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  • ひょんなことから女の子
  • ID:IDuS+SBe0 1-2

ひょんなことから女の子

ID:IDuS+SBe0 1-2

最終更新:2008年05月26日 19:12

hyon

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だれでも歓迎! 編集
142 : ゴーストライター(埼玉県) :2007/04/08(日) 12:13:21.23 ID:6r+BYT2F0
 本日、帝江州高校1年B組のクラス委員である椿木美弥呼の突き抜けた上機嫌っぷりに、学校中が注目していた。
 実際おかしいのだ。少々頑固で融通の利かぬきらいのある少女だが、クラス委員を務めていることからも判るとおり真面目で成績も優秀なため教師の受けは悪くない。
 生徒会では一年生ながら副会長を務めているところからもそれは伺えるだろう。
 容姿も女の子にしては170cmとかなりの長身であり、中世的なその面立ちとあいまって同級生の女の子からは憧れられ、上級生のお姉さま方からは可愛がられている。
 さらに中学生時代の伝説というか武勇伝というか、まあその影響で学園の不良たちからかなり恐れられている伊達裕也と幼馴染みの関係でもあり、彼の姉で学園の影の支配者と噂される伊達志津香保険教諭との親交も深い。
 まさに、この学園の有名人の一人である。
 彼女は知らないがファンクラブがある程なのだ。
 因みにその内訳は男女比1:1と、なんというか独特なものがある。
 そんな彼女が今朝登校してくるときに上機嫌そうに鼻歌を歌っていれば、それは噂にもなる。
 一瞬で学校中を駆け巡るというものだ。
 彼女の周りの人間から見て、いや、誰から見てもここ一週間の彼女の様子が相当に不機嫌だったことも噂の伝達速度に拍車をかけていた。
 誰もが彼女の上機嫌の理由を知りたいと思っていたのである。

143 : ゴーストライター(埼玉県) :2007/04/08(日) 12:13:48.64 ID:6r+BYT2F0
「…………で? みやっち今日ずいぶん上機嫌みたいだけど何かあったの?」
 そして今は昼休み。
 机を寄せてお弁当を開きつつ彼女の親友の一人である藤津久未が上げた疑問に、クラスに残っていた約半分の生徒が黙って聞き耳を立てた。すうっと、喧騒が静まる。
「え? えへへ。そうか? そう見えるか?」
 なんと言うか、本気で言ってるのだろうかと皆は思った。今なお顔がにやけているのだ。
 これが上機嫌に見えずに何に見えるというのか。
「うん、いやホントなんかあったの? そんなにやけちゃって。正直不気味なんだけど」
 机を寄せ、一緒にご飯を食べていた面子の一人。これもまた美弥呼の親友である柳葉夕菜の突っ込みは、割と容赦無かった。
「不気味はひどいな。それにそれが人にモノを聞く態度か?」
 その言いように、美弥呼はむ、として顔を引き締めた。
 不気味といわれたことが結構気になったのだろう。なんと言うか、必死ににやけそうになるのを我慢しているように見える。
 そんな美弥呼の様子に、教室内にいた彼女のFCメンバー数名が男女問わずに悶えた。

