大事な親友が捕らえられている姿を目にして冷静沈着に動ける程私はお利口さんじゃない。だから、荒れ狂う感情のままに紫電を敵へ迸らせた。
「ちっ!外したか!」
「お前ぇ・・・!!」
運が良かったのかこっちの精度が悪かったのか紫電の奔流は敵を貫く事は無かった。だけど視歩から離せたのはグッジョブ。
ほんの少しだけ頬を緩めた私の目に映る敵さんは物凄く悔しそうに呻きながら睨み付けて来る。
そんな声出していいの?まあ下衆風情に似合う三下台詞らしいと言えばらしいけど。
「電撃使いか!」
敵はサファリジャケットに隠れる腰から二丁の拳銃を取り出し、銃口を私へ向け発砲した。何て愚かなの。私にはそんなもの効かないのに。
「!?」
「下衆風情が、能力が効かないからって銃(ソレ)で何しようとしてんの。知ってる?私は銃弾も避けて通る怖ーい女だって・・・」
「知るか!」
(拳銃を連結!?なんかヤバい!?)
電磁装甲によって放たれた銃弾は全て私を逸れて後方の壁に着弾する。敵の持つ拳銃や今の静止状態を考えると、どの方角から打ち込まれても全く問題無い。
そんな安易な考えを撃ち砕くかのように敵は二丁ある拳銃を変形させ連結させた。腐っても学園都市製。何が秘められているかわからない凶器を眼前に、私は電磁装甲を展開しつつ磁力操作で回避行動を採った。
(弾道を逸らせない!?あの銃弾、何でできてんの!?)
私の判断は正解だった。合成樹脂か何かでできてるのか。私の電磁装甲で逸らせなかったとなるとちょっと面倒ね。
丁度周囲には爆破されて転がっている残骸が多くあるし、磁力操作で壁として使おう。
「あんた一体何者よ!?」
「俺が何者かって?別に何でもいいんじゃねぇかな。どうせ、見ず知らずの他人の事なんかろくすっぽ覚えもしねぇだろ、電撃使い?」
「そうね!下衆風情の顔なんて即刻記憶から削除したいわ!」
鋼鉄の残骸を幾重にも束ね狙撃に対する壁として前面に展開する。敵の銃弾は鋼鉄をも撃ち抜くけどさすがに束ねた壁は突破できないみたい。
磁力操作で空中を縦横無尽に駆け回る私はできるだけ敵を視歩から遠ざけるよう立ち回る。あの男の能力は私に通用しない。
ならば視歩を盾にさせない限りこっちの方が圧倒的に有利。今度こそあの下衆風情に電撃を叩き込んでやるわ。
「今度は外さないわよ。食ら・・・痛っ!」
再び右腕に迸らせた青白い奔流を放とうとした瞬間脳内を駆け巡る強い痛み。そのせいでまた電撃が外れた。
相手の異常な反応の良さも気になるけど、それ以上に私の脳内で発生した痛みがさっきより強くなっている事が気に掛かる。
相性的に精神系能力者には有利に立ち回れる筈の私の脳内で起きている能力同士の衝突。それが何を意味するのか今の私には判断できない。
「あんたの能力・・・一体何なの!!?」
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普段なら『一体何なのだって?そりゃ俺の能力は神経細胞に干渉するタイプだから電子や脳内分泌物質なんかを中心に操作するタイプと一緒くたに考える方がおかしい』って答えてやってもよかったんだが今はそれどころじゃねぇんだ。
(苦えええええぇぇぇぇ!!苦えええええぇぇ!!キャンディーで緩和キャンディーで緩和)
激烈な苦味が俺の舌を襲う。電撃使い相手に戦う際は連中が行動前に振り撒く兆候をいかに察知するかが生死を分けるからな。
そのために俺は擬似的に共感覚を発現してる。共感覚ってのは『音に色を感じる』とかで有名なアレだ。どういう風に発現してるかって?そりゃアレだ。
五感の一つ触覚を鋭敏化させ、感じ取った兆候を味覚における苦味に転化してるわけだ。触覚の鋭敏化は例えば痛覚が発生した時の差し止め処理がクソ面倒なんだよ。
その点苦味はキャンディーの甘味でいくらか緩和できるんだ。さすが俺の味の友キャンディー。最近キャンディーの食べ過ぎで虫歯になってるのはここだけの話な。
(暗示が効かねぇ以上茶髪女の能力そのものを抑え込む事は無理だ。だが、網様一座は暗示だけが取り得じゃねぇし、お前の能力も電子だからといって何でもできるわけじゃねぇだろ!)
