「なっ・・・!!!」
「・・・!!!」

制服の代金を支払って視聴覚室に戻ってきた界刺と不動は絶句した。
そこには見るも無残な“服だったもの”が散乱していた。何か鋭利な刃物で切り裂かれたかのような形跡。
それは形製から借りていた彼女の服。どうやら界刺達が離れた短時間の間に
何者かが視聴覚室に潜入し、形製の服を切り裂いたようだ。

「おい・・・おい!!ど、どうすんだこれ!?こんな状態の服をバカ形製が見たら!!」
「まずい所の話では無いな。私達は奴の『分身人形』で大きな報いを受けることになる」
「冷静に分析してんじゃねえよ!!何落ち着いてんだ、お前!」
「落ち着かなければ何も見えん!!どうやらこの光景を生み出した犯人は、
私達が代金を支払いに玄関先へ向かった隙を狙って犯行に及んだのだろう。所要時間は6~7分程度。ならば・・・」
「そうか・・・。まだ犯人は遠くへは逃げてねえってことか!」
「その可能性が高い。得世!」
「わかってらあ。俺の『光学装飾』の出番だ!!アホ形製の肩を持つわけじゃねえが、
服に粗相をしでかした奴は誰だろうが許しゃあしねえ!!」

そうやって界刺は周囲から放たれている赤外線を探り始めた。界刺の能力『光学装飾』によるサーモグラフィ走査である。
幸いテスト期間中ということもあって、現在成瀬台に通う高校生のほとんどは帰宅している。
この現状で校内に残ってる人間で視聴覚室近辺にいる人間はまず怪しい。そう考え走査を開始した界刺だったが、

「はっ!!!・・・・・・」
「どうした得世?怪しい奴が見付かったのか?」

奇妙な声をあげた界刺を怪訝に思い不動は質問したが、界刺からの返答は無い。見ると界刺の顔中に汗が吹き出ている。

「!!ま・・・まさか・・・!!」

不動はある可能性を思い描いていた。今考えられる最悪の可能性を。そして数十秒後、最悪の可能性が2人の前に姿を現す。

「これはどういうことかな、バカ界刺?それに不動さんも?
何でこの男の記憶にあたしの大事なコレクションを切り裂いている映像があるのかな~?」

金髪のセミロングにハート型の髪留めを付けた、常盤台中学の制服を着た少女が視聴覚室に入ってきた。
後ろに成瀬台高校の服を着た男を引き連れて。どうやら男は彼女の能力で洗脳状態にあるようだ。

「い、いや、違うんだ形製!!これは不慮の事故というか何というか!!」
「さ、さすがは俺のライバル!!今から俺がその男を華麗にとっちめるつもりだったのになあ!!ハハハ!!!」

不動は慌てて言い訳を、界刺は笑いでごまかそうとする。しかし、彼女―形製流麗の冷め切った笑顔は一向に崩れない。

「フム。確かに不動さんの言う通り、この男が原因みたいね。第一、こいつは成瀬台の生徒じゃ無いし。
ついでに2人の制服を盗んだのもコイツよ。『不良っぽい奴の制服を盗め』って命令されていたみたい」
「何だと!?・・・というか何故私が不良扱いされているんだ!!心外極まりない!!」
「さ、さすがは俺の宿敵!!これから俺達の制服を盗んだ野郎をブッ飛ばすつもりだったのになあ!!ハハハ!!!」

思わぬ形で2人の制服を盗んだ犯人が判明したのをいいことに、話題転換を図る2人。だが、

「でも、それとあたしのコレクションがこんな状態になっているのって関係ないのよね。
そもそも制服の代金を支払いに行く時に一緒に持って出ていたら、こんなことにはなってないしなあ」
「「(俺(私)達の記憶も読んでいる!?)」」

すでに2人にも『分身人形』が仕掛けられている模様。これで形製には全てお見通しになってしまったのだ。

「す、すまん形製。私の軽率な判断のせいで」
「チッ・・・悪かったよ。」
「ううん。実はそんなに怒ってないよ。不動さんが罪悪感を感じているのも、この男を捕まえようと努力したのもわかっていますから」
「・・・俺はどうした」
「え?アホ界刺・・・君は何かしたっけ?」
「おい!」
「冗談冗談。君があたしの服を傷付けられたことに対して怒っていたこともわかってるって」
「・・・最初から言えっつーの」
「とりあえず、この高校にも風紀委員の支部ってあるのよね?なら、こいつはそこに突き出した方がいいんじゃないかな?
こいつの記憶を読む限り、制服を盗まれたのって不動さんとダメダメ界刺以外にもいるみたいだし」
「ああ、そうだな。そうした方がいい」

