【名前】斗修星羅(としゅう せいら)
【性別】女
【所属】科学
【能力】倫理転換(モラルコンバータ) レベル4
【能力説明】
精神系能力に分類される「洗脳能力(マリオネッテ)」の亜種。
掻い摘んで言えば、相手の倫理観(善悪に対する価値観)を操作し、命令を遵守させる能力。
対象の意識を混濁させ思い通りに操ったり、対象の意思に反して行動を強制させる同系の能力とは一線を画しており、
相手の倫理観を操作した上で、「そうする事が人として正しいのだ」と対象が自発的に考え、命令を実行するという過程を経る。
譬えるなら、カルト宗教の教祖が時間をかけて信徒を洗脳する術を、能力によって一瞬の内に完了させるのである。
虫も殺せないような善人に無差別テロを命じる事も出来るし、悪辣の権化のような人間に無償の奉仕(ボランティア)をさせる事も可能。
善悪の転換のみならず、微小な良心の増幅やそれに伴う罪悪感の喚起にも応用が効く。
倫理観の書き換えは対象本人には実感すら湧かないので、以前の人格と関わりなく「自分は生来こういう人間だった」と思い込む。
といっても恒久的な洗脳ではなく、書き換えられた倫理観も変わらぬ周囲の環境や生活習慣により、人にもよるが一週間ほどで以前のものに引き戻されていく。
同系の中でも稀少かつ強力な能力だが、その性質上洗脳に掛り易い者とそうでない者が分かれているという欠点を抱えているが、
彼女は洗脳の強度に段階を付ける事で「耐性」を持つ人間を選り分けた上で、「堕とす」のに適切な強度を再設定するという戦法でこれをカバーしている
(これは耐性のない者に無闇に強大な干渉力を持った洗脳を施した場合に、倫理観の急転換に精神が耐えきれず崩壊するのを避ける意味合いも大きい)。
フェイズ1:精神的防御に乏しいごく普通の一般人が対象。善悪についてこれといった自意識がないため最も御し易い。
フェイズ2:警備員や風紀委員といった治安維持に携わる人間、また特定の宗教の敬虔な信徒など既に精神的拠り所のある人間が対象。
フェイズ3:前段階で対処しきれないほど確固たる意志を持った人間、また恒常的に電磁バリアを展開出来るほど高位の電撃使い(心理掌握同様、相性が悪いらしい)が対象。
フェイズ4:出力全開。理論上の段階であり、彼女自身一度も解き放った事がないが、その理論値を見る限り『最早洗脳などという生易しいものではない』と開発官が評すほど、らしい。
有効射程は彼女を中心に半径60メートル。任意の対象に発動する事は勿論、一つの命令に限れば範囲内にいる彼女が認識した全ての人間を同時に洗脳する事も可能。
「堕ちた」者は彼女曰く感覚で分かるらしく、抵抗する人間の無力化を予め命じておいて、身動きが取れない耐性持ちを上位強度の洗脳で籠絡する事で、
集団戦においても高い制圧力を発揮する。洗脳強度の切り替えについては、アンティークの砂時計を補助装置として用いている。
【概要】
明知中等教育学院の3年生で二部クラス。同学院の風紀委員に所属しており、「明知のヴァルゴ」を冠する黄道十二星座の一角を担う。
2年次には既に支部のエースとして、目に付いた「悪」を片っ端から捕縛・矯正する事で知られ、
ある意味ではそれ以上の「巨悪」として君臨する「女帝」又は「暴君」等と呼ばれ畏れられていた。
一部の者にとっては明知の「黄金時代」、また別の者にとっては「暗黒時代」と当時の評価は真っ二つに分かれるが、その実力は本物であり、
前リーダーの卒業と彼女の進級に伴い、同支部の次期リーダー就任は内定していたという。
しかしその独裁とも言える取り締まりに反発した一部クラスの不良グループにより、卒業式の当日に校内抗争が勃発。
延べ76人を病院(主に精神科)送りにするという伝説(学園側の体面的観点から、生徒にはかん口令が敷かれた)を打ち立てるも、自身も乱戦の最中背後から撃たれ、瀕死の重傷を負い緊急入院。
奇跡的に一命は取り留めたが、学院長直々の「見舞い」で告げられたのは『やり過ぎだ』という苦言と一学期間の自宅療養(という名目の謹慎処分)、
二部クラスへの降格(但し学院側の要求により、卒業までに一部クラスへ昇格するよう指導的に義務付けられる)、「リブラ」の二つ名の剥奪といった厳しい処罰だった。
これまで学院のために身を尽くしてきた事が、結局は疎まれ、蔑まれるだけの行為でしかなかったのかと。
自身の価値観だけで善悪に白黒を付けようとするなど、思い上がりでしかなかったのかと。
日に日に募る自己嫌悪に押し潰されるように、その苛烈な性格は鳴りを潜め「何が正しかったのか」すら分からなくなっていった。
そして夏休みが明けた二学期の始業式、以前自身が冠していた「リブラ」の名を継いだ一人の少女――
白雪窓枠と出逢った事で、彼女の価値観に劇的な変化が訪れる。
その日からは風紀委員活動と白雪と過ごす時間、一部昇格への最短ルートである「決闘無間地獄」の三足の草鞋を履く学院生活が始まった。
自分の生き方を変えるきっかけとなった白雪との出会いに感謝しており、これからは「白雪とその周りの世界を守る」為に自身の能力を使うと心に誓い、
「リブラ」こそが自身の「正義」の象徴であるとして、空位だった「ヴァルゴ」の名を戴くに至った。
以前の自分とは全く異なる白雪の姿勢に感化され、実際にはそれ以上の感情すら抱いている。しかし周囲が自分に向ける「目」については自覚しているため、
