第二十五章-第三幕- 静かなるメロウ
無事にライナス、リュミエルと合流した
勇者軍主力部隊だったが、
なんと接吻を交わしているところで合流してしまったため、
妙な勘繰りを味方に与えてしまった二人であった。
ともかく、依然として
FSノア49はその場に留まっている……
「これでよし、っと」
セシリアは端末に倒した
エリミノイドのパーツの規格などを
過去のデータと照合させるように、作戦本部へ要請した。
端末の操作に時間はかかったが、まあ問題無いだろう。
それはさておいて、問題なのは未だにその場に留まって
様子を静観しているFSノア49である。
「仕掛けてくる……か?」
動揺はしているものの、一応気は抜かずに
ライナスが剣を構える。前回同様海上にいる上、
やたらと距離が離れているため、こちらからの攻撃もままならない。
仮にジルベルトが飛行しても前回と結果は同じだろう。
その上、前回与えたダメージまで修理されていた。
「せめて発信機だけでも取り付けられないかしら……」
ルシアが矢文的な要領で発信機を矢に取り付けるが、
どう考えても矢など届きそうにない距離であった。
すると、FSノア49が戦力の消耗を察知して撤退を始めた。
無駄なのは分かっているが、それでもどうにかしたかった。
陸地で接敵しなければ決戦は不可能だろうが、
それでも所在を突き止めるぐらいはやっておきたかった。
「親父! 行けるか!? 相手は海だ!」
コンラッドが
レッド・ワイズマンMk-Ⅱへと連絡を取ったが、
レッド・ワイズマンMk-Ⅱからは別の返答が来た。
「無理です。敵と思しきライディング・フレームの襲撃です。
撃退はしましたが、こちらも推進部に損傷のようです。
しかも更に良くないことに、そっちへ行った模様。迎撃を」
「ちぃッ……分かったよ!」
コンラッドが通信を切ると同時に、目視確認できる距離に
ザン共和王国民政部ライディング・フレーム『
ホークマン』が
単独で向かってきた。ただ一機で、である。
「一機ですか、ふざけた真似を!」
リゼルの
プラズマキャノンが『ホークマン』に放たれる。
しかし『ホークマン』は難なくかわす。
通常のものより明らかに高性能だ。カスタム機かもしれない。
「警告。こちらはザン共和王国民政部『ホークマン』隊長、
メロウ=クミン搭乗の『
ホークマンEXエディション』です」
その『ホークマン』の専用機は、明らかにカラーリングが違う。
パーソナルマークに鷹のマークまで貼ってある。
名乗った女性、メロウ=クミンは
エースパイロットなのだろう。
「ザン共和王国民政部は『FSノア49』との交渉を
断念してはいません。故に決戦をしようというのならば、
民政部の名において、これを妨害しますが、如何に?」
随分と礼儀正しく聞いてくる。
「悪いけどね。こちらも随分と痛い目に遭わされてるの。
そちらの言い分もあると思うけど、今は飲めないわね。
あ、言っとくけどこれは勇者軍の総意だから」
リュミエルはきっぱりと言い放った。
「了解。意思確認を完了。ホークマンEXエディション、
アイドリングからバトルへモードチェンジ。
勇者軍への妨害行動を実行させていただきます」
ハキハキと小気味良く喋ってから、
メロウ=クミンの操る『ホークマンEXエディション』が、
ホバリング飛行を再開し、一気に接近してくる。
狙われているのはリゼルだった。
動きの鈍さを悟られたのかもしれない。
あるいは単純に最初に攻撃したからかもしれないが。
「遅い」
メロウは即座にアサルトライフルの照準を合わせる。
リゼルに回避の余地は無い。
「
リフレクトフィールド!」
しかし、シルヴィアが即座に物理防御魔法でフォローに入る。
直撃コースだが、リゼルの負傷はさほどでもない。
あらかじめ準備はしてあったのだろうが、見事である。
「やる」
感心したように、メロウは一度距離を置いた。
そして再度接近し、今度はルシアを狙う。
「精密機械にはこれ!」
ボイルドアーチで一気に決着をつけようとするルシア。
発射したが、メロウのホークマンEXエディションも、
ヒートランスを抜き放ち、軽く切り払う。
お互いの武器の相性が悪く、ルシアはどうしても不利だった。
「御し易い」
「お姉ちゃん、避けて!」
ソニアが回避を促すが、既に遅かった。
メロウはそのまま突貫してくるが、そこにジルベルトが割り込んだ。
「ジルベルト君!?」
(……させないの)
絶壁砲剣『矛盾』を即時展開。アズール・アーマーを装着しつつ突貫。
ヒートランスに
砲剣ストレンジバスターを突き刺す。
「邪魔」
「…………!」
大きくヒートランスを振り回し、はたき落としにかかるメロウ。
だが、ジルベルトは勿論そんな暇は与えない。
ずばごん!
砲撃によってヒートランスが爆破される。
もう使い物にならないだろう。
反動でジルベルトは吹き飛び、なんとかブーストをかけて止まった。
「今よ、ライナスさん!」
「ああ!」
リュミエルの号令で、一気にライナスが接近。
烈風剣にてアサルトライフルをも両断してしまった。
「不利ね」
大きく距離を離すメロウ。不利は悟っていたようだ。
機動力に任せてやれるかとも思っていたようだったが、
無理をしないのも彼女の信条である。
「撤退します」
脚部に申し訳程度に装填されていた
ミサイルを牽制に放ち、
さっさとホークマンEXエディションとメロウ=クミンは撤退した。
ミサイルは適当に受け流して、戦闘終了となった。
「ふう……FSノア49は?」
「既に視認不可能です。発信機も取り付けられません」
ソニアの問いに、ユイナ姫が答えた。
「そう……とにかくライナスさんとリュミエルを保護したし、
これからどうするの? ジルベルト君?」
ソニアは立て続けに質問する。
(
ヴェール・シティへ行くのー。そこからまた
レッド・ワイズマンMk-Ⅱに乗って
シャンゼリー王国領内、
カルナード港へ行って味方を探すのー。
それで、出来ればテディさんの力も借りたいのー)
「……まあ、無難かしらね」
セシリアも特に異論は無い。FSノア49を発見出来ない以上、
戦力拡充しかやれる事は取り立てて見当たらないからだった。
「よし、じゃあ行くとすっか。街は復興準備中だが、
何とか船の接舷だけは出来るらしいからな。任せとけ」
と、コンラッドは再度母艦に連絡を取った。
「じゃあ進路、ヴェール・シティ跡地ね。進軍~!」
フローベールの号令で、一同は進軍を再開した。
が、ジッとリュミエルを見つめると、赤面してしまうライナス。
それはリュミエルも同じで、どことなくぎこちなかった。
セシリア一人が『やれやれ』というポーズをしたのは、
まあご愛嬌というべきなのだろう――
最終更新:2013年03月07日 04:15