「<・・・よしっ!ウィルスチェック完了・・・と>」
「<へェ~。キョウジの『阻害情報』って、そんなこともできるんだネ>」
「<まぁな。ネット社会は常に進化し続けているから、新しいコンピュータウィルスとかも次々に出て来る。
そういうのに対処するためにセキュリティソフトとかがあるわけだけど、俺の能力はそういう性質もあるから有効活用するためには日頃から鍛えておかないといけないんだよ>」
「<成程。キョウジって見た目によらず努力家だったんダ>」
「<・・・お前のプログラムも『阻害情報』で書き換えてやろうか?>」
「<ヒィッ!!キョ、キョウジって見た目によらず鬼畜だったんダ!!>」
「<・・・ハァ>」

ここは、成瀬台学生寮の一室。部屋の主は成瀬台支部に所属する初瀬。彼は、今『阻害情報』を用いて所持しているノートパソコンに意識を宿していた。
ドアの鍵は閉めているとはいえ、現実世界の自分が完全無防備状態になるため本来であれば滅多にしない行為だった。
それを何故できているかと言えば、『ハックコード』に居る電脳歌姫がスマートフォンのカメラ機能等を用いて現実世界を監視しているためだ。
そんな彼女は、『ハックコード』からノートパソコンに伸びているケーブルを伝って、電脳世界にアクセスしている初瀬を捉えている。
初瀬が歌姫と電脳世界で交信のようなやり取りができているのは、『阻害情報』が情報そのものをダイレクトに操作できる能力だからである。

「<それにしてモ・・・>」
「<うん?何?>」
「<こういう電脳世界に意識をアクセスする時の人間の姿って全裸がデフォだと思ってたんだけド?>」
「<ブッ!!>」

確認しておこう。電脳歌姫の性別は、プログラム上一応女である。

「<全く、キョウジは悉く期待を裏切るよナ!!全裸のキョウジを見た私が恥ずかしさの余りに悲鳴を挙げるチャンスを奪うなんテ!!視聴者の好感度が全然上がらないじゃんカ!!>」
「<視聴者って何!!?ラジオじゃ無ぇんだし、ここには俺とお前しか居ねぇよ!!意識をここに駐在させるために、能力として俺っていう『カタチ』が発生するだけだし。
つーか、お前が何で俺の隣に居るんだ?ちゃんと、現実世界を監視してるんだろうな?>」
「<それなら問題ナッシング!!キョウジの隣に居る“私”は、『ハックコード』に居る私が作り出したモノだかラ!!>」
「<・・・やっぱり、自己増殖型コンピュータウィルスか・・・ハァ>」
「<ギャー!!またまたまたまたまたこの私を侮辱したナ!!ムキー!!>」

今日1日だけで何十回も繰り返された侮辱(電脳歌姫視点)に、怒髪天状態になる電脳歌姫。わかりやすく、顔がゆでだこ状態だ。

「<あー、うるさいうるさい。お前さぁ、もうちょっと静かに・・・>」
「<お前お前って、私には電脳歌姫ってちゃんとした名前があるんだゾ~!!ちゃんと、名前を呼べヨ~!!>」
「<・・・おでんちゃん?>」
「<ブッ!!私は食べ物カー!!>」
「<・・・あのうさん?>」
「<ブブッ!!こそあど言葉に「う」を付けただけじゃんカー!!>」
「<・・・はなうたちゃん?>」
「<何で鼻が前に付ク!!?>」
「<・・・姫っち?>」
「<それは、別の奴の呼び方!!>」
「<・・・他に何て呼べばいいんだ?>」
「<肝心要の名前そのまんまが残ってるじゃんカー!!わざとカ!?わざとボケてんのカ!!?ムキャー!!!>」

初瀬の怒涛のボケに、電脳歌姫が怒涛のツッコミで返す。こうして見ると、中々に相性が良いコンビと言えるかもしれない。

「<はいはい。わかったよ。そんじゃあ・・・姫。これでいいだろ?>」
「<・・・!!ま、まぁキョウジにしてはそこそこじゃないかしラ?>」
「<そこそこっつーか、全然捻って無いんだけどな。強いて言うなら・・・短いから>」
「<ブブブッッ!!!お、おのれェ・・・!!キョウジは、正真正銘の鬼畜野郎だゼ!!純真無垢な私をここまで弄ぶなんて・・・!!酷イ!!酷いですワ!!シクシク・・・>」
「<俺からしたら、ころころキャラが変わるお前の方がよっぽど恐いよ。よくそんなんで、ファンとかが付いたな。スタッフ様々じゃね?>」

電脳世界でリアルに嘘泣きするプログラムというのも、中々に見られない光景だ。突如として現れた同居人に、初瀬は溜息を吐きながらも内心では少々のドキワク感を抱いて話を続ける。