144 : ゴーストライター(埼玉県) :2007/04/08(日) 12:14:15.88 ID:6r+BYT2F0
「ま、不気味は言い過ぎだよゆーな。そんで? ぜひ何があったのか聞きたいなー。みやっち昨日まですっごい不機嫌だったじゃん? ぶすっとしちゃってさ」
 こーんな感じに、と久未は自分の両頬を手で押し、顔の中心に寄せた。
 正直かなりの面白顔だ。
 私は昨日までそんな顔をしていたのか……と、美弥呼はかなりショックを受けた。
「そんな……、何で教えてくれなかったんだ!?」
「ああ、もう!! ボケにマジで返さないでよ話がすすまない――!」
 机をがたんといわせ、立ち上がった夕菜の怒鳴り声が教室中に響く。
 この面子のボケと突っ込みの割合は2:1だが、夕菜の忍耐はそう強いものではなく、いまいち突っ込みとしては機能しない。
 それでもボケ二人はしっかりとその任務をこなすため、この1年B組では、日に一度は激発する彼女を見ることができるのだ。
「――それで!? 結局なんで美弥呼は機嫌がいいの!? 教える気があるのならとっとと喋りなさい!!」
「もーなんでゆーなはそうすぐ切れるのかなー。ホラ見てよ。周りのみんな怯えてるよ?」
 怯えていない。さすがにもう6月も後半となればこのクラスが出来てから二ヶ月以上経つ。
 学校がある日は大抵見られる光景に、慣れぬ輩はさすがにいなかった。
「久未は黙ってて!」
 ぎろりと睨み付けられ、久未はしぶしぶ口を噤む。
 そして、教室は一瞬静寂と緊張に包まれ、美弥呼はゆっくりとその口を開き、
「………………教えない」
 その言葉に、だああ、と弛緩した。

145 : ゴーストライター(埼玉県) :2007/04/08(日) 12:14:55.74 ID:6r+BYT2F0
「――まあ、美弥呼が秘密にしたいっていうならいいけどね」
 そう言って座り、卵焼きを口に放り込む夕菜。彼女の性格は判りやすく、非常に熱しやすく冷めやすい。
 そのため、彼女が切れても、これまで特にクラス内の雰囲気が悪くなるということはなかった。
「私は気になるなー」
 未練がましく言いつつも、ま、教えてくれないなら諦めるよー、と久未も箸を持って食事を再開し始める。
 美弥呼にずばっと質問できる立場の二人が追求を諦めたのを悟ってか、これまでじいっとして聞き耳を立てていた教室はようやく動き出し、直ぐに昼休みの喧騒が戻った。
「でもこれだけはきかせてほしーなー」
 いや、久未はまだ諦めていないらしい。再び教室の喧騒が止まる。
「なんだ?」
 ま、判りきったことなんだけどさー。久未はそう前置き、
「いい事あったんでしょ?」
「ああ」
「そ」
 嬉しそうに頷いた美弥呼に、久未は今度こそ笑って追求を諦めた。
 夕菜も頬を緩めつつ食事を続けている。

146 : ゴーストライター(埼玉県) :2007/04/08(日) 12:15:31.71 ID:6r+BYT2F0
 なんだかんだで、二人にとって美弥呼は大切な友人だ。
 そして、最近不機嫌というか、元気がなかったのを心配してもいた。
 美弥呼は隠しているようだったが、彼女達はその理由を知っていたのだ。
 彼女の幼馴染みである、伊達裕也の突然の転校。
 一週間前に起きたソレは、他クラスのことながら彼が美弥呼に並ぶほどの有名人(ベクトルは逆だが)だったこともあり、彼女達も当然伝え聞いていた。
 彼女達自身は伊達裕也のことは噂以外には、美弥呼からの又聞きでしか知らない。
 だが、美弥呼が彼と実に仲が良いことは察していた。
 美弥呼は彼のことを親友だと呼んでいたが、二人は正直彼らに男女の仲を疑っていた程である。
 その伊達裕也が、一週間前突然に転校した。美弥呼が、それにショックを受けていることは誰の目にも明らかであった。

 だから、彼女が今上機嫌に笑っていることは、美弥呼を心配していた二人にとっては当然嬉しいことであり、それ以上は無理に望むものでもないのだ。
 そのまま、三人は上機嫌に食事を続け、ソレを見た教室は三度目の喧騒を取り戻した。

147 : ゴーストライター(埼玉県) :2007/04/08(日) 12:16:06.37 ID:6r+BYT2F0

 美弥呼は、にやけそうになる顔を懸命に引き締めつつ歩いていた。
 不気味と呼ばれるのはやはり心外である。
 今は放課後、彼女は生徒会に所属していたが特に今日は仕事は無い。
 いや、例え仕事があったところで今日はお休みを貰うつもりでいたが。
 今朝、保険教諭である伊達志津香からかかってきた電話を美弥呼は頭の中で思い浮かべた。


