135 名前: 歯科技工士(静岡県) :2007/04/15(日) 20:52:45.20 ID:PAnlj2Y+0
「―――の人は今日いつもと違うことに出会うでしょう」
「―――の人は今日いつもと違うことに出会うでしょう」
いつものようにテレビの音に耳を傾けながら朝食を取る。
サラダを口に含み・・・パンにフォークを刺す。
サラダを口に含み・・・パンにフォークを刺す。
―――パシィン!!
「寝ながらご飯を食べるな!」
そう言いながら俺の顔を左右同時に叩くのは七海――姉だ。
しっかり者で男の俺からしても頼れる存在なのだが・・・。
そう言いながら俺の顔を左右同時に叩くのは七海――姉だ。
しっかり者で男の俺からしても頼れる存在なのだが・・・。
「人前でそんなことして恥ずかしい目に会っても知らないぞ!」
- 見ての通り少々おせっかいである。
そんなことお構いなしに朝食を進めるのが俺、高橋忍だ。
読み方はしのぶ、男でも女でも使えそうというのが親の本音らしい。
読み方はしのぶ、男でも女でも使えそうというのが親の本音らしい。
ふとテレビに目を向ける。画面左上に移る数字は6:50。
時刻を知るなり行動を起こす。学校で寝るために!
そうと決まったらパンなんて目じゃない。牛乳と共に流し込むだけだ。
人が変わったかのように準備を全て済ませ、暴走したかのように家を飛び出す。
「行ってきます」なんて言葉は無用。今するべきことは学校で寝ることだ。
時刻を知るなり行動を起こす。学校で寝るために!
そうと決まったらパンなんて目じゃない。牛乳と共に流し込むだけだ。
人が変わったかのように準備を全て済ませ、暴走したかのように家を飛び出す。
「行ってきます」なんて言葉は無用。今するべきことは学校で寝ることだ。
学校までは約5分、歩いて5分。走れば2分と言ったところだろう。
脳からは睡眠セヨ睡眠セヨと暗示をかける。
そんな俺が自分の机の上で寝るまでの時間は10分にも満たなかった。
脳からは睡眠セヨ睡眠セヨと暗示をかける。
そんな俺が自分の机の上で寝るまでの時間は10分にも満たなかった。
136 名前: 歯科技工士(静岡県) :2007/04/15(日) 20:53:37.17 ID:PAnlj2Y+0
――海が見える場所での昼寝は気持ちがいい。
潮風に煽られ、波の音が心地よい。とても気分がいい。
空には太陽と少々の雲。流れ行く雲というのは見てるだけで時間がたつのを忘れる。
そう、雲が、雲の流れが、・・・あの雲が?
――海が見える場所での昼寝は気持ちがいい。
潮風に煽られ、波の音が心地よい。とても気分がいい。
空には太陽と少々の雲。流れ行く雲というのは見てるだけで時間がたつのを忘れる。
そう、雲が、雲の流れが、・・・あの雲が?
……いてぇ!!
突然激痛に襲われる。
突然激痛に襲われる。
起き上がろうとすると後頭部に痛みが走り、椅子ごと後ろに倒されたことに気づく。
「ほら、こうすればあっという間に起きるわけさ」
「なるほど。これなら間に合うね」
俺への対処法を説明するのが鈴木高次――コウだ。
その隣で相槌を打つのが木下智之、トモだ。
「なるほど。これなら間に合うね」
俺への対処法を説明するのが鈴木高次――コウだ。
その隣で相槌を打つのが木下智之、トモだ。
周りには誰もいない。したがってこの二人が犯人と決め
「お前等覚悟はいいか・・・俺の貴重な睡眠を邪魔しやがって!!」
そう目前の敵に向かって威嚇したのだが。
「起きないお前が悪い。起こす身にもなれって奴だ」
「早くしないと置いてくぞ!」
と、呆れたかのように返答され、笑い混じりの声で急かされる。
「お前等覚悟はいいか・・・俺の貴重な睡眠を邪魔しやがって!!」
そう目前の敵に向かって威嚇したのだが。
「起きないお前が悪い。起こす身にもなれって奴だ」
「早くしないと置いてくぞ!」
と、呆れたかのように返答され、笑い混じりの声で急かされる。
「まだ誰も来てないんだからもうちょっと寝かせてくれよ・・・」
「なーに言ってんだお前は。もう4時間目、次は体育だぞ!」
そう言われ時計を見ると・・・11:38。
「なーに言ってんだお前は。もう4時間目、次は体育だぞ!」
そう言われ時計を見ると・・・11:38。
「もっと早く起こせええええええ!!!」
137 名前: 歯科技工士(静岡県) :2007/04/15(日) 20:55:11.51 ID:PAnlj2Y+0
現実を知り、慌てて着替える。
今の時刻は11:39、まだ間に合う・・・!
