「ん・・・」

ここは、第7学区にある病院の一室。怪我の程度から個室を与えられた少女―春咲桜―が、不意に目を覚ました。

「ここは・・・?」

春咲は、ギプスが巻いてある首を少しだけ右へ向ける。窓から差し込む月光から、今は夜だと判断した春咲が視線を泳がしていると・・・

「ムニャ~。春咲先輩…春咲先輩~」

春咲が寝ている寝台に寄り掛かりながら眠っている鉄枷をその目に映した。

「俺・・・俺・・・あんの“変人”に負けないくらい・・・もっと強くなって・・・春咲先輩を・・・。ムニャムニャ~」
「(・・・鉄枷、君・・・)」

ずっと自分に付き添ってくれていたのだろう。そして、寝てしまったのだろう。そう考えた春咲の頭上から・・・

「どいつもこいつも“変人”“変人”って。俺の何処が“変人”なんだっつーの。俺は至って普通だ」
「そう思っているのは、お前だけじゃないか?」
「!?」

2人の男女の声が聞こえて来た。それ等は、春咲にとって聞き慣れた声。

「か、界刺さん・・・?破輩・・・先輩・・・?」
「うん?・・・気付いたのか、お嬢さん」
「春咲・・・意識が戻ったのか!」

2人の男女―界刺と破輩―が、目を覚ました春咲に近付いて行く。

「2人共・・・どうしてここ・・・はぷっ!?」
「春咲・・・すまん・・・!!!」

どうしてここに居るのか。それを聞こうとした春咲の顔を、破輩が抱き締める。
謝罪の言葉と共に破輩の暖かさが春咲に伝わる。2人の少女は、しばらくの間抱き締め、抱き締められていた。

「・・・大した回復力っつーか、俺も結構驚いてるんだよ、お嬢さん?」
「えっ・・・。どういう・・・」
「何せ、今は深夜ももうちょっとしたら明けるって時間帯。つまり、君がここへ運び込まれてからまだ数時間しか経っていないんだよ。
さすがは、あのお医者さんと言った所かな?」

見れば、界刺も顔や腕に絆創膏を貼っている。彼も、この病院で治療を受けたのだ。

「ということは・・・」
「お姉さんに殴り込みに行ったのが昨日のことさ。見掛けによらずタフだねぇ。と言っても傷自体は深かったし、君の今の状態が全てを物語っているけど」
「・・・・・・」

春咲は、改めて自分の体を見る。一番重傷であろう右手には幾重にも包帯が巻かれ、顔中が絆創膏や包帯だらけ。服を着ていてわからないが、体中の傷にも。
少しでも動かそうものなら激痛が走る。それが、今の彼女の状態である。

「歯も何本かイッてるし、顔中も腫れちゃって・・・。女の子がしていい顔じゃ無いね」
「・・・・・・いいんです」
「ん?」

界刺の労わりの言葉を、春咲は自分の抱く覚悟で返す。

「私は・・・今の私がいいんです。こんなにボロボロになっちゃいましたけど・・・それでも欲しかったものが、掴みたかったものが、示したいことがあった。
これは、それを手に入れるための代償みたいなものです。界刺さん風に言うなら・・・自業自得です」

自分の身に刻まれた数々の傷跡と、それ等から発生する痛み。それが、今の春咲には自分が掴み取ったものが夢じゃ無いことの証明とさえ考えていた。

「界刺さん。これって・・・夢じゃ無いんですよね・・・?現実なんですよね・・・?」
「・・・あぁ。現実だ。俺が保証するよ、お嬢さん?」
「そうか・・・そうなんだ・・・。・・・よかったぁ・・・!!」

表情を変えるだけでもキツイ春咲は、それでも笑顔を浮かべる。自分の目に映る光景が、紛れも無い現実であることに安堵した故に。

「春咲・・・。お前・・・」
「破輩先輩・・・私の方こそすみませんでした。先輩達の思いを、私は・・・」
「いいんだ・・・!!もう言わなくていい・・・!!だから・・・!!!」
「・・・!!そ、そういえば、先輩がどうしてここに・・・?他の皆は・・・?」

抱き合ったままの破輩の言葉に春咲は甘え、先程抱いた疑問を界刺に問う。

「一応君ん所のリーダーに真刺が連絡を入れたの。そしたら、すっ飛んで来たの」
「えっ・・・?でも、こんな時間に寮から出られ・・・」
「そんなもん完全に無視だ、無視!お前が重傷を負ったって聞いて動かずにいられるか!!」
「とまあこんな具合さ。他の・・・穏健派の連中や過激派の連中で回収した奴等は、揃いも揃ってこの病院で手当を受けているよ。
入院するかしないかとか詳しいことは聞いていないけど、とりあえずは皆命に別状は無いそうだ」
「・・・お姉ちゃんと林檎ちゃんは?」
「君のお姉さんの方は、“花盛の宙姫”が逮捕した。今頃は、こことは違う病院で手当てを受けているだろうね」
「!!」

