもらうぞ!」
「全員ダッシュで前進! とにかく橋から離れないと!」
リゼルの指示で、即座にダッシュを始める一同。
拘束は嫌だが、橋の破壊も出来れば避けたかった。

「逃がすな、追えーっ! 敵は少数だ!」
手を出さないでいてもらっている事も気付かず、
ホークマン第4小隊の面々は勇者軍に追撃をかける。
「目測開始! 残り約五百メートル!!」
リゼルが目測、しかも疾走中ながら測量を始める。
陸地までの距離を、だ。
「ええい、ちょこまかちょこまかと!」
特にはしっこくソニアが回避を繰り返し、逃げまくる。
「もらった!」
ライディング・フレーム『ホークマン』の腕部マニピュレータが
何度かソニアをかすめるが、ソニアはむしろ、それを踏み台にして
ロングジャンプ。更に距離を開けてひた走る。

「…………!」
ずばっしゃぁぁぁぁぁ!!
ジルベルトは橋から飛び降り、海面へ向けて砲剣を突き立て、
着水寸前で砲撃。強烈な水しぶきと反動とでまた橋に戻るという
荒業によって、水しぶきの目くらましを行いつつ逃げていた。
「ぐわっ、水飲んだ!」
「落ち着け、ただの目くらましだ!」
第4小隊の隊員達は水しぶきに慌てていた。
器用なことこの上無い話であった。
「残り三百! 急いで!!」
リゼルの目測はまだ続いている。
「二百!」
更に全力疾走。
「ええい、橋を多少傷付けても構わん、撃て!」
ホークマンからミサイルの反応。少数だが確実に橋を破壊するだろう。
「させない!」
ルシアが不自然なまでに身体を捻りつつ、弓を後ろに放つ。
もちろん全力疾走しながらであって、これも人間業ではない。

ずどどどどどどん!!

全てのミサイルを撃ち貫き、爆風が宙を舞う。
橋の破壊だけは避ける事が出来た。
「百……五十……!」
リゼルのカウントが耳に痛い。永遠かとも思う時間の中、
実際は数分で、勇者軍は橋を降り、陸地へと到着。
その後速度をゆっくりと緩め、
そして完全にライディング・フレーム部隊へと振り向く。
「観念したか……さあ、大人しく投降しろ!」
水浸しの煤だらけ状態で、ホークマン第4小隊は
粋がって投降勧告を繰り返す。
「投降? 冗談でしょう?」
シルヴィアが幾分か強気に言い放つ。
アンノウン・ベビーの件もあり、気が立っているのだろう。
「明らかに格下の相手に手加減してあげているだけなのに、
 そうまで調子に乗られると、ちょっと引いちゃいますね」
「な、何だとぉッ!」
激昂するホークマン第4小隊の面々。
「さあ、反撃よ! 一機残らず戦闘不能にしてあげるわ!」
ソニアの檄が飛び、勇者軍の士気が上がってきたのだった――



最終更新:2011年07月16日 20:59