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第三章-第三幕- 真なる敵





一時休戦が協議されていた勇者軍の間に割り込むように、
謎の真っ青な鎧の騎士の大剣が叩き込まれた。
正体も何もかもが不明だが、放置するわけにはいかない。
ここにきて対立していた両者は団結し、撃退に当たるのだった。

「……貴様……何者だ! 名乗れ!」
ロバートが激怒して怒鳴りたてる。
だが、相手は黙ったままだ。
「知能が無いのか、喋れないのか!?」
ウォルフ王子もせっかくの会談を妨害されて怒り心頭だ。
「白虹騎士団……ブルーナイト」
淡々と、相手はそれだけ無機質な声で述べた。
まるで機械が喋ってるかのように個性が無い。
それと白虹(びゃっこう)騎士団という組織名も、
まったく勇者軍一同には聞き覚えが無かった。
ブルーナイトというのも、勿論本名ではないのだろう。
あまりにも名が体を現しすぎ、であった。

「何の目的で私達を襲う!?
 我々が勇者軍と知っての事なら、容赦はせんぞ!」
マリーが槍を握って威嚇する。
相手が剣なら、真っ先に彼女の出番だからである。
「知っている……勇者軍こそ我等の最大の障害。
 この惑星での最強の存在だと、理解している」
「この……惑星?」
意外な単語に、誰もが首をかしげる。
まるで惑星アースの外から来たような言い草だ。
見た目はどう見ても惑星アース文明圏製の鎧を着ているのだが。
「もう一度問う。一体何が目的だ?」
エリックも問う。
「我等が管理していた人体実験施設の破壊……
 その犯人が貴様だと聞いて……正体を見に来た。
 出来れば今ここで、その存在を打ち破る」
と、ブルーナイトはロバートを指差す。

「セート・タウンのアレッスね」
レオナがナノマシンの展開準備を始めた。
少量なら現状で展開出来る。
だが、その能力にブルーナイトは勘付いた。
「その能力は……例の施設の生存者か。
 本来は我々の力になるはずだったものだ……」
「勝手に人を掻っ攫っておいて植えつけて、
 挙句、言うことがそれッスか。
 どうやらあたしの真の敵はあんたらみたいッスね!」
ブルーナイトの態度に、レオナがかなり怒る。
「戯言は無用、来い」
ブルーナイトは軽く指で敵を招く。

「安い挑発……無用!」
クロカゲが真っ先に切り込んだ。
その素早いスピードと、面妖な仮面に一瞬ブルーナイトは
動揺した素振りを見せるが、すぐに対応。
大剣で切り払うも、なかなかに振り払えない。
ひたすらマイペースであるが、やはり有能なクロカゲだった。
「そこだ!」
マリーが突っ込もうとするが、そちらには銃で牽制。
ブルーナイトは剣と銃を使いこなすようだった。
「ちいッ、飛び道具か!」
「任せろ! マリー!!」
ロバートも銃で応戦。かなりの牽制になったようだ。
「エナ、続け!」
「はい!!」
ロバートの声に合わせ、エナが念動力で
そこらの石ころを動かし、オールレンジ攻撃を叩き込む。
「……! これは……!」
見たことが無かったのだろう。ブルーナイトが露骨に驚く。
「ダークバスター!」
エリックの魔法が乱射され、ブルーナイトに叩き込まれる。
「フリーズ……キャノン!」
「うあッ!」
ブルーナイトからも本気の魔法が叩き込まれた。
レオナを狙ってのものだが、なんとか耐え抜く。
「まだまだッス! ナノ・マシン展開!」
わずかに回復したナノマシンを展開し、
敵の視覚と聴覚を阻害する。ブルーナイトがまた動揺した。
「ウォルフ、叩き込め!」
「はい!」
ロバートの指示で、かなり強烈な一撃を叩き込むウォルフ。
直撃した。骨折したように腕がありえない方向に曲がっている。
「む……!」
ブルーナイトが腕を見つめる。腕をやれば攻撃力は半減同然だ。
勇者軍の優勢は明らかであると言えた。が……
「終わりでは……ない」
ぶらぶらと折れた左腕を、人体としてありえない動きで動かす。
左腕は縦回転する。まるでプラモデルのように無機質な動きだ。
そのまま無理矢理折れたはずの腕も使って、大剣を握った。
これで明らかである。人間ですらないのだ。
「火炎斬……!」
ブルーナイトが剣に火を纏わせて斬りつける。
「なっ!? ヤバい、マリー! 剣だ、剣よこせ!!」
「あ、ああ!」
ロバートが驚愕の表情で、マリーに命令する。
マリーは懸命に応じて、ロバートに剣を渡した。
その剣でロバートは技を展開する。
「風圧斬!!」
互いに魔力相殺し合う技と技。
だがロバートの風圧斬が属性相性により、大きく勝った。

「……不利か……まずは退く……」
「待て!」
「いや、深追いするんじゃねぇ、おっさん!」
逃げるブルーナイトを、ただちに
エリックが追おうとしたが、ロバートは制止した。
「分からねぇか、おっさん。あれは封神封魔流の
 基本の技だ。俺と同じ技が使える事になる。
 まさかとは思うが、ストレンジャー家の関係者……か?」
「だがあの動き、人間ではなかろう。
 そもそもあんな身内がいるのか、お前には」
「……新手の弟とか?」
「弟に新手もクソもあるか。てかいないだろ確か」
「……そうなんだが、な」
エリックのツッコミに、ロバートは嘆息する。

「あのー、いいッスかね」
ほったらかし気味だったレオナがここで意見を出す。
「謹慎とか休戦とかは一旦置いといて、
 ここはさっきみたいに団結して事に当たるべきじゃないスか?
 あたしは、そう思うんスけどね……あいつ強かったし」
「騎士『団』って事は、あの方以外にも色々いらっしゃるかと……」
レオナとエナの意見はもっともだった。
熟考したロバートとウォルフは、とりあえず承諾した。
「剣を使うのが嫌だとか、追う追われるの関係だとか、
 そんな事を言ってる場合じゃあ無さそうだな、ウォルフよ」
「同感です。正体も実質不明のままです。
 出来るだけ早く、彼等『白虹の騎士団』の正体を
 掴み、出来れば叩いておく必要がありますね」
「面子は俺、ウォルフ、マリー、おっさん、
 エナ、レオナと……確かクロカゲだったな。数がもう少し欲しいか」
「にゃうー!」
ポメが猛抗議してくる。
「悪ぃ、貴様もいたな、ポメ」
「にー」
それでいい、と言わんばかりの態度だ。
「紛らわしい名前を猫に付けるなよ……」
てっきり犬でも飼っているのかと思ったマリー達であった。
まあ、これは当初から予想されていたリアクションではあるが。
「ポメだからって犬だという固定観念への反逆なんだろうさ」
どこかロバートも投げやりだった。名付けたのは彼ではないのだ。

「とりあえずこれからどうするつもりッスか?」
「ローザさんと合流したいところです。
 彼女の実力は、非常に当てに出来ますので。
 というわけで、ヴェール・シティへそのまま向かいます」
レオナの問いに、ウォルフ王子が答える。
「おっしゃ、行くぜ! 勇者軍主力部隊、出撃だ!」
「おう!」
ロバートの号令に足取りも軽く、勇者軍は歩み始めた。
新たなる仲間、『不如帰の如き』ローザを迎えるために。



<第四章-第一幕-へ続く>
最終更新:2012年08月25日 23:47