姉の逮捕という事実に衝撃を受ける春咲。確かに予想の1つとしては挙げられていた。だが、実際に現実として起こると・・・その衝撃は大きかった。

「林檎ちゃんについては、この病院に入院という形になった。俺がボコボコにしたからね。もちろん、俺のせいとは医者には言っていないけど」
「ボ、ボコボコ・・・?」
「うん、ボコボコ」

続いて知った妹の容態と、その状態にした界刺に春咲は少しだけ不満を漏らす。

「本当に容赦無いですね・・・あなたって」
「・・・俺だって林檎ちゃんに酷い目喰らわされたんだけど。ほら」
「・・・わかっています。唯・・・文句の1つくらいは言ってもいいじゃないですか。妹に手を出した本人が目の前に居るんですし」
「・・・誤解を生むような言い方だよ、それ」

束の間応酬を繰り広げる2人。それが終わり、自分以外の人達の状況がわかった春咲は、破輩へ向かって切り出す。






「破輩先輩・・・。私、自首します」
「春咲・・・。いいんだな?」
「はい。それが、私なりのけじめです」

事前に界刺から聞かされ、それでも本人の口から聞いてしまうと破輩の顔は歪んでしまう。己の部下の自首という事実に。
こうなる前に防ぐことはできなかったのか。どうしてもっと早くに気付いてやれなかったのか。
そんな起こり得た可能性が―そして、どれも起こり得なかった可能性が―破輩の胸中を渦巻く。

「破輩先輩・・・。そんな顔をしないで下さい。これは、私の決断です。それに・・・こうなった“今”があるからこそ、私は変わることができたんですから」
「春咲・・・!!」

後悔渦巻く破輩を諭すように、春咲が優しく語り掛ける。そこに込められた覚悟を、破輩は理解する。

「わかった・・・。お前の意思を尊重しよう・・・!!」
「・・・忙しい時に手を煩わしてしまって本当にすみません」
「・・・気にするな。何とでもしてみせるさ。お前がこんな目に合っても頑張れたんだ。私が・・・私達ができないわけが無い!!」
「破輩先輩・・・。今まで、本当にありがとうございました。本当に・・・本当にありがとうございました・・・!!」
「・・・!!私もだよ、春咲・・・!!」

春咲と破輩は、互いに涙を浮かべながら“風紀委員”としての最後の言葉を交わす。自首をすれば・・・春咲は“犯罪者”として扱われる。

「界刺さん・・・」
「ん?」

春咲は、蚊帳の外に居た界刺に声を掛ける。

「あなたには・・・散々嫌味ばっかり言われて、からかわれて、馬鹿にされて・・・。もう腹ばっかり立っていましたよ。何でこんな人が私に纏わり付くのって」
「・・・」
「でも・・・あなたが居てくれたおかげで、あなたが私を見ていてくれたおかげで、私は変わることができました。本当に・・・本当にありがとうございました」
「・・・それは、君自身の手で掴み取った結果だ。俺はそんなに・・・」
「『関係無い』・・・ですよね。あなたならそう言うと思ってました。でも・・・私にとっては、あの時に出会わなければ今の私は居ない・・・そんな人なんですよ、あなたは」

界刺に笑みを向ける春咲。その笑みは・・・何時かの会合の帰り際に見たあの笑み。

「界刺・・・と言ったか。私からも礼を言わせて欲しい。ありがとう」

その笑みに一瞬見惚れていた界刺に、破輩から声が掛けられる。界刺は、意外そうな顔を破輩へ向ける。

「ありがとうって・・・お嬢さんをこんな状態にした元凶の1人だぜ、俺は?」
「確かにそういう一面もあるだろう。だが、春咲が変われたのは間違い無くお前のおかげだ。・・・さすがは、『シンボル』のリーダーといった所か。
それは、私にはできなかったことだ。いや・・・私は気付くこともできなかったな。・・・私はリーダー失格だな・・・」
「破輩先輩・・・」

破輩は俯く。同じリーダーでありながら、目の前の男と自分とでは何もかも違う。
長く接しながら自分の部下が抱えるモノに気が付けなかった自分と、偶然会った時から一発で見抜いた界刺。
この容赦無い現実に、破輩は項垂れる。果たして、今までの自分の判断は、決断は正しかったのか。再び自問自答に入ろうとする破輩を、

「・・・破輩。あんたは勘違いしているよ」
「えっ・・・?」

界刺の声が引き止める。界刺は、本当に嫌そうな顔を破輩に向ける。その顔から、嫌で嫌でたまらないというのがありありと見て取れる程に。

「ホント、どいつもこいつも自分を卑下しまくりやがって・・・。いい加減にしろっつーの!あんた等はさ、そんなに自分を信じられないのか?」
「だ、だが・・・現に私は・・・」
「『お嬢さんの本当の気持ちに気付けなかった』・・・か?そんでもって、自分はリーダー失格ってか?
そんじゃ聞くけど、あんたは『お嬢さんの本当の気持ちに気付けなかった』っていう“過去”の自分を失くしたいとでも思ってんの?」
「そ、それは・・・!!」

