アメリカの高等教育機関の入学決定は、高校を卒業した者は全員入学可能なコミュニティ・カレッジなどの開放型、高校での履修状況とSAT等全国的な適性テストの得点を満たせば入学できる多くの州立大学の基準型、そして、更に高い学力や活動歴などを求める競争型の三つのタイプに分かれる。
アメリカは大変広い上に、高校段階の教育は極めて多様な形態・性格をもっている。通常の地域総合高校、極めて高額な学費を必要とし、世界中から生徒を集めて少数教育を行う私立や、あるいは、ホームスクーラーなど家庭での教育を実行している人たちもいる。高校での成績を重視する一方、多様な高校での評価の相違をバランスよく評価する必要もあるし、また、画一的な競争試験を実施することによって、高校の多様性を阻害しないためにも、全国的な共通テストを利用していると考えられる。
開放型は別として、後二者は高校の成績と全国的な試験(SATやACT)の得点を条件として求める。そして競争型はその上に独自の試験を行ったり、あるいはボランティアや社会活動の内容やレポートを求め、面接を実施したりして選抜を行うのである。
「学力検査Ⅰ(SATⅠ)」は,従来「大学進学適性検査(SAT)」と呼ばれていたもので、「大学入学試験委員会(CEEB)」が、「教育テスト事業団(ETS)」に委託して一九九四年春から実施されている。多くの大学が入学志願者に対して受験を課しており,選抜資料として利用されるだけでなく、大学によっては入学後の科目履修指導の参考資料としても利用される。
SATⅠは大学への入学に必要なテストで、年7回実施され、二領域七つのセクションに分かれている。言語領域(三つの言語)、数学領域(三つの数学)、そして実験である。実験については、点数として加算されない。解答は選択式でコンピュータ処理される。言語領域では、読んだ内容を理解し分析する能力、文の関係を認識する能力、単語同士の関係を構成する能力が試験され、数学では計算、代数、幾何の問題を解く能力が求められる。受験資格(年齢)や回数の制限はなく、ほとんどの生徒は、ジュニアのときに受験を始め、シニアクラスで残っている部分を受験する。1988~1999年度には、220万の受験生があった。シニアハイスクールの受験生は120万である。
更にSATⅡテストがあり、こちらは学科と作文試験である。科目は、作文、文学、アメリカ史、世界史、数学レベルI、Ⅱ、生物、化学、物理、語学がある。
読解だけの語学が、フランス語、ドイツ語、現代ヘブライ語、イタリア語、ラテン語、スペイン語。読解とヒアリングを含む語学が、中国語、フランス語、ドイツ語、日本語、韓国語、スペイン語、ELPTである。
今年の六月には、登録した学生の31パーセント、16万人以上がはSATⅡをとった。作文、、数学レベルI、生物学、化学、数学レベルⅡおよび米国史などの受験者が多かった。
この他に、「アメリカ大学テスト(ACT)増補プログラム」がある。民間のテスト機関「アメリカ大学テスト事業団」が実施するテストであり,一般に「アメリカ大学テスト(ACT)」として知られているが,1989年にテストの内容が改訂され,名称も「ACT増補プログラム」と改められた。大学入学者選抜のほか科目履修の指導資料としても利用される。テストは年四回実施される。テスト内容は英語(45分),数学(60分),読解(35分),科学的推論(35分)から構成されており,解答はすべて多肢選択方式である。
さて、具体的に問題をみておこう。今年の6月に出された問題の一部である。
SAT1やSAT2は数学であるが、日本では中学で学習する内容であり、非常に基礎的な問題である。そして2番目の問題は、数学の学力を試しているというよりは、クイズ的な思考力を試しているようにも見える。SATは学力テストというより、知能テストに近いと批判する意見があるが、このような問題があるからだろう。
SATⅡは、1時間の選択式テストで、教科別に行われ、多くの大学が少なくとも1科目以上を求めている。大学側は指導材料として結果を使用する。
SATⅡの歴史のパターンを見ておこう。
九五問選択式の問題が出され、因果関係、地理関係、データの理解、歴史分析に係わる概念の理解、歴史背景の知識などが試される。先史から500年(10%)、500~1500(二0%)、1500~1900(30%)、1900~(30%)、時代横断的問題(10%)であり、地域別に見ると、ヨーロッパ(45%)、アフリカ(10%)、南西アジア(10%)、南アジア(5%)、東アジア(10%)、アメリカ(10%)、グローバル(10%)となっている。
学科試験は、SATIよりもはるかにアカデミックな内容になっている。
SATⅡの作文試験について見る。
その目的は「標準的な文章体英語を使って、効果的に考えを表現し、用語や構造の間違いを認識し、そして、意味する内容に相応しい感性で言葉を使用することができる能力を調べる」こととされている。
評価される能力は、出題された対象に対する考えを明確かつ効果的に表現する能力で、適切な文章構成、単語の選択、文の構造などを使用しているかが問われる。また、文の誤りを認識し、それを訂正したり改善できる能力も試される。
60分のテストの中で、20分はエッセイを書き、更に選択式の60問の問題が出される。選択式問題は、守備一貫していること、論理的であること、明快であること、そして伝統的な表現に合致していることなどがテストされるのである。
エッセイの例題は「やりがいがあると感じさせる様々な経験をしてきたが、なかでも強く感じたときは~~」以下を続けるような問題である。20分はわずかな時間だが450語程度の文章を書く必要がある。
重要なことは、採点を経験を積んだ高校やカレッジの教師が行うことで、ヨーロッパのように高校独自の試験ではないにも拘らず、教師が参加・協力していることである。
以上見たように、アメリカの大学では、大学が求めるのは共通テストの一定以上の点数の取得と高校での成績である。共通テストは年数回行われ、しかも高校の最終学年以前から受験を開始することができる。問題は基礎的な内容であって、競争に勝つための無味乾燥な暗記が強要されることはない。したがって特別に高い学力がなくても入学できるが、入学後は厳しい勉学が要求され、多くの学生が振り落とされる。
最終更新:2008年08月04日 21:40