電撃使いは電子を制御する能力者だ。当然自分の体内を巡る生体電流にも干渉できる奴は多い。だが電子を操れるからといって何でもできるわけじゃねぇ。
俺の網様一座に読心や奥底に眠る記憶への干渉要素が無いようにな。例えば、そうだな。痛覚の遮断とかだな。
(今まで数多くの電撃使いと戦ってきたが、その中で痛覚を遮断できた電撃使いは特化型を除けば一人もいなかった。
電子が絡むもんなら何でもかんでも操れるというなら痛覚信号を書き換える事で戦闘中でも痛覚無視してとことん戦り合える筈だ。
映像で見ただけだがあの超電磁砲でも戦闘中に痛覚を感じていた。俺の見立てだとこれは精神系の分野になるのが一般的のようだが)
その差異はどのような理由で発生するのか電撃使いじゃない俺には断定できねぇが、あの茶髪女が生体電気に干渉できるなら俺は神経細胞に干渉できる。
今俺が必死こいてやっているのは女の脳内にあるフィルターを弱めて痛覚を激烈化させる作業だ。まあ相手もかなり強い電撃使いみたいで進行具合は正直鈍い。
押し通してもいいが・・・まさか
チャイルドデバッカーにこれ程の使い手がいたとは。侮り過ぎていた。
(押し通すより逃げに走った方がお利口さんだ。どっちにしろ相性は悪い!『最初から殺すつもりは無かったんだ』しな)
俺がこうやって思考を纏めてる間にも相手は破壊してできた残骸を、お得意の磁力操作で周囲から集めてやがる。
何時も電撃を放とうとした瞬間に激痛を発生させて、磁力操作の時は何もしなかったからな。どっちにしてもあの範囲攻撃はやばい。
「食らえ!!」
「くそっ!」
俺が扉のあった場所に飛び込むのと同時に凄まじい勢いで放たれた鋼鉄の残骸が地面へ衝突する。
その余波が俺の体を激しく打ち付け、鉄屑が俺の体にめり込む。サファリジャケットを着ていなかったら今頃あの世行きだったかもな。
どうなるにせよ今のところ連中から逃れる手立てが無い。ったく俺の能力も大概だと思ってたが、連中にも俺に負けず劣らずの特殊な能力者がいたもんだ。
これなら
木原乖離も相当手を焼いているだろう。いい気味だ。とっとと死ねってんだあのクソ野郎。
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激しい衝突音と破壊音を研究所内部に響かせながら私は樹堅と連絡を取り合う。戦況は私が有利に進めている。
頭痛は時間が経つにつれて酷くなっているけど、あいつに負わせたダメージの方が勝る。袋の鼠という言葉が一番適切ね。
「そう。危ないけど視歩はあの場に置いて来た。あの下衆風情に何か面倒な事されてるかもしれないし元凶を断たないと。
さすがに視歩を抱えながらあいつと戦闘するのはきついしね。視歩の容態?あいつが逃走すると同時に寝ちゃった。何か条件や制約があるのかもねあいつの能力」
「わかった。現在研究所内にいる危険人物はその青紫髪の男一人だけだ。何か異常があれば『凝視』もある罪木がすぐに見破る。安心してくれ」
「うん。子供達の救出は?」
「完了した。入場がすごく頑張ってくれたおかげ・・・・・・なんだが」
「どうしたの?」
「現在四方の救助のためにそっちへ戻った入場と連絡が取れなくなっている。というか意識を喪失した子供達と同様の状態になったみたいだ。生体反応はキャッチしてるから命に別状は無いけど」
「あいつ・・・!!」
私と戦いながら入場に精神干渉していたのか。想像してたけど範囲も広いな。早くケリを着けないと。
「粉原達は?まさか・・・」
「粉原と富士見は・・・同士討ちをしている」
「同士討ち!?もしかしてさっきから別方向から聞こえてくる爆発音って・・・」
「ご明察。その・・・富士見が突如粉原に襲い掛かったんだ。粉原の話だと粉原の事を四方と勘違いしてそのまま戦闘に陥ったらしい。