界刺の怒りが篭った視線が破輩を射抜く。

「もし、そう思ってるんならあんたは大馬鹿野郎だ。自分の“過去”を否定する?そんなことを望む奴等は・・・クソだ!!」
「・・・!!」
「よーく考えろ。今の俺達が居るのは、“過去”があるからだ。“過去”の積み重ねが今の俺達だ。
そして、その“過去”の自分がした行動ってのは、その時に抱いていた色んなものから『自分はこの行動を取る』って判断したものだった筈だ!!
他の誰でも無い、自分自身の考えで決めた筈だ!!なのに、それを否定する!?馬鹿言うな。それはな・・・『自分を否定する』ってことだ!!俺が一番嫌いな・・・な」
「「・・・!!」」

破輩だけでは無い、春咲でさえも圧倒される。今の界刺にはそれだけの意志が、譲れない信念が溢れ出ていた。

「あんたは、確かにお嬢さんの本当の気持ちに気付かなかったんだろう。でも、あんたはお嬢さんのことを気に掛けていたんだろう?心配していたんだろう?
だから、あんたはリーダーとしてお嬢さんを戦闘の前面に出さなかった。お嬢さんを危険な目に合わせないために。
その判断を・・・あんたは後悔しているのか?かつての自分が決断したことを、よりにもよって自分で『否定』しちまうのか?どうなんだ、破輩!!?」

界刺の怒声混じりの質問が、破輩の心に深く、深く突き刺さる。破輩がその質問に答えるのに・・・10秒は要した。

「・・・後悔は・・・していない。私は・・・春咲を危険な目に合わせたくなかった。だから、後方に置いた。
その判断に・・・後悔は無い。判断を下した自分を・・・『否定』はしない」

破輩妃里嶺という少女の決断。仲間を守るための、それは後悔する筈の無い決断。それを、今更のように思い知る破輩に、界刺の声が届く。

「だったら・・・それでいいじゃ無ぇか。お嬢さんの気持ちがわかんなかったからって、一々“根本”までブレてんじゃ無ぇよ。
失敗しちまったんなら、同じ失敗を繰り返さないように反省すりゃあいい。だが、後悔だけはするな!!『否定』だけは絶対にするな!!
自分を・・・“過去”の自分を無かったことにするな!!それだけは、絶対にやっちゃいけねぇことだ・・・!!」

『自分を否定しない』。過去も今も未来も。それが、『シンボル』のリーダー界刺得世の“根本”。ブレることの無い大きな意志。
それを、図らずも見せ付けられた風紀委員159支部リーダーの破輩は、自分の本当の過ちに気付く。それは、リーダーたる者として。

「・・・そうだな。お前の言う通りだよ、界刺。どうやら、私は今尚動転の極みにあったらしい。
リーダーとして・・・それこそがリーダー失格になってしまう過ちだったな」
「破輩先輩・・・」
「春咲。私は、リーダーとしてお前を後方に置いたことに悔いは無い。きっと、お前の本当の気持ちを知ったとしても、その決断を後悔することは無い。リーダーとして。
だが、お前の気持ちに気付けなかったのもリーダーとして反省しなければならないだろう。この反省は・・・必ず次に活かしてみせる・・・!!」
「・・・わかりました。・・・頑張って下さい!!」
「あぁ」

春咲は、もう余計なことは言わない。唯、破輩が示した気持ちを受け取り、後押しするだけ。そんな思いを余すとこ無く受け取った破輩は、改めて界刺に向き直る。

「・・・春咲に続いて私までお前に助けてもらったな。これに、今回の『シンボル』としての助けも入れたら159支部は“借金”だらけだ。
この借りはいずれ必ず返す。お前が何と言おうとな。それが、今の私の決断だ!!」
「・・・好きにすれば?」
「ああ!!そうさせてもらおう!!」

破輩が差し出した手を、仕方無く握る界刺。2人が握手するのを、春咲は確と目に焼き付ける。
月光が雲に消え、1日の始まりを告げる朝日が昇るまで・・・もう30分を切っていた。






「・・・出て来たらどうだい、リンリン?」
「・・・バレてました?」
「うん」

まだ日が昇らない中、眠りこけている鉄枷を背負った破輩と病院前で別れた界刺は、少し歩いた十字路の角に一厘が隠れているのを『光学装飾』で看破した。
界刺の声を受けて姿を現した一厘は・・・体中を絆創膏や包帯で包んでいた。

