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第二十八章-第二幕- 怪球ミーム






作戦目標を失って、とりあえず船に戻ろうとしていた勇者軍へ、
更なる妨害をかけるべく、ザン共和王国民政部首相、
ヴェルファイア=ブレッド首相とその愛竜コモドが出現。
そのトータルバランスに優れた能力で勇者軍を追い詰めていた。
「がぁぁぁぁぁ……!」
コモドが唸り声をあげて威嚇してくる。
とにかく一撃が重く、鋭く、しかも早い。ただそれだけであるが、
それ故に、回避も防御も困難を極めた。

まともに受ければよくてふらつき、悪ければ大ダメージ。
だからと言って大きく回避して距離を置けば、反撃は困難である。
まともに耐えられるのは、ジルベルトかメイベルぐらいのものであろう。
「厄介ですねぇ……」
シルヴィアも大きく距離を離して見ていたが、
ふと耳を澄ますと、何故か見当違いの方向から轟音。
そちらを見ると、なんとロケット弾が飛来してきていた。

ずどん!

勇者軍にも、ヴェルファイア達にも全然命中しない軌道で、
しかし遠くも無い位置に着弾。信管が無いので爆発はしない。
衝撃と轟音に、思わずコモドさえも怯んでいたが、
ロケット弾の弾頭部分のハッチが開き、黒いボールが飛び出した。

ぴょこん、ぴょこん、とバウンドする
バスケットボールのようにジャンプしながら、
黒い球体はシルヴィアの方に近付いていった。
「みー」
間抜けな声を立てて、その球体は『眼』を開く。
黒い球体に一つ目。それが全てを表現するといった
風貌の物体は、シルヴィアに懐き始めた。
その見た目は、まるで闇の精霊『ダークマター』を
模したもののようでもあった。実にそっくりである。
「怪球ミーム。ようやく来ましたね」
「カカカカカ……」
笑い声のようにも聞こえるが、記憶媒体の作動音である。

「妙な物を持ち出してきたが、それでどうにかなるかな!?」
ヴェルファイアとコモドは、更にしつこく突進を繰り返す。
一応、警戒してシルヴィアに向かっての突進だった。
「避けて、シルヴィアさん!」
「……S-LINKシステム、フルコネクト」
「みー」
怪球ミームはふわりと浮いて、シルヴィアのまわりを漂う。
すると、ジルベルトとメイベルの脳裏にある考えが浮かんだ。
二人でコモドの突撃を強引に止める戦法である。
二人は一声も発することなく、同時にシルヴィアをガード。

がきん!!

そしてその並外れた防御力で、コモドの突進を強引に止めた。
すると、ライナスの脳裏にも戦術行動が浮かんだ。
当然、止まった隙に一撃でも多く斬り込む方法である。
「カオスリキッド!」
鞘から抜いた剣が鋭い切れ味を帯び、そのまま切り裂く。
「ぐぎゃあぁぁぁぁ!」
コモドは大きく怯んだ。流石の攻撃力である。
そして前線にいた全員が隙無く散開していく。
先の三名同様、自然に考えが頭の中に入ってきた。
「これは……?」
セシリアがまず怪訝に思う。やるべき事、やったら効果的な事、
戦術的に有効な手が次から次へと勝手に頭に叩き込まれる。
「シルヴィア、あんたなの!?」
シエルが振り向くと、シルヴィアは頷いた。
「戦術的情報強制共有システムで、取るべき対応策は
 思いついた人のものを優先して、
 ゼロタイムで伝える事が出来ます。
 また、全員の位置情報は見ていなくても伝わります。
 これが、我が家の家宝、怪球ミームの力です」
「見た目によらず厄介な……!」
コモドを御しながら、ヴェルファイアは歯噛みする。
こういう兵器の存在は聞いたことがなかったからである。

「みー」
またも怪球ミームが一鳴きすると、
コモドの有効攻撃範囲から微妙に逸れるような動きを
全員が取る。恐ろしい戦術共有度であった。
「くっ、まずはその球からだ! やれ、コモド!」
ヴェルファイアの指示で、先程同様に土塊を投げてくる。
(左に約六センチで回避完了)
怪球ミームの指示で、あまりに無駄なく回避終了。
シルヴィアはまったく傷を負うことなく、凌いでみせた。
ただ、怪球ミームの使用は極度に精神力を使うのか、
あまり派手に動く事は出来ないようでもあった。
「どうやらあまり動けんようだな。そこを狙う!」
コモドは容赦なく突進してくるが、
先程同様にメイベルとジルベルトが受け止める。
「みー」
(終撃砲!!)
ずどどぉぉぉぉぉぉぉん!!
シルヴィアと怪球ミームの指示に従ったジルベルトが、
そのまま最大出力の砲撃を見舞った。

「ぐぎゃぁぁぁぁおぉぉぉぉぉ!」
ダウンしかけて、もがき苦しむコモド。
相当のダメージになったらしい。
「これ以上は無駄のようだな。今日のところは
 これで退かせてもらう。立て、コモド!!」
「ごあぁあぁぁぁぁぁぁ!!」
咆哮してから、コモドはヴェルファイアを乗せたまま、
その跳躍力だけで戦場から離れてみせた。
軽傷とは言えない傷を負った割には、随分と元気である。

「助かりました、ミーム」
「みー」
どこか嬉しげに、怪球ミームはシルヴィアに擦り寄る。
どうやら、懐いていると言っていい状態のようであった。
随分と器用なマシンがあったものである。
「まさか、そういう資質の秘宝だったとはね、
 こりゃ、私もびっくりだわよ」
と、人のことはまったく言えないセシリアが驚いてみせた。
「僕のストレンジャーソード……」
「私のレプリアーツ……」
「俺のカオスリキッド……」
「俺のライブチャージャー……」
「私の二ノンの翼……」
「そして私の怪球ミーム。全て揃ったのは初めてですね?」
「これなら勝てるかもしれんな、あのFSノア49にも」
いくらか希望を見出したように、ジークも呟く。

「あ、船がもう到着してるみてぇだぞ。
 急ごう、あんまり待たせちゃ悪ぃからな」
コンラッドが端末からの情報に目を通して言う。
「また船ですか……」
乗り物酔いという弱点を持つユイナ姫がげんなりと呟いた。
ユイナ姫以外の全員が苦笑いしながら、船に向かう。
とりあえず、何があっても即時対応が出来るように――



最終更新:2011年09月17日 21:46