『もっしも~し。志津香おねえちゃんだよ美弥呼ちゃん一週間ぶりだね元気にしてた?』
「志津香さん!?」
 電話に出た声、そしてその特徴的なマシンガンのような口調を聞いて、美弥呼は本気で驚いた。

 一週間前、突然知らされた幼馴染みの転校に美弥呼は大きなショックを受けた。
 学校ではさすがに顔に出さないようにしていたし、家族にも心配をかけまいといつも通りの彼女を装ってはいた。
 何より、美弥呼の両親は中学生時代のこともあり、裕也のことを快く思っていないのだ。
 市議である自分の父に聞けばもしかすると裕也のことを聞けるかもしれないとも美弥呼は考えたのだが、結局聞けず仕舞いだった。
 何より美弥呼がショックだったのは、裕也が引越しをしたという事実以上に、ソレを自分にも知らせずに消えてしまったということだ。
 彼女は、裕也のことを親友だと思っていたが、彼は違かったのだろうか、と。
 無論それに対しての苛立ちもあった。

148 : ゴーストライター(埼玉県) :2007/04/08(日) 12:17:07.19 ID:6r+BYT2F0
 それでも、美弥呼は出来うる限りの努力をした。
 彼のクラスの友人や、中学生時代から自分裕也さんの舎弟っすからとか言っていつもくっついていた美濃川健太郎に話を聞いたりもした。
 しかし、誰も裕也の行き先どころか、引っ越した事実を聞いたのも自分とほぼ同時期という有様だった。教師連中も同様だ。
 あと事情を知っていると思われるのは、裕也の姉である志津香と、二人の父親である伊達次郎。
 まず考えたのは志津香に事情を聞くことだ。
 美弥呼は彼女と仲がいい。小さい頃は、志津香おねえちゃんといって慕っていたし、その頃の親交は未だに途絶えていない。
 だが、彼女は一週間ほど休暇をとってしまったらしく、保健室にいるのは代理の先生だけ。
 最後の砦と、美弥呼は裕也の家に電話もかけた。
 もし、この電話番号は現在使われておりません、と言われたりでもしたら、彼女は直接家に乗り込む気だった。
 裕也が引っ越してからその日ですでに三日が経っていて、美弥呼はかなり切羽詰った心境だったのだ。
 早く裕也を見つけないと、二度と会えないような気がして。

149 : ゴーストライター(埼玉県) :2007/04/08(日) 12:17:35.71 ID:6r+BYT2F0
 願いが通じたのか、電話は通じていて、その上、裕也の父親が出た。
「もしもし……! あの、椿木美弥呼です。おじさん、お久しぶりです」
『あ、ああ。美弥呼ちゃんか。久しぶり。そうだね、入学式のとき以来かな』
「はい。急に電話してすいません。それで、その、今日電話した理由なんですけど……」
『……判っている。裕也のことだろう?』
「は、はい! 急に転校したって聞いて、その、訳を知りたくて……」
 だが、彼女の願いが通じたのもここまでだった。
『すまないが、裕也のことについては私からは何も喋れない』
「え……?」
『理由も話せない。すまない』
 察してくれと、重々しい口調で言われたら、美弥呼にはもうすいませんでしたといって電話を切る以外に出来ることは無かった。
 受話器を置いて、座り込んだ。嗚咽は、自分の部屋に戻るまでは飲み込んだ。

