――恒久の平和を求めて、彷徨う男がいた








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 犠牲なくして、平和を得られる事は出来ないのか。
己の人生の全てを変えたと言っても過言ではない、南国の小島でのあの日から、『衛宮切嗣』はこの答えを求め続けていた。

 甘くて。暖かくて。優しくて。口当たりも良く、聞えも爽やかで、誰もが善しとする理想論。
それだけでは、世界を回す闘争と暴力と言う名の強大な歯車は、決して止まらないと言う事を、切嗣は知っている。
完璧な平和何て、人が人である以上、絶対に訪れはしない。だからこそ切嗣は、現実的な方法で、良い結果を残そうと今まで努力して来た。
銃や毒、火薬を用いて、最善の方策が得られるのであれば、それを選んで来た。
大勢の人間を救える代わりに、少数の人間が犠牲になる選択が現状における最良の選択なら、それを選んだ事だったゼロではない。
樹を救う為に枝を切り、他の果実を実らせる為に腐りかけた果実を剪定する。それを、人の命で切嗣は実行して来た。

 そして、その生活は、切嗣と言う男の心を蝕んだ。
人の命や魂に、重さも大きさもなく、全てが同じ価値であると言うのに、切嗣はその時の状況次第で、それらを葬って来た。
彼の人生は、血に彩られていた。彼の歩いて来た道には、屍が敷き詰められていた。自分のやって来た事は本当に正しかったのかと言う懊悩が、彼の心を侵していた。
犠牲と言う現実を強いる事で、得られた平和もあるし、命もある。解っている筈なのに……割り切れなかった。
もっと良い方法があったのではないかと思い立ち止まる事も、別の信条に宗旨替えする事も、切嗣には最早出来ない。
それを行うには、余りにも彼は血塗られ過ぎていたし、死体の山を積み過ぎた。それに今更宗旨替えをすると言う事は、今まで自分が選んだ決断で犠牲になった者、
流されて来た血の意味を一切無駄にすると言う事なのだ。もう、立ち止まれない。己の信条に拘泥し、理想目掛けて走るしか、この男には出来はしないのだ。

 後戻りと言う選択肢が塗り潰されて久しいそんな折に、音に聞こえた魔術の大家である、アインツベルンから聖杯戦争の誘いがあった。
それに、切嗣は乗った。聖杯があれば、どんな願いでも叶える事が出来る。彼は、この万能の願望器に全てを賭けた。
自分がこの戦いに勝てば、聖杯戦争で流された犠牲と血が、文字通り歴史上最後の戦火と流血になる。
そして――アインツベルンと結託し聖杯戦争を勝ち抜こうと準備する過程で出会った、最愛の妻であるアイリスフィールの娘、イリヤスフィールと、
平和になった世界で過ごせる。この戦いを最後に、己が歩んで来た道と、人類がこれまで積み上げて来た業の歴史に終止符を打つ。そう……切嗣は決めていたのだ。

 紫煙を燻らせて、切嗣は木の幹に背を預けていた。
口から気だるげに、煙草の煙を吐き出す。余りにもダウナー気味に煙を吐き出すので、余人が見れば、そう言った大麻を吸っている様にしか見えないであろう。
尤も、今の切嗣にとっては、タバコも大麻も、吸った所で大して変わりはないであろう。吸い慣れた銘柄の煙草、その味を、切嗣は感じなかった。
ニコチンが血中を回る感覚を、まるで得られない。経過が自分でも気になっているのが解る。
まるで、初めてデートの誘いをOKされ、待ち人が来るのを待っている少年の様な、そんな気分で、切嗣は夜の森中から星を見上げていた。
今日は良く、星が見えた。月も、綺麗に輝いていた。――綺麗な夜空の情景を台無しにするかのような轟音が、切嗣の鼓膜は捉えている。
数々の戦場で聞いて来た、爆薬が炸裂する音や、けたたましい銃声とは一線を画する、大地の怒りそのものの如き大音。
成程これが、サーヴァント同士の戦いらしい。





 ――ギンッ




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 そんな、一際大きな音が、切嗣の優れた聴覚が捉えた、瞬間。
世界の破滅でも訪れたのではないかと錯覚せざるを得ない程の爆音が、彼の身体を打ち叩く。
余りの音の大きさ故に、ガサガサと、茂みから小動物が驚いて飛び出してくる。爆発の際に起った爆風が、落ち葉を梢の辺りまで舞い飛ばせる。