「<・・・・・・>」
「<・・・ん?どうした?>」
「<・・・ファン・・・カ。言っとくけど、私はファンなんて見たこと無いヨ?>」
「<はっ?>」
「<だって、私はいっつも閉じ込められてるんだもン。高性能且つ自立成長型プログラムの私は、今のように自分の分身みたいなモノを他の端末に飛ばすこともできル。
それは長所でもあり、短所でもあル。そう、私自身が勝手に動いてスタッフ達の手に負えない事態にだってなりかねなイ>」

急に無表情になった歌姫から語られるのは、すなわち裏側。バーチャルアイドルとして名を馳せている彼女自身にしかわからない“記号”。

「<だから、私は番組の時以外は外部接続が立たれたコンピュータに閉じ込められル。その中で、スタッフ達と会話したりすル。その繰り返シ。
ファンが本当に存在するかなんて、私にわかるわけが無イ。私は、結局は人間の操り人形でしか無イ。
彼等は、いざとなったら私を消すことができる人間達ダ。最近は、私の後継機みたいなバーチャルアイドルも登場しタ。
もし、人間から用済みと判断されたら私はデリートされル。そうならないためにも、私は彼等の言うことを受け入れるしか無イ>」
「<・・・!!!>」

初瀬は、歌姫が淡々と紡ぐ言葉に衝撃を隠せない。自分にも似たような経験はある。新しいソフトをインストールするために、既存のソフトをアンインストールする。
それは、使用者である人間の都合で如何様にもできる。もし、これを歌姫に置き換えるなら・・・。

「<・・・クスッ。だからさ、こうやって伸び伸びできるのって生まれて初めてなんだよ、キョウジ。『生まれて初めて』って言葉が私に相応しいかはわからないけド>」
「<・・・>」
「<キョウジの言う通り、私にはファンなんて本当は居ないのかもしれなイ。スタッフ達が見せてる幻影なのかもしれなイ。何せ、今日会った人間1人もファンにできないんだもン。こりゃあ、後継機に抜かれるのも時間の問題・・・>」
「<・・・“学園都市レイディオ”>」
「<えッ?>」
「<・・・今度聞いてやるよ。どうせ、何週間か前に収録済みなんだろ?>」

アイドルとファンは切って離せないモノ。アイドルがファンを魅了するのならば、ファンはアイドルを支える。否、ファンで無くとも支えたいと思う存在は居る。

「<そ、それはそうだけド・・・>」
「<それを聞いて・・・もし俺の気に入る所があったら・・・お前のファンに・・・なってやらなくも無い>」
「<キョ、キョウジ・・・!!>」
「<何油断してんだ、姫。今だって、ファン獲得ミッション続行中じゃないのか?こういう機会を利用して、ガンガン自分の魅力を押し出して行こうぜ>」
「<ッッ!!!ほ、本当にキョウジは卑怯だナ・・・!!厳しいだけじゃ無くて、甘い言葉さえ巧みに使って来るなんテ・・・!!!>」

歌姫は初瀬から顔を背ける。初瀬は彼女の顔を見ようとは思わない。そこに浮かんでいる感情という名の記号を見たいとも思わない。
そもそも、感情自体が存在していないかもしれない。だが・・・それでも初瀬は歌姫の“感情”を察しようと思う。
彼女は、ずっと1人ぼっちだったのだ。成長するために生み出されたモノが、よりにもよって生み出した側からその成長を妨げられている。何と言う皮肉だ。

「<・・・よし!姫。今日は、俺が何時もアクセスしている電脳世界に一緒に行こうぜ>」
「<キョウジ・・・?>」
「<そこで、思う存分アピールしてファンを増やすんだ!俺も手伝ってやるからさ!>」

だから、少年は決めた。この巡り会わせを絶対に無駄にはしない。自分にできることがあれば、する。とある淋しがりな少女のために。

「<・・・うン!!・・・か、勘違いしないでよネ!!キョ、キョウジがどうしてもって言うから仕方無く付いて行ってあげるんだからネ!!>」
「<・・・プッ。今度はツンデレキャラかよ。・・・でも、案外似合ってるかも>」
「<ッッッ!!!そ、そこはツッコミを入れる所だロ!!>」

かくして、初瀬と歌姫はある交流サイトへ赴いた。そこは、多種多様なアバターがそれぞれ交流を持っている匿名サイト・・・通称『シークハンター』と呼ばれる電脳世界であった。






「『レベル0だろうとくじけるな!俺もレベル0だっ!とある高校の先生はレベル0こそ無限の可能性があると仰っていた!』っと・・・」
「うん?何やってるの、免力君?」
「うわっ!?」