150 : ゴーストライター(埼玉県) :2007/04/08(日) 12:18:37.12 ID:6r+BYT2F0
 そんなことがあって、悲しいけど、凄く凄く落ち込んでいたけど、それでも裕也の捜索を自粛していた矢先にかかってきた電話である。
 美弥呼が驚くのも、無理もないというか当たり前であろう。
「志津香さん休暇って今までどうしていたんですか!? 裕也の転校と何か関係があるんですか!?」
 落ち着いてと、そういった志津香の声は今さっきの挨拶の能天気さはすっかりなりを潜めて、受話器を通じて伝わる久しぶりの志津香の真面目オーラに美弥呼は息を呑んではい、と頷いた。
『そのこと、というか裕也のことについてちょっと志津香ちゃんに話しておきたいことがあるの。今日の放課後暇かな?』
「は、はい」
 志津香は今裕也のことについて、と言った。
 今日は特に予定は無かったが、例え急な用事が出来ても強引に休む決意を美弥呼は固めた。
『水原総合病院ってわかる? 巳柳町にあるんだけど』
「はい、判ります」
 去年、美弥呼の父親が入院したところだ。簡単な胆石を取る手術で直ぐに退院したが、彼女は二度ほど見舞いのためにそこに行ったことがあった。

184 : 前社長(埼玉県) :2007/04/08(日) 21:56:09.38 ID:8swAXqV+0
『良かった。名目が研修の為の休暇なんでさすがに学校まで迎えにはいけないからさ~』
 はははと笑って言う志津香の言葉は色々と突っ込みどころが満載な気がしたが、美弥呼にはソレより気になっていることがあった。
「裕也、病気で入院してるんですか!?」
 更に疑問がある。何故、学校に引っ越したなどと言ったのか。それに裕也は確か突然引っ越す二日ぐらい前から病気で学校を休んでいた。
 ということは、まさか――。
『美弥呼ちゃんが懸念しているようなことは無いよ? 命にかかわるような病気じゃない。詳しいことは美弥呼ちゃんが来てから説明する。今ここで言っても多分信じてもらえないしね』
「……? どういう意味ですか?」
『だからソレも含めて……ね。あと私から電話があったことは、先生とか友達には内緒にしといて。それじゃあ放課後よろしくね。あ、それとあとひとつ』


185 : 前社長(埼玉県) :2007/04/08(日) 21:56:52.72 ID:8swAXqV+0
「はい?」
『多分さ、これから裕也美弥呼ちゃんにすっごい迷惑かけると思うんだ。でも見捨てないであげてね? 正直今の裕也には美弥呼ちゃんだけが頼りだからさ~』
「え? あ、は、はい! 任せてください!」
『うん、それじゃあ今度こそじゃあね~。放課後また会いましょ~』
 美弥呼は、通話の切れた受話器を、暫く握ったままじっとしていた。
 自然に、笑みがこぼれてくる。
 裕也は、決して自分を軽んじて引っ越したわけではないのだと知った。
 そして、今の彼は美弥呼の助けを必要としているような事態らしい。
 ソレが、嬉しかった。
 正直、美弥呼は裕也に頼られた経験なんてまるでない。逆なら結構よくあるのだけど。
 いつまでも受話器を握ってないで学校に行かねばと、美弥呼は制服に着替えるために自室へと戻った。
 着替えている間、美弥呼は自分では自覚せずにずっと鼻歌を歌っていた。
 その上機嫌そうなメロディーは、彼女が学校に着くまで途絶えることは無かった。

186 : 前社長(埼玉県) :2007/04/08(日) 21:57:24.14 ID:8swAXqV+0

 そしてようやく迎えた放課後である。自然、早歩きになってしまう歩調で、美弥呼は帰りを急いでいた。
 校門は、帝江州高校が原則生徒の部活強制参加を義務付けているためか、放課後が始まったばかりのこの時間はかなり閑散としている。
 その校門を上機嫌にくぐろうとした美弥呼は、ふとあることに気付いて足を止めた。
 そして吐いたため息は、これまでの一週間分にはいたため息の総量に匹敵するほどに、深いものだった。
 そのまま、うんざりと校門に寄りかかっている男を眺める。