「終ったか」

 中頃まで吸い終えていた煙草を地面に落とし、靴底で火種を消すのと、背を預けていた木の枝から、フクロウの類が音に驚き地面に落ちたのはほぼ同じ瞬間だった。
アーチャーは、上手くやってくれたようである。ならば、次は自分の仕事だと言わんばかりに、切嗣は黒コートの内側に隠し持っていた、キャリコを引き抜く。
セーフティを解除してから、待機する事数分。彼の視界に、慌てた様子で森の中を走る男が映った。
顔には恐怖の相がノミを当てたように刻み込まれており、何かから逃げろ逃げろと言わんばかりに、倒けつ転びつ。
距離を遠ざけているかのようにしか、余人には見えなかった。男は、此方には気付いていない。
切嗣と男の距離は、十と余m。男は必死に走っているのと、樹木と言う遮蔽物があるが故に、切嗣には気付かない。

 銃口を一定方向に切嗣は合わせる。三秒程経って、銃口の延長線上に男が合わさった、その瞬間。
切嗣は躊躇いもなくトリガーを引いた。弾ける銃声音、銃口から噴き出るマズルファイア。放たれる、音速超の速度の銃弾。
自動小銃から放たれた数十発の弾丸は男の腹部や脚部を貫く。痛みに悲鳴すら上げられず、前のめりに転んだ。
スタスタと切嗣は、転倒した男に近付いて行く。硝煙が銃口から立ち昇る拳銃を右手に持ちながら近付いてくる切嗣に、男が気付いた。
ヒュー、ヒュー、と喘鳴を吐く男の眦に、涙が浮かんでいた。此処に来て、撃たれた男は気付いたのだ。この男が聖杯戦争の参加者である事を。
五m程まで切嗣が近づいた瞬間、一切の無駄口を叩かず、彼はキャリコの弾丸で倒れている男の頭と臓器系を打ち抜いた。
脳漿と大脳が骨ごと飛び散った。胴体に弾丸が吸い込まれる。全てが終わったと言わんばかりに、切嗣はキャリコのセーフティを設定し、夜空を見上げた。
爆音の余韻も終わり、死んだような静寂で場が包まれている。夜の底から、切嗣は星でもなく月でもなく、昏黒の夜を見ていた。

 この街が冬木でもなく、従って切嗣とアインツベルンが意図していた聖杯戦争とは違う聖杯戦争だと言う事実も、今となっては小さい事だった。
肝心な事は、この街でも聖杯戦争が行われていると言う厳然たる事実。そして、この街の聖杯戦争を勝ち抜けば、本来犠牲になる筈であったアイリスフィールが、犠牲にならずに済む、と言うその事実であった。



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 夜空目掛けて向けられた究極の矛を握った腕を男は下げ、ホルスターにそれを仕舞い込んだ。
目の前には、機械で形造られた、全長百と余mはありそうな構造物が存在していた。全体的に横に大きい形をした人型の構造物は、
肩の辺りから身体の七割近くを消し飛ばされ、僅かに残した腰部分より下しか存在しないと言う有様になっていた。
当然大幅にバランスを失い、その構造物は倒れ込み、やがて自壊する。その様子を呆然と見つめる、前時代的なローブに身を包んだ黒髪の優男。
弾丸に匹敵する程の速度で、ローブの男の方に彼は接近して行く。はっと気づいた優男は何かを紡ごうとするが、それよりも速く、ホルスターの男の右拳が頬に刺さり、
打ち抜いた。スイカか、鉄筋を入れていないコンクリートの様に優男の頭部は弾け飛ぶと同時に、首から上を失った肉体が、後ろ向きに倒れ込んだ。

 この場の勝者となった男には如何も、こう言った戦いには慣れない。
珪素生命体やセーフガードとの戦いは幾千幾万回とこなしているが、魔術等と言う、数万年前には迷信とされていた技術を相手にするのは、
この男にしても初めての事であったが、蓋を開けてみれば、呆気のないものであった。
キャスターと言うクラスで召喚されたあの男が無から――実際には築き上げた神殿と呼ばれる領地の魔力を基にされている――生み出した、巨大な機械の構造体。
男の網膜走査によって、己の視界に映し出されたデータに曰く、あのキャスターが生み出した機械の構造物は、見てくれこそ示威的なそれではあるが、
物質としての強度も機動性も、質量から予測される攻撃の破壊規模も威力も、男の脅威に全くなり得ないのである。
こんな相手に時間などかけていられない、と言わんばかりに彼は、ホルスターから最強の銃を引き抜き、それを射出した。

