40 : 女性音楽教諭(埼玉県) :2007/04/06(金) 22:26:54.08 ID:IDuS+SBe0
「なあ、姉貴……」
無駄だと判りつつ、俺は万に一つを信じて口を開いた。
「駄目」
即答された。駄目か……。……いやまだだ。ここで諦めるな俺!
「…………そう言わずにさあ。俺の気持ちにもなってくれよぉ」
「なんか裕也女の子になってからずいぶんと弱弱しくなったよね~。う~ん、正直今の声と上目遣いにはグッときたかも」
「うげ、ソレは嫌だな……って、ええいやめぃ! こんな往来で抱きつくなあ!!」
可愛いな~ホント可愛いな~~とか言いつつ俺を抱きしめてくる姉貴から何とか逃れようとするが、この体の華奢な腕力では力ずくでは決して姉貴にはかなわない。
その上俺はつい先日まで男だったのだ。
本当に小さい頃を除いて姉貴からこんな過激なスキンシップを受けたことも無かったし、押しのけようとして手に感じる柔らかい感触にたじたじになってる俺では、どの道抜け出すこと何か出来ない。
無駄だと判りつつ、俺は万に一つを信じて口を開いた。
「駄目」
即答された。駄目か……。……いやまだだ。ここで諦めるな俺!
「…………そう言わずにさあ。俺の気持ちにもなってくれよぉ」
「なんか裕也女の子になってからずいぶんと弱弱しくなったよね~。う~ん、正直今の声と上目遣いにはグッときたかも」
「うげ、ソレは嫌だな……って、ええいやめぃ! こんな往来で抱きつくなあ!!」
可愛いな~ホント可愛いな~~とか言いつつ俺を抱きしめてくる姉貴から何とか逃れようとするが、この体の華奢な腕力では力ずくでは決して姉貴にはかなわない。
その上俺はつい先日まで男だったのだ。
本当に小さい頃を除いて姉貴からこんな過激なスキンシップを受けたことも無かったし、押しのけようとして手に感じる柔らかい感触にたじたじになってる俺では、どの道抜け出すこと何か出来ない。
41 : 女性音楽教諭(埼玉県) :2007/04/06(金) 22:27:59.58 ID:IDuS+SBe0
周りの通行人たちの、微笑ましいものを見る視線がとてもイタイ。
「…………ひゃあぁあ!! ちょ! 姉貴ドサクサにまぎれて何を!?」
胸! 今姉貴俺の胸触ってる掴んでるぐにぃって!!
姉貴の手にもまれて面白いように歪む己の乳が眼に入った。
「う~んでっかいな~いいないいな~。すっごい柔らかいよね~これ」
通行人の、ざわめくような声が羞恥を感じさせる。
というか何人か足を止めてこっち見てないか。ええい見るな!! 見世モンじゃねえんだよ!!
「……って姉貴はいつまでもんでやがるんだっ!!」
繰り出した裏拳は見事に姉貴の鼻っ面に決まり、ひるんだその隙に俺は何とか脱出することに成功した。
「いったたあ。何するのよ~」
「ソレはこっちのセ・リ・フ・だ!!」
「あ、あはは~。ごめんごめん。ちょっと調子に乗りすぎたかな」
俺はそのままギロリとこちらを見てた通行人たちにガンを飛ばした。
慌てた様に、往来に流れが戻っていく。
ったく恥ずかしいったらない。頬が熱かった。絶対いま俺の顔は真っ赤になってる。
「それにしても口調以外はどう見ても女の子みたいね~。その仕草とか」
「へ?」
指摘されて、俺は正面のショーウインドが反射する自分の姿を眺めた。
顔を赤らめた少女が、前かがみに胸を庇うように抱いて上目遣いにこちらを見ている。
結構ショックを受けた。
「何というか、そそるよね~」
「……おっさんかよ……」
とりあえず、背筋を伸ばしてから突っ込んだ。
胸が強調されてしまい、欝になった。……いや、どないせーちゅうねん。
「…………ひゃあぁあ!! ちょ! 姉貴ドサクサにまぎれて何を!?」
胸! 今姉貴俺の胸触ってる掴んでるぐにぃって!!
