強欲者の末路 Telescope.



 『魔女狩り』。
 中世において十字教の教えに背き悪魔と契約した人間――魔女を裁いた風習である。その過程において、多くの魔術師でない無罪の人々が裁かれたとして、十字教の負の歴史の一つとして有名な文化だが、魔術界においては別の意味を持つ。
 即ち、拷問技術の発達だ。
 確かに、魔女狩り裁判は証拠も何もない酷いものだった。しかし、それでも一般に語られているほど理不尽なものではない。確かに、悪しき魔術師も裁かれていたのだ。しかし、そんな魔術師はたとえ捕まったとしても何らかの反撃をする恐れがある。当然、拷問する側の魔術師もそのリスクを考え、必然的に拷問に使われる魔術的技術は発展していった。
 より肉体的苦痛を、より精神的苦痛を、そして、より魔術的苦痛を求めるようになっていったのだった。
 しかし、科学技術や倫理哲学の発達により『魔女狩り』の文化は幻想となった。元々負の文化であるという自覚はあったのか、現代においてはきちんとした魔女狩りの資料さえ遺されていない。よって、『魔女狩り』に使われていた拷問用・処刑用の魔術は現代の魔術師の解釈によって千差万別ある。
 まあ尤も、魔術界隈では『過去の事実における解釈の違い』によって同じ伝承を使っていても魔術の効果が違うのは間々ある事なのだが――…………。


 ロンドンの郊外に、『職人街』と呼ばれる一画がある。
 帽子やコート、靴、鞄、ベルト、その他ありとあらゆる革製品を取り扱う店舗が所狭しと並んだ町並みである。一つ一つの店舗の大きさはファーストフード店以下だが、その半数近くが王室御用達の認定を受けているなど、服飾関係の業界人からは密かに憧れられているエリアだったりする。
 魔術関係の服飾店も存在しており、拘束服や拷問具のジャンルでは知らない者などいないほどの職人、エーラソーンの自宅もこの職人街にあるという話である。
 ともあれそんな性質上、町並みは必然的にどこか大人びた、クラシックな雰囲気となり、歩く人も年配になってくる為、若年層の通行人など殆ど見られない。特に、未成年と思われる容姿の通行人など皆無に近い状態である。
 そんな町並みの中に、少女がいた。
 少女はブロンドの髪を肩あたりまで伸ばした、中学生くらいの少女だった。肌も白く、欧州人らしい容貌だったが、双眸だけが黒く、東洋人を思わせた。
 特筆すべきは、彼女の服装だろう。彼女の服装は……何と言うか、エロかった。布面積が極めて少ない黒革のボンテージを着用し、足には米軍払い下げかと思うような編み上げ式に黒革の意匠が備えられたゴツいブーツ、両手は鉄の枷に戒められており、左右の枷に渡って長い鉄製の鎖が繋げられていた。これだけ見たら、他人からは彼女が奴隷か何かに見える。
 彼女の名前はハーティ=ブレッティンガム。元々は処刑《ロンドン》塔にて罪人相手に拷問《オシオキ》をしていたのだが、最近は必要悪の教会《ネセサリウス》所属の魔術師として、もっぱら悪い魔術師相手に拷問《コウゲキ》をすることが増えてきたバイオレンス系少女である。