粉原の能力は炎を防げないがそこは持ち前の汎用性で何とかしている。だが、そのせいですぐには吉永の増援や四方達の救助へは行けそうにない」
「洗脳による足止めってわけね。・・・そうね。下手に他のメンバーが研究所に突入したらあの下衆風情の制御下に置かれるのは目に見えてるわ。ここは私が何とか・・・痛っ!!くぅ・・・」
「大丈夫か吉永!?」
「えぇ。何とか。あいつも私と同じ大能力者か。それにしても・・・」
あの男の能力の理屈が未だよくわからない。この頭痛もそうだし、さっきから敏感肌になったみたいに体中がザワザワしてる。
普段以上に感覚が研ぎ澄まされているっていうか。目も痛いし、痛みを伴う耳鳴りも始まった。今更男性恐怖症のせいってオチは勘弁してよね本当。
視歩を置いてきたのだって苦汁の決断。さっきみたいに戦闘中に起きた頭の激痛で視歩を庇えなかったら話にならない。
私が知っている精神系能力のどれにも当て嵌まらないあいつの能力。まさか噂に聞く心理掌握みたいな十徳ナイフじゃないわよね?
「まああいつを片付ければ全て済む事よね。ねぇ下衆風情さん?」
逃亡もここまで。それだけの気概をもって私はここに立つ。研究所の裏口付近。本来であれば研究所へ資材を運ぶ長い通路となってるそこに下衆風情は座り込んでいた。
「俺を片付ければ全て済む事かって?そうだな。その通りだ」
額から盛大に血を垂れ流し、打撲ないし脱臼でもしたのか右腕で左肩を抑えてる。体の各所も傷だらけ。何とか致命傷は避けてるって感じか。何かムカつくわね。
私は体中から青白い電流を迸らせる。威嚇というかこの男に恐怖を与えたいというか私達に危害を加えた事に対して少しでも後悔させてやりたい。
「覚悟はできてる?」
「覚悟はできてるかって?そんなもん当然だろ。『闇』に身を置いてかれこれ10年以上前線で活動してんだ。何時でも死は覚悟してるぜ?」
こいつ笑いやがった。絶体絶命の筈なのにこの期に及んで憎たらしいまでに清々しい笑顔を私に向けやがった。こいつ絶対狂ってる。
「全て済ませる前に少しだけ質問したいわ」
「何だよ」
「あんた何者よ?」
「俺が何者かって?『
トループ』のオールトループチーフだよ」
「『トループ』?オールトループチーフ?」
聞き慣れない単語だ。『トループ』の意味くらいはわかる。軍隊とか部隊とかって意味よね。
「俺もお前に質問したいな。全て済む前に。別にいいだろ?」
「何よ」
「どういう意味よ?」
下衆風情の表情が好奇心に満ちたソレに移り変わる。邪念とか悪意とか全く感じない興味津々さを全面に出した笑顔に。
「だってさぁ、お前あいつの部下なんだろ?あいつのポリシーに何も思わねぇのかよ」
「部下じゃないわ。友達よ。大事な・・・大事な親友よ」
「『闇』の中で生きてる身でありながら敵味方問わずどんな時も殺さないポリシーってどうよ。もし、そのせいで大事な連中にもしもの事があったらどうすんだよ。
トラウマから生まれたリーダーの個人的な思惑のせいで部下・・・じゃなくて親友の身に何かあったらどうすんだよ」
事前に調査したのか読心でもしたのか視歩の特徴についてよく知ってるわね。確かに視歩は目の前で人が死ぬのを異様に恐怖している。
それが過去のトラウマを端に発しているのも私は知っている。私も視歩のモットーに疑問を全く抱かなかったわけじゃない。
「だったら、親友の私が視歩のミスを補える程に活躍すれば問題無いわよね」
「それって答えになってない・・・」
「いいえ。これが答えよ下衆風情さん。あんたみたいな狂人には一生理解できないでしょうね。仲間を、親友を、かけがえのない大切な人を信じる私『達』の気持ちは」
罪悪感に囚われていた私。メンバーとして仲間と馴染めなかった私。そんな私を視歩は救ってくれた。助けてくれた。
「私は視歩に救われ、視歩に信じてもらえた。だったら今度は私が視歩を助けて、そして信じるの!
