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第三十章-第五幕- ファイナルインパクト






レイリアとエイリアの作戦により、退役総帥エドウィン率いる、
勇者軍作戦部全軍が増援に出たことにより、士気が向上した勇者軍。
そしてユイナ姫が言う軍機が遠く空に姿を現し、
遂に乾坤一擲の一撃が放たれる準備が整いつつあった。

そして勇者軍全軍で、出来るだけの力を振り絞って
聖杯ライブチャージャーへと力を蓄積させていく。
ただし、テディへの事前告知は為されていなかった。
カリンが勝手にやっているのだ。彼女もこの装備の使い手である。
当然と言えたし、むしろ扱いは上手かっただろう。
「おい、一体何の真似だ、それは!?」
「いいからジルベルトと一緒に行ってらっしゃい!」
カリン=カレンはチャージの確認が出来次第、テディの肩を押す。

「チトセ、いい子だからここで待っててね、攻撃は避けて!」
「ひひん!」
ユイナ姫はチトセから降りてジルベルトの元へ向かう。

仮面を被ったロゼッタもライナスを応援する。
「さあ、カオスリキッドの真骨頂だよ。ジルベルトの所に行きな!」
「う、うん!」
ライナスもジルベルトの元へ向かう。

シルヴィアはレノールに挨拶だけ済ませ、さっさと動く。
セシリアはレイリアとエイリアに息子の消息を質問してから動く。
どうやら地元の妖精族の者に預けてきたらしい。
なお、その場にはフロントやリアもいたわけだが、
やはりエリミノイドの基本フレーム自体は彼等と一致しており、
その事について確認だけはしておいたが、
ゆっくりと議論している暇など、当然無かった。

そしてジルベルトはキョウカ王妃と対面していた。
「ジル君。今役に立つかは分からないけど、これを!」
必死に持ってきたのだろう。アースシールドを貸してくれた。
これで絶壁砲剣『矛盾』は完全な形となった。
(ありがとなのー! 行ってくるのー!)
後方では母親のエリシャも手を振っている。

全員が集まると、すぐに作戦は始まった。
「ジル君! アーム城が上昇して変形するわ!
 そこに全員で取り付かないと駄目なの。急ぎましょう!」
「!」
ジルベルトはアズール・アーマーを変形させ、飛行形態に入る。
そこにライナスとテディが両側面からしがみつく。
セシリアも二ノンの翼を展開。こちらには
シルヴィアとユイナ姫がしがみついた。
「行くわよ、ジルベルト!」
「……!」
セシリアの合図で双方、人二人を連れて飛翔する。

そして空中、高度八千メートル。
酸素が薄くて過度の呼吸が出来ない。
そんな中で、アーム城は凄まじい変形を行っていた。
どういう構造かはまったく分からないが、
まるでそれそのものが一本の剣を模した形となる。
全長一キロメートルに匹敵する超巨大剣だった。
ジルベルト、セシリアは人二人を抱えたまま、
どうにかこうにかユイナ姫の指定した位置へ到着した。
剣の柄の先端に当たる部分であると言ってよかった。
「コネクタ、オープン!」
ユイナ姫がスイッチを押すと、接続口が開いた。
まるで何かを突き刺せと言わんばかりの形だ。
「ジルベルト君! 砲剣ストレンジバスターを接続して!
 それで、この城が変形した剣はあなたのコントロール下よ!」
ジルベルトは恐る恐る差し込む。
すると、ジルベルトが腕を振り上げただけで
キャッスルバーニアが点火し、
剣を振る挙動そのままに、城が連動して動く。
「ば、馬鹿か!? なんだこの武装は!?」
「これこそ、対超巨大生命体想定式超重量級可変機構実装方式
 最終究極城塞質量圧壊前提決戦兵器、キャッスルブレイカー!」
「で、俺達は何をすればいい!?」
ライナスが薄い空気の中、精一杯怒鳴る。
既に高度は一万メートルだが、降下を始めてもいた。
「ライナスさん、カオスリキッドで城塞全体を補強!
 テディさんはライブチャージャーで生命力を全員に供給!
 セシリアさんは二ノンの翼を全力展開して制動補助!
 シルヴィアさんはミームを使って照準補正!
 そして私は――ッ!!」

FSノア49からだろう。凄まじい砲火が襲い始めた。
「マスター・ブースター!
 リフレクトフィールド! リフレクトフォース!」
幻杖レプリアーツから一気に支援魔法が放たれ、
キャッスルブレイカーが守られる。
「防御を担当! さあ、ジルベルト君!
 あとはあの技でFSノア49を丸ごと叩き潰すだけよ!」
ジルベルトの目に気迫が込められた。

だが、思ったより敵の砲火が激しく、リフレクトフィールド、
リフレクトフォース共に不安定になり始めていた。
「もうちょっとなのに……!」
ユイナ姫が歯噛みする中、シルヴィアが叫ぶ。
「負けません! 負けるわけにはいかないんです!」

すると、そこにいなくなっていたはずの
アンノウン・ベビーが姿を見せた。

ぼごごごごごごごごご!