 既にほぼ日も暮れた職人街にて、ハーティはいつもはキツい眼差しを心なしか緩め、ほくほくした表情で歩いていた。
「ふふ。まさか本当に買えてしまうだなんて。中世の異端審問にて使われていた『絞首刑』の縄を再現した霊装。しかも、エーラソーンの新作!! これがあれば私の術式にも大分幅が広がりますね。うふ、うふふ……」
 ……訂正しよう。古めかしい縄の入った紙袋を持ってにやにや笑っている表情は、『ほくほくした』というより『危ない』と表現した方が適切である。
 魔術師とはいえ精精中学生くらいのハーティが、年代物の服に魅力を感じるような年代の人間ばかりが御用達の職人街に来ているのには、二つ理由があった。
 一つが、コレ。彼女は元 処刑《ロンドン》塔の拷問官だ。現在は魔術師として活動してはいるものの、現在も拷問官時代の相棒であった『偶像の理論を用いた拷問具型霊装』は欠かせない。その関係上、彼女は自分の命を預ける霊装の修理や新たな霊装の購入のため、頻繁に此処を……正確には、エーラソーンの魔道具店を訪れていた。
「うへぇ……。こんなのが今回のアタシの相棒なんスか?」
 と、ハーティの背後から一人の少女の声が聞こえた。ハーティが声のした方を振り向くと、そこには一昔前の日本の女子学生のような服装をした、金髪碧眼の少女が立っていた。
 ハーティは、『嫌なモノを見られた』と己の迂闊さを軽く恨みながら、疲れたように溜息をついた。
「……随分な言い草ね。私だって、こんな日に『仕事』なんて嫌ですよ」
 ……もう一つは、彼女の『仕事』の待ち合わせの為だ。


「ええと、指令の方を伝達しますが、その前にアタシの自己紹介をしても構わないッスかね?」
 誰もいない、夜の公園の片隅で金髪の少女はそう切り出した。少女は綺麗なゴールドの髪を腰ほどまで伸ばし、おそらく日本の学校の制服を模したと思われる紺色のセーラー服にブレザーのような上着を、下には一昔前のスケバンよろしく脛あたりまで伸ばされた同色のスカートを履いていた。
「お願いするわ。私、貴女がどこの所属かすら分かりませんから」
 スケバン少女の問いかけに、ハーティは僅かに頷く。
「アタシの名前はヴィクトリア=ベイクウェル。一応、アナタと同じ『必要悪の教会《ネセサリウス》』の一人ッス。使用術式は主に北欧神話の豊穣神『フレイ』にまつわる術式ッス。一応、女子寮で何度もすれ違ってますし、言葉をかわしたこともあるんスけど……、覚えてないッスか。そうッスか」
 はは、とヴィクトリアは悲しそうに笑った。『言葉を交わしたこともある』という言葉に、ハーティはバツの悪そうな表情を浮かべる。彼女はあまり人付き合いのいい方ではない。よって清教でも知り合いは一緒に仕事をこなした何人か以外は殆どいないし、拷問官時代も何人かの上司以外とは会話さえ交わしたことはなかった。清教に入ってからは事務連絡などで知り合い以外と会話する機会も増えたが、そうした場合でも彼女は話した相手の情報は興味がなければ覚えていなかった。
「で、私と貴女が呼ばれた『仕事』というのは何なの?」
「ん~、簡単に言うと、『身内の後始末』ッスね」
 ヴィクトリアはつまらないことを話すようにぽりぽりと頬を掻き、
