――理想に堕ちていく。
■
「俺は、正義の味方だ」
自分と同じ性を持つ少年が、かつての自分と同じ願いを口にする。
それは受け継がれた意志。だが今となっては、受け継がせるべきではなかったと強く悔いる、間違った意志。
自分に言い聞かせているというわけではない。そんな段階はもうとうに過ぎ去っている。
「聖杯は、害でしかない。なら、やることは一つだ」
彼の中には確固たる信念が、決意が、覚悟がある。
かつて自分がそうであろうとし、いつしか見失ってしまった鉄の心が。
「聖杯を破壊する。それ以外は認めないし、絶対にさせない」
願い自体は、自分と同じだ。意見の相違はない。
彼と自分は顔見知りであるし、それ以上に深い関係――義理の親子であった。
固い信頼で結ばれているし、愛情もある。絶対に裏切らないと、お互いに確信できる。
なのに、何故だろう――何故こんなにも、悲しくなるのか。
わかっている。
わかっているのだ。
彼をここまで歪めてしまったのは、全部ではないにしろ、きっかけは間違いなく自分だ。
「なぁ――――爺さん」
彼、【衛宮士郎】を“正義の味方”に縛り付けてしまったのは。
間違いなく自分、【
衛宮切嗣】なのだから。
視線の先で、薄く笑うマスター――衛宮士郎に対して、切嗣は呆然と佇むことしかできなかった。
■
――理想に囚われていく。
■
(オイオイ……どうなってんだ、こりゃあよ?)
ぎこちなく向かい合う親子を見ている者がいた。
その者の名はタカギ・ガンドー。あるいはディテクティブと呼ばれる、探偵にしてニンジャである。
彼はここにいて、どこにもいない。
ディテクティブの肉体はここに存在しない。
ディテクティブの意識はここに存在する。
ディテクティブのソウルは、衛宮切嗣に憑依している。
召喚されたディテクティブは、肉体を顕現させることができず、衛宮切嗣の肉体を依代として顕現した擬似サーヴァントなのだ。
(ブッダシット……声が出せねえ。クソ、何だ、眠くなってきやがったぞ……)
言葉は発せない。
親子に何か語りかけることはできない。
擬似サーヴァントとしての制約がディテクティブをニューロンの奥底に閉じ込めようとする。
(オイオイ……オイオイオイ……ブッダシット……駄目だ、眠い……ZBRが欲しいぜ……)
愛用のヤクがあればすぐに元気になれるのに。
まどろみの中、ディテクティブは自身に眠るニンジャソウルに触れ、そして知った。
ひとときの相棒となる衛宮切嗣が宝具を発動させたときこそ、ディテクティブが目覚めるときだと。
(オイ……オ……)
そのときが来るのか、来ぬのか……いまのディテクティブには、知る由もない。
【クラス】
アサシン
【真名】
ディテクティブ(衛宮切嗣)
【パラメーター】
筋力:C 耐久:D 敏捷:C~C+++ 魔力:C 幸運:D 宝具:B
【属性】
混沌・善
【クラススキル】
気配遮断:C+
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
【保有スキル】
ピストル・カラテ:A
テッポウ・ニンジャクランの首領を開祖とする暗黒武道。
拳銃を両手に握った状態で構えを取り、発砲時の反動を次なる攻撃や緊急回避に利用する点を最大の特徴とし、一対多のイクサに秀でている。
また、拳打と共に銃身を叩き込み、そのまま接射を行うなどのムーブも含まれる。
ZBR中毒:D
ヨロシサン製薬が製造した精神安定系薬剤の過剰摂取による中毒症状。
ZBRを摂取することで同ランクの「戦闘続行」を得るが、効果が切れると頭痛や思考の鈍化などが起こる。
切嗣自身がZBR中毒を発症しているわけではないので1ランクダウンしている。
道具作成:E
魔力を帯びた器具を作成する。切嗣の場合、弾丸やサーヴァントにも通じるトラップ、ZBRを作成可能。
単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
【宝具】
『起源弾(クライム・アヴェンジャー)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:1人
自らの起源を相手に発現させる礼装魔弾。
この弾丸で穿たれた傷は即座に「結合」され、血が出ることもなくまるで古傷のように変化する。
ただ、「結合」であって「修復」ではないため、「結合」されたところの元の機能は失われてしまう。
この銃弾は相手が魔術で干渉したときに真価を発揮する。弾丸の効果は魔術回路にまで及び、魔術回路は「切断」「結合」される。
結果、魔術回路に走っていた魔力は暴走し、術者自身を傷つける。