 結果は、先程の通り。
銃口から放たれた力場は、機械の構造物が纏っていた、所謂対魔力に等しい効果を発揮する魔術的障壁を薄紙の様に破壊し、その内側の、
ステンレス鋼によく似た、それでいて強度と硬度はその百三十一倍の金属で出来た構造物を土塊の様に貫いた。
その後、力場が通った弾道周辺に巻き起こった巨大な大爆発は、構造物の身体を塵一つ残さず消滅させ、極熱を孕んだ爆風が森中に叩き付けられた。
建造物ですら縦に横にと揺らしかねない程の大音は、鼓膜を割らんばかりの勢いで、兎角、男が放った銃の圧倒的威力の程が窺い知れよう、と言うものであった。

 全てが終わったと認識した男は、目的の方向に身体を向き直らせた。
三千㎞先を見渡せる男の視界は、六十四m三十三cmの地点から此方に向かって近付いてくる黒コートの男の姿を認めた。
木々と言う遮蔽物があり、ましてや月と星の明かりしか照明のない森の中。普通の人間ならば二m先すら見渡す事すら出来ないこの環境で。
男は、真昼の中にいるかのように、衛宮切嗣と呼ばれる自身のマスターの姿を、見る事が出来るのか。

 十mと七十四cm先に生えている一本の樹木を避けて、切嗣はその場に現れる。
先程の大爆発によって舞い上げられた落ち葉が、大量に空から舞い落ちる、キャスターとの戦場跡に。

「手抜かりはないな。アーチャー」

「ない」

 アーチャーと呼ばれた男は即答した。

「戻るぞ」

「ああ」

 二人の会話は、短かった。
切嗣の言葉を受けて、アーチャーは霊体化を行う。それを確認するや、切嗣はアーチャーとキャスターの戦場跡に背を向け、その場から去って行った。
後には、舞い落ちる落ち葉の情景と、凍て付いた寂寞の時間だけが流れる空間だけが、残されるだけだった。


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 ――銀河を覆う混沌(カオス)から都市を救わんと、足掻き続ける男がいた。









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 その男の姿を初めて見た時、何の感情も湧かなかったと言えば、嘘になる。
もしも此処が冬木の街で、アハトの大老が、当初呼ぶ予定であったアーサー王のサーヴァントを見たのなら、きっと満足気な表情をするのだろう。
だが切嗣は、流血と闘争を以てその身を立てた英雄と呼ばれる人種を、心の底から嫌悪する男である。
呼び出されたとて、自分との相性は全く悪い事は、アハト老から計画を聞かされたその瞬間から予測出来ていた。
その様な意味で、異郷の地で行われる予定外の聖杯戦争で、切嗣が呼び出したアーチャーのサーヴァントは、高潔さとも廉潔さとも無縁そうで、多少は相性がよさそうである、と思いそうなものであった。

 アーチャーの瞳を切嗣が初めて見た時、背骨が凍結する様な感覚を彼は憶えた。
黒髪短髪の男だった。所々に強固そうなプロテクターを備えたボディスーツに身を纏った、石灰の様に白い肌を持つ男。
切嗣とほぼ同じ程度の体格を持っているが、ボディスーツの下から浮き出た筋肉は、生半可な地獄と死線を潜り抜けて来た者ではない事が一目で解る。
それこそ、表象すら出来ない程の戦場を切り抜けて来たのだろう。宝具は恐らくは、ホルスターにかけられた小銃か?
何れにせよ解る事は、この男は、古(いにしえ)、それこそ、神代の昔の英霊でもなければ、神代との境界線が曖昧だった紀元前~紀元後数百年前後の英霊ではないだろう。
英霊の座に登録されている存在は、現代から過去の存在『だけ』ではない。現代の地点から遥かな『未来』の英霊も登録されている。
服装から考えるに、この男は切嗣がいた時代、或いは、今切嗣が今いる時代から遥か未来の英霊だと、彼は考えていた。それは、良い。知識として知っていた事だ。
問題は――この男が本当に人間なのか、と言う事だった。