「手酷くやられたみたいだけど・・・誰と戦ったの?」
「刈野っていう女性です。『発火能力』の」
「・・・もちろん、リンちゃんはそいつをボコボコにしたよね?したよね?うん?」
「キャッ?な、何で顔を近付けてくるんですか!?」
「そいつは、俺のスーツを燃やした奴だ。もちろん、勝ったよね?負けてないよね?うん?」
「そ、それ以上顔を近付けないで下さい。か、勝ちましたよ!!」
「そうか・・・。ならいい」
「(ハァ~。恐かった)」

無表情で顔を近付けて来る界刺を振り払った後、一厘は預かっていた“モノ”を界刺へ返す。

「これ・・・。お返しします」
「俺の警棒・・・。これを返すために、わざわざ残っていたの?」
「はい」
「・・・律儀だね、君」

界刺は思わず呆れる。一厘は、界刺がこの病院に来る前に手当てを受けていたらしく、界刺が病院へ到着した頃にはもう帰ったと聞いていた。

「それと・・・1つお願いがあって」
「お願い?何だい?」
「・・・私を常盤台の学生寮までおんぶして行って下さい!」
「・・・・・・はっ?」

一厘のお願い。それは、傷付いた体では帰宅するのが億劫な自分を界刺に送って行って貰うこと。

「君さ、俺だって傷だらけなの知ってるよね?何で俺なの?そんなんだったら、警棒を返すのは後日にして、タクシーでも何でも拾って帰れば・・・」
「いいじゃないですかー!!こんなか弱い女の子が傷付いているんですよ!?男だったら、おんぶするくらいの気概を見せたらどうなんですかー!?」
「いや、これって気概どうこうの問題じゃ・・・」

とまあ、すったもんだの挙句一厘に押し切られておんぶする羽目になった界刺。
一厘の怪我の具合と自分のを見比べた際に、自分の方が軽いという決定的な事実を突き付けられ、仕方無くおんぶするという形に落ち着いたのだ。

「くそっ!やっぱ、君も女難の1人に該当するわ。女ってのは碌なモンじゃ無いな。男子校でよかった」
「・・・すっごく失礼なことを言っていませんか?」
「別に。事実だもん」

その代わり、ひたすら愚痴を零し続ける界刺。それにツッコミを入れる一厘だが、界刺はまともに取り合わない。彼も、いい加減疲れているのだ。

「・・・」
「・・・」

何時しか無言になる2人。どちらも、肉体的疲労はピークに達している。少しずつだが、暗闇に染まっていた空も明るくなって来た。もうすぐ夜明けを迎える。






コテン!!






「痛っ!な、何、人の後頭部に頭をぶつけてんだ、リンリン?」
「・・・」

そんな折、一厘が自分の頭(正確には右側頭部)を界刺の後頭部にぶつけたのだ。その痛みに界刺は文句を言うが、一厘は無言を貫く。

「・・・・・・リンリン?」
「・・・・・・ねぇ、界刺さん」

そんな一厘を不思議に思ったのか、界刺が声を掛ける。十数秒経ってから、一厘が口を開き始める。

「・・・何だい?」
「・・・私、風紀委員を続けようと思うの」

それは、昨日電話にて一厘が界刺とやり取りした時に気付かされ、救済委員との戦いで見極めようとしたこと。

「ふ~ん」
「・・・結局私の『正しさ』とかよくわかんなかったし、風紀委員にふさわしいのかどうかもサッパリだったけど。
それでも、風紀委員でしか見えない景色ってあると思うの」
「景色・・・ね」
「今の私じゃあ、その景色がどんなものなのか予想もつかないけど。それでも目指す価値はあるんじゃないかって思う。春咲先輩が変わったのと同じで。
私が諦めなかったら、意地でも噛り付いて行ったら・・・こんな私でも掴めるものがあるんじゃないかって・・・そう思ったの」

一厘は吐露する。何もかもが力不足な自分でも、どんなに逆境が押し寄せようとも、“自分の足で立ち上がる”限り、掴めるものはある。
そう、信じられるだけの何かを、今回の件で学んだ。
学ばせてくれたのは・・・絶望に陥りそうになった自分を救い上げてくれたのは・・・目の前に居る碧髪の男。

「・・・!!」
「ッ!?オエッ!?く、苦しいって。リンちゃん、俺の首が絞まってるよ!!」

一厘は、界刺の首に掛けていた両腕に力を入れる。界刺の後頭部に引っ付けている横顔を、さらに界刺へ押し付ける。
そうすることで、少しでもこの男に近付こうとするように。強く、強く。

「リ、リンリン・・・!?」
「・・・・・・あなたが羨ましい」

それは、羨望の声。自分のずっと先を歩いている男に向けられた憧憬の音色。

「あなたが羨ましくて堪らないの。嫉妬しちゃうくらいに。こんな気持ち・・・初めてよ。
形製さんや水楯さん・・・そして春咲先輩があなたを慕うのもわかる。わかっちゃう!!
あなたは、口ではふざけたことばっかり言ってるけど、ここぞという時を絶対に見逃さない。結果も出す。どれ1つとっても・・・今の私はあなたに劣っている・・・!!」
「・・・」
「あぁ、もうぅ・・・。この気持ちは何だろう?よくわかんない。よくわかんないけど・・・あなたに向けられたモノだっていうのはわかる。
本当は、この抑え切れない気持ちをあなたにぶつけたくて待っていたのよ。そうしないと・・・私の気が狂っちゃいそうで!!」
「うおっ!?」