その仕様に加え、サーヴァントと化した現状では、必殺の魔弾と称すことができる。
もちろん、弾丸の威力自体も相当のもの。ただしコンテンダーの装弾数の関係上、連射はできない。
『固有時制御(タイム・アルター)』
ランク:C 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
衛宮の家伝である「時間操作」の魔術を戦闘用に応用したもの。固有結界の体内展開を時間操作に応用し、自分の体内の時間経過速度のみを操作する。
真名開放や事前の魔力チャージを必要とせず、二小節の詠唱のみで即座に発動。
敏捷の値にそれぞれ「+」=2倍速(ダブルアクセル)、「++」=3倍速(トリプルアクセル)、「+++」=4倍速(スクエアアクセル)を付与する。
ただし固有時制御を解除した後に世界からの「修正力」が働くため、反動によって身体に相当の負担がかかる。
『鴉、再臨(リブート、レイブン)』
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
エミヤ・キリツグに憑依したディテクティブと切嗣が共鳴を行うことで発動する。
普段はニューロンの奥底に沈んでいるディテクティブの意識を呼び起こし、彼のジツを使用可能となる。
探偵というガンドーの生業、またディテクティブというニンジャネームから象徴されるように観察・探査能力が増大、限定的にAランクの「気配感知」を得る。
また自身の影からカラスを生成して使い魔のように放ったり、49マグナムの弾丸代わりに装填することが可能となる。
この弾丸はカラス・ガンもしくはカラス弾と呼ばれ、発射後に切嗣の意思である程度軌道を制御できる。
ただし実弾に比べると威力及び反動が劣り、完全な暗闇の中では影が生まれないため使用できない。
切嗣が能動的にディテクティブと対話できるのは、この宝具の発動中のみ。
【weapon】
トンプソン・コンテンダー
起源弾を発射するために切嗣が改造した中折れ式の銃。装弾数は1発のため、反動を次の攻撃に利用するピストル・カラテにはあまり適していない。
49マグナム×2
巨大リボルバー拳銃。装弾数は6発。威力に比例して反動も尋常ではないが、ピストル・カラテはこの反動こそを武器として用いるカラテである。
【人物背景】
「魔術師殺し」として裏の世界に名を馳せたフリーランスの魔術師。
アインツベルンと誼を得てアイリスフィール・フォン・アインツベルンとの間に娘であるイリヤスフィールを儲ける。
第四次聖杯戦争にセイバーのマスターとして参加。聖杯を得ることは叶わなかったが、生還する。
◆忍◆ ニンジャ名鑑#50 【ディテクティヴ】 ◆殺◆
簀巻きにされ琵琶湖に沈められた私立探偵ガンドーに、カラス・ニンジャのソウルが憑依。重度のズバリ依存症。
第2巻(キョート・リパブリック編)全編に渡って登場し、ナンシー・リー的役割を果たす。暗黒武道「ピストルカラテ」の有段者。
衛宮切嗣がディテクティブの依代にされ顕現した擬似サーヴァント。
擬似サーヴァントとは、何かの理由でサーヴァントになれない者が人間の体を霊基(触媒)として顕現したもの。
本来は人間の精神はサーヴァントのものに書き換えられるが、ディテクティブ自身もタカギ・ガンドーにカラス・ニンジャのソウルが憑依した存在のため、何らかのエラーが発生。
そのためディテクティブは普段は休眠しており、ニンジャソウルと共鳴する宝具を使用したときのみ、ディテクティブの意識が表出するようになっている。
衛宮切嗣以外にも、ロード・エルメロイII世などが擬似サーヴァントとして確認されている。
【サーヴァントの願い】
――――。
【マスター】
衛宮士郎@Fate/stay night(HFルート)
【マスターとしての願い】
聖杯を破壊する。
【weapon】
なし。
【能力・技能】
投影…思い浮かべた物体を、魔力で顕現させる魔術。
強化…魔力を通すことで、対象の強化を施す魔術。
【人物背景】
10年前に冬木市で起きた大火災の唯一の生存者。
その際、魔術師である衛宮切嗣に助け出され、養子として引き取られる。
後に、切嗣への憧れから、正義の味方となってみんなを救い、幸せにするという理想を本気で追いかけるようになる。
そして、その理想を叶える為に、大切な人達を切り捨てた。
それはまるで、鉄の心を胸に抱いたブリキのロボットのようだった。
【方針】
正義の味方を張り通す。その過程で生まれる犠牲は考えない。
【マスターの願い】
聖杯を破壊する。
最終更新:2015年12月08日 17:55