第三章-第二幕- 現れる敵
勇者軍の内輪揉めは膠着状態に陥りつつあったが、
それでも過激な攻防が繰り広げられていた。
(ただし、クロカゲとポメは除く)
「どうした! その程度か!?」
マリーの槍が凄まじい勢いでロバートを攻め立てる。
「手前ェ、こっちが本気じゃないと知っててわざと!」
「貴様が剣を持っていないのが悪い!」
「俺が使いたがらないのを知っていてその態度かよ!」
「それを慢心というのだ、悔いろ!」
「ぬぐぉッ!?」
マリーの槍がロバートの腕に突き刺さる。
派手に振り回されて、地面に叩きつけられた。
「カオスリキッドを使っていないだけありがたく思え!」
「こ……の……!」
反抗してはみるが、武器の質の差は歴然としている。
素直に敗北を認めるしかないところだった。
エナもウォルフ王子に押し切られつつあった。
どうしてもカウンターアタックに偏りがちなエナを、
ウォルフ王子は攻撃的な攻めで押し切りつつあった。
「ううッ!」
「ふむ、まあこんなものでしょう。
むしろよくそこまで凌ぎ切ったものです。
素直に、賞賛に値します……ね!」
どんッ!
「きゃうッ!?」
斧の柄で殴打され、大きく転倒するエナ。
「エリックさん、大丈夫ですか!?」
すぐさまエリックの援護へ向かうウォルフ王子、
ロバートを倒したマリーもそちらに向かう。
「えっ、二人ともやられてるッスか!?」
突然の事態にびっくりするレオナ。
「そこまでだ、レオナ!」
「エリックから離れるんだ!!」
ウォルフ王子と、マリーが出てきた。
更に、そこら辺から適当に、ポメを抱いたクロカゲも現れる。
エリックを数に含めなくても三対一、あまりにも不利だ。
「くっ、万事休す……ッスね!」
ナノマシンも打ち止めだ。まだ放射量のコントロールが
上手にいかないので、全部使い切ってしまった。
補充にはそれなりの時間がかかってしまう。
両手を挙げて武器を捨てるレオナだった。
「ギブアップするッス。だからド突かないで欲しいッス」
「勝負あったな」
一応の治療を受けたものの、ロバートは不機嫌顔、
エナに至っては泣きそうである。
それを懸命にレオナが宥めていた。
「まあなんだかんだ言っても信賞必罰とは言うし、
出来ればほとぼりが冷めるまでは、私としては
ロブ達には謹慎していてもらいたいが、どうだろう?」
「…………それは、お前の本意か?」
「いいえ、全然?」
あっけらかんとした顔でウォルフ王子が答える。
「なら別にいいじゃねぇか」
「それでも一応世間体というものがありますからね。
出来る事なら世間が大人しくなる数十日だけでいいから、
やはり大人しくしておいてもらいたいところです」
「くだらねぇ」
唾を吐き捨てるロバート。行儀が悪い。
「ロブ、貴様!!」
マリーが詰め寄ろうとするが、そこまでだった。
ざんっ!
一同が座っている場所に大剣が叩き込まれる。
気配らしい気配はほぼ無かった。
にも関わらず、勇者軍一同は見事な回避を見せた。
「何だ、貴様は!」
ロバートが怒鳴るが、相手は答えない。
強い青の原色がやたらと目立つ鎧を着た騎士だった。
勇者軍一同には見覚えが無い相手だ。
「……答えんな。とにかく一時休戦でどうだろう、ロブ?」
「エリックのおっさんが言うんじゃ、しゃあねえ!」
見たことのない敵を相手に、
かつての追う者、追われる者が意思を一致させた。
最終更新:2011年12月10日 20:56