一厘は、抑え切れない気持ちの如く遂には上半身を乗り出し、界刺の横顔に自分の顔を持って行く。さすがの界刺も、バランスを崩さないために立ち止まらざるを得ない。

「ねぇ・・・界刺・・・さん。界刺・・・さん。界刺さん!!界刺さん!!!」
「・・・聞こえてるよ、一厘」

界刺が横を向く。そこには、一厘の紅潮した顔があった。吐息が掛かる程に近くにある一厘の視線が、真っ直ぐ界刺を貫く。

「界刺・・・さん・・・!!わ、私・・・私・・・!!」
「君が俺のことをどう思うのかってのは君の自由だ。好きにするといい」
「!!」

今度は、界刺の視線が一厘を真っ直ぐ射抜く。

「だけど・・・俺は君が思う程大層な人間じゃ無い。神聖視するのは勝手だけど、それを自分自身に押し付けるのはやめろ」
「し、神聖視・・・?押し付け・・・?」
「俺は、人間だ。何処にでもいる人間の1人で、世界の一部たる存在だ。そして・・・一厘、君も俺と同じ世界の一部たる人間だ。
個体差っつーの、そういうのはあるけどさ。でも、本質的には君と俺は何も変わらないんだ。
だから・・・自分のことを俺より劣ってるなんか言うな。自分を卑下するな。一厘鈴音という存在は、君しかいないんだ。
君を・・・風紀委員で在り続けるという決断を下した君の価値を・・・君が『否定』するな」
「・・・!!!」

界刺の“根本”。『人間とは世界の一部たる存在である』。そして、『自分を否定しない』。一厘は、今再び界刺得世の本質に触れる。

「羨むくらいならいい。嫉妬するくらいならいい。でも、それを自分の価値と直結したらいけない。
それはそれ、これはこれ。んふっ。前にもこんなことを言ったね、リンリン?」
「えぇ・・・。昨日のことですね。はぁ・・・全然ダメですね、私」
「・・・リンリン?」
「・・・わかってますよ。ダメって言ったのは、学習能力が無い自分を反省するためですよ」
「そうか。ならいい。・・・おっ!見てごらん、リンちゃん。夜明けだよ」
「うわっ・・・!!綺麗・・・!!」

界刺と一厘の視線の先にあるもの。この広い世界を満遍無く照らす太陽が、眠りから目を覚ます。その光に、その暖かさに包まれる2人。

「日の出を見るのは久し振りだなぁ。初日の出とか、いっつも寝過ごして見れないし。リンちゃんは?」
「私もです。日の出を見たことなんて・・・ほとんど無いですよ」

そんなことを言いながら、再び歩き始める界刺。余りのんびりとはしていられない。もうすぐ、本格的に朝が始まるのだ。

「・・・界刺さん」
「ん?何だい?」

歩き始めた界刺に背負われている一厘が、声を放つ。

「さっき・・・何か誤魔化しませんでした?」
「いや、別に」

予想通りの返答に一厘は苦笑しながらも、

「それじゃあ、改めて」
「ん?」

今度はさっきのように急に乗り出さずに、ゆっくり顔を界刺の横へ持って行く。その気配に気付いた界刺が、顔を横に向けたそこには―

「界刺さん。今は・・・私の全てをあなたに預けています。だから・・・私のずっと先を歩くあなたに何時か私が追い付けたら・・・それを返してもらいますからね!!」

界刺の目に焼き付いて離れない程の、太陽の輝きに負けないくらいの満面の笑みを浮かべた一厘の笑顔があった。












「という流れで綺麗サッパリ別れた春咲桜と一厘鈴音じゃ無かったのかよ」
「誰にもこんな流れは予測できずに困惑している春咲桜と、相変わらず変な格好している界刺得世みたいです」
「その流れから急展開を見せて喜んでいる一厘鈴音と、相変わらず無駄にキラキラしている界刺得世ですねぇ」

真夏の空に覆われながら、界刺と春咲、一厘は何時かの公園に居た。あれから時は経ち、今は夏休み真っ只中である。

「まぁ、いいではないか。何とか良い方向へ事態は転がったようだしな」
「・・・春咲さんも体が治ってよかったです」
「バリボリベリガリ(そうそう、よかったねぇ)」
「これで、一厘も風紀委員活動に身が入るってことでいいじゃないか。これだから、バカ界刺は・・・」