姉貴の手にもまれて面白いように歪む己の乳が眼に入った。
「う~んでっかいな~いいないいな~。すっごい柔らかいよね~これ」
通行人の、ざわめくような声が羞恥を感じさせる。
というか何人か足を止めてこっち見てないか。ええい見るな!! 見世モンじゃねえんだよ!!
「……って姉貴はいつまでもんでやがるんだっ!!」
繰り出した裏拳は見事に姉貴の鼻っ面に決まり、ひるんだその隙に俺は何とか脱出することに成功した。
「いったたあ。何するのよ~」
「ソレはこっちのセ・リ・フ・だ!!」
「あ、あはは~。ごめんごめん。ちょっと調子に乗りすぎたかな」
俺はそのままギロリとこちらを見てた通行人たちにガンを飛ばした。
慌てた様に、往来に流れが戻っていく。
ったく恥ずかしいったらない。頬が熱かった。絶対いま俺の顔は真っ赤になってる。
「それにしても口調以外はどう見ても女の子みたいね~。その仕草とか」
「へ?」
指摘されて、俺は正面のショーウインドが反射する自分の姿を眺めた。
顔を赤らめた少女が、前かがみに胸を庇うように抱いて上目遣いにこちらを見ている。
結構ショックを受けた。
「何というか、そそるよね~」
「……おっさんかよ……」
とりあえず、背筋を伸ばしてから突っ込んだ。
胸が強調されてしまい、欝になった。……いや、どないせーちゅうねん。
42 : 女性音楽教諭(埼玉県) :2007/04/06(金) 22:29:06.52 ID:IDuS+SBe0
逆効果というかなんと言うか……、無駄になった姉貴への説得を続けることは諦め、俺は意を決して店内に入った。
「なによ~裕也のためなんだよ? 私だってホントは気が進まないってのに~」
じとっとした俺の視線に気付いたのか、姉貴も負けじとやる気ない目つきを返してくる。
その言葉には嘘はないだろう。実際、瑞穂先生(そう呼ぶように本人に言われた)の説得にも、かなり腰が重たげだった。
……しかしなあ。
「何で元弟の胸のでっかさを再確認させられなきゃいけないのよ~」
「さっき人の胸散々もんだ奴の言葉じゃねえぞそれ」
呆れたように突っ込みつつ、俺は正面に広がる光景を目に入れまいと虚空へ視線を泳がせる。
「あれ、やっぱり恥ずかしい?」
「……当たり前だろ」
察しの良い諸兄ならばすでに気付いているだろうか。
俺は今日、瑞穂先生に言われてこうして姉貴とともに自分用の女物の服を買いに来ていた。
そして、最後の締めくくりに訪れたここ。
そう、俺と姉貴は今、下着ショップに来ていたのだ。
「なによ~裕也のためなんだよ? 私だってホントは気が進まないってのに~」
じとっとした俺の視線に気付いたのか、姉貴も負けじとやる気ない目つきを返してくる。
その言葉には嘘はないだろう。実際、瑞穂先生(そう呼ぶように本人に言われた)の説得にも、かなり腰が重たげだった。
……しかしなあ。
「何で元弟の胸のでっかさを再確認させられなきゃいけないのよ~」
「さっき人の胸散々もんだ奴の言葉じゃねえぞそれ」
呆れたように突っ込みつつ、俺は正面に広がる光景を目に入れまいと虚空へ視線を泳がせる。
「あれ、やっぱり恥ずかしい?」
「……当たり前だろ」
察しの良い諸兄ならばすでに気付いているだろうか。
俺は今日、瑞穂先生に言われてこうして姉貴とともに自分用の女物の服を買いに来ていた。
そして、最後の締めくくりに訪れたここ。
そう、俺と姉貴は今、下着ショップに来ていたのだ。
43 : 女性音楽教諭(埼玉県) :2007/04/06(金) 22:29:37.17 ID:IDuS+SBe0
「いらっしゃいませ、何をお探しでしょうか?」
店内に入ったはいいが、俺は何かちょっと顔を赤らめつつ上のほうを眺めていて、姉貴もやる気なく俺の横に突っ立ているだけだ。
そんな二人組みの様子を不振に思ったのだろうか、店員が営業スマイルを顔に貼り付けつつ俺に話しかけてきた。
……ってなんで俺なんだ!? どうせなら姉貴に話しかけろよ――!