 姿形は、紛れもなく人間のそれであった。
しかし、切嗣の人間としての部分が告げている。違う、と。この男は人のナリこそしているが、遺伝子レベルで、全く別の存在だと。
いや、遺伝子レベルならば、まだ良い。呼び出したこのサーヴァントは、心すらもが、切嗣には人間のそれには見えなかった。
今の仕事を行う以上、切嗣も、人間としての心をある程度までは捨てている、と思っていた。しかし、ある程度と言う以上、完全に捨て切れた訳ではない。
このサーヴァントは、人間である以上絶対に捨てられない――捨ててはならないラインから先の人心すらも、捨てている。そう、切嗣は認識した程だ。
そんな存在は、最早人間ではない。怪物と称されるに相応しい存在だ。成程……と、切嗣は恐怖に似た感覚を憶えながらも、自嘲した。
触媒も何もなく、聖杯任せにサーヴァントを呼び出せば、自分の魂に引かれて現れるサーヴァントは、こんな化物なのか、と。

「クラスは、アーチャーか」

 視覚化されたサーヴァント情報が、自らの眼に映る。
遠距離戦を得意とするアーチャーのクラスと、同じく遠距離狙撃を得意とする自分とで、役割が被ってしまったが、仕方がない。適した運用法を、考えねばならないだろう。

「真名を、差し支えなければ教えてくれ。アーチャー」

 如何出る。切嗣の警戒に反して、アーチャーは、あっさりと、己の名前を口にした。

「『霧亥』」

 と。



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 暦の数え方も、銃の使い方も。スプーンやフォークの扱い方も文字の読み方も、何万年もの昔に忘れてしまった世界に、彼らは生きていた。
人類が神の玉座に王手をかけ、万能の存在になったと言う事実を、彼らが知る事は永劫ないであろう。

 超構造体(メガストラクチャー)を通じ、仮想世界の構造物を現実世界に反映させ、実体化させる技術が確立されたのは、何時の事だろうか。
仮想空間(ネットスフィア)内で生み出された物を、現実世界に持って来られる。物理法則も自在に改竄する事が出来、無限大のエネルギーも確保する事を可能とした。
正しくそれは、人類が神か超越者になった瞬間であろう。誰もが、好きな物を現実世界に反映させる事が出来た。誰もが神になれた。
世界からはあらゆる争いが消えてなくなり、科学によりてエリュシオンの野が出来たかに見えた。

 災厄が起り、人類が消え失せたのは何時の事だろうか。
仮想空間を構築する超構造物、それにアクセスするのに必要な、嘗ての人類が持っていたネット端末遺伝子。
それが、災厄によって突然変異を引き起こし、全ての人間から消え失せた。ネット端末遺伝子の全滅。それはつまり、仮想空間に誰もアクセス出来ないと言う事を意味する。

 その日から、人類は黄昏を迎える事となる。
ネットスフィア経由で生み出された構造物の増改築や修復を自動で行う建設機械、建設者。その暴走が引き起こした、都市のカオス。
無秩序に構造物は増え続ける。大きさ数十㎞~数百㎞。階段の位置も以上ならば部屋の数も異常であるし、何よりも構造物の形も、構造力学のそれを逸脱する。
そんな建物が、地球上に増え続け、宇宙にまで侵食し、遂には太陽系をも呑み込み、銀河系規模の大きさにまで迫らんとしていた。
惑星すら容易く呑み込む程の構造物の存在など、最早珍しくも何ともない。星より大きな構造体など、最早当たり前の物であるのだ。
ネットスフィアは更に、既存の物とは違う未知の物理法則や現象を発生させ、遂には、時間と空間の関係性すらも破壊してしまった。
侵食するカオスを阻止せんとネットスフィアにアクセスしようにも、自らが設定した、ネット端末遺伝子を持たない存在を侵入者と認識、
排除するシステムに迎撃され、カオスの浸食を許す有様。最早誰もネットスフィアにアクセスする事が出来なくなり、そのまま、何千何万年と経過した。

 星を覆う都市に住む、嘗ての人類の成れの果て。
嘗ての社会において犯罪者と呼ばれていた存在達がネットスフィアの技術を以て進化、種族化した珪素生物と、ネットスフィアを保護する存在である、
セーフガードたちの脅威に怯え、人々は緩やかかつ、そして、不可避の破滅に進んでいた。

 そんな、人類を破滅させる都市のカオスを復旧させんと、都市を旅し続ける探索者がいた。
何百年、何千年、何万年と言う旅路の果てに、人としての心が擦り切れ摩耗し消滅し、行く先々で破壊をばら撒く不死なる者。
男の名は『霧亥』。ネット端末遺伝子を求め、無限の旅路を歩む者。遥かな未来世に於いて、災厄として語り継がれる魔人。

