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第三十章-第四幕- 勇者軍の矜持






勇者軍主力部隊と民政部の連合軍は、
FSノア49の情報を得たものの、
自爆コマンド挿入もしくは内部からの機能停止に失敗し、脱出。
やむなく勇者軍最高軍機を発動させる事に決定し、
ユイナ姫の指示のもと、足止めと時間稼ぎに徹さざるを得なかった。

この戦いが始まって、既に長い時間が経過している。
上で戦っていたメンバーも、下で戦っていたメンバーも
既に消耗の度合いが極限に達し始めていた。
「ええい、使うしかないか! 聖杯ライブチャージャー!」
テディが聖杯ライブチャージャーを発動させると、
ある程度全員が持ち直す事に成功するが、
いかんせん、人数が人数な上、道中でも使っているので
力を使い尽くしても完全回復には及ばなかった。

それでも勇者軍と民政部のメンバーは奮闘を続けていた。
特に光っているのはホークマンEXエディションに搭乗している
メロウであった。新たにやってきたホークマン部隊と一緒に
ワンバウンドミサイルを投げまくって辺り構わず
FSノア49の兵装を、魔力を使わずに破壊し続けていた。
とは言え、そんな荒業もいつまでも使えず、
やはり弾数不足の印象は拭えそうになかった。

「マグマロックストライク!」
テディも懸命に地熱を帯びた岩石を打ち出すが、届かない。
「無駄な力を使うな! 有効な反撃が出来る奴だけ反撃!
 それ以外の奴は防御か回復に徹しとけ!!」
ヴァジェスの指示が飛ぶが、そこにS-LINKシステムを
展開したままのシルヴィアの指示が割り込む。
「ユイナ姫からの指示を受けました。伝えます!
 隊長、ユイナ姫、ライナスさん、
 それとテディさん、セシリアさん、私の六名は
 大きく後退し、可能な限り力を温存して下さい」
「このタイミングでそれを言うの!?」
セシリアは驚愕し、逡巡しながらもやむなく従う。
セシリアが従った事で、他の者も続いた。
他のメンバーを見捨ててしまうように見えるのは問題だが、
作戦の都合があるというのならやむを得ない。
それにわざとメインメンバーだけ選抜したのも
意味があるはずだ、と彼等は思った。

ユイナ姫は爆風が吹きすさぶ中、シエルに近寄る。
「シエル! 出来るだけの支援魔法をレプリアーツにちょうだい!
 ストック限界いっぱいまで貯めこんで、上で使うから!」
「上ってどこよ!?」
「高度一万メートルを想定してるわ。早く!」
「え、ええ!? わ、分かったわ。
 リフレクトフィールド! リフレクトフォース!
 マスター・ブースター! これでどうよ!?」
「ありがとう、後は私達で決着をつけるわ。耐えて!」
「ここまで無茶を認めたんだから負けんじゃないわよ!」
シエルの叱咤激励を受け、ユイナ姫はひた走る。

そんな事をやってる間にも、ミサイルが飛び交い、
機銃が入り乱れ、光学兵器で更に狙い撃たれる始末だ。
S-LINKシステムの力で、光学兵器を最優先で破壊し、
何とか瞬殺される危険だけは避けてはいるものの、
ギースが、コンラッドが、ミミックマンが、そして多くの者が、
次々と戦闘不能になっていき、残ったメンバーに
救出されて、何とか生き永らえる地獄絵図と化してきた。

「きゃあッ!?」
「お姉ちゃん!!」
ルシアが大怪我を負い、戦闘不能になった。
それをかばってソニアが立ちはだかり、
その攻撃が集中してきた。
「アースナックル!!」
ごがんッ!
土塊を腕に纏い、シールド代わりにして弾を受ける。
「くぅぅぅぅ!」
後ろでは更にゼクウが被弾して、ダウンしていた。
立ち上がろうと何とかもがいているが、間に合わない。
尚更退却など認めるわけにはいかなかった。
「うぅぅぅぅぅ!」