不動、水楯、仮屋、形製が、それぞれ反応を示す。『シンボル』の面々がここに居るのは、急展開を見せた例の件の顛末を春咲の口から聞くためである。

「で、一体全体どうなったわけ?つーか、暑いな・・・。帽子を被ってきてよかったぜ」
「(それは、スーツをビッチリ着込んでいるせいじゃあ・・・)」
「(っていうか、麦藁帽子と長靴って・・・)」

上下共に紳士スーツを着用してキメているのにも関わらず、長靴を履き、頭にはでっかい麦藁帽子を被るという、
相変わらずおかし過ぎなファッションセンスを披露する界刺が、その出で立ちに疑問を浮かべる春咲と一厘に対して問い掛ける。

「・・・わかりました。私もまだうまく整理できていないんですけど、何とか説明しますね」
「よろしく!」

そして・・・春咲は語り始める。自分を元凶としたあの件の顛末を。






春咲はあの後2日間の入院を余儀無くされた。たった2日で済んだという事実は、入院した病院の医者が振るった驚異的な医療技術の賜物であろう。
幸い骨折は無く、手の一部にひびが入っていただけだった春咲は、痛む体をおして警備員へ自首しに行ったのである。しかし・・・


『わ、私は自分の意思で救済委員に・・・』
『君が「救済委員に入っていることにしろ」と脅されたのは知っているよ』


取り次いだ警備員は、何故か春咲が『無理矢理救済委員に入らされた』として、春咲の言い分を聞き入れようとしなかったのである。
これは、春咲の両親が著名な科学者であることが関係してある。長女である春咲躯園が花盛支部の風紀委員に逮捕されたのを切欠にようやく事の次第を知った両親は、
自分達の権力や名誉が傷付くことを恐れ、裏から手を回したのである。それは、躯園が通っている長点上機学園側としても同様であった。
“当学園に通う生徒が救済委員に加入して事件を起こしたがために逮捕された”等という事実が公になれば、学園の面目丸潰れである。
しかし、風紀委員に現行犯で逮捕されたこと、拳銃を持っていたこと、同じ救済委員に入っている妹へ危害を加えたこと等がある以上、完全な隠蔽工作は難しい。
故に、春咲側と長点上機学園側が密かに協議した後に下したある提案とは・・・つまり


『君はお姉さんに日常的に暴力を振るわれていたんだろう?そこにつけ込んだ救済委員に脅され、無理矢理救済委員へ入らされた。
時を同じくして、君のお姉さんも同様の手口で救済委員に加入させられた。わかったかい?』
『ち、違・・・』


同じ逮捕されるにしても、救済委員には“無理矢理”入らされ、そして次女は長女から暴力を振るわれていたこと“だけ”を明らかにすれば、双方共にダメージは少ない。
そう結論付けられたのである。逮捕された躯園は、何かショックを受けたのかずっと黙秘を貫いており、躯園の口から真相が明かされることは無かった。
しかし、風紀委員である春咲が救済委員であったこと自体はどんな理由があろうと許されない。
だが、事情が事情なためにその処分の度合いを中々決めることができなかったのである。


『処分保留なんでしょ!!だったら、159支部(ウチ)の仕事をさせても構わないな!!何せ、こっちは人手が全然足りないんだ!!異論は許さないわよ!!』


その間に動いたのが、春咲が所属する159支部リーダーの破輩だった。
破輩は処分保留なのをいいことに、加えて自分達が現在当っている風輪学園内の騒動への人手として、退院後1日しか経っていない春咲を支部内の仕事へ復帰させたのである。
もちろん、一部の風紀委員からは異論が出たが、破輩は自分の案を押し通した。それだけ学内の騒動が緊迫していたとも言えるが。
おかげで、春咲や同じく怪我を負っている一厘は、文字通り馬車馬の如く働かされた。怪我人という考慮が一切無かったというのが本人達の弁である。
そして、風輪学園内で起きた騒動も終結し、大分落ち着いて来た頃合いで春咲と一厘が界刺達に事情を説明しに来たのである。






「―ということなんです」
「ふ~ん。まぁ、そういう流れを世界が認めたって話だな。わかった」

春咲の説明を聞き終えた界刺は、一言そう漏らした。一見意味不明なその言葉の意味を、しかし春咲と一厘は理解していた。

「んでさ、結局処分はどうなったの?」
「・・・無期限の停職処分です」
「と言っても、ある程度時間が経てば解除されるみたいですけど。時期は未定ですが」
「ふ~ん」

春咲の処分内容を聞いた界刺は、ある程度は納得したような風に春咲には見て取れた。だから・・・“聞きたくて”今まで誰にも打ち明けなかったことを言葉に出す。

「・・・実は、この処分が決定した直後、破輩先輩に退職を申し出たんです」
「えっ!?は、春咲先輩!!わ、私、そんなこと聞いて・・・!!」
「うん。これは、私と破輩先輩しか知らないことだから、一厘さんが知らないのは当然だよ」
「春咲先輩・・・。何で・・・」