夜の闇に覆われたここ第19学区の一角で、『ゲコ太マンと愉快なカエル達』と成瀬台支部の面々が一緒にキャンプを張っていた。

「ムムッ?これは・・・アバター?」
「・・・そ、そう。・・・『シークハンター』っていう会員制の交流サイトなんだ。」
「へぇ~。免力君って、ネットでは熱い口調なんだね。まるで、猫被りしてるあたしみたい」
「・・・・・・」
「・・・まぁ、匿名の世界だしね。この世界でくらい、自分の思いをぶちまけたいとは私も思うな」

手持ちの携帯で『シークハンター』にアクセスしている免力と、それに興味津々な林檎が思い思いに会話する。

「・・・林檎さん」
「・・・こう見えても、あたしも結構ストレス溜めてるんだぜ?」
「・・・僕もですよ。・・・でも、それでも少しでいいから前に進まないといけないんですよね」
「・・・だね。あたしも頑張らなきゃ」

2人は、上空に燦然と輝いている星空を見る。廃れたここ第19学区では、人工的な灯りは然程無いので星々がよく見える。
2人共に、自分に劣等感を抱いている人間である。そんな2人は、周囲の助力も借りながらも何とか前へ進もうと頑張っている。

「・・・そういえば、“カワズ”さんは?」
「誰かから電話が掛かって、1人どっかに行っちゃった。回線を繋ぐ間も無く消えちゃったよ」
「・・・そうで・・・」
「免力よ!!そこで、何をしておるのだ!!?」
「「!!?」」

免力が林檎に“カワズ”の行方を尋ねていた時に、大声を出して割り込んで来たのはもちろん啄鴉。後ろには、他の面々(風紀委員含む)の姿が見える。

「(・・・な、何か・・・)」
「(面白そうな予感・・・!!)」

それ等の姿を目に映し、免力と林檎はある予感を抱く。もっとも、2人が感じた予感は別種であったが。






「は~い。こちら“詐欺師ヒーロー”の“カワズ”ですよ~。どちら様ですか~?」
「・・・プッ。何、その応答は?それに、誰が掛けて来たかなんてわかってるんじゃないの?」
「・・・結局掛けて来たんだね」
「・・・ごめんなさい」
「・・・他の奴に相談とかしたの?例えば・・・同期の債鬼とか?」
「ブッ!!な、何で債鬼君と私が同期だってことを・・・」
「君んトコの部下から聞いた」
「ゆかりの奴か・・・!!さ、債鬼君なら今頃クラスメイトの女の子とのデートで忙しいんじゃないの!!フン!!」
「・・・何怒ってんの?」
「お、怒ってない!!」

キャンプから多少離れた所で電話による会話を行っているのは“カワズ”。相手は176支部リーダーの加賀美である。

「・・・まぁ、いいか。それで、何の用かな?」
「・・・内通者が誰か・・・わかった・・・と思う」
「・・・そうか」

小細工無しの真っ向勝負。加賀美は余計なことを言わずに、最初から自分の心根を吐露する。

「界刺さん。私ってさ・・・リーダーに向いてると・・・思う?」
「いんや。今の君なら、よくて中間管理職って言った所かな?」
「即答・・・。クスッ。だよね~。私って向いてないよね~。だからさ・・・・・・部下を裏切り者にしちゃうんだよ・・・!!!」

抑えていた思いを正直に吐き出す。何があっても最後までやり抜くために。

「な、何で・・・何でなんだろう・・・!!裏切りなんてさせたく無いのに・・・!!どうして・・・!!私、私って・・・今まで何を頑張って・・・!!」
「(あ~、この感じ・・・前にリンリンの懺悔を聞かされた時と同じ匂いが・・・)」

“カワズ”は、以前にも経験した他者の懺悔を多少以上に辟易しながら耳にする。耳にしながら、そんな言葉の連なりに付き合いたく無かったので話の流れを変えるための言葉を吐く。

「・・・麻鬼天牙
「!!!」
「・・・風路鏡子
「ッッ!!!」
「そして・・・網枷双真。君が去年の9月に176支部のリーダーになってから風紀委員を“辞める羽目”になっている人間だ。3人か・・・客観的に見れば異常だね」
「・・・・・・あなたって本当に底知れないわね。“誰が”漏らしたのかは大体予想は付くけど・・・やっぱりあの娘もあなたを頼ったの?」
「そうだ。俺が君より物事を量れる人間だからってことで」
「・・・・・・だよね~。そりゃ、ゆかりから見たら私って頼りないモンね~。リーダーになってから、これで3人目だモンね~。ムフフッ。ムフフフッ・・・」
「・・・」

少女の乾いた笑いが“カワズ”の耳に入って来る。そこに込められた怒りと嘆きの思いが手に取るように理解できた。

「ムフフッ・・・ムフフッ・・・」
「・・・加賀美」
「・・・何?」
「辞めるか?リーダーも・・・それこそ風紀委員もさ?今ならまだ間に合うかもしれねぇぞ?」
「・・・・・・」