何とか形製も怒りを収めてくれたと判断した不動は、今後の対処について考えを巡らし始める。
対照的に界刺は外の空気を吸いたいと思い、部屋の窓に向かった。そんな2人に形製から最後通牒にも似た宣言が言い渡される。

「あ、でもその前に不動さんとボケナス界刺には腕立て・腹筋・背筋を300回ずつやってもらうから」
「「えっ」」

界刺と不動が反応した直後、『分身人形』による洗脳状態に陥る2人。
次に2人が我に返った時は筋肉痛が体中を襲っていることだろう。そんな2人を尻目に形製は微笑を浮かべながら小さく呟く。

「ホント・・・界刺達と一緒にいると退屈しないな」



「くそっ、今日はツイてないな」

ケーターショップで新しく赤色のスマートフォンを手に入れた初瀬は苦い顔をしていた。
何故なら、

「(あの苧・・・何とか・・・何でもいいや。あの女の横ヤリが無ければ、シルバーのスマートフォンを手に入れられたかもしれないのに。
今考えたらシルバーだったよな。まあ赤色でも問題無いけど。ハァ・・・)」

目当てのスマートフォンを手に入れることができなかったからである。
会話だけで振り返ると大体こんな感じ。


『あー!苧環様!これってどうです。シルバーのスマートフォン!!店内の蛍光灯を浴びてキラキラしてる~ハァハァ』
『へえ、いいわね、これ。私もこれにしようかしら?』
『あ~、お客様。大変申し訳ありません。こちらの品は在庫が残り2品しか無いんです。』
『あら、それなら私とこの子の2人で丁度ではなくて?』
『それが・・・あちらの男性のお客様がお買い上げの候補に挙げれていまして』
『ええ~。そんなあ~』
『・・・ということは、まだ決まっていないということよね?』
『お客様!?』
『(あ~、悩む悩む。シルバーもいいけど赤色も捨て難い。う~ん、う~ん)』
『ちょっと、そこのあなた!』
『へっ!は、はい!何でしょう?』
『あなた、このシルバーのスマートフォンを買うの?』
『へえ?あっ、これですか?いや、まだ決定というわけじゃ無いですよ』
『そう。ならいいわ。店員さん、このシルバーのスマートフォンを2つ下さいな。私とこの子の分で』
『ちょっ、ちょっと待って下さい。俺だってこのスマートフォンは結構気に入っ・・・』
『バチバチ!!!』
『うわっ!!』
『私達があなたの悩みに付き合う義理は無い。おわかりかしら?ということで、店員さん。早く契約書を持ってきて下さいな』


「(確かに俺の優柔不断が原因とはいえ・・・ちょっと乱暴的過ぎじゃないか?ハァ・・・)」

少し、いや、結構気落ちしている初瀬。家まで後10数分という距離まで来ていた丁度その時、

「(うん?あの茶髪の女の子・・・確かさっきの女の隣にいた・・・)」

初瀬の視線の先にはケータイショップで偶然会った少女―月ノ宮向日葵がいた。何やら危うい恍惚顔を浮かべている。

「ああ~太陽光を反射したミラー・・・いい。ハァハァ」
「(何か近づき難い空気だな。・・・無視して帰るか)」

関わると碌なことにならないと判断した初瀬は踵を返そうとする。その刹那、

「どりゃあああ!!!“速見スパイラル”!!!」
「きゃあああああ!!!」

男の大声と月ノ宮の叫び声が初瀬の耳に入った。振り返るとさっきまでいた少女の姿が無い。
初瀬は走り始める。月ノ宮を助けるために。

「(今の叫び声・・・あの女の子の声!!それに“速見スパイラル”って・・・まさか!!)」
『一般人への傷害容疑の参考人として取り締まりを受けているそうだ』
『ターゲットは不良だけじゃねえってことさ』