「最近、ロンドンの郊外で幼い少女が行方不明になる事件が多発してるんスよ。で、それをどっかのジーンズ店主に調べてもらったところ、どーも魔術的、物理的痕跡が足らなすぎるっていう結論に行き着きましてッスね、そこから証拠が意図的に消されてる可能性に行き着きまして、『これって内部の犯行じゃね?』という運びになった訳ッス」
「なるほど、清教の魔術師が犯人である可能性が高い、と。で、犯人に目星はついているんですか?」
 退屈そうに紙袋の中の縄を弄っていたハーティは、ヴィクトリアの話が区切れたタイミングで声を上げた。対するヴィクトリアは軽く頷き、
「まだあんまり。これからそこの『詰め』に入るんス」
 ズコォ!! とハーティが体勢を崩した。
「駄目じゃない……。どうせなら、そのジーンズ店主に全部やらせればいいんじゃないですか? 大体あのジーンズ屋、予約ばかりで人が入ってるところはあまり見たことないし」
「いやぁ、そうしたいのはヤマヤマだったんスけどね。何だかジーンズ店主が『駄目だから!! 大体俺はこの前もわざわざ世界中飛び回ってルーンの秘密やらなにやらに首突っ込んでんだよ! これ以上は本当に本業に響くから駄ぁぁぁぁ目!! それに佐天ちゃんから送られてくる催促のメールがもう本場ブリティッシュ並みのバリバリ英罵倒語と化しちゃってるから!!』とか言って徹底拒否の構えに入っちゃったんスよねー。あ、あと『清教内部に調査しにいくとかどう考えても部外者の領分越えてるだろうが!』とか怒ってましたね」
 ジーンズ店主がどういった人間なのかは分からない二人だが、部外者と言うことを鑑みれば、少なくとも常識的に考えたら尤もな言い分である。しかし、ヴィクトリアもハーティも自分が仕事をしたくないが為に『ジーンズ屋の店主はなんて心が狭いんだろう』と呆れることにした。
「はぁ……。もう良いです。それじゃあ、とりあえず貴女の知ってる情報を聞かせて」
「とりあえず、清教の中でもそれなりの地位を持っている人物が怪しい、というのは分かるッスよね? これに加えて、女の子が誘拐された現場では魔力の痕跡は全く見られなかったらしいッス」
「つまり?」
「恐らく、いたいけな女の子が警戒しないような『表』のポジションを持っていた、ということになると思われるッス。となると、犯人は必要悪の教会《ネセサリウス》の捜査網に強い干渉力を持ち、尚且つ『魔術師』以外の肩書きを持つ人物……、即ち必要悪の教会《ネセサリウス》所属の司教あたりが怪しい、という訳ッスね」
 ヴィクトリアの話を聞いて、司教……、とハーティの口から言葉が漏れた。
「司教に何か心当たりがあるんスか?」
「……いや、昔の上司を思い出してただけよ。そういえば、今も司教だったはずですし」
 軽く首を振って答えるハーティに、ヴィクトリアは『そうッスか』とだけ答え、
「それじゃあ、アナタの自己紹介もお願いしてもいいッスか?」
「あら、私のことは知ってるんじゃないの?」
「そりゃあ、名前や元の所属くらいは知ってますけど。使ってる霊装とか、術式とか、そういうのも知っておきたいじゃないッスか。これから連携する相棒《パートナー》としては」
 拗ねたように口を尖らすヴィクトリアにハーティは少しだけ笑う。
「そうね。とりあえず、私の使う魔術は道すがら話しましょうか」


