街の外れ、進めば進むほど人の住む家を見かける頻度が少なくなってくる場所に、一件の家があった。
その家の風貌はボロ小屋といっても過言ではないほどの頼りない一軒家であり、ところどころ痛んでくすんだ木造の壁が目に入る。
これを見た者は人など住んでいないと断定するか、あるいは住んでいても相当貧乏だと思うだろう。
そんなボロ小屋に二人の人間が帰ってきた。いや、厳密には一人の変質者にしか見えない衣装を着たマスターと一人のサーヴァントといった方が正しいだろうか。
マスターの方ははっきり言って異様な姿をしていた。
黒い全身タイツに変身ベルト、そして膨れ上がった風船なのかてるてる坊主なのか分からない膨れ上がったマスク。
マスクにある赤い模様に真ん中にある黒い点は目玉を彷彿させる。
まるで特撮の戦闘員のような容姿の男だった。
サーヴァントの方もサーヴァントで人間の姿をしていなかった。
金髪で青と白を基調とした軽装に剣を携えており、それだけなら真っ当なサーヴァントに見えるが、
服から覗いている肌は人間のそれではなく、全てメタリックな青銅色の金属板に覆われたていた。
顔立ちはまさにロボットのそれで、黄色く光るカメラアイと腹話術人形のようにパクパクと開閉している口が人工物であることを窺わせる。
「…タダイマ」
マスターである平坂黄泉は誰もいない家の中に声をかけると、靴を脱いで居間に上がる。
居間もこの家の外装に似て古く、床に敷かれている畳にはところどころ汚れが散見される。
「ゴ苦労ダッタナ、バーサーカー」
黄泉は台所から取ってきたきゅうすから湯呑に茶を入れ、ちゃぶ台に対面して頬杖をつきながら座るバーサーカーのサーヴァントに差し出した。
「今日モバーサーカーノ活躍デ悪ニ勝ツコトガデキタ。アト少シトイウトコロデニゲラレテシマッタガナ」
「ウルセェッ!ソモソモ駄目ますたーガ長ッタラシイ正義ノ口上トヤラヲペラペラトシャベリ続ケタセイダロウガァ!!」
「バーサーカーモ殺スヨリランサー女史ノ体ヲ見ルコトヲ優先シテイタヨウナ気ガスルンダガ…」
バーサーカーであるロボカイは、ちゃぶ台に拳を打ち付けて黄泉を駄目ますたー呼ばわりして怒鳴る。
ちゃぶ台の上に乗っていた湯呑が倒れ、お茶がこぼれてしまったがロボカイは続ける。
黄泉とロボカイはここに帰ってくる前、未来の「倒すべき悪事、守るべき弱者」が記録されたボイスレコーダー『正義日記』に従い、
黄泉が悪と見なした女のランサーを従えている主従と遭遇ののちに交戦、見事勝利を収めてきたのだ。
尤も、結果的に勝利したとはいえ、黄泉が勝ち誇って長い口上を話し続け、
ロボカイが倒れ伏した女のランサーの豊満な身体の鑑賞会に浸っていたせいで敵マスターに令呪を使われて逃走を許してしまったが。
そのため、黄泉の最終目標である『悪を倒す』ことは達成できなかったのだ。
「トニカク、失敗ヲ悔ヤンデ立チ止マッテイテモ何モ進マナイ。コレカラモ我々ハ悪ヲ倒サナケレバナラナイノダ。
ソノタメニ今ノウチニ電力ヲ溜メテオケ。イツ悪ガ攻メ込ンデ来ルカワカランカラナ」
「ワシニ指図スルナ、コノ駄目ますたー!ソンナコトクライ分カッテオル!」
ロボカイは黄泉を駄目ますたー呼ばわりすることをやめずに罵言雑言を浴びせるが、黄泉はさして気にしていない様子だった。
平坂黄泉の正義観は「最終的に勝った方が正義である」ことだ。
勝つことこそが正義であり、負ける者はすべて悪。
どんな汚い手を使おうと、無関係な人間がその過程で死のうとも勝てばそいつが正義なのだ。
先ほどの戦いで勝利したのは「黄泉とロボカイ」であり、黄泉にとってロボカイは正義側であり、共に正義を成す仲間だ。
そんなロボカイに対して文句をつけようとする気は全く起きなかった。
「充電!」
ロボカイはそう叫ぶと、居間の床にどこから出したのだろうか、長方形の形をした発行体を設置する。
この発行体はロボカイの設置した充電マットで、ロボカイのボディに電力を溜める役割を持っている。
ロボカイはある人物の戦闘データを元に製造されたロボットで、サーヴァントになっても肉体はロボットの体だ。
そのため、ロボカイは戦闘する際は魔力の代わりに電力を消費し、電力が溜まれば溜まるほど強くなるというサーヴァントとしては特異過ぎる性質を持っていた。
それ以上に自己中心的でわがままな性格が厄介極まりないが。