だから、“詐欺師ヒーロー”は心の中で泣き崩れている少女に選択肢を与える。リーダーとして、これ以上傷付かない方法を掲示する。

「・・・・・・今は・・・嫌」
「何で?」
「だって・・・“詐欺師ヒーロー”と約束したもん。何があっても最後までやり抜くって」
「(・・・もし、あの時俺がアクションを取っていなかったら本気でヤバかったかもしれねぇな、こりゃ。これだから“ヒーロー”はメンドクセェ。・・・身から出たサビだけど)」

震える声で宣言する少女に“詐欺師ヒーロー”は過去の己の行いを振り返る。
あの時は偶々加賀美と“ゲロゲロ”が居る場面に立ち会っただけである。その偶然が、今や少女の支えとなっていることを“カワズ”は理解する。

「・・・何なら、その約束を取り消そうか?それなら、後腐れなく辞められるだろ?」
「えっ!!?そ、それは・・・そんな・・・!!!」
「・・・・・・嘘だよ。“詐欺師ヒーロー”らしいペテンだろ?」
「も、もぅ!!人が真剣に悩んでいるのに!!」
「君は・・・風紀委員として・・・そしてリーダーとして在りたいんだね?今の反応からすると」
「なっ!!?わ、私を引っ掛けたわね!!?」
「そうだよ。んふっ」

“カワズ”はお得意のペテンを使って、少女の本音を無理矢理引きずり出す。彼女は、まだ未練を持っている。風紀委員に・・・そしてリーダーに。なら・・・

「加賀美」
「な、何よ!?」
「君が今までリーダーとして果たすべき責任の多くをこなせていなかったのは事実だろう。さっき言った3人の軌跡が、それを物語っている。ある意味では、君はリーダー失格だ」
「・・・・・・」
「でも、君がリーダーだったからこそ果たせた責任もあった筈だ。昨日の問題児集団や緋花だって、君がリーダーだったからこそ付いて来ている面は確かにあると思う。
今のあいつ等はそれが甘えに繋がってるけど、裏を返せばそれだけ君の部下で居たがっているんだ。これは人望がある証拠だ。君は人を惹き付けるだけの誠実さを備えている。
これで部下をキッチリ指導できるようになれば君は立派なリーダーになれる。今の君はそれができていないから、俺は君を『リーダーに向いていない』って言ったけどね。
人望があっても、そこから先が中途半端だからブツクサ言われる。でもね、加賀美。俺からしたら、君は『本物』のリーダーになれる素質の一端を確かに持っている女の子だよ?」
「私が・・・!!!」
「加賀美。人間ってのは完璧にはなれないんだ。聖人君子になんかなれねぇんだ。完全なんかあるわけ無い。誰だって不完全。俺も不完全だ。
だから・・・誰もが必死になって、泥まみれになって、ボロボロになりながらも努力するんじゃないか?そして、君は君なりの努力をして来た筈だ。今も・・・ね。
それを君が否定すんなよ。過去を否定すんなよ。君自身が可哀想だ。まぁ、結果に結び付いてりゃ文句無しなんたけど・・・まだまだ努力不足みたいだね」
「・・・だね」

“ヒーロー”として、迷いに迷っている子供に光を差し伸べる。

「ス~ハ~。ス~ハ~。加賀美雅!!!」
「痛っ!!?きゅ、急に大きな声を・・・」
「君は!!!176支部のリーダーだ!!!!!」
「ッッッ!!!!!」

“ヒーロー”として、泣き崩れている少女に持てる声の限りを尽くして訴える。

「誰に認められなくても、この“詐欺師ヒーロー”が君をリーダーとして認めてやる!!!『本物』のリーダーかどうかは保証しねぇけどな!!!
だが、君が『本物』のリーダーになろうと懸命に努力するのなら、『本物になろうとする』のなら、俺は持てるペテンの限りを尽くして君を認めてやる!!!
網枷の野郎に何言われたか知らねぇが、んなモン知ったことか!!裏切り者が何ぬかしてやがんだって話だ!!網枷の野郎だって、君達を裏切る前に全力を尽くしたのかよ!?
君が全部間違ってて網枷が全部正しいのかよ!?違ぇだろ!?君達を裏切って『ブラックウィザード』に入ってる時点で、あの野郎は間違った手段を取っていると俺は考える!!
おそらく、“わかってて”その手段を取ってるんだろう!!その根本にある理由まではわかんねぇけど、それが君を全否定する理由になんかなんねぇ!!違うか、加賀美雅!!?」
「界刺・・・さん・・・!!!」
「俺は君達風紀委員の多くに嫌われてる!!『間違ってる』ってよく言われる!!否定もズバズバされる!!俺も自分のやっていることが客観的に全部正しいなんて思わない!!
でも、俺は後悔しない!!後悔していない!!誰に認められなくても、この俺が俺自身の行動を認めているからだ!!加賀美雅!!君はこんな俺を全否定するか!!?」
「・・・ない。・・・しない。あなたを全否定なんて・・・・・・私は絶対にしない!!!」
「そうか。なら、今度は君の番だ。君が君自身を信じろ!!自分の行動がどんな結果に結び付くにしても、それは君の自業自得だ。受け入れて・・・背負って・・・次に活かせ!!
俺は君を全否定しない!!加賀美雅を全否定しない!!俺の信念に懸けて!!だから頑張れ!!意地を見せろ!!何があっても最後までやり抜け!!!いいな?約束だぜ!!?」
「・・・う、うん・・・!!うん!!ぜ、絶対に守る!!あなたとの約束は・・・絶対に守り抜く!!何があっても!!
そして・・・私も誓うよ!!誰が認めなくても、私があなたを認める!!私はあなたを全否定しない!!界刺得世を全否定しない!!私の・・・信念に懸けて!!」