「え、えっとぉ、その」
ちらりと姉貴に助けを求める視線を送る。
姉貴はめんどくさそうにしつつも口を開き、
「この子の下着を買いに来ました。店員さんの裁量で適当に選んであげてくれません? あ、予算はこのくらいで、ショーツとブラを十着ずつくらいお願いします」
そういってひょい、と俺を店員のほうに差し出した。
「――姉貴!?」
俺を差し出すって、そんなに自分の胸がコンプレックスだったのか!? とはさすがに言わない。
それより、
「っと待て! そんな大金……!」
「あ~いいからいいから。瑞穂先輩のプレゼントだから気にしない」
そんなこと言われても、これまで買った服代も瑞穂先生のお金だ。
いくらTS症の患者として研究材料となることへの報酬だとしても、貰いすぎではないだろうか?
研究材料とはモルモットみたいでいやな言い方だが、実際には週に一度の検査と普段の生活を報告するだけなのだし。
「――ではご案内しますね!」
だが、大口の客を逃すまいとしたのか、店員に引きずられていった俺はそれ以上の追求が出来なかった。
当たり前だけど、瑞穂先生には今日帰ったら絶対にお礼を言わなきゃな。
……お金を出して買ってもらったものが、女性用の服下着という俺にとって嬉しくないものだとしても。
店内に入ったはいいが、俺は何かちょっと顔を赤らめつつ上のほうを眺めていて、姉貴もやる気なく俺の横に突っ立ているだけだ。
そんな二人組みの様子を不振に思ったのだろうか、店員が営業スマイルを顔に貼り付けつつ俺に話しかけてきた。
……ってなんで俺なんだ!? どうせなら姉貴に話しかけろよ――!
「え、えっとぉ、その」
ちらりと姉貴に助けを求める視線を送る。
姉貴はめんどくさそうにしつつも口を開き、
「この子の下着を買いに来ました。店員さんの裁量で適当に選んであげてくれません? あ、予算はこのくらいで、ショーツとブラを十着ずつくらいお願いします」
そういってひょい、と俺を店員のほうに差し出した。
「――姉貴!?」
俺を差し出すって、そんなに自分の胸がコンプレックスだったのか!? とはさすがに言わない。
それより、
「っと待て! そんな大金……!」
「あ~いいからいいから。瑞穂先輩のプレゼントだから気にしない」
そんなこと言われても、これまで買った服代も瑞穂先生のお金だ。
いくらTS症の患者として研究材料となることへの報酬だとしても、貰いすぎではないだろうか?
研究材料とはモルモットみたいでいやな言い方だが、実際には週に一度の検査と普段の生活を報告するだけなのだし。
「――ではご案内しますね!」
だが、大口の客を逃すまいとしたのか、店員に引きずられていった俺はそれ以上の追求が出来なかった。
当たり前だけど、瑞穂先生には今日帰ったら絶対にお礼を言わなきゃな。
……お金を出して買ってもらったものが、女性用の服下着という俺にとって嬉しくないものだとしても。
44 : 女性音楽教諭(埼玉県) :2007/04/06(金) 22:30:16.34 ID:IDuS+SBe0
「お疲れ~、てか本気で疲れてるねそんなに大変だった?」
「……ああ、男には結構な地獄だったよ……」
ぐったりとしつつ、紙袋を姉貴に渡す。それを姉貴は車のトランクに放り込み、バタンと閉めた。
「いつかは一人で買いに行かなきゃならなくなるのに、そんなんで大丈夫かな~?」
「いきなり最初から順応できるわけないだろ」
いや、正直いつまで経ったって慣れたくもないが。
もしいつか平然と一人で下着を帰るようになるのなら、その俺はきっと、何か大切なものを失ってしまったのだろう。
「馬鹿なこと考えてないで戻ろ? ほら乗った乗った」
姉貴が今日の買出しのために、瑞穂先生から借りた車に乗り込む。
俺も助手席に乗り込み、シートベルトを締めた。
「胸強調されてるね~」
「姉貴今日ソレばっかりだな」
この話題に触れたいのか、触れたくないのか、一体どっちなんだか。
「……ああ、男には結構な地獄だったよ……」
ぐったりとしつつ、紙袋を姉貴に渡す。それを姉貴は車のトランクに放り込み、バタンと閉めた。