猛火に晒されるスプレッダー女王体こと、アンノウン・ベビー。
「ベビー! 私が分かるんですか!?」
「ぎきゃぁぁぁぁぁぁッ!!」
二度、声を聞いてベビーは理解したのだ。
やはり彼女がシルヴィアなのだと。
だが、ベビーはやはりまだ中途半端だった。
懸命に酸を撒き散らし、銃弾を融解させるが、
撃ち抜かれて命の火はあっという間に消えていく。
「ベビィィィィィッ!!」
「ぎぎゃあああああああッ!!」
ベビーは、落下の時間を大きく稼ぐ代償として、その命を
シルヴィアのため、散らしていった。
「ベ……ビー……」
すると、ミームが突然照準補正に加え、解析を始めた。
「ミーム?」
「みーっ(彼女の命と引き換えの力を、一度だけ主に与えん)」
解析を終え、その力のデータをシルヴィアに送信するミーム。
「この……力は……!」
シルヴィアがきっ、とFSノア49を睨む。
どうせ後はジルベルトが叩き込むだけだ。自分の魔力など
ミームの制御に使う分だけ残っていればいい。他は叩き込む。
「アシッド・デモリッション!!」
シルヴィアの魔法が酸の塊となってFSノア49めがけて放たれる。
迎撃に回された砲門もろとも、見事に融解させてのけた。

そしてもう高度は千メートルを切っていた。
激突まで残りいくらもない。ジルベルトが剣を上へ振りかぶり、
下へ向けて叩きこむべく、振り下ろし始めた。
「アフターバーナー、オン!!」
ユイナ姫の操作により、最終ブースターが点火し、
落下速度はマッハ1前後にまで加速された。
「封神封魔流、最終究極奥技!」
そして全員の声が唱和する。
「惑星! 両! 断! 剣ぇぇぇぇん!!」

ごがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!

FSノア49は一瞬にしてエンジンブロックと中枢管理コンピュータを
叩き割られ、リトル・バグと呼ばれる自己修復マシンが機能を止めた。
それに伴い、各ブロックの端末も順次機能を停止し、
FSノア49は、アーム城もろとも木っ端微塵に砕け散った。
周囲数キロに金属、部品、マシン、建材の破片が飛び散る。

あまりの衝撃に乗り合わせていたメンバーが大きく吹き飛ぶ。
ライナスはどうにかリュミエルに抱き止めてもらう事が出来た。
「もうっ、ライナスさん、重いー!」
「すまない、割と助かった!」
テディはドルカスやヴァジェスに止めてもらった。
「おっと!」
「大丈夫、テディ!?」
「まずは大丈夫。俺はいい、他は!?」
シルヴィアはミームをクッション代わりにして助かった。
「ああっ、ミーム!?」
「みぃぃぃぃ……」
衝撃で軽く壊れてしまった。ただし怪球ミームは基本的に
コンピュータなので、部品を取り替えれば修理が容易だ。
ユイナ姫は迎えに来たチトセへそのままの勢いで飛び乗った。
「ただいま、チトセ!」
「ひひぃん!」
ジルベルトは一番激しく吹き飛んできたところを、
ソニアにまたも片腕でキャッチされ、抱き上げられた。
「よいっしょー!」
「ただいまなのー!!」
「おかえり、ジルベルト君!」
セシリアはというと、飛び散る破片の中、
一際変な物体を発見し、それを回収していたりした。
「これは……何なのかしらね?」

「やったか……!」
どうにかこうにか地上で耐えていたギースが呟く。

そして十数分も経過しただろうか。FSノア49は完全に撃沈し、
既に自己修復能力も失い、全ての機能を停止しきっていた。
まったく原型を留めていないと言って差し障りはない。
一部区域にはサンプルとして捕らえていたものだろう。
スプレッダーの死体らしきものも転がっていた。
ユイナ姫がスプレッダー戦役でも死体駆除に活躍していた
ビーム・カーテン部隊の出動を要請している。
「おかえり、ジルベルト君。見事だったわね!」
「ただいまなのー」
いつも通りいちゃつき始めるジルベルトとソニアだったが、
そこへ苦笑いしながらセシリアが割り込む。
「お楽しみのところ、悪いんだけどこんなの見つけたわ。
 ある意味今回の唯一の戦利品かもしれないわね。
 全員を集めてくれる、隊長さん?」
(みんな集まるのー)
ジルベルトはテレパスで全員を呼び集める。
無論、一緒に戦ってきた民政部のメンツもである。

この後、少し悶着があるのだが、
こうしてひとまず『ノア戦役』は終息の前兆を見せ始めた。
ただし、アーム城は全損状態ではあるが――



最終更新:2011年10月29日 21:02