視歩なら研究者の身勝手な欲望によって苦しんでいるチャイルドエラーを救えるって!あんたの妄言なんか一笑に付す価値すら無いわ!」
きっとこれは私だけじゃなくて他の皆も多かれ少なかれ抱いている気持ち。視歩がリーダーだからこそ私達は纏まれている。
気障な台詞を吐いて、何時も余裕綽々で、でも本当は必死で、懸命に頑張っている視歩だからこそ私は・・・本人の前じゃこんなこっ恥ずかしい事口が避けても言えないわね。
「・・・・・・」
黙り込んじゃった。10年以上『闇』で生きているらしいし、私みたいな人間が明る過ぎるように見えるのかしら?
いけないいけない。こいつの挑発にのってつい熱く語り過ぎちゃった。気分を落ち着かせよう。深呼吸深呼吸。
「・・・・・・羨ましいなぁ」
「?」
「四方視歩が羨ましいったらありゃしない。俺なんか最近命を助けてやった女からずっと反抗的な態度取られるんだよ。
なぁ。どうすりゃいい?どうしたらお前みたいな反応を得られるんだ?継続的にキャンディーをお裾分けしてりゃいいのかな」
「そんなんで得られるわけ無いでしょ。馬鹿じゃないあんた」
予想外の反応を示してくる下衆風情に当惑する私。『でも、最低一人は俺のキャンディーを喜んで受け取ってくれたし脈はあるかも』とか、
『信頼つってもそういうのを毛嫌う人種山程いるし』とか、『そもそも精神系能力者がトップだとやっぱ部下に信頼されにくいんだよな』とかブツブツ呟いている。
こいつがトップ?という事は視歩と同じリーダー?うわぁ。こんな奴がトップなんて。えぇと・・・『トループ』だっけ。ご愁傷様。
「そうか。俺は馬鹿だったんだな。こりゃオヤジの言う通り社会勉強を俺なりのやり方できっちりこなしていかねぇとな。上層部のクソ野郎共に足下掬われない程度に邁進してやるか」
「ねぇ。社会勉強をこなす未来があんたにあると思ってるの?」
「あぁ。あるさ。こんなとこで終わってやるかよ。腐っても俺は『刺客人』と呼ばれた男だぜ?未来が無い?ふざけろ。まだやれる。どうとでも、何とでもしてやる」
「『刺客人<イレイザー>』・・・!!?」
『刺客人<イレイザー>』。その名を聞いた瞬間戦慄が私の背筋を走る。きっと通信機越しに私達の会話を聞いている樹堅も同じ感覚の筈。
こいつが『闇』に生きる者達の中でも有数の危険人物と噂される男?あくまで噂だから誇張表現が入っているのは否めないけど、凄腕の刺客として名を馳せているのは確か。
長年『闇』の深いところを渡り歩き、その過程で学園都市に根付く色んな『闇』を知っているとも聞く。
「つーか狂人って真正面から言われるとグサッとくるな。何だよ。俺なんかより木原乖離の方がよっぽど狂人だっつーのに」
「!?あんた。今何て言った?」
「あっ」
こいつ。今聞き捨てならない事を言った。何で木原乖離を知ってるの?もっと言えば何でチャイルドデバッカーの一員である私の前で木原乖離の名前を出したの?
