第三章-第一幕- 勇者軍対勇者軍
だが、のんびりとした無目的の旅路はそれまでだった。
遂にウォルフ王子、マリー、エリック、
そして
ホムラ=クロカゲ(ただし気配は消している)の四名が
追走の末、ロバート達に追いついてきたのであった。
「ロブ、そこまでです! 大人しくしなさい!
ゼン・ヴィレッジや
セート・タウンの件もあります!
今なら話し合いだけで済ませられますよ!」
あくまで話し合いだけで済まそうとするウォルフ王子だったが、
ロバートが警戒の態度を示すと、迷わずマリーが飛び込む。
彼女は槍を握っていた。
「貴様という奴は、いつもいつも心配ばかりさせて!
どれだけこちらが気を揉んでいると思っている!!」
「俺の勝手だ! 貴様の知った事か!」
ロバートは速やかに回避し、銃で反撃するが、
その銃弾のことごとくを回避されてしまった。
「貴様の勝手で村一つ壊滅させたりするたびに
あちこちから
勇者軍は目の敵にされるんだぞ!
自衛組織が敵を自ら作ってどうする!?」
「俺のやっているのは歪みへの反逆だ!
事実、救われている奴だっているだろうが!」
「そのための犠牲が多すぎる! 無駄を減らせ!」
「それこそ貴様の知った事か!」
罵詈雑言の嵐と攻撃の応酬を繰り広げるロバートとマリー。
その一方で、ウォルフ王はエナと対峙していた。
「
エナ=ギャラガーさんですね。
お父様とお母様は勇者軍で身柄を保護していますよ。
大人しく話を聞いてみてはいただけませんかね?」
「私の命は……既にロバートさんに預けています。
彼が従う気が無いのなら、私だって……!」
「やれやれ、では新入隊員の実力テストといきますか」
ウォルフ王子は仕方なく斧で斬りかかるが、
一応本気ではない。エナもよたよたと回避し、
隙あらばと攻撃呪文やそこらの石ころを叩き込む。
緩やかながら、意外に隙の無い動きに王子は驚いた。
「やりますね。ロブが目をかけているだけはあります」
「まだまだです!」
いつに無く強い語気でエナも返した。
「さて、ちょうど三対三だ。君の相手は私がしよう。
エリック=ルストだ。よろしく頼むよ」
「
レオナ=タブーフィールダー。行くッスよ!」
二人が正面から打ち合うが、
体重差がかなりあり、まともにレオナが押し負ける。
「ふんっ!」
ずざざざざッ!
大きく杖で打ち払うと、レオナは後ずさった。
「やるッスね!?」
「仮にも
メインメンバーだからな。
ヒーラーだと思って舐めてかかるなよ!」
「まだまだッスからね!」
すると、エリックが大きく距離を取る。
「ヘイヘイ! ビビってるッスか!?」
「三対三とは言ったが、まさか真っ向から信じるとはね!
正直は美徳だが、時に痛い目を見る事を覚えておけ!
出番だ、クロカゲ! 軽く手合わせしてこい!」
……しかし何の音沙汰も無い。
「クロカゲ!? 奇襲のタイミングだぞ、おい!」
「策士、策に溺れたッスか!? 無様ッスよ!」
勢いに乗って、うろたえるエリックへ仕掛けるレオナ。
「ナノマシン、展開!」
「何ぃッ!?」
ジャミング用のナノマシンを展開し、
エリックの視覚を強力に撹乱するレオナ。
「勝負有り! ッス!」
視覚が戻った時には首筋に槍が二本突きつけられていた。
「……クロカゲめ、どこへ行ったぁッ!?」
心底悔しそうに、真っ先に脱落したのを人のせいにするエリック。
無論、ナノマシンのせい、と言うべきであろうが……
一方、その頃のクロカゲは……
「猫……」
「にゃう?」
何故か敵意を見せないポメを、とりあえず撫でて和むクロカゲ。
「我……猫……撫でる……!」
そんな事をしている間に上司がピンチなのを忘れていたのだった。
エリックとクロカゲの意思疎通不充分はともかく、
戦局は次第に膠着の様相を呈し始めていた。
最終更新:2011年12月21日 20:48