187 : 前社長(埼玉県) :2007/04/08(日) 21:58:02.32 ID:8swAXqV+0
 身長は、190cmを超えているだろう。そして、その長身が細く見えないほどがっしりとまるでボディビルダーの如く張り付いた筋肉が、夏服であるYシャツを今にも突き破りそうだ。
 顔は、正直高校生とは思えない。強面の極致というべきか。これで高校生を名乗るのは正直年齢詐称ではないかと常々美弥呼は思っている。
 その、まさに無く子が見たら黙るだろうただし失神してという強面をゆがめさせ、
「よう美弥呼、待ってたぜ」
 そう言った。
 もう一度ため息をつく。どうやら、彼が用のあるのは自分ではないという、淡い期待も破られたらしい。
 そんな美弥呼の内心を無視しているのか本当に気付いていないのか、男は暑苦しい笑みを浮かべている。
「……九郎熊先輩。何か私に用ですか?」
 本当に、似合いの名前だと思う。美弥呼が感じるのは、関心よりも滑稽さだが。

189 : 前社長(埼玉県) :2007/04/08(日) 21:58:40.62 ID:8swAXqV+0
 九郎熊哲也。3年生の男子で、そしてどの高校にも大抵はいるろくでなしの不良の一人であり、そのろくでなしどもの親分みたいなこともやっている。
 これでも3年J組のクラス委員だ。きっと、単純にクラスの親玉という響きに誘われて受けているのだろう。
 その関係で、美弥呼は彼と多少の面識があった。もっとも、クラス委員会や生徒会の仕事は、ほとんど女子の方のクラス委員に任せているようだが。
「おいおい、せっかく待っていてやったのに何か用? はねえだろ?」
 いまだ上機嫌そうな声に、美弥呼は片眉を跳ね上げた。早く病院に行きたいのに、厄介なことになったと。
「待っていてくださいと、頼んだ覚えはないんですが」
 その言葉に、ようやく自分が歓迎されていないことに気付いたのだろうか。九郎熊はじろりと美弥呼をねめつけ、
「んだよ、せっかく今日お前が上機嫌だって聞いたからわざわざ誘いに来たのによ」
「誘い?」
「おう。どうせ今日は生徒会も何もないんだろ? ちいっと俺に付き合わねえか? いろいろと面白いところを案内してやるよ」
 “でえと”のお誘いという奴らしい。美弥呼はうんざりと首を振った。

190 : 前社長(埼玉県) :2007/04/08(日) 21:59:40.08 ID:8swAXqV+0
 実際うんざりしていたのだ。裕也の引越しを聞いたときから今日で一週間。
 美弥呼はかなり落ち込んでいたが、それ以上に不機嫌でもあった。
 その理由が、こういう輩の出現、そして増加だ。
 美弥呼は知らぬことだがファンクラブはあっても、彼女は高校に入ってから誰かに告白されたとか言う経験は皆無だった。
 どういうわけなのかは美弥呼は理解しがたいのだが、なんでも自分が親友の裕也とデキていると思われていたらしい。
 そして、中学時代は近隣に知れ渡るほどの悪名でならした裕也が恐ろしく、美弥呼に告白する勇気のある奴は居なかったのだそうだ。
 それが、裕也の転校で崩れた。
 だが、今日までその手の輩の全てを美弥呼は冷酷にあしらってきていた。
 強引に迫る不届き者には、延髄に蹴りをぶち込んで沈没させた。

「………………」
 だが、これはどうすればいいのだろうか。美弥呼はようやく今の状況が不味いということに気付いた。
 冷酷にあしらって、この男を逆上させるのは良くないだろう。
 普通の有象無象の輩なら美弥呼にとって何するものぞだが、目の前の男は違う。
 美弥呼は、裕也がもし喧嘩になったら面倒くさそうな相手として、彼を上げてるのを聞いたことがあったのだ。

192 : 前社長(埼玉県) :2007/04/08(日) 22:20:49.12 ID:8swAXqV+0
『本気でやれば勝てないとは思わないけどな。
 ただ素人の喧嘩ってのは前提として度胸が決まってる奴同士の場合は、結局体格とパワー勝負なんだ。
 あいつ俺よりでかいしパワーも有りそうだし、馬鹿みたいに正面から挑んだら負けるかも知れん』