「・・・これも駄賃の足しってやつか。狂人相手にプンプン怒るのはいいけど俺レベルでそこまで熱くなるなってお前に言いたいわけよ。
人臣上利立案『
暴走能力の意図的な発動実験』再開を企む連中の中で一番イカれてる木原乖離と対峙した時が思いやられるぜ。
木原一族の恐ろしいところは戦う相手の想像の外へ躊躇なく突き抜けて行ける外道性の所有者って点だからな」
「なっ・・・」
「悪い・・・とは言わねぇが余り信頼に重心を置き過ぎてると、『代用』がモットーの木原乖離に何時か足下掬われるぜ?あの野郎も木原一族らしく狂ってる。
科学が生み出した異端中の異端木原一族。何度か戦り合った事もあるが骨の折れる連中だったわ。・・・木原加群は例外だったかもしれねぇがな。何処行っちまったんだろ。
甲蟲部隊も木原乖離にすれば『代用』の利くオモチャだ。お前等の所に入り浸ってる吸血鬼も・・・な」
「あんた。木原乖離どどういう関係?」
「どういう関係?昔殺し合った関係だよ。途中で横槍入って有耶無耶になっちまったけどな。あの野郎に会ったら『とっとと死ね』と伝えといてくれ。
お前。俺をここまで追い詰めたんだ。いや。本当なら・・・。頼むからあっけなく木原乖離に殺られる真似だけは犯すんじゃねぇぞ。俺がクソ弱ぇみたいに野郎の目に映られちゃたまったもんじゃねぇ」
知られている。ううん。これは知り過ぎだ。
「ふぅ。お前等の話すっごくタメになったわ。これで俺の目的も達せられたわけだ。そもそも俺の目的はチャイルドデバッカーをどうこうする事じゃねぇしな。だから取引をしよう。・・・見逃すついでに罪木瞳の『凝視』対象から俺を外せ」
「!?」
瞳の事まで・・・。視歩から情報を得た可能性が一番高いけど、私達と木原乖離の因縁も知っているこいつは危険過ぎる。ここで仕留めないとチャルドデバッカーの行く末にも関わる。
今ここで・・・殺す。そうするのがチャイルドデバッカーにとっての最善。最善の筈。殺さないと。視歩のためにも殺さないと。・・・・・・『でも』。
「その代わり・・・よっと!取引が成立したなら俺はあいつを呪縛から解放しよう」
座り込んだまま憎たらしい笑みを浮かべていた『刺客人』は一転真剣な表情に移り変わり、左肩を抑えていた右腕を振り上げすぐ近くにあった非常ベルを叩いた。
非常電源があるため停電時でも正常に働くベルの音が研究所内に鳴り響く。突然耳を叩く音に私は混乱する頭を抱えながらまじまじと男が指で指し示す方向を見やった。
「そう。お前等にとってかけがえのない大切な人」
轟音と共に何かが破壊されるような振動が地面を揺らす。私は思い出す。思い出さずにはいられない。
『あの研究所そんなに広くないし、来ようと思えばそんなに時間は掛からない。私なら壁を吹き飛ばして駆け付ける』と私へ言い放った少女の言葉を。
「チャイルドデバッカーのリーダー。お前を救った四方視歩に掛かった呪縛を。暗部組織『トループ』のオールトループチーフが胸に抱く『起源』に誓うよ」
ネコ耳パーカーを暴風に揺らしながら壁を破壊し、私目掛けて突進してくる視歩の言葉を。
最終更新:2015年04月02日 22:51