改めて交わされた“ヒーロー”と子供の約束。界刺得世と加賀美雅の約束。それは、前以上の太さを持って固く結ばれた。互いの信念を約束の糸に編み込んで。






「・・・界刺さん」
「ん?」
「双真とは・・・私が決着を着ける。これは、176支部のリーダーとして果たさなきゃいけない責任だと思うの」
「・・・かもね」
「双真は、今日のお見舞いの一件で私が彼の正体に気付いていることを察している筈。
緋花や帝釈が知らなくてゆかりが知っている所から見ると・・・椎倉先輩を筆頭に一部の風紀委員にだけ知らされていると思うの」
「・・・妥当な予測だね」
「私に教えてくれなかったのは、私だと動揺みたいなモノが露骨に出ちゃうから・・・?」
「それは間違い無い」
「ガクッ!!・・・ま、まぁ妥当な判断だとは思うけどさ。でも・・・もうそんなことは関係無くなった。きっと・・・近い内に仕掛けてくる筈。私を始末するために。
何たって、私が双真の正体を予測していることを双真自身が気付いている筈だから。176支部の後方支援をしている双真なら、私の行動は予測できる筈。それを・・・逆手に取る」

加賀美は、自身の決意を“カワズ”に伝える。己が部下の不始末はリーダーである自分自身の手で断ずることを。

「椎倉先輩達には伝えないの?」
「・・・これは、私が着けなきゃいけないケジメなの。我儘なのはわかってる。でも・・・」
「椎倉先輩には伝えろ!!」
「ッッ!!」
「君1人の問題ならまだしも、これは風紀委員会全体の命運が懸かっているかもしれない事柄だ。力不足のリーダーが1人で背負えることじゃ無い」
「くっ・・・!!」
「君の思いもわかる。だけど、こういう時こそ慎重になるんだ。用心深くなるんだ。それがいい結果に繋がらなくても、裏目に出たとしても、それはそれで仕方無い。
大概、そういう場合は被害が出ても最小限に抑えられるモンだ。でも、勇み足で失敗したら大火傷になる可能性が高い。これは確率の問題だよ?
俺が救済委員事件で穏健派の指揮を取った時は、その辺りの“線引き”はキッチリしたぜ?」
「・・・そして、ちゃんと結果を出した?」
「客観的に見ればね。被害も想定内で済んだし。俺っていう主観的な観点でも結果は出せたと思ってるし」

同じリーダーとして、“カワズ”は逸る加賀美を優しく叱る。結果という動かし難い事実でもって。

「・・・・・・わかった。椎倉先輩には伝える」
「うん。それがいい」
「・・・止めないんだね」
「それは君の自由さ。さっきも言ったけど、その結果がどうなろうとリーダーである君の自業自得だ。俺には関係無い」
「・・・そうだね。ごめんなさい。・・・あなたって、やっぱり“ヒーロー”だよ。あなたがそう思っていなくても、私から見たら“ヒーロー”だよ。
緋花にも話したけど・・・辛いんでしょうね、あなたは。私のような人間を背負っている・・・いえ、背負わされるんだから。
それをわかっていて頼っているんだから、本当ならこんなことを言える資格は私に無いんだけど・・・言わせて。本当にごめんなさい。そして・・・本当にありがとう」
「・・・・・・」
「確かに、あなたは非情なのかもしれない。しれないけど・・・あなたはちゃんと地に足が着いている。それだけ安心感がある。それに比べてあの娘は・・・。
緋花も、あなたに負けないくらいの・・・『他者を最優先に考える“ヒーロー”』になれるのかな・・・?」
「“ヒーロー”に勝ち負けなんてそもそも無いと思うけど・・・つーか、やっぱ諦めて無ぇんだな?」