白雪を自分の問題に巻き込まないよう、迸る感情を抑えて親密「過ぎる」関係に見られるのを避けるよう努力している。……あくまで本人的にではあるが。
(一緒にお昼を食べたり、休み時間の度に一部クラスを訪れたり、校外パトロール中に彼女を気づかれないよう学生寮までボディーガードしたり……等)
しかし白雪との関係を断ち切れない点で、根本的に彼女に甘え、依存しているのは事実である。
また恋は盲目なのか、白雪の抱える内面的な問題にも気づけておらず、度々空気を読めない空回りな発言をしては、苦笑いを浮かべられている。
白雪に「
恋人」が出来たと知ってからも、彼女との関係は変わりなく続いている。「恋人」については内心穏やかではないが、白雪を想う心と彼女を守るに足る力を備えている点で認めている。
既に居場所などないだろうと覚悟していた風紀委員での立ち位置だが、彼女に代わるリーダーとして支部をまとめ上げた「とある男子生徒」の計らいにより、風紀委員の籍は留め置かれたままであった。
予てより彼女の「右腕」を自称する少年には度々「女帝」の返り咲きを懇願されているが、多忙を極める新生活を理由に断っている。
「伝説」を知る同僚には一目置かれているが同時に警戒もされており、断片的な「噂」程度にしか耳にしていない新人の風紀委員達には、
その立ち位置を不思議がられていたり舐められていたりと、支部での関係性は少々ぎこちない。彼らとどう接していくのかが、当面の課題の一つであるだろう。
因みになりゆきでお茶汲みは自分でするようになり、お茶っ葉の銘柄や美味しい淹れ方に詳しくなった事が密かな自慢だったりする。
やり直すチャンスを残してくれた「彼」に、自分にできる範囲で報いるにはどうしたらいいか、そして今の自分が果たすべき役割とは何なのかを悩みつつ、窓際の席で慣れない書類整理に追われている。
その傍らで怯えや恨みの視線に晒される校内パトロールにも積極的に出ていくが、心の何処かで「白雪に会えないか」と期待している自分がいる事を自覚し、勝手に凹んでいる。
(実際にパトロール中に白雪を見つけても、周りの目を気にしてか「風紀委員」として接するように努めている)
戦闘においては、自身の大能力による制圧力に加え、生身の格闘能力についても合気道と太極拳を齧っているらしく、柔と剛を使い分ける体術を駆使する。
尚『決闘無間地獄』では自身の誓いを守り、能力は使わず持ち前の体術のみで戦う事になる。戦績はあまり芳しくないが、愛する白雪の待つ夜空の高みまで、彼女の戦いの日々は続く。
【特徴】
残念「美人」という形容が相応しく、腰まで届く艶のあるストレートの黒髪に同色の瞳、整った顔立ち。
身長165センチ体重47キロと、およそ中学三年には似つかわしくない抜群のプロポーションで、胸部に関しては最早某第三位の嫉妬で雷が落ちるレベルに達している。
登校中は制服一式と星屑を模した髪留めを挿し、ネクタイにも同様のブローチを付けている。しかし学生寮では臙脂色のジャージという残念っぷり。
また懐には懐中時計ならぬ、紅い粉末を用いた古びた砂時計を忍ばせているが、これだけは白雪に訊かれても「秘密」の一点張りである。
【台詞】
人称は「私」「貴方」「あの人」等。また、黄道十二星座のメンバーに対しては名前を知っていても「星座名」で呼ぶ。
例外的に白雪には「白雪さん」、心の中では「ヒメ」と呼び慕っている。白雪の「恋人」に対してはせめてもの抵抗なのか、度々白雪の「騎士(ナイト)様」と呼んでは茶化している。
「抵抗は『悪』よ。大人しくお縄に付きなさい。そうね、まず貴方達には二人組になって貰いましょうか。“一番近くにいる人を拘束しなさい。『善い』のよ『善い』の、抵抗する人がいたら皆で協力して力ずくで取り押さえると『善い』わ”」
「この『リブラ』の眼が黒い内は、この学院に『悪』をのさばらせたりなんかしない。文句があるならかかってきなさい、片っ端から矯正してやる!」
「白雪さん、一緒にお昼どう? 実は弁当を多めに作り過ぎちゃって……うん、今日もまたなんだけど。美味しいお茶もあるから、良かったら……、あら……いたのタウロス。え!? 『彼も一緒に』ってちょっと待って白雪さん!!」
「ち、違うのよ。これは同じ黄道十二星座のよしみでいや別に彼女が特別って訳じゃないんだけども彼女が無事に寮に帰れるかを見届……警護してただけで、別にサボってた訳じゃあ……。さ、さあ張り切ってパトロールの続き行ってみましょう」
「白雪さん、今から帰り? 私は風紀委員の内勤で最終下校時刻ギリギリまで残らないとだから……タウロス、白雪さんの事宜しくね。……、
(もし彼女に何かあったら、どうなるか分かってるわよね。ナ、イ、ト、さ、ま……?)何でもないのよ白雪さん。それじゃあ、また明日ね」
「……だから私は誓ったんだ。私の、『ヴァルゴ』の正義は『リブラ』たる貴方。貴方こそが私の正義、そのもの。だから、貴方は貴方のままでいて。
私の正義が、もう揺らがないって信じていられれば、私はどんな困難にだって立ち向かえる。乗り越えられる。貴方と、……貴方の騎士様と一緒なら」
【SS使用条件】
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最終更新:2013年03月16日 22:50