 霧亥の精神は、既に当初の物から大きく逸脱したそれに変貌を遂げていた。
度重なる死。脳を穿たれ、体中を光線で貫かれ、心臓を破壊され、身体の殆どを蒸発させられても、その度に彼は何らかの圧力で復活させられた。
長すぎる生。一区画跨ぐのに数百~数千は掛かる構造体内部。時には数十~数百年は睡眠活動に移らねばならない乗り物にも乗る事があった。
繰り返される生と死の繰り返しの中で、霧亥の精神構造も知識も変異した。論理感も常識も、変質する。

 ネット端末遺伝子を手に入れる、と言う目的が、今や霧亥の行動原理になっている。
それを成す為であれば、彼は、この仮初の世界の住人を全て殺し尽す気概でもあるし、場合によっては、自らのマスターすらも、手に掛けるつもりであった。

 ――男の名は霧亥。都市を覆う混沌を取り払うべく、当てのない旅を続けて来た男。 

 ――男の名は切嗣。世界を覆う流血と暴力の歯車を止めるべく、聖杯の奇跡に全てを賭ける男。

 どちらの共通点は、目的の為なら、一切の犠牲も厭わない事。そして、その目的の為に、その精神を破壊された/されかけている男。 
触媒もなければ、自分にあてがわれるサーヴァントはこんな存在なのかと自嘲した切嗣は、正しかった。
英雄を嫌い、栄光や高潔さとは無縁の位置にいると常々思い続けていた男には、相応しいサーヴァントであった。

 切嗣は意図せずして、災厄の到来を告げる、嚠喨たる喇叭の音を響かせてしまったのであった。



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【クラス】

アーチャー

【真名】

霧亥@BLAME!

【ステータス】

筋力A+ 耐久A+++ 敏捷A 魔力E 幸運D 宝具EX

【属性】

秩序・悪

【クラススキル】

対魔力:E
あらゆる魔術を無効化出来ず、多少威力を削減する程度。

単独行動:A++
マスター不在でも行動できる能力。このランクになると宝具ですらも、マスターのバックアップなしでも容易く使う事が出来る。
後述の不死スキルも兼ね合わさり、規格外のスタンドアローン性を誇るが、聖杯戦争の制限により、マスターが殺されてから殺害された場合は、当然座へと帰還する。

【保有スキル】

精神異常:A+
何らかの圧力によって、アーチャーの精神は健常なそれから大きく逸脱している。曰く、精神処理装置に異常がある状態。
極めて強固な精神的スーパーアーマー性を発揮するが、余りのスキルランク故に、人間性と言うものが欠落されている。自らが気に入らない存在であれば、例え友好的な者であろうと容赦なく殺す。

不死:A
四肢を切断される、頭蓋を穿たれる、心臓を破壊される。と言ったダメージから復帰出来るスキル。
事実上、戦闘続行や再生と言った、肉体の頑強さを底上げするスキルを多く複合したスキルである。
体躯の半分以上が消滅する程の肉体的損壊であろうとも、一定の時間を掛ける事で復活を遂げる事が出来る。また、不老でもある為、時の劣化を受け付けない。

千里眼:B+++
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
特にアーチャーの千里眼スキルは遠方視認に長け、数千㎞先の物体すらも視認する事が可能。
透視を行う事も出来るだけでなく、肉体や物質の組成や大気中の成分、遺伝情報の読み取りをもカバー出来る。

気配察知:A+
敵の気配を察知する超感覚。周囲の生命体や機械の位置を捕捉可能。上記の千里眼スキルも相まって、破格の値になっている。
建造物内、地下を含む数kmの範囲を容易にカバーする。気配遮断で存在を隠匿していても判定次第で見破る事が出来る

【宝具】

『重力子放射線射出装置(グラビティ・ビーム・エミッター)』
ランク:EX 種別:対人~対界宝具 レンジ:1000~ 最大補足:10000~
――最強の銃。究極の矛。第一種臨界不測兵器。
極めて強力なエネルギーを内包したある種の力場を射出する小銃型の兵器。アーチャーは様々な武器の扱いに長けるが、これ以外の武器は原則携帯しようともしない。
この力場の直撃に耐えうる物質は存在せず、空間と融合した超次元的な存在に重力破壊をもたらし消滅させるだけでなく、
その凄まじいエネルギー量の故に、世界線や時空の捻じれや、重力場にも明白な形で干渉を可能とする。
最低出力の無造作な一撃でさえ、厚さ70㎞超の超構造体(メガストラクチャー)を撃ち抜き破壊し、弾体が通り抜けた後に発生する余波の大爆発で周囲数十mを、
木端微塵にする程。威力は五段階に調整でき、最大出力である禁圧解除状態の威力は、装置本来の威力を完全に取戻し、その破壊規模は極大と言う言葉でも足りない程。
これだけの威力の弾体を射出出来る兵器を小型化させた代償として、極めて反動が強力。アーチャーレベルの筋力の持ち主であろうとも反動で吹っ飛ぶだけでなく、
無理に連射を続けた場合、最悪腕が折れたり千切れ飛ぶ可能性すらゼロではない。
その破壊規模に反して極めて燃費が良く、最低出力の射撃であれば、数十発以上は射出出来る程。魔術師としての技量は並とは言え、現状のマスターのバックアップでならば、更に射出可能回数は跳ね上がる。