目的地は体育館。そこへ向けて走り出し、
現実を知り、慌てて着替える。
今の時刻は11:39、まだ間に合う・・・!
目的地は体育館。そこへ向けて走り出し、
「二人とも早くしないと送れちまうぞ!」
「お前は何様のつもりだ!」
そうは言うものの声は笑っている。
「お前は何様のつもりだ!」
そうは言うものの声は笑っている。
コウとトモとは小学校からの付き合い。
よく喧嘩したり馬鹿なことをする、そこらへんのガキと同じだった。
中学に上がってからもそれは変わらず、学校では常に明るい存在として扱われていた。
よく喧嘩したり馬鹿なことをする、そこらへんのガキと同じだった。
中学に上がってからもそれは変わらず、学校では常に明るい存在として扱われていた。
- よく目をつけられなかったものだ。
今では高校2年。3人共同じ学校だ。
そして全くと言っていいほど大人しくなっていない。
そして全くと言っていいほど大人しくなっていない。
過去を振り返りながらも走るのは止めない。遅刻はしたくない。
全速力フルスロットルブースターオン床とキス。
全速力フルスロットルブースターオン床とキス。
- 体育館中に笑い声が響き渡る。
後ろから見ていた2人は腹を抱えている。
誰の目から見ても今の姿は「まぬけ」そのものだ。
この年になって人前で転ぶと、いくら馬鹿なことやってる人でも流石に恥ずかしい。
急いで身体を起こし、笑って誤魔化そうとしたのだが体が妙に重い。
この年になって人前で転ぶと、いくら馬鹿なことやってる人でも流石に恥ずかしい。
急いで身体を起こし、笑って誤魔化そうとしたのだが体が妙に重い。
- 結局身体を起こすことなく俺の中に幕が下りた。
138 名前: 歯科技工士(静岡県) :2007/04/15(日) 20:55:46.70 ID:PAnlj2Y+0
――目を開くと辺りは異様な状況だった。
様々な色が混じり、意識を持っているかのようにうごめいている。
――目を開くと辺りは異様な状況だった。
様々な色が混じり、意識を持っているかのようにうごめいている。
- 怖いわけがない。
建造物は見当たらず見渡しても異様な色だけが存在する。
とりあえず立ち上がり、歩くことにしてみた。
とりあえず立ち上がり、歩くことにしてみた。
- どれぐらい歩いただろうか。
あれから景色は変わることなくひたすら歩き続けている。
途中夢なんだと思い頬をつねってみるも痛みが走り、夢ではないと思い込むことに。
途中夢なんだと思い頬をつねってみるも痛みが走り、夢ではないと思い込むことに。
遂には絶望とも呼べる感情が体の中を走り回りだした。
自然と涙が出てくる。不思議と声を出すことはできなかった。
こんな状況になれば誰だって泣きたくなるものだ。
自然と涙が出てくる。不思議と声を出すことはできなかった。
こんな状況になれば誰だって泣きたくなるものだ。
そう言い聞かせては涙を流す。動き続ける足も自然と止まった。
- ぶ・・・しの・・・・しのぶ・・・
突如耳に声が入ってきた。かすれていて誰の声なのかはわからなかったが方向ははっきりしていた。
音のする方向を見ると小さい光、本当に小さいのだけれど光が見えた。
音のする方向を見ると小さい光、本当に小さいのだけれど光が見えた。
迷わず走った。やっと見つけた希望に向かって。
徐々に大きくなる光―――その光に触れる瞬間目の前が真っ白になった。
徐々に大きくなる光―――その光に触れる瞬間目の前が真っ白になった。