椎倉の推測を今一度思い出す。速見を貶めようとした犯人は、一般人へ危害を加えている。今も尚。
初瀬は走りながらも己の推測に肉付けをしていく。ならば、あの少女にも・・・

「(くそっ!!関わらないようにしようと思った俺の判断ミスだ!!頼む。無事でいてくれ!!)」

猛然と走り続ける初瀬。その時、初瀬の周囲にも及ぶ程の強大な電流が迸った。

「うわっ!!」

思わず目を瞑る初瀬。数秒後、電流の発信源から泣き声と大声が聞こえてきた。

「うぇ~ん。苧環様~。私、私、すっごく恐かったです~」
「もう大丈夫よ、月ノ宮。この私が来たからにはもう安心よ。本当にごめんなさいね。肝心な時に傍にいてあげられなくて」
「そ、そんなことないです。私が光るものに気を取られて苧環様とはぐれちゃったから・・・」

そこには月ノ宮ともう1人、ケータイショップで初瀬と口論になった少女―苧環華憐がいた。
そして、もう1人、成瀬台高校の服を着た強面の男―模部駄茂武蔵がのびていた。

「ビリ・・・ビリ・・・何か快感になりそう・・・。ビリ・・・」
「あら、そんなに楽しみたいのなら、今度は手加減無しの電流を浴びてみてはいかがかしら?」
「ちょっ、ちょっと待って下さい。そこのお二人さん!!そいつにはそれ以上手を出さないで下さい」

とどめを刺そうとする苧環を慌てて止めに入る初瀬。

「あら、誰かと思えばさっきケータイショップにいた・・・。ん?この男と同じ制服・・・。成程、こいつはあなたの仲間ということかしら?
そして月ノ宮を襲ったのは、さっき私達にスマートフォンを先取られたことに対する復讐といった所かしら?」
「ほ、本当ですか苧環様!?こ、こっちにこないで下さい。この卑劣漢!!」
「は?ち、違いますって。俺は成瀬台高校の風紀委員です!んで、そいつには聞きたいことが山程あるんです!」

苧環と月ノ宮2人から変な誤解をされ掛かる初瀬は慌てて自分の身分を示す。そして、2人に事情を説明する。

「へえ~。そんなことがあなた達の高校で。その速見という人もとんだ災難ね。そして、私達はそのとばっちりをくらったと」
「・・・そうなりますね。その点に関しては何の弁解もできません。本当にすみませんでした!」

苧環と月ノ宮に頭を下げる初瀬。もし苧環がいなかったら最悪の事態に発展していた可能性もある。
その可能性を頭に浮かべ、苦渋の顔をする初瀬。そんな彼に苧環から毅然とした声が掛けられる。

「勘違いしないで下さる?私は別にあなたの罪悪感につけ込む気は更々無いの。単なる事実として言っただけ」
「で、でも」
「それに、あなたは月ノ宮を救おうと動いてくれた。それだけで、私はあなたに感謝しているの。
だから、余り気にしないで頂戴。それに、他人に危害が及んだ時、咄嗟に『助ける』という選択肢をとれる人間って案外少ないものよ。
だからこそ、迷わず『助ける』という選択をしたあなたの行動を私は評価する」
「・・・!!ありがとうございます」

苧環の言葉を受け初瀬の気持ちも幾分軽くなった。月ノ宮も苧環の言葉に何回も頷いていた。
そうこうしている内に、けたたましいサイレンが3人の耳にも聞こえてきた。

「どうやら誰かが警備員に通報したみたいね。いずれここにも警備員が来るでしょう。
さて、これからあなたはどうするの?この男の処遇もだけど」
「とりあえず、この男は警備員に渡します。・・・まあ、その前にこいつを叩き起こして少しでも情報を聞き出すつもりですが。
今回の事態は一刻を争います。情報を聞き出した後、俺は支部に戻って今回のことを報告します」
「成程。賢明な判断ね」
「苧環さん。月ノ宮さん。ウチの騒動に巻き込んでしまって本当にすみませんでした。
とりあえず俺はこいつを叩き起こしますんで、2人は先にお帰り・・・」
「叩き起こすならこうした方が手っ取り早いわよ!」
「ギャアアアア!!!」

