グリーン・バーク氏は、子どもが言葉を修得していく過程を、一般的に大人の模倣をするのではなく、最初は言葉を「創り出す」のだと主張している。決して、周囲の言語を一方的に受け入れるのではなく、自分で創り出した言語と、周囲の言語との調和を図っていくプロセスがあるが、一般的には周囲の方に、自分の言語を合わせていくのだという。
ここに興味深い事例がある。幼児のころに、家族から隔離され、動物以下のような生活を送って、人間関係の中で成長することができず、14歳で社会に復帰することになったジーニー(仮名とされている。)が、言語を修得していく過程がかなり克明に記録されているが、その中でも、ジーニーが言葉を作っていくことが記録されている。
あの時点からジーニーは、もとは数語の長さだった文を、単語に分割し、1音節語を創作して述べ始めた。たとえば1972年5月1日には、「Mがもどってくる(M come back) 」という文章に対して、「mæk」と言い、「月曜日にカーティスが来る(Manday Curtiss comm)」に対しては、「mΛk(マーク)」と言った。p38 スーザン・カーチス『ことばをしらなかった少女ジーニー』久保田競・藤永安生訳 築地書館
人から教えられた慣用的言いまわしに加えて、ジーニーは自分自身でもつくりだした。あることがらについて話したいときには、つぎのようなきまった語句を使うことがしばしばだった。
Doctor hurt.
Cat hurt.
Hospital hurt.
Hurt cat.
Like ball.
Like Nancy.p43
ジーニーは、明らかに言語能力を発達させることなく、肉体的に成長した。そこで、始めて言語を修得する環境に入ったときに、決めて遅々とした発達だったが、少しずつ言葉を話すようになり、その経過の中で、このように独自の言語を創作したというのだ。
「子どもは、とくに発達初期段階には模倣が多いが、正常な子どもは、基本的には聞いた文を模倣して話すことはなく、また、おもに模倣によって言語を修得することもない。」p80
最終更新:2008年08月07日 15:41