喘ぎ - 崩壊学園wiki

姫子先生……姫子先生……。
姫子、起きてっ！
うぅ……ん？

キアナ
まったく姫子ったら、午後は訓練だって言ったでしょ！？……あっ、でもこのまま寝ててくれてたら、私も正々堂々と授業をサボれたのか！失敗したぁ～！

芽衣
姫子先生、具合でも悪いのですか？今日は休みます？

キアナ、芽衣……。
いえ、大丈夫よ。少しボーッとしてただけ。

キアナ
きっと昨日の夜、飲みすぎたんでしょ？それか、またフラれたとか～？

うるさいわよ……あなたたちは先にトレーニングルームに行きなさい。私はあとから行くから。

芽衣
はい、姫子先生。

……。
こんなに経ってるっていうのに、まだあの光景を夢に見るなんてね。
私も、歳を取っちゃったわね……。

ガラン！ガラン！

イザーリン
ダメね……動力装置が完全に壊れてるわ。応急処置で間に合うレベルじゃない。

イザーリン
ME社に戻ったとしても、新しい動力炉を作るなんて不可能だし、何もかもここで終わりなのかな……。
ブローニャ、ゼーレ、それに姫子……戦える人ももうほとんど残っていない……これじゃあ、いつまで持ちこたえられるか……。

イザーリン
こうなったら賭けてみるしかないわね……あの艦を見つけられれば、もしかしたらまだ……！

「全乗員に告ぐ、全乗員に告ぐ、ただちに艦橋に集合せよ。」

イザーリン
どうやら、姫子の目が覚めたようね。本当に気の休まらない女なんだから。でも……これでもう少し時間が稼げるかしら。

エミザ
おいっ！姫子！まだ寝てなきゃダメだ！

姫子
ベッドでのんびり休んでる暇なんてないのよ！私にはね！

エミザ
あんたの身体はかなり衰弱してる！これ以上無理したら、気絶だけじゃ済まないぞ！

姫子
うるさいっ！言われなくとも、自分の身体は自分が一番よく分かってるわよ！

エミザ
くそっ、そんなに早く死にたいのかよ！？

イザーリン
呼び出されたのは、あなたたちの喧嘩を見るためなの……？私、忙しいんだけど、もう行ってもいいかな？

エミザ
うっさい！！

イザーリン
うぐっ！

姫子
いいわ、本題に入りましょう……。まず、私のせいで心配をかけさせたことを謝るわ、ごめんなさい。集まってもらったのは、これからの対策を皆と話し合いたいからよ。皆、とても不安でしょ？
私たちは、確かにME社から戻ることに成功した。けれど、危機的状況から脱したわけじゃない。現在、律者は幾度となく私たちに攻撃を仕掛けてきているわ。十中八九、向こうの目的は生き残った人間の抹消でしょうね。
だから、私たちはどこに行こうと無駄なのよ。今の私たちに選択の余地はないわ。律者に対し、決死の戦いを挑むしかないの。

隊員
あ、あんな怪物にどうやって勝つの……。

灰蛾隊員
私たちの今の力では、どう足掻いたって……。

姫子
皆が戸惑うのは分かるわ。そうよ、律者相手に私たちの勝算は皆無に等しい……でも、これ以上恐怖に身を震わせ希望を失ったとしても、私たちは最後まで戦うしかないのよ！

隊員
それって、私たち全員に死ねってことですか！？

灰蛾隊員
姫子隊長ですら勝てないと思うのに、私たちなんかじゃ到底……。

姫子
……。
ごめんなさい。焦りすぎたわね。もう少し考えるわ……ひとまず解散。

エミザ
姫子……。

姫子
今の状態じゃ、これ以上何を言っても無駄よ。戦意を失った人間が戦場に立っても、むざむざ死にに行くようなもの……今、一番重要なのは——
ゴホッ、ゴホッ……！
クソッ！私の身体がもっと持てば……。

エミザ
もう十分だっ！どうして、いつもそうやって自分を追い込むんだよ！
もうここで休んでいいじゃないか！どうせ何もできやしないんだろ！？残された最後の時ぐらい、静かに過ごそう！死ぬにしても、それなら皆一緒だ！

姫子
あなたの言う通りね……諦めることができれば、どれだけ幸せなことか……。
こんなことなら、最初から火を追う蛾なんて存在すべきじゃなかったのよ。全員が、ただ静かに滅びゆく運命を受け入れればよかったの。そうすれば、こんなに苦しんで、もがきながら生に執着することもなかった。
でもね、エミザ……私たちがこれまで戦ってきたのは、本来なら存在しえなかった希望を勝ち取るためなの。勝てない戦いだと分かっていても飽きらめちゃダメ。そしたら、何もかもが終わる。本当の破滅よ……。
だから、私はこのまま何もせず死を待つなんてこと、絶対に受け入れられないわ！もし死ぬとしても、戦場で死ぬ！
たとえ、それが私1人だけだったとしても構わない……。