「ウーム…ソレニシテモアノらんさー、ナカナカノばっちりぼでぃダッタ…」
ロボカイは充電マットの上で胡坐をかきながら今日遭遇したランサーの女性の姿を思い出す。
あの凹凸がはっきりしたスタイルなら自分の嫁にしてもよかったかもしれない。
ロボカイは黄泉の正義を貫くだの悪を討つだのといったことよりも嫁探しの方を優先している節があった。
一応、いざ戦闘になったらなんだかんだ言いつつ戦うのでサーヴァントとしての本分は忘れていないといえる。
基本的に自分は優れていると思っているため、現界したからには負けてやる気は毛頭ないのであろう。
――18時09分。 家の居間がお茶で水浸しになっている。
不意に、黄泉の正義日記が声を上げた。
それを聞いた湯呑みをひっくり返した張本人のロボカイは責められたと被害妄想を抱いたのか、「ヤカマシイぼいすれこーだーダナ!」と愚痴をこぼしている。
黄泉は、こぼれた茶を拭くタオルを取ってくるためにちゃぶ台の前から立ち上がった。
(ソレニシテモ…口惜シイナ)
黄泉の願いは聖杯戦争においても、己が正義を貫くことである。
聖杯にかける願いはなく、正義を遂行するためなら命をかけてもいいと思っている。
しかし、黄泉は元々住んでいた世界に対してほんの少し未練を抱いていた。
(本当ノ悪ハ6thデハナク、船津デアッタ)
黄泉は既に、6thの悲惨な境遇を知っていた。
黄泉は既に、船津の許しがたい悪業を知っていた。
この聖杯戦争に参加している黄泉は、教団本部で迷子になっていた5thを助け、6thの境遇を知った途端にこの電脳世界に召喚されたのだ。
今となっては元の世界に帰ることができず、船津という悪を倒すことができないことを黄泉は残念に思うのだった。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
ロボカイ@GUILTY GEARシリーズ
【パラメータ】
筋力D~A+ 耐久D~A+ 敏捷D~A+ 魔力EX 幸運C 宝具D
【属性】
混沌・中庸
【クラス別スキル】
理性崩カイ:E
つまるところただの『狂化』スキル。
通常時は狂化の恩恵を受けないが、意思疎通が可能。
ダメージを負うごとに幸運判定を行い、失敗するとロボカイの熱量が急上昇して筋力・耐久・敏捷が倍加されるが、熱暴走するリスクも高まる。
【保有スキル】
みんなで集カイ:-
つまるところただの『複製』スキル。
量産可能であることを示すスキルだが、
此度の聖杯戦争では高度な人工知能を持った自我の強い個体が現カイしているために群体としての側面が損なわれ、このスキルは失われている。
カイ離性:C
つまるところただの『単独行動』スキル。
Cランクならば1日間マスター不在でも現カイできる。
データカイ析:D
つまるところただの『ラーニング』スキル。
戦闘の最中に相手の行動から戦闘データを収集し、自分の攻撃手段に応用する力。
バーサーカーは生前は他人の戦闘データの収集任務に従事したことがあり、その収集機能がラーニングスキルとして昇華されたもの。
座談カイ:A
魔力を消費して、足元に充電マットを敷いて電力を溜めることができる。
後述の宝具から、ロボカイの魔力を消費する行動は故障箇所の自己メンテナンスと現世に存在を維持すること、そしてこのスキルの3つのみである。
皆ワシのカイ互換:B
「アクティブ・コミュニケーション回路」なる高度な人工知能が搭載されており、ロボットながら感情を持っている。
マスターの言うことを聞かない自己中心的でわがままな性格をしているが、
かといって冷徹で無慈悲なわけでもなく、どことなく愛嬌のある、きわめて人間味がある性格でもある。
人間以上に人間味のあるその性格は、真っ当なロボットからすると十分狂っているのかもしれない。
【宝具】
『スーパーロボカイゴッドスーパーロボカイ2ndII'ホーリーグレイルカスタムアブソリュートLV無限大』
ランク:D 種別:対カイ宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
元聖騎士団団長であるカイ=キスクの戦闘データを元に作成されたロボカイのロボットのボディ自体が宝具。
スキル:皆ワシのカイ互換に書かれてある通り、豊かな意思・感情を持っている。
