セットアップPS2 - (2006/03/11 (土) 18:06:41) の編集履歴(バックアップ)
とある休み時間のこと。数人の男子生徒が、机の上にゲーム雑誌を広げ、
ゲーム談議に耽っていた。
「やっぱヤ○ガスだろ?」
「ええーっ、F○12じゃねえの?」
「でもよー、F○の戦闘シーンのプロモ、見た? 戦闘シーンなのに、
キャラがてくてく歩いてやんの。何か、すっげー興ざめじゃね?」
と、生徒の一人がはっと息を呑んだ。
「あなたたちーーっ、まーた学校にこんな物を持ち込んで!!」
真紅だった。するりとゲーム雑誌を取り上げられる。まだ予鈴が鳴っていなかったので、
生徒たちはすっかり油断していた。
「で……でも先生、くんくん探偵のゲームの記事も載っているんですよっ」
「えっ……」
没収を恐れた生徒が慌てて取り繕うと、真紅の顔色が変わった。
即座に雑誌のページをめくり始める。
「ど、どこ……どこのページに載っているの?」
「ほら、もっと後ろのほう……新作情報のページのところです」
あった。くんくん探偵の不思議なダンジョン、鋭意製作中!!
なぜ探偵で不思議なダンジョンシリーズなのか、顧客のニーズを著しく見誤っている気がするが、
そこのところは置いといて。
目を皿のようにして、記事を読み耽る真紅。くるりと踵を返すと、
そのまま教室を出て行ってしまう。
「え……先生、授業は……?」
結局、持ち去られたゲーム雑誌が返ってくることはなかった。
ゲーム談議に耽っていた。
「やっぱヤ○ガスだろ?」
「ええーっ、F○12じゃねえの?」
「でもよー、F○の戦闘シーンのプロモ、見た? 戦闘シーンなのに、
キャラがてくてく歩いてやんの。何か、すっげー興ざめじゃね?」
と、生徒の一人がはっと息を呑んだ。
「あなたたちーーっ、まーた学校にこんな物を持ち込んで!!」
真紅だった。するりとゲーム雑誌を取り上げられる。まだ予鈴が鳴っていなかったので、
生徒たちはすっかり油断していた。
「で……でも先生、くんくん探偵のゲームの記事も載っているんですよっ」
「えっ……」
没収を恐れた生徒が慌てて取り繕うと、真紅の顔色が変わった。
即座に雑誌のページをめくり始める。
「ど、どこ……どこのページに載っているの?」
「ほら、もっと後ろのほう……新作情報のページのところです」
あった。くんくん探偵の不思議なダンジョン、鋭意製作中!!
なぜ探偵で不思議なダンジョンシリーズなのか、顧客のニーズを著しく見誤っている気がするが、
そこのところは置いといて。
目を皿のようにして、記事を読み耽る真紅。くるりと踵を返すと、
そのまま教室を出て行ってしまう。
「え……先生、授業は……?」
結局、持ち去られたゲーム雑誌が返ってくることはなかった。
半年後の木曜日。午後十一時。
真紅は、手に大きな紙袋をぶら下げて、ようやく帰宅できた。
「……まったく、あの莫迦ウサギ……今日に限って残業を押しつけてくるなんて、
陰険にも程があるわ! ゲームが終わったら、きっと復讐してやるから、見てらっしゃい!」
部屋着に着替え、テレビの前に陣取る。
「さてと、まずゲーム機本体をセットしないとならないのね」
プレステ2のパッケージを開け、中身を取り出す。ビデオケーブルを取りつけようとして、
テレビを裏返したところで、真紅は硬直した。
「ええと……これはどこに挿し込むのかしら?」
入出力端子がずらりと並んでいた。真紅は元々機械に疎く、どれがどれだかさっぱり判らない。
ええいままよと挿し込んで電源を投入するが、ちっとも反応は現れなかった。
「どうしたら……どうしたらいいの?」
説明書と首っ引きになって二時間。焦燥感が募った。真紅はとうとう音を上げた。
携帯電話の短縮ダイヤルを操作する。
「蒼星石……蒼星石? すぐに来て頂戴!!」
真紅は、手に大きな紙袋をぶら下げて、ようやく帰宅できた。
「……まったく、あの莫迦ウサギ……今日に限って残業を押しつけてくるなんて、
陰険にも程があるわ! ゲームが終わったら、きっと復讐してやるから、見てらっしゃい!」
部屋着に着替え、テレビの前に陣取る。
「さてと、まずゲーム機本体をセットしないとならないのね」
プレステ2のパッケージを開け、中身を取り出す。ビデオケーブルを取りつけようとして、
テレビを裏返したところで、真紅は硬直した。
「ええと……これはどこに挿し込むのかしら?」
入出力端子がずらりと並んでいた。真紅は元々機械に疎く、どれがどれだかさっぱり判らない。
ええいままよと挿し込んで電源を投入するが、ちっとも反応は現れなかった。
「どうしたら……どうしたらいいの?」