「いつかは一人で買いに行かなきゃならなくなるのに、そんなんで大丈夫かな~?」
「いきなり最初から順応できるわけないだろ」
いや、正直いつまで経ったって慣れたくもないが。
もしいつか平然と一人で下着を帰るようになるのなら、その俺はきっと、何か大切なものを失ってしまったのだろう。
「馬鹿なこと考えてないで戻ろ? ほら乗った乗った」
姉貴が今日の買出しのために、瑞穂先生から借りた車に乗り込む。
俺も助手席に乗り込み、シートベルトを締めた。
「胸強調されてるね~」
「姉貴今日ソレばっかりだな」
この話題に触れたいのか、触れたくないのか、一体どっちなんだか。
45 : 女性音楽教諭(埼玉県) :2007/04/06(金) 22:30:59.07 ID:IDuS+SBe0
姉貴がさっき、帰ろ、ではなく戻ろ、といったのは、俺が今病院に入院しているためだ。
いつか男に戻るための細い希望と、あと色々な実務的な理由から、俺は瑞穂先生の研究に協力することに決めた。
そして、現在は女性化に伴う体への影響などを、入院期間中の変化ふくめ、かなり詳しく調べてもらっているのだ。
実務的な意味とは、俺のこれからの生活についてだ。
戸籍は俺の戸籍の性別だけを変更するらしい。つまり俺は、伊達裕也(女)になるわけだ。
名前の変更も提案されていて、恐らく、優宇、になると思う。結構迷ったが、俺の名前と音が似ていて、別に男の名前としても違和感のない中性的な響きに妥協した。
まさかいつまでも裕也を名乗り続けるわけにも行かないのだし。
更に、学校のこともある。が、これは意外にすんなりと決まった。
姉貴の学校への結構な影響力も関係しているのだろうけど。いや、影響力ったって棚簿たで手に入れたものだけど。
閑話休題。
俺は、伊達優宇という伊達裕也とは別の人間として編入することになるらしい。
いつか男に戻るための細い希望と、あと色々な実務的な理由から、俺は瑞穂先生の研究に協力することに決めた。
そして、現在は女性化に伴う体への影響などを、入院期間中の変化ふくめ、かなり詳しく調べてもらっているのだ。
実務的な意味とは、俺のこれからの生活についてだ。
戸籍は俺の戸籍の性別だけを変更するらしい。つまり俺は、伊達裕也(女)になるわけだ。
名前の変更も提案されていて、恐らく、優宇、になると思う。結構迷ったが、俺の名前と音が似ていて、別に男の名前としても違和感のない中性的な響きに妥協した。
まさかいつまでも裕也を名乗り続けるわけにも行かないのだし。
更に、学校のこともある。が、これは意外にすんなりと決まった。
姉貴の学校への結構な影響力も関係しているのだろうけど。いや、影響力ったって棚簿たで手に入れたものだけど。
閑話休題。
俺は、伊達優宇という伊達裕也とは別の人間として編入することになるらしい。
46 : 女性音楽教諭(埼玉県) :2007/04/06(金) 22:31:34.14 ID:IDuS+SBe0
「裕也、寝ちゃった?」
「まさか」
思考を止め、返事を返す。そうしてから、自分が寝かけていたことに気付いた。
こう、色々と考え事をしていていつの間にか寝ちゃう寸前みたいな。
思ったより、疲れているらしい。この体になって、予想以上に体力が落ちていることが影響しているのだろう。
いつもどおりに動いていると、直ぐに息が切れるし翌日筋肉痛に苦しむ体なのだこいつは。
「なんか用か?」
外はとっくに日が沈んで、車のライトがこの時間それほど交通量の多くない県道に立ち込める闇を切り裂いていく。
「うん。明日ね、美弥呼ちゃんに電話するから」
「……そうか」
俺が編入する予定のクラスは、もともと俺が所属していたクラスではない。
因みに俺、つまり伊達裕也は既に高校を転校したことになっている。
そこに同じ苗字で名前も似ている女の子が編入してはいくらなんでも不自然だろう。
まさか同一人物とは思われなくても、痛くない腹を探られるのも面白くない。
だが、全く知らぬクラスにいきなり放り込まれるというのもかなり不安だ。