灰蛾隊員
報告します、ME社周辺の見回りが完了しました。

姫子
ご苦労様。
あなたたちは先に戻っていいわ。あとは私がやるから。

灰蛾隊員
しかし、姫子隊長のお身体は……。

姫子
問題ないわ。命令よ、帰りなさい。

灰蛾隊員
はい……。

姫子
……。
最後の時くらい静かに過ごすか……こればかりはエミザの言う通りかもね。
あとは私1人で片付ける……皆、さようなら。

エミザ
どこに行く気だ？

姫子
——っ！？
あなたたち、どうして……。

エミザ
はぁ、あんたの頭の中はどうなってんだ？いつもこうやって独断専行して……ブローニャみたいに、全員見捨てる気か？

姫子
これは私自身の意志よ……律者の言っていた「全てが始まった場所」へ私は行くわ。そこが私にとって最高の終着点なのよ。

イザーリン
科学者にとって最も忌むべきことは、衝動と感情で物事を進めることよ。だから、私はあなたのやり方に賛成できないわ。

姫子
あなたたち、私を説得しに来たの？言ったでしょう、これは私の……。

エミザ
いや、そうじゃない。一緒に行くって言ってんだ。

姫子
何ですって？

▼選択肢分岐

① あなたと一緒に戦うことは自分の意志でもある。
姫子
……。
ねぇ、何を言ってるのか理解してる？この先には死しか待っていないのよ？その覚悟はあるの？

エミザ
そんな覚悟、とっくの昔にできてる。
何度も死線をくぐり抜けて守ってきた命だ、ただこのまま呆然と待つだけで終わらせたくないんだよ。自分の存在理由が有耶無耶にならないよう、望みがなくとも挑みたい。そう思えたんだ。

② 私にも戦う理由がある。
姫子
自分の記憶を取り戻したいの？

エミザ
九霄の記憶だけじゃない……何度も死線をくぐり抜けて守ってきた命だ、このまま呆然と待つだけで終わらせたくないんだよ。自分の存在理由が有耶無耶にならないよう、望みがなくとも戦い続けたい。そう思えたんだ。

▲分岐終わり

イザーリン
要するに、徹底的に敗北するまで諦めないってことね……。

エミザ
おい、もう少し縁起の良い言い方できないのかよ！？

イザーリン
イタタ……やめて、謝るから！

姫子
フンッ……勝手になさい。
本当にバカばっかりなんだから。足手まといだと判断したら、あなたたちのことは捨てていくわよ。死ぬ気で付いてきなさい。

エミザ
まったく口の悪いヤツだな……安心しろ、学園都市に行くんだろ？それなら私も役に立てる。何たって、あそこで私も学んでたからな。今生きてる人間の中で、私以上にあそこに詳しいヤツなんていないはずだ。

イザーリン
初めて聞いた……。

エミザ
聞かれなかったからな。
ほら！イザーリン！何をボサッとしてんだ！行くぞ！

イザーリン
私はあなたたちと一緒に行くなんて言ってないわよ……あなたたちには理想があるみたいだけど、私はここで平和に腐っていくのが理想なの。

エミザ
何、寝ぼけたこと言ってんだッ！

イザーリン
じょ、冗談よ。もし、私たちが行ってしまったら、残された人たちが混乱するでしょ？私は戦闘じゃ一番役に立たないから、残って皆の気持ちを落ち着かせる役に徹するわ。あなたたちが帰ってくる理由にもなるでしょ。

姫子
イザーリンの言う通りね。彼女にはME社に残ってもらいましょう。

イザーリン
それに私には私なりの戦い方があるのよ。何とかしてハイペリオン号を修理できれば、皆に希望を与えられるでしょ？

エミザ
うわぁ……お前がそんな骨のあることを言うなんて、逆に気持ち悪い。

イザーリン
分かったから……行くなら早く出発してちょうだい。以前の計算だと、ME社周囲の真空エリアは2日間しか持続しないわ。もし2日以内に戻れなかったら、私がゾンビになってあなたたちを迎えることになるわよ。
あぁ……そんなことになったら、本当に終わりね……。

姫子
それじゃあ、皆を頼んだわよ。イザーリン。

…………。

イザーリン
っていうことで、姫子たちは出て行ったわ。彼女たちが留守の間は私たち自身でここを守りましょう。

隊員
そんな……それじゃブローニャと同じように私たちを見捨てたの！？

灰蛾隊員
姫子隊長まで私たちを信じられなくなったってこと……？

イザーリン
皆、そんなに考えすぎないで。彼女たちは崩壊エネルギーの真空エリアへ律者の動きを探りに行っただけよ。そんな慌てなくても大丈夫。

隊員
そ、そうなの？

イザーリン
ええ。そんなに悪いように考えないで。もし彼女たちが本当に私たちを見捨てたのなら、最初に大慌てするのは私のはずでしょ？

灰蛾隊員
え、ええ……それもそうね。イザーリンですら怖がっていないんだから、きっと大丈夫よ。

イザーリン
ぐっ……ほ、ほらほら、皆、自分の持ち場に戻って。この真空エリアが続いている間、崩壊生物に襲われる心配はないけど警戒は続けておかなくちゃ。

隊員
そうね、分かったわ。

イザーリン
ふぅ……これでしばらくは大丈夫そうね。