説明書と首っ引きになって二時間。焦燥感が募った。真紅はとうとう音を上げた。
携帯電話の短縮ダイヤルを操作する。
「蒼星石……蒼星石? すぐに来て頂戴!!」
学校で情報処理の教鞭を振るっている蒼星石は、さすがに手際が良かった。
五分も経たずに、プレステ2の起動画面が表示される。
「今から帰ると、三時になっちゃう。今日は泊まってっていい?」
「好きにすると良いのだわ」
真紅は、画面から目を離さない。コントローラーを手に、
くんくん探偵のオープニングムービーにもう夢中のようだ。
「じゃあ、そうさせてもらう……」
いつものことだった。この家の家電製品は、ほぼ例外なく蒼星石がセットしたものだ。
勝手知ったる真紅の家。蒼星石は、寝室の真紅のベッドに潜り込んだ。
五分も経たずに、プレステ2の起動画面が表示される。
「今から帰ると、三時になっちゃう。今日は泊まってっていい?」
「好きにすると良いのだわ」
真紅は、画面から目を離さない。コントローラーを手に、
くんくん探偵のオープニングムービーにもう夢中のようだ。
「じゃあ、そうさせてもらう……」
いつものことだった。この家の家電製品は、ほぼ例外なく蒼星石がセットしたものだ。
勝手知ったる真紅の家。蒼星石は、寝室の真紅のベッドに潜り込んだ。
午前四時。
「蒼星石……蒼星石?」
「うーん、何だい、真紅……もう朝なの……?」
「武器だか防具だか装備だか、何だかちっとも解らないのよ……ちょっと来て、教えて頂戴」
結局その日、蒼星石が休めた時間は、正味二時間ほどに過ぎなかった。
「蒼星石……蒼星石?」
「うーん、何だい、真紅……もう朝なの……?」
「武器だか防具だか装備だか、何だかちっとも解らないのよ……ちょっと来て、教えて頂戴」
結局その日、蒼星石が休めた時間は、正味二時間ほどに過ぎなかった。
しかし、その夜の出来事は、これから始まる地獄の日々のほんのプロローグ。
「な……何ですって!?」
真紅は、ゲームの取扱説明書の最後のページに載せられた告知を見て、唖然とする。
それは、不思議なダンジョンシリーズ恒例の早解きキャンペーン。期限までに定められた
イベントをクリアして、表示されたパスワードを送ると、くんくん探偵の特製アイテムが
もらえるというものだった。
「こ……これは、何としてでも手に入れなければ……!」
コレクター魂が、ふつふつと刺激された。真紅の戦いが始まった。
それまでは、ほとんどゲームに興味のなかった真紅。ずぶの素人の彼女に、
いきなり難易度の高い不思議なダンジョンの攻略は、至難を極めた。
加えて彼女の性格だ。地道に準備を整えず、ついつい先を急いでしまうため、
自滅するパターンが多かった。
完徹が日常茶飯事になった。
薬局でユンケルを大量に買い込む。
「今日は……自習にします」
そう言って、教卓に突っ伏した。
蒼星石からは、とうとう着信拒否されるまでになった。
「な……何ですって!?」
真紅は、ゲームの取扱説明書の最後のページに載せられた告知を見て、唖然とする。
それは、不思議なダンジョンシリーズ恒例の早解きキャンペーン。期限までに定められた
イベントをクリアして、表示されたパスワードを送ると、くんくん探偵の特製アイテムが
もらえるというものだった。
「こ……これは、何としてでも手に入れなければ……!」
コレクター魂が、ふつふつと刺激された。真紅の戦いが始まった。
それまでは、ほとんどゲームに興味のなかった真紅。ずぶの素人の彼女に、
いきなり難易度の高い不思議なダンジョンの攻略は、至難を極めた。
加えて彼女の性格だ。地道に準備を整えず、ついつい先を急いでしまうため、
自滅するパターンが多かった。
完徹が日常茶飯事になった。
薬局でユンケルを大量に買い込む。
「今日は……自習にします」
そう言って、教卓に突っ伏した。
蒼星石からは、とうとう着信拒否されるまでになった。
学校の廊下で、水銀燈と出くわす。
「あらぁ、真紅。どうしたの、その目の下のくま……全然隠せてないわよぉ?」
「何でもないわ。それより水銀燈こそどうしたの、コンシーラーがやけに厚めのようだけど?」
「ふふふ、何でもないわぁ、気にしないでぇ……」
両者の間に火花が散ったかに見えた。
救いようのない二人であった。
「あらぁ、真紅。どうしたの、その目の下のくま……全然隠せてないわよぉ?」
「何でもないわ。それより水銀燈こそどうしたの、コンシーラーがやけに厚めのようだけど?」
「ふふふ、何でもないわぁ、気にしないでぇ……」
両者の間に火花が散ったかに見えた。
救いようのない二人であった。
以上です。