ジルベルトも助けに行きたかったが、
作戦をフイにしては全滅確定だ。それだけは認められない。
彼は拳を握り締めていた。誰でもいい、助けて欲しい。
ソニアさんを助けて欲しい。ただそれだけだった。

「ソニアさん……ソニアさん!」
断腸の思いで呼ばわると、ソニアの目が血走る。
キレた。土壇場にしてキレた。
それ以外に表現の仕様が無かったのだ。
「私を誰だと思っているの! 甘く……見るなぁッ!」

ずどんどがん!!
その瞬間、どこからかの狙撃でミサイルが叩き落された。
ソニアの安全がある程度以上、確保されたのだった。
「よく言ったぁッ!!」
そして、長い間ジルベルトさえも聞いていなかった声が
大音声として戦場に、強く、熱く、激しく轟いた。
戦場の空気が変わった。いや、その時戦局は急転さえしてみせた。

究極の危機に、遂にその重い腰を上げ、現れたのだ。
七大戦線を戦い抜き、総帥としても人並み外れた働きを見せ、
まさに超世の傑と呼ぶべき、ジルベルトとはまた違う、
勇気と、機智と、技との象徴、人類史上最強にして、
絶対勝利の真聖勇者――その名も!

「俺の名はエドウィン! エドウィン=ストレンジャー!!」
 俺は……勇者を凌ぐ者なり!! そして!!」
エドウィン=ストレンジャー、ジルベルトの祖父だった。
彼の後ろから、一人の女性も姿を現す。
「その女性は私の義理の娘になるかも知れない人ですの。
 私の目の前で、手を出そうなどと、許しませんの」
その娘にして、ジルベルトの母、エリシャもいた。

その後ろからはレイリア、エイリアを筆頭に出るわ出るわ、
現役、引退、特務戦技教導隊を問わず、勇者軍メンバーが
総勢五十名以上の大進撃を開始していた。
勇者軍の五十名とは、並の人類五万人に匹敵する戦力だ。
「ここまでの戦い! まずはよくやった、ガキ共!」
エドウィンは立て続けに味方を激励する。
その後ろではレノールなどの回復呪文が広範囲に及び、
多くの傷付いた仲間が癒されていく。
「お前達の実力はその程度か、などと野暮なことを
 言うつもりはない! だが俺は敢えて言おう!」
エドウィンは鞘ごと剣を地面に突き立て、吼える。
「誇れ!」
エドウィンの気迫が天を震わせる。
「ただ誇れ!!」
そして大地が唸る。
「自らが勇者軍である事を!! ただそれだけをだぁッ!!」
「お……」
まず、リゼルが立ち上がり、多くの者が続き、そして――
「おおおおおおおおおおおおおおッ!!」
これまた負けじと気迫を込めて立ち上がる。
「来たか、エドウィンめ、お節介な――」
その中で、ヴェルファイア首相だけが、何故か複雑な心境を吐露した。

「凄い……」
ジルベルトが見たこともない祖父の剣幕に驚きを隠せない中、
セシリアだけは一人落ち着き払っていた。
「レイリアとエイリアの差し金ね。あの子等の考えそうなことよ」
「分かるんですか!?」
ライナスが驚く。
「先陣を切ってきたのはあの二人よ。立案者が先頭に出るのは、
 勇者軍の作戦ではよくある事だもの、でしょ?」
「まあ、確かに」
「そして流石はエドウィンね。流れを変えたわ。勝ったわね」
「いや、だが例の軍機とやらは来ていないぞ!?」
テディが慌てるが、あくまでセシリアは、
そしてユイナ姫は冷静であった。
「いえ、来ました。天を照覧あれ!!」
遠くの空から何かが来るのが見えた。凄まじく巨大な何かだ。

「あれは――!?」
シルヴィアも、ジルベルトも驚いた。
空を飛んでやってきたのはアーム城。
彼等の、勇者軍の最重要拠点であった――



最終更新:2011年10月08日 23:21