当たり前だが俺は元男。女子高生の生態なんざまるで知らないし、女としても右も左もわからぬ新参だ。
浮くことはほぼ間違いないだろうし、下手したらオカマに思われるかもしれない。
そこで、俺の幼馴染である椿木美弥呼に俺のことを打ち明け、頼ることにしたのだ。
いや、俺は例え幼馴染だろうがこんなザマ見せるのには抵抗があったのだが、やはりクラスメイトに協力者が一人でもいないと辛いと二人に説得された。
「まさか」
思考を止め、返事を返す。そうしてから、自分が寝かけていたことに気付いた。
こう、色々と考え事をしていていつの間にか寝ちゃう寸前みたいな。
思ったより、疲れているらしい。この体になって、予想以上に体力が落ちていることが影響しているのだろう。
いつもどおりに動いていると、直ぐに息が切れるし翌日筋肉痛に苦しむ体なのだこいつは。
「なんか用か?」
外はとっくに日が沈んで、車のライトがこの時間それほど交通量の多くない県道に立ち込める闇を切り裂いていく。
「うん。明日ね、美弥呼ちゃんに電話するから」
「……そうか」
俺が編入する予定のクラスは、もともと俺が所属していたクラスではない。
因みに俺、つまり伊達裕也は既に高校を転校したことになっている。
そこに同じ苗字で名前も似ている女の子が編入してはいくらなんでも不自然だろう。
まさか同一人物とは思われなくても、痛くない腹を探られるのも面白くない。
だが、全く知らぬクラスにいきなり放り込まれるというのもかなり不安だ。
当たり前だが俺は元男。女子高生の生態なんざまるで知らないし、女としても右も左もわからぬ新参だ。
浮くことはほぼ間違いないだろうし、下手したらオカマに思われるかもしれない。
そこで、俺の幼馴染である椿木美弥呼に俺のことを打ち明け、頼ることにしたのだ。
いや、俺は例え幼馴染だろうがこんなザマ見せるのには抵抗があったのだが、やはりクラスメイトに協力者が一人でもいないと辛いと二人に説得された。
47 : 女性音楽教諭(埼玉県) :2007/04/06(金) 22:32:12.74 ID:IDuS+SBe0
そして、それを、いよいよ明日打ち明けるということなのか。
「放課後に病院に呼ぶからね。基本的に説明するのは私と瑞穂先輩だけど、裕也にも立ち会ってもらうつもり」
「……ん」
俺が気のない返事をしたのが気になったのか、姉貴はわざとらしく快活な声を上げる。
「なになに~!? やっぱりその姿見られるの恥ずかしい? 今の裕也って美弥呼ちゃんより背低いもんね。あの子格好いいし並んだらカップルに見えちゃうかもね~。もちろん裕也が女の子のほうでさ!」
「あいつが男っぽいだけだろ。別に俺は必要以上には女の子っぽくない……と思う」
「胸以外わね~」
「――もうそれいい加減にしろ。飽きた」
等間隔に並んだ街灯が、チラチラと暗闇の車内を照らしては後ろに飛んでいく。
「……やっぱり怖い? 美弥呼ちゃんに会うの」
当たり前のように見抜かれていた不安を、俺は隠すのを諦めて本心を吐露した。
「信じてるよ。姉貴と、親父と、瑞穂先生と、美弥呼を」
震えた声に、姉貴は笑って、任せときなさいと胸を叩いた。
「放課後に病院に呼ぶからね。基本的に説明するのは私と瑞穂先輩だけど、裕也にも立ち会ってもらうつもり」
「……ん」
俺が気のない返事をしたのが気になったのか、姉貴はわざとらしく快活な声を上げる。
「なになに~!? やっぱりその姿見られるの恥ずかしい? 今の裕也って美弥呼ちゃんより背低いもんね。あの子格好いいし並んだらカップルに見えちゃうかもね~。もちろん裕也が女の子のほうでさ!」
「あいつが男っぽいだけだろ。別に俺は必要以上には女の子っぽくない……と思う」
「胸以外わね~」
「――もうそれいい加減にしろ。飽きた」
等間隔に並んだ街灯が、チラチラと暗闇の車内を照らしては後ろに飛んでいく。
「……やっぱり怖い? 美弥呼ちゃんに会うの」
当たり前のように見抜かれていた不安を、俺は隠すのを諦めて本心を吐露した。
「信じてるよ。姉貴と、親父と、瑞穂先生と、美弥呼を」
震えた声に、姉貴は笑って、任せときなさいと胸を叩いた。