 見れば判る。裕也は180cmを超える長身だったがこの男はそれをはるかに超す190cm以上の超巨漢だ。

「どうしたんだ? ああ、俺が怖えのか? 心配すんなよ。俺女の子には優しいぜえ?」
 その顔で猫なで声を出すなと美弥呼は思った。鳥肌が立つ。
「申し訳ないですが、今日は大事な用事があるので失礼してもいいでしょうか」
 一応、最低限の礼儀は通しつつも、美弥呼の答えはぶっちゃけこれまでの輩をあしらう時のとまるで大差なかった。
 早く病院に行きたいという焦りが多少浅慮な行動を招いたのだろう。
 彼女が、この一週間で大分経験値を稼いだが、そもそも告白されるという行為になれてなかったというのも一因だろうが。
 その言葉に、そもそも乗り気な様子を見せなかった美弥呼に苛立っていた哲也は顔色を変えた。
「……っち。いいから来いって。退屈はさせねえからよ……!」

193 : 前社長(埼玉県) :2007/04/08(日) 22:21:22.95 ID:8swAXqV+0
 強引に美弥呼の手を掴む。
「……っな!?」
 とっさに美弥呼は周囲を見渡すが、先ほど説明したとおり今の時間校門周辺の人通りは皆無だ。
「は……なせ!!」
 それでも悲鳴をあげれば衆目は集められるだろう。そうすればこの男も暴力には訴えられまい。
 とはいえ美弥呼にもプライドというものがある。
 悲鳴をあげるべきか、迷いつつ掴まれた腕を振り払おうと美弥呼は暴れ、その手が、偶然哲也の目に当たってしまった。
「てめえ――――!!」
 つかまれた腕が離され、直後、振りかぶった拳が美弥呼を襲う。
「――くっ」
 類稀なる運動神経の賜物か、美弥呼はその一撃を飛び退るようにしてかわす。
 だが、第二撃目では対処できないだろう。
 哲也は、年下の少女に自分の一撃がかわされたのに驚いたのか、一瞬美弥呼を見開いた眼で眺め、
「へえ、面白いじゃねえか」
 にやあ、と笑い更に拳を振りかぶった。

194 : 前社長(埼玉県) :2007/04/08(日) 22:21:57.64 ID:8swAXqV+0
 気に入らなかった。早く裕也に会いたいのに、それを邪魔するこの男が。暴力で、人を従わせられると信じて疑っていないだろうこの男の性根が。
 ぐ、と体に力を込めた。一発、加えないと気がすまない。
 幸い、男ならば誰でも持ってる克服できぬ弱点というものを美弥呼は知っている。
 例え一撃でのされようが、一矢、それも急所に一撃をかましてやろうと美弥呼は足に力を込めた。
 カウンターを“そこ”に食らわせれば、いかにこの男とてただでは済むまい。
 それでも、当てられるか判らないし、失敗した場合を考えれば美弥呼にとっては分の悪い賭けとなるだろう。
 自分の圧倒的優位を判っているのか。哲也はニヤニヤと笑いつつ、虎に反撃を決意したおろかなネズミをあざ笑い、
 そして、
「――なにをしているんですか?」
 第三者の声が、この状況をひっくり返した。


195 : 前社長(埼玉県) :2007/04/08(日) 22:22:44.19 ID:8swAXqV+0

 その声の持ち主は、空手着を来ていた。
 その時点で、おかしいと哲也は思った。
 九郎熊哲也は去年まで空手部に所属していた。そして、空手の試合等の方は反則を多発するため成績はあまり良くなかったが、ルール無用の喧嘩では一年の頃から部内でも一番強かった。
 そのため、去年の冬に校外で大喧嘩をやらかして停学処分を受け空手部を辞めさせられた今でも、部内の現2、3年生に強い影響力を残している。
 当然だ。空手部の連中は皆哲也より弱いのだし、さらに空手部の現部長は中学の頃からの自分の子分、腰巾着であるのだ。
 だから、空手部で、自分の行動を邪魔する奴なんざいないはずだ。
 だがそいつの顔を見て、哲也は成る程、と納得した。
――――厄介な奴が出てきやがったな。