初瀬の言葉を中断するかのように苧環の電撃が模部駄を襲う。どうやら模部駄は、今の電撃で不完全ではあるが覚醒したようだ。

「苧環さん!?」
「ここまで来て黙って引き下がれるわけないわよ。ウチの派閥の人間に手を出した以上、
そいつ等には私の手で直接罰を与えないと気が収まらないわ!!」
「苧環様・・・私も同行させて下さい!!」
「月ノ宮!?あなた・・・」
「私のドジが原因ですし・・・何より苧環様のお役に立ちたいんです!決してお邪魔にはなりませんから!お願いします!!」
「月ノ宮・・・わかったわ。あなたの覚悟、しっかり受け取ったわ。あなたはこの苧環華憐が必ず守るから安心して付いて来なさい」
「はい!!」
「・・・」
「ということだから、私達もあなたに同行させて貰うわよ。ああ、前もって忠告しておくけどあなたの意見なんて聞かないから。
もうあなた達と無関係では無くなっているのだし。・・・それとも、ケータイショップでの続き・・・今からする?」

苧環と月ノ宮、2人の少女は何を言っても初瀬に付いて来ると明言した。初瀬はどこか諦めたような顔をしながら、

「・・・わかりました。わかりましたよ!とりあえず、ウチの支部までの同行は認めます。
但し、その後の同行については俺の一存じゃあ決められません。俺以外の先輩達次第だということは、前もって言っておきます!」
「いいわよ。とりあえずはそんな所で。あなたの先輩方には私が話をつけるから」
「苧環様・・・かっこいい」

成り行きで成瀬台高校風紀委員支部まで行くことになった初瀬、苧環、月ノ宮の3人。
警備員に引き渡す前に必要な情報は模部駄から引き出した(苧環の脅し込み)。
そして警備員に引き渡した後、3人は急いで成瀬台高校へ向かったのである。



成瀬台高校に帰ってきた初瀬とそれに随行する苧環と月ノ宮。
3人は早足で真っ直ぐ風紀委員支部に向かう。
その3人とすれ違ったのは、

「(・・・今の思考は?)」
「?どうしたでやんすか武佐君?」
「何だ、またナンパの血が騒いだのかよ?確かに今すれ違った女は結構上物だと思ったが。
ってか何でウチに常盤台のお嬢様連中が?」

荒我、梯、武佐の不良3人組。昼食+昼寝も終わったのでウサ晴らしも兼ねてゲームセンターにでも行こうかと話していた所、
いきなり武佐が立ち止まったのである。

「荒我兄貴・・・。兄貴の教科書やノートを潰した犯人の手掛かりがわかりました」
「何!?それはどういうこと・・・もしかしてさっきすれ違った奴等か?確か常盤台のお嬢様に紛れてウチの風紀委員が1人混じっていたが」
「はい、そいつの思考を視ました。ただ断片的な情報しか」
「いや、そいつはお手柄だぜ紫郎。で、どんな内容だったんだ」
「えーとですね・・・」

話し込む荒我達。そして、

「少し情報が足りねえなあ。・・・こうなったら。利壱!紫郎!これから風紀委員支部に行くぞ!!」
「え?どういうことでやんす?もしかして支部に殴り込みをかけて無理矢理・・・」
「ちげーよ!そうじゃねえ!支部の外から紫郎の能力で盗み視をするんだ。
内部の配置はわからねえが、風紀委員の思考を視れるなら問題ねえ。丁度風紀委員の1人が支部に入っていたばっかだ。
早足で向かっていた所を見ると、何か重要なことがわかったのかもしれねえ。
もしハズレでも風紀委員なら誰でも何かしらの情報は持ってそうだしな。仲間同士共有してる可能性だって十分にある!!」
「さすが荒我君!」
「さすが荒我兄貴!」
「お前らの賞賛はありがてーが、それは犯人の野郎をブッ飛ばしてからにしろ!
ここで無駄口をたたく時間も惜しい!さっさと支部へ向か・・・ん?」
「どうしたでやんすか、荒我君?」
「・・・?いや、何でもねえよ。さっさと行くぜお前ら!!」
「了解でやんす!」
「了解!」
「(何だ・・・?どっかから視線を感じたような?いや、この時間帯に校舎に残ってる奴なんてほとんどいねえ筈だし。気のせいか)」


