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第二十七章-第二幕- マクスフェル戦線の残滓






勇者軍主力部隊は、カルナード港から
傭兵都市、マクスフェル・シティへの移動を開始し、
その後速やかに目的地へと到着しつつあった。
その頃、当のマクスフェル・シティでは
ゼクウ=ユウキとギース=リバーズが本当にただの偶然から
たまたま市内にて再会したりしていた。

「……む? おい、お前ゼクウだろ?」
「?」
ゼクウがゆっくりと振り向いた。
ただし武器はしっかり構えていて抜け目が無い。
「待て待て待て。俺だ、ギースだ。忘れたか?」
「否」
ゼクウは相手がギースなのを目視確認すると、
さっさと武器を収納した。
「アレか。あんたも主力部隊への合流が目的か?」
「是」
相変わらずの一文字返答のみで会話を行うゼクウ。
ある意味ギースは安心してしまう辺りが笑い話か。
「お前は知ってるか? 勇者軍の主力部隊が
 カルナード港を経由してここへ来るって話を」
「否」
「今知ったクチか。まあいい、無駄に動き回るより
 ここで待った方が確実だぜ。休憩といこうや」
「了」
ゼクウはそこら辺で見つけた公園へ移動する。
ギースも一緒に移動し、自動販売機へ向かう。
「おーい、喉を潤しておこうぜ。お前何飲むー?」
「茶」
ゼクウは身じろぎ一つせずに返答した。

なんだかんだで果物やら弁当やら買い込んで、
立派な食事まで決め込んでいたりする二名だったが、
それぐらいの暇は与えてもらえたようだ。
……もっとも、ゼクウが持ってきた鍋焼きうどんは
どこから調達してきたのかが疑問に残るが。
「お前どこからそれ持ってきた?」
「愚」
「いや、愚問とか言われても分からんし」
少々困ったようなリアクションを取るギース。
なんだかんだでゼクウも人付き合いは良かった。

すると、遠くから何か異常に大きな建築物がやってきた。
「……警」
ゼクウは素早く剣を抜いた。
「あれが例のFSノア49って奴か?」
「肯」
「……やれやれ、腹ごなしの運動にしちゃあ、
 ちっとばっかりハードすぎやしないかね?」
「無」
相手はこちらの事情を考えない、無理からぬこと、とでも
言いたいのだろう。ゼクウはいつでも動ける状態に入った。
遅れてギースもウォームアップを始めた。
「あー、主力部隊。聞こえるか?
 こちらギース=リバーズ。ゼクウと共に
 これからマクスフェル・シティで防衛に入る。
 救援、どれぐらいで到着可能だ?」
端末の通信の有効範囲内にはいてくれたらしく、
応答待ちの状態になった。
『こちらコンラッド=ワイズマン。
 そんなに距離は無い。到着まで二十分というぐらいだ。
 市民の退避が最優先でいい、持ちこたえてくれ』
「了解。それだけ早ければ充分だ」
ギースは端末の通信を切った。

ずどむ! どごむ!
そのタイミングでミサイルが撃ち込まれてきた。
報告通り、信管は無いので起爆しないが、
弾頭であるべき位置から、エリミノイドと呼ばれる
人型等身大ロボットがわんさか出てきた。
「来たか。数だけは多いようだな」
「……」
「行くかね」
「了」
まずはゼクウが、次いでギースが突貫。
装甲の頑強さに思ったより手を焼くが、
どうにかならなくはない。

「固いなら固いなりに、やりようは……ある!」
ギースは、エリミノイドを強引に背負い投げして、
後方にいたエリミノイドへ叩きつけて破壊する。
固さを利用して別の相手の装甲と相殺させる作戦だ。
もっとも人力でやるのを相殺というかは謎だが。
「然」
然様か、と言いたいのだろう。
ゼクウもギースに倣って投げ技などに徹する。
ニンジャの割には膂力に長けたゼクウには
うってつけの作戦だったのも大きい。

「うわーッ!」
ところがミサイルの数が多い、後から後から
エリミノイドが市街地のあちらこちらに出現する。
こうなると多勢に無勢。現地の傭兵も自衛行為に入るが、
いかんせん火力の違いが露骨に出て、押されている。
「なっ、なんだ! このロボットは!」
「うわわあぁ! 武器が折れたー! 俺の武器がー!」
ひどい場所では逃げ惑う始末の傭兵達。
中には勇者軍レベルで善戦するものもいるが、
それは極少数派である。何にしても数が多すぎる。
「シェルターへ避難しろ! 命が惜しかったらな!」
ギースがエリミノイドを叩き壊しながら言う。
「ひぃぃぃぃー!!」
新米傭兵なのだろう。見事に逃げていった。
「あんた達も無理はするな! 腕は立つようだが、
 押されすぎるようなら撤退したほうが賢明だ!」
「分かっている、無理はせんよ!」
こちらはベテランの傭兵だろう。敵の攻撃をいなしつつ、
斧の一撃を叩き込んだりしていて、非常に優秀だ。
(二十分は見栄を切りすぎたか……
 いや、敵の数が多すぎるだけだな!)
ギースは舌打ちしながらも敵を破壊し続ける。
ゼクウは人間の数が減ってきたのを見計らい、
時折、発破を炸裂させて、距離を置いたりしていた。

しかし、それでも傭兵達の数は減っていく。
一人、二人と負傷したり、不利を確信したりで
みるみるとゼクウとギースは孤立していった。
「ちぃッ!」
ギースは更に舌打ちし、距離を大きく取る。
「ゼクウ、このままの状況は良くない!!
 主力部隊の到着が遅れるなら、撤退もあり得るぞ!」
「否!」
ゼクウは首を振る。
「早!」
まだ早い、と言いたいのだろう。
「それだけ見栄が切れるならまだ上出来だ!」
ギースが気合を入れ直そうとしたタイミングだった。

「アースナックル!」
ずどん!
轟音を立てて土塊を腕に纏ったソニアが殴り込んできた。
待ちに待った主力部隊の到着である。
「ギース! ゼクウ! 大丈夫そうで何よりね!」
「随分と待った! 二人ではカバーしきれん!」
そして後ろからはシルヴィアとリゼルがやってきた。
「総員、各区域に散解! 個別に防衛網を展開します!」
リゼルの指示で後ろからやってきた連中も、
すぐさま防衛戦に加わる。敵の過激な攻撃で
既に都市部の一角が破壊されつつあったが、
それでも防衛すべき対象は多い。
「これは厄介だな……」
ヴァジェスが市街地を見渡して言う。
いつも投入される数の数倍ものエリミノイドが
投入されている。市街地では過激な技も多用出来ない。

「きゃぁぁぁぁぁぁーーーッ!!」
更に、近くの区画から女性の悲鳴。逃げ遅れた市民だろうか。
あるいは近くにいた傭兵が撤退したせいで襲われているのか。
どちらにせよ、保護しなければならない。迷う時間も無い。
「ええい、時間が無い! 乗れ、テディ! 二人で行くぞ!」
「分かった、位置は分かるな!?」
「竜族の聴力を甘く見るな!」
ヴァジェスはワイバーン形態と化し、テディを乗せたまま飛翔。
悲鳴の聞こえた位置へと一直線に向かう。

過去に無い大規模白兵戦の最中、
勇者軍主力部隊に課せられた使命は重く――



最終更新:2011年06月11日 14:40