【weapon】

【人物背景】

汚染前のネット端末遺伝子を求めて探索を続ける男。

【サーヴァントとしての願い】

ネット端末遺伝子(と誤認した聖杯)の獲得、そして、都市の復旧

【基本戦術、方針、運用法】

アーチャーとして考えた場合、破格のステータスを誇る。以上と言う他ない精度の千里眼を持ち、それを以て相手を目視。
圧倒的な破壊力を誇るGBEで相手を狙撃、一切の抵抗を許さず消滅させる、と言う戦法がこのサーヴァントの一番単純で強力な使い方。
近接戦闘も無類の強さを誇り、例え高ランクの気配遮断を保有したアサシンであろうとも、気配察知スキルが近接を許さず、
生半可なダメージは不死スキルで即座に復帰すると言う、規格外かつ異常な強さのアーチャーと見て良いだろう。
欠点は、彼の切り札であるGBEが恐ろしいまでの範囲破壊力を誇る為、考えなしに使おうものなら討伐令及び袋叩きは免れないと言う事。
そして何より、アーチャー自体がそう言った危険性を精神異常スキルのせいで全く勘案しておらず、目的達成の為に兎に角災厄を振り撒きまくると言う点。
兎に角切れたサーヴァントであり、マスターの命令すらも正しく受け付けない。致命的なまでの御し難さが、最大の敵になる。




【マスター】

衛宮切嗣@Fate/Zero

【マスターとしての願い】

永遠の世界平和の実現

【weapon】

『キャリコM950』
切嗣が主に扱うことが多い小型自動小銃。 コンパクトさに加え、50連ヘリカルマガジンを使用することで取り回しの良さと実用性を兼ねた銃。 この他に、ワルサーWA2000も保有する。

『トンプソン・コンテンダー』
魔術礼装として独自の改造を施した、中折れ式単発銃。
大口径ライフル弾である30-06スプリングフィールド弾を使用するため、防弾チョッキ等では防げない程の破壊力を秘めている。
ただし単発銃である為に、一回発射する毎にリロードが必要である事が欠点。 また威力に比例して、その反動も当然ながら大きいものになっている。

『起源弾』
切嗣の肋骨の一本に魔術加工を施して作りだした弾丸。
彼の起源たる「切断」と「結合」の二重属性を発現させ、被弾した相手に不可逆の変質をもたらす魔弾。
これが魔術師が発動中の魔術に命中した時、その魔術回路を「切」って「嗣」ぐことで構造を変え、流れている魔力を暴走させて自滅させる。
また上記のコンテンダーを用いて扱われるため、魔術が関係なくとも命中した相手に大ダメージ自体を与えられる威力がある。
全部で66発の弾丸が作られ、その内の37発をこれまで魔術師の殺害に使用している。

【能力・技能】

戦い方の特性から、魔術師が忌避する銃火器や爆発物の取り扱いに長ける。魔術師ではあるが、その魔術師の裏をかく戦い方を彼は得意とする。

固有時制御:
衛宮の家伝である「時間操作」の魔術を戦闘用に応用したもの。
本来儀式が煩雑で大掛かりである魔術であるのだが、「固有結界の体内展開を時間操作に応用し、自分の体内の時間経過速度のみを操作する」事で、
たった二小節の詠唱で発動を可能とし、戦闘時に用いている。問言は「time alter 〇〇 accel(加速)またはstagnate(停滞)」。〇〇には倍率を示す単語が入る。
なお、固有時制御を解除した後に世界からの「修正力」が働くため、反動によって身体に相当の負担がかかる。
この様な欠点から、通常は2倍速程度に使用を留める。

【方針】

聖杯を獲る。但し、破壊範囲の極大さから、アーチャーの切り札であるGBEはここぞと言う局面でしか使用を許さない。

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最終更新:2015年12月08日 01:44