加賀美の言葉に焔火の名前が出て来たことに反応する“カワズ”。“ヒーロー”を目指し、足掻きに足掻きまくっている少女。
彼女の上司である加賀美は、今の焔火の成長具合を彼に伝える。こうして“ヒーロー”と話している機会を活かして部下の意思を伝える。

「うん。辛い目に遭ってるのに・・・逃げずに頑張ってる。何処か不安な感じはするけど・・・あの娘なりに懸命に頑張ってる。
あの娘なりに成長もしてるよ?『自分を最優先に考える“ヒーロー”』の意味もちゃんと理解してたし。長所と短所の見極めについても気を付け始めたし。
独り善がりについてはまだ理解できていなかったけど・・・。これは徐々にって感じなのかも。でも、私が思っている以上に成長速度が速いというか・・・」
「やっぱ辿り着いたか・・・。やるじゃん」
「そうでしょ?あなたの言う通り、今あの娘が色々経験した上で自分なりに考えているのは確かに糧になっている・・・」
「なら、そろそろ“偶像”に気付く頃合いかもな(ボソッ)」
「えっ?」
「いや・・・。君も頑張れよ」
「・・・うん。それじゃあ」
「あぁ。おやすみ(ガチャ)」
「・・・・・・ハァ~」

“詐欺師ヒーロー”との通話を終えた加賀美は、思いっ切り背伸びをした後に後方にある枕に頭を預ける。つまりは寝転がった。

「・・・・・・ムフフッ。やっぱり、電話して良かったぁ」

涙さえ浮かべている少女の顔に表れているのは、ある種の満足感。自分の言葉に応えてくれるという期待通りの言葉を与えてくれた“ヒーロー”に対する感謝の思い。

「・・・・・・やっぱりあるんだなぁ。『リーダーでありたい』って思いが。・・・だったら・・・何時までもへこたれてちゃいられない!!
今の私は、色んな方面で力不足なのは間違い無い!!でも、こんな私をリーダーとして見てくれる人達が居る!!私は、その人達の思いに応えたい!!よーし!!やるぞー!!!」

少女は確かな決意を固める。先程固めた決意とは温度が違う決意。何処か温かな決意が胸に広がって行く。だからこそ、ふと思い出してしまったのかもしれない。
あの男に自分が176支部リーダーに抜擢されたことを言いに行った在りし日の姿を。


『お前がリーダーか。俺より先になるとはな・・・面白い。俺の言葉に正面切ってぶつかって来たお前なら、「本物」のリーダーになれるかもしれん!!
待っていろ!!俺も自分の実力に更なる磨きをかけた暁には、お前と同じ位置に立ってみせる!!』


「(そういえば・・・債鬼君より先にリーダーになったんだよなぁ。まぁ、年功序列みたいな感じでリーダーになることが決まったんだけど。
それでも、債鬼君は私が『本物』のリーダーになれるかもしれないって言ってくれた。彼ならお世辞なんか言わない・・・筈。だったら・・・尚更頑張らないと!!)」

今最優先すべきは、身体の回復。なので、加賀美は早々に睡眠作業に入る。夕方に網枷達が来たのを切欠にずっと気を張り詰めていたせいか、すぐに眠気が襲って来た。
少女は、良い夢を天に願ってスヤスヤと吐息を吐き出す。これからが本番。それに備えての束の間の休息に加賀美雅は身を委ねた。






「もしもし。花多狩姐さん?今大丈夫?」
「えぇ。何かしら?」

加賀美との通話を終えた直後に、“カワズ”はある女性に電話を掛けた。電話の向こうに居るのは、かつて救済委員事件の折に一緒に戦った穏健派救済委員の1人・・・花多狩菊

「実はね・・・(ゴニョゴニョ)」
「(ゴニョゴニョ)」
「(ゴニョゴニョ)」
「(ゴニョゴニョ)」
「(ゴニョゴニョ)」
「・・・わかったわ。まさか、貴方や啄達が『ブラックウィザード』の件に関わっているなんてね」
「まだ本格的には関わっていないけどね。あくまで準備としてだよ」

“カワズ”は花多狩にある依頼をした。それは、今後に備えての準備作業の一環である。

「はいはい。灰土さんは、確か明日から夏季休暇に入るから大丈夫だと思うわ。鉄の発明品は慎重に取り扱わないと。いきなり爆発されたら堪ったモンじゃ無いわ」
「こころちゃんの発明品か・・・。俺も実際に見たのは一昨日の深夜だったけど、あれは確かに取り扱いに注意しないとね」
「貴方も大忙しね。息が詰まっているんじゃない?鉄じゃ無いけど、折角の夏休みなんだし学園都市の『外』にでも気晴らしに行ってみたらどうかしら?」
「・・・一応その選択肢も夏休み前から考えてはいるんだよね。3枚ある申請書も殆ど書いてるし。唯、行きたい場所が無いのがねぇ。保証人も居るからメンドイし。
そしたらこんな流れでしょ?もう、どうでもよくなってきた。おとなしく部屋でダラダラしとこっかな?」
「怠けてると余計にしんどいわよ?フフッ」