 夜の道に、二人の少女の足音が響く。辺りは既にクラシックな雰囲気漂う職人街ではなく、緑もまばらで人気の少ない散歩道に差し掛かっていた。
『私の使う術式は、基本的には『持ち運ぶことの出来ない大型の拷問具を小型化した霊装』よ。たとえば「鉄の処女《アイアンメイデン》」。あんなもの、一々持ち運んでたらただの鈍器としてしか扱えないわ。そこで、「鉄の処女《アイアンメイデン》を構成している必要最低限の要素だけ抽出した霊装」を使ってるんです』
 手に持った札のような霊装で魔術的な会話を行うハーティに、同じく札のような霊装を持ったヴィクトリアが魔術的な会話で問いかける。
『方式としては、「歩く教会」なんかと似たようなモノッスか?』
『そうね。アレと同じように「偶像の理論」を使ったものが大半よ。というか、現代の魔術師が使う「拷問器具」なんていうのは、大体が「拷問・刑罰用の大型機械」の一部もしくはシンボルに偶像の理論を作用させて、オリジナルと同じ殺傷能力を与えたものばかりね。たとえば、私の持ってる長針なんかは、鉄の処女《アイアンメイデン》を構成する魔術的要素を抽出したものだから、一回刺せばそれだけで自動的に相手の身体に無数の針穴が開けられる仕組みになってますし』
 軽々と惨い説明をするハーティに、ヴィクトリアが顔を青ざめさせる。しかしハーティにとってこれくらいのえげつなさはむしろ序の口なのか、少しだけ心外そうな口調で返す。
『基本的に、「拷問具」っていうのは相手を生かさず殺さず、「情報を吐くだけの肉塊」にする為にあるものですよ? だから当然、無数の針穴が空いたとしてもどれも致命傷にはなり得ないわ』
『逆に、そっちの方がキツイかもッス……』
 これ以上道具についての話を聞いても自分の気分が悪くなるか、相手の機嫌を損ねるだけだと判断したのか、ヴィクトリアはそれ以上何も聞こうとしなかった。
『それじゃあ、次は貴女の使う魔術を教えてもらえます? 「フレイについての術式」……だけじゃ、流石に分からないもの』
『ああ、そうッスね。それじゃあ話しますね。……アタシの使う術式は、「幻影の王」っていう術式ッス。スウェーデンの有力者が、三代目スウェーデン王フレイの死後に塚を築き、「フレイはまだ生きている」としてその名声だけで国を三年間安定させた伝承を応用して塚状の簡易儀式場を作ることで「決して死ぬことのないフレイの幻影」を生み出す術式ッス。後は、勝利の剣とか魔法の船《スキーズブラズニル》とか。……ああ、あと裏技ですけどレーヴァテインもどきくらいなら使えますね』
 ハーティは静かに頷いた。基本的に魔女狩りなどの拷問魔術の専門であるハーティだが、北欧神話について何も分からないというわけでもない。まして、フレイは北欧神話の中でもかなりポピュラーな部類である。十字教の中でも北欧系の魔術が浸透している清教の一員である彼女が知らない道理などなかった。
『そういえば、さっきから大事そうに抱えている紙袋《それ》はなんですか?』
『ああ、これは「縄」よ。魔女狩りの時に、絞殺刑を執行する為に使用していた縄を魔術的に解析した一品。イギリスでは魔女狩りの死刑執行は首を縄で括る絞殺刑が多かったのです。だから、魔術で対抗する魔女に対して自然と縄の魔術的攻撃力も上がっていったの』
『はぁー……』
『で、この「縄」の開発には私も携わっててね!! 私は、中世の異端者に対する拷問では魔術対策に「魔力の循環阻害」が行われていたと考えているんです。その解釈を元に、この縄には縛った空間の魔力循環を阻害する仕組みが備わってるのよ!!』
(この服、寒くないんスかねぇ……)
 テンションが上がりまくって解説に熱が篭るハーティの話をスルーしたスケバン少女は、拳を握る新感覚SM系ボンテージ魔術師を見てぼんやりとそんなことを考える。なに、『縄で縛れば魔術が使えなくなる』とでも覚えておけばいいんでしょ? くらいに考えているスケバンだが、実はもっと奥が深かったりするのだった。
「で、今はどこに向かってるのかしら?」
 ひととおり説明しおえて満足したのか、妙に清々しい表情のハーティはケロっとしてヴィクトリアに問いかける。当のヴィクトリアも、その問いかけで北欧神話のどの神と対応させた水着を作れば冬の海でもバカンスが楽しめるんだろーとかアホっぽい思考の海から戻ってきた。
「えっと、今はロンドン郊外の『グリニッジ』に向かってますね」
「グリニッジ……って言ったら、旧王立天文台《ロイヤルオブザバトリー》があるところよね」
 ハーティが清々しい表情を一転、怪訝な色に変えて問いかけた。
 無理もない。グリニッジはロンドン郊外に位置している。同じロンドン郊外である職人街からはそこまで遠くないものの、グリニッジ周辺にある魔術施設など旧王立天文台《ロイヤルオブザバトリー》くらいしかない。そもそも大きな教会だってないのだ。そんなところに、イギリス清教の司教がいるなんて思えるはずもない。
 しかし、ヴィクトリアはそんなハーティの考えを読んだかのように微笑した。
「確かに、イギリス清教の司教、という線で行くと不自然かもしれないッスけど、そもそもそれはまだ推理の領域を出てないッス。そこで、旧王立天文台《ロイヤルオブザバトリー》に行って捜査の為の術式を用意しようという話になった訳ッスね。……まあ、あのへんは特に行方不明者も多いッスから、そこの調査もついでに任されてるんスけど」
「……なるほどね」
 行方不明者の多数出る地域に、中世からの魔術施設。底知れない悪寒を感じつつも、ハーティ達はグリニッジへと向かった。