とんでも科学で作成されたロボットという特性上、そのボディの下に収納された様々な武装により奇カイな攻撃ができる。
ロボカイは他のサーヴァントは違い、魔力ではなく電力が直接的な力の源となる。
バーサーカーの場合、ボディに蓄積されている電力量に応じて筋力・耐久・敏捷のパラメータがD~Aの間で上下し、武装も強化される。
ただし、電力も魔力と同じく戦闘を行ったり何らかの機能を使用することで消費していくので定期的に充電が必要。
電力を溜める方法としては座談カイやコンセントで充電するか、あるいは電力を溜める技をヒットさせる必要がある。
魔力ではなく電力を消費するという関係上、燃費はバーサーカーながら非常に良好で、マスターが担う魔力は上記の3つだけでいい。
電力が0になっても機能停止したり消滅することはないが、あらゆる能力が低い『駄目さーう゛ぁんと』になる。
また、ロボットのボディを持っている特性上熱量にも気を使う必要がある。
熱量は戦闘中、攻撃するごとに上昇していき、
温度が限カイまで上昇すると熱暴走を起こしてしまい、ボディが小爆発を起こして敵に多大な隙を晒してしまう。
そのため、例え戦闘中であっても適度に排熱しつつ戦わなければならない。
ただし、熱暴走を起こす直前の高温を保った状態の時のみ筋力・耐久・敏捷が倍加されるメリットもあるにはあるのだが、
その温度を維持しつつ戦闘し続けるのは非常に難しい。
『限カイらばーず(オーバークロック・ヘラクレスエンジン)』
ランク:C 種別:カイ放宝具 レンジ:10 最大捕捉:自分+5
自身のリミッターを解除し、限カイまで自分を強化する宝具。
この宝具を発動すると、10ターンの間のみ熱量が急速に自動減少して且つ電力が急速に溜まっていく他、筋力・耐久・敏捷のパラメータを常にA+ランクに固定する。
ただし、10ターン経つと反動で周囲に電力を放電しながら自爆し、それ以降20ターンの間は実体化できなくなる。
そのため、気軽に発動することは自殺行為といえる。
【weapon】
【人物背景】
終戦管理局支部長クロウがカイのデータを元に開発したロボット。コード名「Kシリーズ」。性能・量産性・汎用性共に申し分ない。
が、人格プログラムに大いに問題があり、想定外の動作が多く、任務達成率は高くは無い。
自尊心が高くわがまま、おまけに自信過剰なおおよそロボらしくない忠誠心皆無の性格。
シリーズを追うごとに人格プログラムの暴走は激しくなり、製作者のクロウを「駄目博士」と言うなど、口の悪さが酷いことになっている。
聖杯戦争でサーヴァントとして現界してもその性格は相変わらずで、
マスターのことを「駄目ますたー」と呼び、聖杯戦争よりも嫁探しの方を優先している節がある。
【サーヴァントとしての願い】
ワシガ負ケルワケガナイ!ソンナコトヨリ、嫁ガ欲シイ!
【マスター】
平坂黄泉@未来日記 パラドックス
【マスターとしての願い】
自分の正義を全うする。
【weapon】
未来で起こる事象が映し出される『未来日記』の一つ。
未来の「倒すべき悪事、守るべき弱者」を記録したものである。
しかし、あくまでもこの日記に予知される正義と悪は、彼の主観によるもの。
『ゴミが落ちてる』や『迷子情報』程度のことでも知らせてくる。
また、全盲故にこの日記は携帯電話ではなくボイスレコーダーである。
日記に反した行動を起こすことで自身に不利な状況を回避することもできる。
その際、本来体験するはずだった日記の内容がノイズと共に書き換えられる。
【能力・技能】
全盲であるが、聴覚でそれを補っている。
他者の操作、集団の撹乱、記憶の消却すらできる。
【人物背景】
日記の12人目の所有者。通称12th。全盲だが鋭敏な聴覚の持ち主。催眠術を使える。
時空王デウスに選ばれた12人の未来日記の所有者「12th」。
正義のヒーローに憧れているが、全身黒タイツにマスクを身に着けた異容、「勝ったほうが正義、負けたほうが悪」を信条にするなど一般的なヒーローとはどこかズレている。
但し、邪教集団をやっつけたり、お年寄りを助けようとするなど、「弱きを助け、強きをくじく」という正義漢らしいモットーもちゃんと備えている。
参戦時期は『パラドックス』で5thから6th(
春日野椿)の境遇を聞いた直後。
【方針】
正義日記を頼りに、倒すべき悪を倒していく。
最終更新:2015年12月18日 21:37