通常、能力者である学園都市の学生が『外』へ赴くためには結構な手順を踏まなければならない。3枚の申請書を教師に提出、保証人の同行、体内に極小の機械を注入等々。
花多狩も『外』へ出るための手続きの面倒臭さは知っているので、苦笑いを抑えられなかった。そのついでに・・・1つ気に掛かっていることを質問する。

「・・・羽香奈のことは全然気に掛けないのね?」
「あれはもう終わったことだよ。俺の『詐欺話術』に腰が抜けた彼女の自業自得だ。あの程度でビビるんなら、最初から手ぇ出すなって話だ。
桜ん時の顛末を農条から聞いた時も思ったけど、あの娘ってそこら辺の覚悟が軽いよね~。また今度指導してあげようか?」
「・・・それは止めておいた方がいいわね。あの娘の精神状態が持たないわ。それにしても・・・『絶対挑発』が効かないなんてね・・・」
「そりゃ、俺の『本気』だぜ?あんなヤワな覚悟しか持っていない女の精神干渉なんて効くわけ無いだろ?
まぁ、能力次第じゃ無理なモンは無理なんだけどな。あの娘の場合は、自制心の強い人間には効かない場合があるみたいってことは聞いてたからね」

“カワズ”と花多狩の会話に出て来る少女―穏健派救済委員の1人である羽香奈琉魅―を巡る話題に関しては、いずれまた別の機会で語られることになるだろう。

「ハァ・・・。まぁ、いいわ。あの娘のフォローはこっちでやるから」
「そう。そんじゃお願い」
「それにしても・・・もしこれで『ブラックウィザード』が貴方達の手で潰れるようなことがあれば・・・『シンボル』の名は更に轟くことになるわね」

花多狩は、感心の念すら抱いて通話相手に感想を述べる。救済委員事件に『シンボル』が関わっていたことは、今や“表”や“裏”を問わずに結構広まっていた。
『シンボル』が味方した穏健派が勝利したこと、その勝利は『シンボル』の力が大きかったことも同時に。
これで、巨大スキルアウトである『ブラックウィザード』殲滅に『シンボル』が関わり、見事それを果たした時はいよいよもってその名が轟くことは疑いようが無かった。

「・・・本音を言えば、それはそれで困るんだけどね」
「えっ?」
「出る杭は打たれるって言うだろ?有名税ってのは、後から面倒臭くなるんだよ。
影響が強ければ強い程、それを妬んだり警戒したりする奴が現れる。少なくとも、今回の件は風紀委員や警備員を主役にしねぇとな。
もし、俺達が間接的にでも関わることになったとしても、対外的には『風紀委員や警備員に追従したorおこぼれを頂戴した』って形にしねぇと」
「・・・用心深いのね」
「そもそも、『シンボル』はボランティアだっての。・・・そういう形にしておけば、俺達が主役じゃ無くなる。脇役なら、その手の影響も最小限に抑え切れる。
『「シンボル」は風紀委員や警備員に頭が上がらない上に利用されてる』って形に収めりゃ、無意識的にでも俺達を見下す形になる。見下すってことは軽んじるってことだ。
侮蔑の視線を向けられようとも、軽視の視線を向けられても、それはそれで結構だ。それでそいつ等の気が治まってくれりゃあ儲けモンさ。
仮に、『追従』っていう態度が気に入らなくてどっかのバカ共が俺達にヤキを入れに来たとしても、俺達を舐め腐ってる以上どうとでもできると思うよ」
「(そこまで先を読んだ上での依頼・・・か。警備員でもある灰土さんを頼るのもその辺りに理由があるのかも。以前も思ったことだけど、指揮官としては見習うべき点が多いわね)」

“カワズ”の用心深さと先を読む力に、穏健派救済委員の指揮官的役割を受け持つ花多狩は感嘆する。

「・・・なら、ついでに1つ情報をあげるわ」
「へぇ。何?」
「以前から、峠が『ブラックウィザード』について調査していることは知ってるわよね?」
「あぁ。何時かの会合でも言ってたね」
「彼女から聞いた話だけど、昨日から雅艶と麻鬼が峠と共に『ブラックウィザード』の調査をしているようなの」
「雅艶と麻鬼が?確か、『ブラックウィザード』の調査は峠1人でやってた筈だよね?」
「なんでも、春咲さんの処分に心を砕いてくれた風紀委員の依頼で雅艶と麻鬼が・・・」
「桜の?・・・ちなみにその風紀委員は?」
「これは、他の人には内緒よ?・・・“風紀委員の『悪鬼』”よ」
「(債鬼・・・か!!)」