一厘の悲しそうな表情を見ていられなくて、春咲は界刺へ顔を向ける。

「そんで?」
「・・・破輩先輩には、その場で退職願を破り捨てられました」
「・・・ふ~ん」
「そして・・・破輩先輩はその場で紙に何かをしたためた後に、それを入れた封筒を私に預けました。
『それを、「シンボル」の界刺に渡せ。それを読んだ界刺の返答を聞いた後に、処分を受け入れるか退職するかを決めろ』と。
『春咲桜を変えたのだから、その面倒を最後まで見ろ。後、この借りは159支部の“借金”にツケといてくれ』という界刺さんへの言伝と共に」
「はっ!?は、破輩の野郎、俺に全部厄介事を押し付けやがったな!?」

界刺は憤慨する。するが、春咲に預けられた封筒は既に目の前にあった。

「得世。破輩の言う通りだ。お前にも最後まで面倒を見る責任はあるぞ?」
「・・・真刺。前から思ってたけど、お前・・・」
「な、何だ?その妙な視線は・・・」

界刺の気色悪い視線に、不動はビクつく。

「なーんか、最近破輩と仲がいいよなぁ。お互いに携帯で連絡を取り合ってるみたいだし。お前・・・ひょっとして・・・」
「なっ!?ち、違うぞ!!わ、私と破輩は、そ、そんな関係じゃ・・・」
「へぇ・・・。んじゃ、どういう関係?」
「そ、それは・・・」
「えっ、嘘!?不動さんがあのグラマラスで有名な破輩さんと!?水楯さん!仮屋さん!知ってました!?」
「・・・いえ、知らなかったわ、流麗」
「バリボリガブグフガリグリハブ(ボクも知らなかったなぁ。不動、オメデト~)」
「ち、違うぞ、形製!!水楯も仮屋も!!お前達、一体何を早とちり・・・」
「鉄枷達に早く知らせないと。え~と、メールの件名は・・・『破輩先輩熱愛発覚!?』ですかね、春咲先輩?」
「・・・『破輩先輩と不動さん、末永くお幸せに』とか?」
「・・・『破輩と真刺、お前等爆発しろー!!』じゃね?」
「だ、だからだな、その、あの、この、どの・・・」
「おーい、戻って来―い、真刺。こそあど言葉になってんぞー?」

狼狽に狼狽を重ねる不動。根が堅物な不動は、こういう場面になると普段の頼もしさが影を潜め、途端に狼狽してしまうのだ。

「この、その、あの、どの・・・・・・」
「・・・こりゃ、ダメだ。お~い、お嬢さん。さっさとその封筒の中身を見せてよ。こんな暑い所から、早く退避したいからさ~」
「わ、わかりました。・・・どうぞ」

狼狽し続ける不動をほっといて、界刺は春咲に促す。そして、春咲から受け取った封筒の封を切り、中に入っている文面に目を通す界刺。
水楯、仮屋、形製も興味津々でその文面を読む。そして・・・






「・・・あの野郎・・・!!」
「・・・これは・・・」
「バリボリガブ(意外だね~)」
「・・・でも、的外れでも無い・・・かな」

界刺、水楯、仮屋、形製が、読み終わった後の感想を述べる。その反応に、戸惑う春咲と一厘。

「な、何が書かれていましたか・・・?」
「は、早く教えてくださいよ!!破輩先輩は一体何て・・・?」

2人の問いに、界刺はどう答えようか迷う。迷って・・・しかしきちんと答える。不動の言う所の責任として。

「君ん所のリーダーは『シンボル』のリーダーである俺へこう宛てた。
『停職期間中にボランティアとして俺達『シンボル』の一員としてお嬢さんを参加させてくれないか』と。これにはそう書いてあるんだ」
「!?わ、私が・・・!?」
「『シンボル』に・・・!?」

自分達のリーダー破輩妃里嶺が、『シンボル』のリーダー界刺得世に頼んだこと。
それは、停職期間中に春咲桜を『シンボル』の一員として迎えてはくれないか、ということであった。

「で、でも・・・『シンボル』って高位能力者しか・・・」
「そんなことは決まっていないぞ」
「うおっ!?真刺!?何時の間に復活したんだ!?」

春咲の質問に答えるのは、『シンボル』の創設者である不動。

「現在の『シンボル』は、確かに高位能力者で占められている。だが、本来はレベル制限等設けてはいないのだ。参加希望者は何時でも受け付けている。
だが・・・残念ながら、得世の態度が不評でな。そのせいで、誰も入ろうとはしないのだ。『お近付きになりたくない』とさえ言われたこともある」
「「あぁ・・・」」
「納得してんじゃ無いっつーの」