139 名前: 歯科技工士(静岡県) :2007/04/15(日) 20:56:37.60 ID:PAnlj2Y+0
白かった。
白かった。
最初に入ってきた色のことだ。眩しいほどに白かった。
細めで辺りを見回すと人がいた。・・・よく知っている人だった。
その人達は俺のことに気づいたみたいで喜んでいた。
喜んでいたが、その顔は他の感情も入っていたように見えた。
細めで辺りを見回すと人がいた。・・・よく知っている人だった。
その人達は俺のことに気づいたみたいで喜んでいた。
喜んでいたが、その顔は他の感情も入っていたように見えた。
「心配かけさせやがって・・・!」
「・・・起きなかったらどうしようかと思ったよ」
しっかりと聞こえるその声はある感情の針を振り切らせる。
「・・・起きなかったらどうしようかと思ったよ」
しっかりと聞こえるその声はある感情の針を振り切らせる。
安心したのか友人を前にして泣いた。かつて無いほどに。
理由など無く――ただひたすらと涙を流した。
理由など無く――ただひたすらと涙を流した。
「そろそろ教室いくか?」
その言葉に時計を見るとまだ6時間目が始まる時間ではない。
その言葉に時計を見るとまだ6時間目が始まる時間ではない。
「もう大丈夫だから、いくか教室」
「・・・まだ気づいてない?」
何を言ってるのかと思った。隠し事でもしてるのだろうか。
「・・・まだ気づいてない?」
何を言ってるのかと思った。隠し事でもしてるのだろうか。
「何のことかわからないけど、とりあえず教室行こうぜ」
- トモの問いかけにもっと関心を持つべきだった。
そして自分のことをもっと疑わないといけなかった。
決して忘れることの無いあの妙な体験のことも――今は頭になかった。
140 名前: 歯科技工士(静岡県) :2007/04/15(日) 20:57:48.77 ID:PAnlj2Y+0
目の前には教室のドア、後ろには二人の男。
そして聞こえるのは先生らしき人物の声と後方からの男2人による話声。
目の前には教室のドア、後ろには二人の男。
そして聞こえるのは先生らしき人物の声と後方からの男2人による話声。
2人が話を終えるのを待っていたほうがいいのだろうか。
いいや、限界だね。俺はドアを開けるゥッ!!
いいや、限界だね。俺はドアを開けるゥッ!!
「諸君、おはよう。私の名はロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ。ムスカ大佐と呼びたまえ」
一瞬にして周囲の音を消し去ることに成功した。
手に入れたものは若干白い目で見る人達。失ったものは俺の青春、プライスレス。
そして数十秒の沈黙―――どうする俺!!
手に入れたものは若干白い目で見る人達。失ったものは俺の青春、プライスレス。
そして数十秒の沈黙―――どうする俺!!
「えー、とだな・・・」
「すいません、台詞間違えました!!」
「すいません、台詞間違えました!!」
そして扉に手をかける。これでやり直せばなんとかなるだろう。流石俺!
が、後ろからの圧力により教室内へ誘導される。もちろんコウとトモの仕業だ。
が、後ろからの圧力により教室内へ誘導される。もちろんコウとトモの仕業だ。
「何をする!私はラピュタ王だぞ!!」
「・・・そんなことはいいから入れよお嬢さん」
「・・・そんなことはいいから入れよお嬢さん」
乗ってきたのだろうか?
「それと―――お前は自分の体のこと、気づいてないのか?」