『シンボル』のメンバーの1人である春咲の処分に関わっていた風紀委員の1人が固地であることを、“カワズ”は今初めて知った。
あの“『悪鬼』”が何の理由も無しに救済委員であった春咲の処分に心を砕くとは到底思えない。考えられるとすれば・・・

「姐さん。もしかして、その“『悪鬼』”と雅艶ないし麻鬼は以前からやり取りしているのか?」
「それは私にもわからないわ。峠も今回初めて知ったらしいし」
「・・・そうか。・・・あいつ等も関わって来る・・・か。まぁ・・・何とかなるか。桜が居る以上あいつ等も敵対心剥き出しにはならねぇだろう。
そうだ。姐さん。今度穏健派や過激派の連中を集めて飯でも食いに行こうぜ。あれ以来、面と向かって話したことなんて無いよね。峠は桜に謝りに来たけどさ」
「・・・そうね。それもいいかもしれないわね。わかったわ。セッティングは私がするから、準備ができたらまた連絡するわ」
「了解」
「それじゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ(ガチャ)」

そう言って、“カワズ”は通話を切る。上空を見やれば、星の海が広がっていた。あれだけの数を包み込む世界の一部たる存在として、界刺得世は静かに闘志を燃やす。
今日をもって“超近赤外線”も完全にモノにしたことにより、“戦闘色”である【閃苛絢爛の鏡界】は更なる進化を遂げた。
<ダークナイト>への“追加実装”も、以前のプールと夕方の電話にて手配済。戦力や後始末として、現状使える手も殆ど打った。
後は、風路の決断と情報販売との接触。できるなら、後始末の一助となる可能性を考慮して情報販売の伝手を使って“彼女”とも交渉しておきたい所。

「(緋花・・・。テメェが本当に“ヒーロー”になりたかったら、“ソレ”は避けて通れない代物だ。“偶像”じゃ無い、テメェだけの“ヒーロー”ってヤツを確立しなきゃなんねぇ。
だけど、それは一時的に収めないといけねぇ。“ヒーロー”になるにしても一時的に収めるべきだ。緑川だって、ずっと“ヒーロー”をしてるわけじゃ無い筈だぜ?
一度“ヒーロー”になったら、否が応でもそれに纏わり付かれる。今の俺のように。“線引き”をしっかり引かねぇと、後々面倒臭いことになるぜ?
今のテメェは理解してねぇし、今後も理解することはできないのかもしれねぇけどよ・・・“英雄(ヒーロー)”は良いモンじゃ無ぇぞ?俺が知る“英雄”は・・・“戦鬼”だからな)」

昨日『マリンウォール』で破輩に言ったことは本心そのものである。色んな結果を出すために、誰よりも深く、深く思考している。
だから、思い出したのかもしれない。上空に広がる光景が“あの”星空の下での交錯を連想させたのかもしれない。
生涯忘れることの無い赤髪の少女との出会い。碧髪の少年は、痛い思いをした尻を摩りながら当時のことを脳裏に思い浮かべる。


『なぁ、少年。私は現状が気に入らない。「科学」と「魔術」。相反する存在が私の想いを抑え付ける。私はどちらにも縛られたく無い。私は望む。「科学」と「魔術」の融合(カオス)を。
少年よ。偉大なる輝星よ。私の望みが叶うかどうかを君で試させて貰う。混沌の中で揺るがぬ力を持ち得る君になら・・・果たせるかもしれない。私も力を貸そう。
全ては最新望遠鏡で星を目一杯見るた・・・ゲフン、ゲフン』


「魔術・・・超能力とは違う異能の力らしいが・・・。所謂オカルトだよな。今もろくすっぽ信じちゃいないが、あの赤毛女が嘘を付いているようには見えなかったんだよなぁ。
そういや、あの時魔術師とか何とか言ってたなぁ。・・・もしかして、あの後に言ってた言葉があいつの名前か?確か・・・リノアナ・サーベイだったか?
リノアナ・・・か。キメ顔でわけわからん長話をするわ、股間を蹴り上げられるわ、銅を持たされた状態でブン投げられて尻を汚されるわ、散々な目に遭ったな。ハァ・・・。
あいつの言うオカルト・・・“お呪いみたいなモノ”・・・『惑星の掟<パーソナルプラネット>』とやらは、果たして今回の件でどんな光景を俺に見せてくれるのやら。
語感的に、超能力を発現するのに必須な『自分だけの現実<パーソナルリアリティ>』のようなモンか?よくわからん。・・・まっ、“その時”が来ればわかるか。んふっ!」


“その時”が来れば、偶然・必然全てを利用して可能な限り成し遂げてみせる。全ては自分に降り掛かって来る世界の愚痴(プレゼント)に応えるために。後は・・・なるようになる。

continue!!

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最終更新:2012年11月18日 18:36