196 : 前社長(埼玉県) :2007/04/08(日) 22:23:28.69 ID:8swAXqV+0
 忌々しげに、その男を睨み付ける。
 早苗浩介。哲也の記憶によれば、確か中学生の空手全国ベスト8にまで進んだ奴である。身長は170台前半と精々標準で高いほうではない。
 その上見た目も細身なのだ。
 しかし、胴着の下には針金を巻きつけたかのような強靭な筋肉を持っている。
 引っ越してしまったらしい伊達裕也と並んで、この高校で自分と喧嘩をして勝負になるだろう男の一人だと哲也は認識していた。
 それでも哲也は、一対一なら浩介にも負ける気はしない。所詮スポーツ空手でならした奴だ。ルール無用の実践ってモノを思い知らせてやればいい。
 だが、彼に続くように十名ほどの一年生が進み出て来たのはさすがの哲也にも頂けなかった。いかに哲也でも、十対一ではリンチにしかならない。
 恐らく、校外を周回するロードワークに行こうとしていたのだろう、他の空手部の連中も遠巻きにこちらを見ている。
 タイミングが悪かったとしか言いようがあるまい。
 空手部の部長に目配せするが、首を振られた。
 一年生を諌めさせることは彼なら出来なくないだろう。
 だがもし失敗して言うことを聞かせられずに、この多人数で乱闘にでもなったら今度こそ空手部は廃部に追い込まれるだろう。
 ソコまで大事にするほどのことではあるまいと哲也も納得した。

197 : 前社長(埼玉県) :2007/04/08(日) 22:24:27.64 ID:8swAXqV+0
「……おいおいおい、何だよ? 空手全国ベスト8の奴が十人がかりで一人をリンチする気かあ!?」
 わざと張り上げた声に、さすがに校門にこれだけ人が集まったら目立つのだろう、態々校庭や体育館から来たと思われる輩まで、多数の衆目を集めることができた。
 これで自分をリンチにすることは出来ないだろう。当然哲也も迂闊なことは出来なくなったわけだが。
 周りの注目を集めていることに気付いたのか、浩介は多少顔を赤らめつつ、だが言葉は冷静につむぐ。
「そんなつもりはありません。ただ、先輩が椿木さんに暴力を振るおうとしているように見えたので、止めに来ただけです」
「そりゅあ見間違いって奴だろぉ? 俺にゃあそんなつもりは全然無かったんだからなあ」
 ふてぶてしく答える哲也に、しかし浩介は特に苛立った様子もなく、
「そうみたいですね。僕の見間違いみたいでした。……それで? ではいったい何をしてたんですか?」
「浩介」
 声を上げたのはこれまで黙っていた美弥呼だった。

198 : 前社長(埼玉県) :2007/04/08(日) 22:25:34.27 ID:8swAXqV+0
「別に何も無い。ちょっとここで会ったんで話してただけだ。そうですよね先輩?」
「お、おう」
「というわけで先ほども言ったとおり私は急いでるんで帰ります。さようなら先輩。……浩介、正直助かった、礼はいつかする」
「いらない、別に礼が欲しくて……」
「フフ、判った判った。じゃあな。また明日」
「ああ、また明日」
 見事な長髪を翻し、哲也と浩介に一度づつ頭を下げて、そのまま振り返らずに美弥呼は早歩きで去っていった。
 それを見送り、自分を睨みつける一年生たちにうんざりとため息を吐くと、
「……ち、萎えたな。俺も帰るわ」
 そう言って哲也も校門の外に歩き出した。
「はい、さようなら先輩」
 慇懃無礼を絵に描いたような態度で挨拶をした浩介に、哲也は振り返って凶悪な一瞥をくれるが、当の浩介は涼しい顔だ。
 未だに己に敵意を向けている身の程知らずな一年坊主どもに舌打ちをしつつ、哲也も家に帰らんと校門をくぐる。
 背後に突き刺さる彼らの視線は、実に不快なものだった。

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