界刺のツッコミを受け流し、春咲と一厘は納得する。確かに、目の前の“変人”とは付き合いたくは無いだろう。普通の感覚を持つ者ならば。

「破輩さんはさ、きっと春咲さんが風紀委員を辞めるか続けるか、その判断を下すのは『シンボル』で色んな経験を積んでからでも遅くないって言いたいんじゃないかな?」
「形製・・・」
「きっと、破輩さんはバカ界刺を信頼してくれているんだよ。自分の大事な仲間を他人に預けるっていうのは・・・かなりの覚悟がいったと思うよ。
でも、破輩さんは決断した。これは・・・『シンボル』の活動内容を知った上で君に頼んでいるんじゃないのかな、アホ界刺?」

形製の言葉を聞いて、自分で考えて、春咲と一厘は己がリーダーの真意を知る。

「・・・はぁ。ったく。わかった、わかった。真刺の言う通り『シンボル』への参加にレベルなんて関係無し、破輩の真意ってヤツはバカ形製の言う通りだろう。
後は、お嬢さん次第だ。お嬢さん・・・君はどうする?どうしたい?」
「えっ・・・。わ、私・・・は・・・」
「5秒以内な。1・・・2・・・3・・・」

界刺の放つカウントダウンは容赦無く進む。思考を纏める時間なんて無い。春咲は・・・思いのままに言葉を挙げる。






「わ・・・私は・・・界刺さんと一緒に居たいです!!!!!」
「・・・・・・ん?何か微妙に主旨とズレているような・・・」
「は、春咲先輩・・・!!も、もしかして・・・!!」
「えっ!?うん!?・・・ハッ!!ち、ちが・・・。そうじゃ無くて・・・!!」

出て来た回答に界刺が首を捻り、一厘が何やら警戒感を露にし、自分の発言の意味に気付いた春咲はうろたえる。

「・・・いいじゃないですか、界刺さん」
「涙簾ちゃん・・・」

そこに助け舟を出したのは水楯。

「私も界刺さんと一緒に居たいから『シンボル』に居るんですし、流麗も“彼女”も・・・」
「へっ!?ちょっ、ちょっと待って下さいよ、水楯さん!?何であたしがボケナス界刺なんかと一緒に・・・」
「誰が『なんか』だ、誰が!!」
「君のことに決まっているじゃないか、ダメダメ界刺!!」
「何おぉ!!」
「・・・お、落ち着いて下さい、界刺さん。流麗も・・・」
「ムシャムシャバクバク(このスナック菓子おいしい~)」

公園の一角が一気に騒然となる。そんな光景に呆けていた春咲に、不動から声が掛けられる。

「では、歓迎しよう。ようこそ、『シンボル』へ。期間は決まっているが、その間は仲間として一緒に頑張ろう」
「は・・・はい!」
「あ、あの・・・春咲先輩のこと・・・よろしくお願いします!!」
「ああ。お前達の仲間は、確かにこの『シンボル』が預かった!!」

先程見せた狼狽振りが嘘のように思える程、不動の発言は力強かった。

「さて・・・これで『シンボル』も全員で“7名”となるのか・・・」
「えっ?“7名”?不動さん達に春咲先輩を含めて“6名”じゃ無いんですか?」

不動の“7名”発言に疑問を呈す一厘。その疑問に、不動は頭を掻き毟りながら答える。

「最近、新たに加入した者が居てな。結構なじゃじゃ馬というか・・・あの得世が辟易する程だ。だが、一厘・・・“彼女”についてはお前も知っている人物の筈だぞ?」
「私が知っている・・・?・・・ハッ、もしかして“常盤台生”!?」
「そうだ。これから、また騒がしくなりそうだ」

不動と一厘が話し合っている中、春咲は目の前で形製と口論になっている界刺を見る。
先程の回答は、確かに自分の中にこのままで終わりたくないという意思があったのだろう。
そして、破輩がそんな自分の心を見抜き、界刺達『シンボル』への参加を促した。そして、それを自分は・・・受け入れたのだ。

「(で、でも・・・さっきの“アレ”は・・・。何であんな誤解を生むような言い方をしちゃったんだろう?・・・わからないよぉ)」
「おい、“桜”!!君の『物体転移』で、このアホ形製に目に物を見せてやれ!!」
「(えっ!?い、今私のことを・・・“桜”って・・・!!)」
「ふざけんじゃ無いよ!!春咲さんがあたしに攻撃するわけないでしょうが!!そんなこともわからないのか、君は!?」
「減らず口を・・・!!」
「やるかぁ・・・!!」
「・・・ハッ!!か、界刺さん、形製さん!!こ、口論はそれまでに・・・!!」
「・・・春咲さんの言う通りです。2人共・・・落ち着いて・・・!!」
「春咲先輩や水楯さんの言う通りよ!!こんな所で口論されちゃあ、熱気が堪んないんだけど!!」
「バリバリバリ(平和だな~)」
「・・・お前は本当に食ってばかりだな、仮屋」


平和な真昼間。帰って来た日常。苦難の末に辿り着いたそれを大事に大事に噛み締める少女の物語は、一先ずの終着を見た後も―まだまだ続いて行く。

end!!

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最終更新:2012年05月28日 21:24