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第六章-第一幕- 三重波状攻撃作戦(前編)





レッドナイトを退け、アンリエッタ王女と愛馬ポニーを迎えた勇者軍は、
メインメンバーが遂に勢揃いした、という事もあり、
シドミード国王への反逆を決意し、ダイギン城への攻撃のため、
確実に歩みを進めようとしているのだった。
それが白虹騎士団への手がかりになる、と確信しての事だからだ。

「わあ、小さい猫さんなのじゃ! 可愛いのじゃ!」
と、早速アンリエッタ王女は猫のポメに食いついた。
「馬鹿、よせ!」
ロバートが制止しようとするが、もう遅かった。
「ふぎゃう!」
ざしゅッ!
「ぬぅ! 何をするのじゃ!」
引っかかれて吹き飛ばされ、驚くアンリエッタ王女。
まずは一度噛みつく、というポメの姿勢は相変わらずである。
表立ってはいないが、一部他のメンバーにも逆らっている。
実はそのたびに力でねじ伏せられてから懐くのだが、
主人の薫陶よろしいというべきか、大した反骨心であった。
「わらわは少々手荒いぞ、よいな!?」
と言いつつ、ポメに向けて高火力の魔法を展開し始める。
力の差が本能で分かると、急にポメはロバートの影に隠れる。
「よせっつーに」
ぺこん。
持っていた本で軽くアンリエッタ王女を叩いて止めるロバート。
「痛いぞ、ロブ! 何故止めるのじゃ!
 躾の出来ておらぬ獣は調教するのじゃ!」
「調教されてどうにかなるようならこんなに苦労しねぇ。
 力の差が分かったみたいだし、ここは引いてやれや」
「ぬう……もうするでないぞ、ポメ」
「にうー」
聞いているのかいないのか、アンリエッタ王女に
少しずつ懐き始めるポメ。随分と現金な態度である。

そんな事をしながら歩いていると、
ダイギン城の兵士達が追いついてきた。
どうやらずっと尾行していたものの、撒かれてしまい、
今の今まで必死に探していたようである。
「いたぞ、アンリエッタ王女だ! 捕らえろ、でなくば殺せ!!」
捕らえろ、に加えて殺せ、とは随分と過激な話である。
それだけシドミード国王が彼女を敵視している証拠であろうか。
「むむ、剣呑じゃな。わらわはそう容易には死ねぬぞ!」
アンリエッタ王女はまだまだ余力が残っており、
魔法をガンガン乱射しまくる。
しかし敵も相当な数だ。どこからこんなに出てきたのか
信じられないほどの兵士が出てくる。
今はいないが、誰かが指揮しているのは明確だった。

「ヒーラーだ、優先的に狙え!」
兵士達がエリックとエナに襲い掛かってくる。
「ヒーラーだからと小馬鹿にするな!
 仮にも勇者軍メインメンバーだ!」
ぶぁさっ!
エリックの背中から翼が飛び出る。
「うひゃっ、何ッスか!?」
「出たな、おっさんの翼、似合ってないぜ!」
「やかましい!」
ロバートの野次に怒鳴り返すエリック。
確かに筋肉ムキムキで似合っていないが、
仮にも家宝の二ノンの翼、天使から譲り受けたと言われる
伝説の秘宝は、実用性が生半可ではなかった。
翼をはばたかせ、そのまま走り回るエリック。
機動性は数倍とも呼ぶべきものになった。
「は、速い!?」
驚く敵兵を尻目に、杖で殴り倒しまくるエリック。

一方のエナはというと、ソーサーを展開して、
防壁代わりに使用し、敵をほぼ寄せ付けない。
「この小娘めが!」
それでも必死に食らいつく敵兵にいくらか防御を抜かれそうになり、
あわや剣や槍がエナに届くか、という状況が続くにつれ、
弱気なエナが徐々に怯み始めてしまう。
「あぅぅ……」
精神集中が乱れるにつれ、ソーサーの動きも鈍る。
それが敵の狙い目であると言ってよかった。
だが、それは長くは続かない。
「させるかよ!」
ローザがそこに割り込み、ハンマーで敵を殴り倒す。
敵兵もそのパワーに怯み、大きく後退する。
その隙にエナは体勢を立て直すことが出来た。
「あ、ありがとうございます!」
「新兵に無茶はさせらんねぇからな! 下がんな!」
「は、はい!」

一方で、ウォルフ王子とレオナは戦線維持に努めていた。
後方に出来るだけ敵を送らないように奮闘する。
「えーと、出力は半分ぐらいッスね! ナノ・マシン!」
ナノ・マシンを展開するレオナ。
視覚と聴覚を撹乱され、勝手に自滅する多数の敵兵。
討ち漏らしはウォルフ王子がちまちまと叩いていく。
マリーとロバートは最前線で大暴れしていた。
「うおおおッ! 燃えてきたぜ!」
ロバートの反逆スイッチが入り、マントを展開する。
周囲一帯が布で包まれ、敵も味方も著しく動きを制限された。
迂闊に歩けばすっ転ぶからである。
「こら、ロブ! それは迷惑だからやめろ!」
「うるせぇ! お前もメインメンバーなら自力で何とかしろ!」
マリーに怒鳴り返してから、ロバートは突撃する。
「悪の烙印この身に纏い、己が誇りを貫き通す!
 それを無様と笑わば笑え、俺等の知った事じゃねぇ!
 徹底反逆ストレンジャー、甘く見ると怪我するぜ!?」
例の如く見栄を切ってからまた暴れる。

クロカゲはというと、アンリエッタ王女の護衛に徹していた。
消えては現れ、現れてはまた消え、彼が動くたびに
数名が倒れていく。その様はまさに異様であった。
鬼瓦のような仮面も相まって、まず彼に敵は怯えていた。
「この先……罷りならぬ……!」
「クロカゲ殿! ありがとうなのじゃ!」
数百名はいたであろう敵兵だったが、ことごとく駆逐され、
後にはただリタイアした敵兵が残るのみとなった。

「ふう……久しぶりに随分暴れたぜ」
「まったくな。好き放題し過ぎだぜ?」
ロバートのマントに巻き込まれて転んだローザがぼやく。
「ともあれ、これで進軍再開出来そうですね。
 更なる増援が来ないうちにこの場を離れましょう。
 体力も魔力も、相応に消耗していますし」
「ッスね」
ウォルフ王子にレオナが同意する。
とりあえず回復魔法で体力を回復してから、
進軍を再開するために、一同は準備をするのだった。



<第六章-第二幕-へ続く>
最終更新:2011年12月10日 21:09