 グリニッジ天文台――通称 旧王立天文台《ロイヤルオブザバトリー》は、天文台に偽装した魔術要塞である。
 勿論、天文台としての機能も有してはいるものの、その本領は魔術の構成を星座形式に翻訳し、簡易版大規模魔術に変換して放つことにある。
 たとえば、『炎を放つ魔術』をこの天文台を利用して使えば、『天空から放たれる巨大な火柱の魔術』に変換される、という訳だ。勿論、変換作業や翻訳の誤差の修正、星座を使うことによる使用条件の限定化なども考えると、おいそれと使える機能ではないのだが。
 この機能は初代天文台長であり自ら『宮廷付占星術師』を名乗ったジョン=フラムスティードによって整備され、大航海時代のイギリスの覇道を大きく補助した、と魔術サイドの歴史では語られている。
 現在も天文台としての機能は科学サイドの成長にあたり他の施設に移動して博物館となっているものの、『旧』王立天文台として魔術要塞の機能は此処に残り、天文台長という職業も魔術要塞の点検役として存続していた。

「……で、本当に此処で良いのかしら?」
「ハイッス。これから、この天文台の魔術機能を使って捜索魔術を大規模変換し、この周囲一帯の行方不明者に魔術的な関連付けを行って犯人の特定を行うッス。使用魔術は北欧神話系ッスから、アタシの術式にあわせてもらう形になるッス」
「……ははぁ、なるほどね」
 すらすらと今後の動きを説明するヴィクトリアに、ハーティは納得した様子で頷いた。
「貴女は、北欧神話系のスペシャリスト。そして私は、偶像の理論のスペシャリスト。今回使う『簡易大規模術式』の大元となる術式は貴女がいないと使えないけど、偶像の理論のスペシャリストである私がいないと作業時間がかさみ、却って捜査は遅延してしまう。私が呼ばれたのは、翻訳作業を円滑に進めるためですね」
「そういうことッ……、」
 言いかけたヴィクトリアは、そこで即座に懐から布を取り出した。
 布は即座に展開されると急速に盛り上がり、大きな船となった。
「これは……?」
「フレイの持つ霊装の一つ、魔法の船《スキーズブラズニル》ッス。普段は布切れッスけど、魔力を流せばこのとおり」
 瞬間的に現れた船の陰に隠れるような位置となったハーティとヴィクトリアは、船の端から炎が流れていくのを見た。……明らかに指向性を持った、魔術特有の炎だ。
「……どうやら、私たちに捜査をされると困る輩がじきじきに来てくれたみたいですね」
 ハーティは懐から長針や鉄槌を取り出し、
「確か、貴女の切り札は『塚』を作って、そこから『幻影』を生み出す魔術だったわね。とすると、準備の他にも防御用の術式や隠蔽用の術式が必要なんでしょう? 私が接近戦で時間を稼ぐから、貴女は一刻も早く『幻影の王』を生み出して合流するのよ」
「え、あ、できれば『幻影の王』を出した後も援護射撃に徹したいなって……」
「冗談ですよね。下手に『幻影の王《たて》』から離れたら、いざという時危ないのは貴女よ。最低限中距離でいなさい」
「だぁーもう! だからアタシは後方支援担当でそもそもこういう風に戦線に立つこと自体おかしいんスって!!」
 『そもそも今回のお仕事だって戦闘なんか依頼に含まれてなかったのにぃー!!』と世の不条理を嘆くヴィクトリア。しかし、嘆いても敵は待ってくれない。魔法の船《スキーズブラズニル》は強固だが、それでも無限の防御力を誇る訳ではない。意を決したハーティは、船の陰から躍り出て、そこで愕然とした。

「……ノーランド…………司教……!?」

 そこには、彼女のかつての上司が佇んでいた。

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最終更新:2011年09月03日 12:40