3人が支部に向かった直後、荒我達が去って行った場所の近くに潜み、同時に荒我達の話を盗み聞きしていた者も程無く去っていった。足を少し引き摺りながら。



かくして有象無象共が数奇な運命を経て1つの流れに合流する。
それは、さながらいくつもの小さな支流が合流した、1本の本流のように大きなうねりを伴って。
本流となった流れは留まることを知らぬ激流の如く、あらゆるものを薙ぎ倒して突き進む。





「リーダー!大変です!!模部駄の野郎が成瀬台の風紀委員に・・・」
「ああ、知ってんよ。さっき報告を受けた。あの野郎、ヘマをこきやがって!!」

ここはとあるスキルアトが根城にしている廃墟。ここのスキルアウトを纏めるリーダーが部下からの報告を受けている所であった。

「他にも今日成瀬台に向かわせた奴も未だアジトに帰っていないようで。おそらくとっ捕まったと・・・」
「ヘッ、ってことは何だ。俺らが仕組んだってのもバレた可能性が高いわけだ」
「・・・どうするんすか?」
「どうもこうもしねえよ。こうなった以上風紀委員がいつここを攻めてきてもおかしくねえ。なら取るべき手段は1つ」
「まさか・・・風紀委員と闘り合うんすか!?」
「そうだ。お前らだってハナッからこうなる可能性ぐらい考えてただろ!!腹を括れ!!
あんな仲良しこよしの甘ったるい連中の鼻をあかしてやるんだ!!」
「そ、そうっすよね。俺らがあんな温室育ちの風紀委員なんかに負けるわけないっすよね」
「そうだ、そうだ!!」
「俺達の力を見せ付けてやろうぜ!!」
「「「おおおー!!!」」」

リーダーの威勢を受けて部下達も多少はやる気が出てきたようだ。ざわつき始める周囲。そこに冷や水を浴びせるかのように1組の男女がリーダーに声を掛ける。

「ちょっとちょっと。私達をほったらかしにして話を進めないでくれる?
確かに私は能力者狩り専門だけど、風紀委員とまで闘り合うなんて想定していないわよ?」
「俺も同感だ。確かにアンタの依頼を請け負っている身だが、これは契約の外側じゃ無えか?
それに、風紀委員と闘り合うとなるとアシが付く可能性があるんだがな」

1組の片割れ、ミリタリー系の服装を着る黒髪の少女の名は五十部晈花
もう一方の片割れ、190cm超の巨体に奇妙なマスクを被っている青年の名は捩野。
この2人は能力者狩りを専門に請け負う、または自身の意思で狩る者達。今はここのスキルアウトに雇われているようだ。

「・・・できるだけこうならないように慎重に事を運んでいたんだがな。バレちまったモンはしょうがねえ。
アンタ等は不服かもしれねえが、どうか力を貸してくれねえか?金は惜しまねえからよ。頼む・・・!!」

2人の抗議に対し頭を下げるリーダー。部下達もそんなリーダーに応じて五十部と捩野に頭を下げる。

「・・・いいだろう。一度請け負った仕事を途中で放り出すのは性に合わねえ。それに大の男が頭を下げる頼み・・・聞き入れねえわけにもいかねえしな」
「・・・ったく。しょうがないわねえ。捩野がOKするなら私も異論は無いわ!但し、追加料金はきっちり払ってもらうからね!!」

どうやら五十部と捩野も渋々納得したようだ。ホッとする部下達。そんな部下達の気を引き締めるようにリーダーは檄を飛ばす。

「さあ、ボケっとしてる暇は無えぞ!!奴等がいつここに攻めてきてもいいように準備を始めろ!!いいなテメェ等!!」
「「「了解!!!」」」
リーダーの号令を受けて部下達はせわしなく動き始める。五十部と捩野も同様に。
数分後、1人になったリーダーは、

「お前ら・・・今度は、今度こそ俺を見捨てないよな・・・?」


過去にスキルアウトのリーダーを務めた経験を持ち、仲間に裏切られ、それでもなお仲間を欲した結果、
新たに幾人もの不良を纏めあげ、再びスキルアウト集団を結成した男―重徳力はそう呟いたのだった。

continue!!

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年09月29日 00:38